浦原商店の地下修練場。
ドガァァァン! ボカァァァンッ!
「あがぁぁぁっ……!」
「ひゃあぁぁぁっ……!」
あれから丸一日。
平子真子が「1個3万円の幻の極上生苺ショートケーキ(1週間分)」という破格の命の代償を差し出して華麗に脱出してからというもの、地下室に残された市丸ギンと朽木ルキアの地獄はノンストップで続いていた。
「もう……もう声も出えへん……」
「だ、誰か……誰でも良い、四番隊に……ケーキを……っ……!」
四番隊の超絶的な回道により、精神と肉体が崩壊する寸前で完璧に全回復させられ、再び初代剣八の圧倒的殺気と刃の嵐に晒される無限ループ。
彼らが生き延びるための唯一の希望——それは、「平子真子から四番隊へ、約束のケーキ第1号が届くこと」だけだった。
■ 待ち望まれた「ケーキ第1号」の到着
翌朝。四番隊舎。
「卯ノ花隊長! 現世の平子隊長より、特別なお届け物が入っております!」
虎徹勇音が恭しく差し出したのは、厳重に梱包された高級感あふれる保冷ボックス。
蓋を開けると、そこには宝石のように輝く大粒の生苺と、絹のように滑らかな極上生クリームが美しく組み合わされた、1個3万円の伝説のショートケーキが鎮座していた。
「……まあ」
卯ノ花烈の瞳が、ふんわりとした可憐な光を取り戻す。
「平子隊長……誠意に偽りはなかったようですね。素晴らしい出来栄えです」
一口召し上がった卯ノ花は、うっとりと頬を緩め、最高に満足気な笑みを浮かべた。
「……ふふ。大変美味しゅうございます。約束は約束……今日のお稽古は、ここまでとして差し上げましょう」
■ 地獄からの生還、そして解放
浦原商店の地下室。
ガチャン……
重い鉄扉が静かに開かれ、差し込んできた光とともに、召し上がり終えて満足気な卯ノ花が優雅に姿を現した。
「お待たせしましたね。平子隊長から無事にケーキが届けられましたので、本日のお稽古は終了といたします」
「「っ……!?????」」
床に文字通り「肉片(※回道で修復済み)」のように転がっていたギンとルキアの瞳に、一筋の光が宿った。
「た……助かっ……た……?」
「生きて……生きて地獄から出られるのか……!?」
二人は互いにボロボロの身体を引きずり、震える手で地面を這いながら、奇跡的に地上への階段を上っていった。
■ ボロボロの二人と、地上での「結末」
地上へ這い出してきた二人の姿は、まさに惨憺たる有様だった。
服はズタズタ(回道で傷は治っているが服は治らない)、髪はボサボサ、目は光を失い、ただただ白目を剥いて路上に倒れ込む二人。
「お……お気をつけてお帰りくださいね、二人とも……」
地上で待機していた一護と浦原喜助が、哀れみと戦慄が混ざったような引きつった笑みで二人を見送ろうとする。
そこへ、ケーキの支払いで財布がスッカラカンになった平子真子が、缶コーヒーを片手にやってきた。
「よお、二人とも無事生還できたみたいやな! ワイの21万円のケーキのおかげやで、感謝してほしいわ!」
すると、倒れていたギンとルキアが、最後に残った全霊圧を振り絞って平子を睨みつけた。
「……平子隊長……自分だけ先に逃げて……ほんま……ほんま許さへんからな……っ……」
「うむ……この怨み……一生……忘れぬ……っ……」
「ハッ! 誰のせいでワイが21万も払う羽目になったと思ってんねん! 自業自得じゃボケぇ!」
ギャーギャーと不毛な言い合いを始めるボロボロの3人。
その頃、空座町の『百花園』では。
カランカラン——♪
「天理さ〜ん、今日もお花買いに来ました〜!」
ルキアたちが地獄の業火に焼かれていたことなど露知らず、今日も平和に花と向き合う天理と、それを温かく見守る百花繚乱。
「あ、いらっしゃい! 今日はどの花にする?」
遠くで巻き起こっていた数々の悲劇と怒涛のコメディ劇を余所に、現世の小さな花屋には、今日も変わらない穏やかで優しい時間が流れていたのだった。
(〜地獄の説教部屋・完〜)