絶対の先制   作:幻影の塔

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地獄の説教部屋Part3

—— 煽り、追撃、そして逃げ場なき三重奏

朽木邸の執務室。

そこはもはや、護廷十三隊における「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)欠如者たちの処刑場」と化していた。

志波海燕は現世から帰還するなり、朽木白哉のもとへ駆け込み、天理との感動の再会を身振り手振りを交えて熱弁していた。

「——でよぉ、白哉! 天理の奴、記憶はなくなってんのに俺の顔見た瞬間『僕の先輩でしたか?』って言ったんだぜ!? 俺の魂を覚えててくれたんだ! いやあ、感動したのなんのって——」

そこまで話した海燕は、正座させられているルキアをニヤニヤと見下ろし、余計な一言を付け加えた。

「……なぁ、ルキア。お前がもっと早く俺に報告してくれてりゃあ、白哉も一緒に行ってただろ? そしたら天理の奴、白哉の顔を見て『あなたも僕の先輩でしたか?』とか『貴族のお兄さんでしたか?』とか……白哉との思い出だって思い出したかもしれねぇのになぁ! あーあ、惜しいことしたぜ〜っ!」

「あ……」

ルキアの顔から一気に血の気が引いた。

白哉の瞳の奥で、静かなる業火が燃え上がるのをルキアは察知した。白哉はゆっくりと茶を口に運ぶと、冷徹極まりない声で言い放った。

「……なるほど。ルキア。貴様が独断で隠蔽したせいで、七瀬天理が朽木家との絆を思い出す『決定的な機会』を奪った……ということだな」

「に、兄様っ!? ち、違います! 海燕殿の誘導尋問ですっ!!」

「問答無用!!」

海燕と白哉、二人の二大説教タワーによる地獄の説教部屋・第二幕が開幕した。

■ ギンの生還と、ルキアの更なる悲劇

そこへ、バタン! と勢いよく障子が開き、市丸ギンが書類の山を抱えて入ってきた。

「やぁやぁ、またお邪魔しますよ〜! 朽木隊長、頼まれてた一番隊と三番隊の引き継ぎ書類、全部まとめて持ってき——」

部屋の重圧に気づいたギンは、即座に身を翻して逃げようとした。しかし、白哉の冷ややかな声がそれを制した。

「待て、市丸隊長」

「……ひぇッ!?」

ギンは引きつった笑みで振り返る。だが、白哉は意外な言葉を口にした。

「……前回の件だが、よく考えれば一番重罪なのは『報告を意図的に遅らせ、さらなる機会損失を生んだルキア』だ。市丸隊長、貴殿は山本総隊長らに脅されていた経緯もある。今回は書類の提出を認める。……下がって良い」

「……え!? ほ、ほんまですか朽木隊長!? おおきに〜! 助かりましたわ〜!!」

ギンは九死に一生を得たと胸を撫でおろし、正座して青ざめているルキアに「しめしめ、災難どすなルキアちゃん」と目配せしながら、ルンルン気分で退出しようとした。

その、まさに敷居を跨ごうとした瞬間——。

■ 乱菊の乱入と、さらなる暴露

「ちょっとおぉぉぉッ!! 朽木隊長ぉぉぉ!!」

豪快な足音とともに、三番隊副隊長・松本乱菊が髪を振り乱して殴り込んできた。

「乱菊……!? なんでここにおるんや……!」焦るギン。

乱菊は仁王立ちになり、白哉に向かって大声で抗議した。

「朽木隊長! いくら隊長命令だからって酷すぎますわ! 前回のギン……市丸隊長が押し付けてきた三番隊の書類処理! 私、二日二晩徹夜でやらされたんですよ!? なんでギンのサボりのツケを私が払わなきゃいけないんですか!」

白哉が眉をひそめると、横から志波海燕が腕を組んで助け船(?)を出した。

「いや乱菊、落ち着け。そもそも市丸が天理の生還を隠してたのが全ての元悪だ。白哉が怒るのも無理はねぇ」

すると、乱菊は目を丸くし、ハッと気づいたようにギンを激しく睨みつけた。

「……はぁ!? ちょっと待って!? 天理が生きてる……ですって!?」

「あ」

ギンが絶望の表情を浮かべた。

「ちょっとギン……アンタ、私にまで天理が生きてること隠してたの!? 乱菊さんには教えてくれても良かったんじゃない!? 私と天理がどんだけ一緒にお酒飲んで、アンタの愚痴を言ってたと思ってんのよッ!!」

「い、いや乱菊……それには深い訳が……」

「言い訳無用!! 朽木隊長! 海燕さん! この男、徹底的に絞り上げてください!! 私も加勢します!!」

■ 地獄の説教部屋パート3——そして心の叫び

「……市丸隊長。一度は免除しようとしたが、恋人でもあり、パートナーでもある(もう付き合ってるのは公然の秘密である)隠蔽し、不当な負担を強いていたとはな。貴族として、護廷の隊長として見過ごせん」

白哉の『貴族規範論』。

海燕の『仲間と酒の義理論』。

乱菊の『徹夜の恨みと愚痴論』。

三位一体となった怒りの説教バズーカが、正座させられた市丸ギンと朽木ルキアの二人に叩きつけられた。

「そもそも市丸! お前はいつもいつもヘラヘラと隠し事ばかりして……!」

「ルキア! お前もお前だ! 兄である白哉を差し置くなど……!」

「ギン!! 今日の三番隊の書類、全部アンタがやり直しなさいよ!!」

怒号と正論が飛び交う執務室の中で、正座したまま魂が口から出かかっている二人は、固く目を閉じ、全く同じタイミングで心の中で叫んでいた。

(……助けて……くだされ……天理殿ぉぉぉッ!! 兄様と海燕殿だけでなく、乱菊さんまで加わって……もう私の足も魂も限界を超えております……!!)

(……あかん……助けてやぁ……天理はん……!! 乱菊の怒りが頂点に達しとるし、白哉隊長と海燕くんの説教が永久機関に入ってしもた……! 僕の狐の皮が剥がれてまうわ……!!)

二人の必死の叫びが瀞霊廷の空に虚しく響く中、現世の『百花園』では——。

「クシュンッ!! クシュンッ!!」

「あら、天理。今日は二回もくしゃみ?」

「ええ……なんだか瀞霊廷の方から、前回よりさらに大勢の、絶叫に近い助けを求める声が聞こえた気がして……」

天理はのんびりと鼻をすりながら、今日も平和なお花屋さんで綺麗なお花に水をやるのであった。

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