「今だっ……!!」
京楽春水の静かな合図とともに、三人の覚悟が弾けた!
「破道の三十一・赤火砲(しゃっかほう)!!」
京楽の手元から放たれた強烈な爆炎と煙幕が、山本元柳斎重國の視界を完全に遮る!
「ぬ……!?」
「射殺せ——『神槍(しんそう)』!!」
煙幕を切り裂き、光の速度で伸びた市丸ギンの神槍が元柳斎の体勢を完璧に崩す!
「舞え——『袖白雪(そでのしらゆき)』!!」
間髪入れずに踏み込んだ朽木ルキアが極寒の冷気を叩きつけ、元柳斎の足元から半身を一瞬にして氷漬けにした!
「(((決まったぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!)))」
ドンピシャでハマった三段構えの連撃! 氷が山じいを縛り付ける時間はわずか数秒——だが、瞬歩で特訓室の重い鉄扉を駆け抜けるには十分すぎる時間!
奇跡の連携に、三人の脳裏には「勝利」と「自由」の二文字が眩しく輝いていた。
ガチャンッ!!!
三人が特訓室の扉を全力で押し開き、外へ飛び出そうとした——まさにその瞬間。
「あ? なんや一番隊庁舎、えらい騒がしい……つーか焦げ臭……ぶはっ!?」
「「「邪魔だぁぁぁぁぁぁっっっ!!???」」」
なんとタイミングの悪すぎることに、総隊長への定期報告のため書類を抱えて歩いてきた平子真子が、勢いよく飛び出してきた三人と思い切り鉢合わせしてしまったのである!
ドゴォォォォンッ!!!
勢いを殺しきれなかった三人と平子は正面衝突。
もつれ合うようにして特訓室の床へと転がり落ちた。
「痛たたた……! な、何すんねんお前ら急に飛び出してきて……って、ゲェッ!? 山じい氷漬けになって——」
「……何をしている、平子」
パリィィィィンッ!!!!
冷気が粉々に砕け散る恐ろしい音。
平子との衝突で稼いだわずか一秒のタイムロスの間に、山本元柳斎重國は全身から凄まじい霊圧を噴出し、氷を完膚なきまでに叩き割っていた。
その瞳に宿る炎は、先ほどまでの百倍。千載一遇のチャンスは完全に露と消えたのだ。
「……あ」
絶体絶命。万事休す。
三人の「希望」がガラガラと崩れ去り、静まり返る特訓室。
「……ひ、平子隊長……」
ルキアが血走った目で平子を見つめる。
「な、なんやルキアちゃん……そんな般若みたいな顔して……」
「お前ぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!! 何で今ここにおるんじゃボケぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!」
「自分ほんま余計なことしかせえへんなぁぁぁっ!! タイミング悪すぎるわアホんだらァ!!」
「平子くん……君という人は本当に……本当に空気の読めない男だねぇぇぇっ!?」
逃走のチャンスを潰され、怒り狂った三人の感情が爆発した!
「な、なんで俺が怒られなきゃいかんの!? 俺は普通に報告に来ただけ——」
「黙れぇぇぇぇっ!! 山じい!! 効いてくれッ!!」
ルキアが平子の胸ぐらを掴み上げ、激昂しながら元柳斎に向かって大声で叫び始めた!
「この平子真子!! 日頃から現世の『百花園』に日参しては、『山じいの頭は頑固すぎて頭髪と一緒に柔軟性まで抜け落ちとる』だの!! 『あのハゲジジイの説教は話が長くて日が暮れる』だの、あんたの愚痴を我らの百倍は撒き散らしているぞっっ!!」
「ちょっ……ルキアちゃん何言いだすねん自白剤でも飲まされたんか!?」
さらにギンが平子の背中を蹴り飛ばしながら追い打ちをかける!
「それだけやないで山じい! こいつ『山じいの眉毛は長すぎて朝のセットに30分かかっとる』とか『一番隊のお茶は渋くて美味しないから百花園のお茶の方がマシや』とか散々な言いようやってん!!」
「市丸ぅぅぅっ!? 捏造混ぜるなアホ!! 眉毛の話なんかしたことないわ!!」
「やれやれ……平子くん。君が普段から山じいのことを『老害』扱いしていた証拠、ここで全部吐き出してもらうよ?」
京楽までもが冷酷な笑みを浮かべて平子の逃げ場を塞ぐ!
「キョ、京楽さんまで!? 冤罪や!! 巻き込まないでええええっ!?」
「………………」
四人の見事な(?)泥仕合を冷ややかに見下ろす山本元柳斎重國。
その全身から立ち上る爆炎が、特訓室の天井を本格的に溶かし始めていた。
「……平子」
「ひ、はいぃっ……!」
「お主……なかなか面白いことを言うておったのだな……?」
「ち、違います山じい! こいつらが俺を道連れにしようとウソを——」
「問答無用ッ!!!! 貴様もそこで正座せよッ!!!!」
ゴォォォォォォォォォォォォッ!!!!
「なんでやねんんんんんんんっっっっ!!!!(絶叫)」
全く身に覚えのない(一部身に覚えのある)愚痴を百倍に盛られて告発された平子真子を巻き込み、一番隊特別特訓室はさらなる混沌と灼熱の地獄絵図と化すのであった。