絶対の先制   作:幻影の塔

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ここから脱走成功後の話になります


Ifルート脱走後の世界線と市丸ギンの藍染惣右介直伝コンサルティング

 

【Ifルート:断界大脱走——ギンの深謀遠慮】

「ハァ……ハァ……ッ! 逃げ切った……脱出できたぞっ!!」

拘流(こうりゅう)が蠢く暗闇の『断界』を、三人は全身の瞬歩をフル回転させて疾走していた。

あの奇跡の三段攻撃の後、扉を開けた直前にすれ違った平子真子を間一髪で全員でスルー(※平子が「あ? なんや……」と言っている間に脱出)。おかげで山じいの残火の太刀からも、卯ノ花隊長の極上笑顔からも間一髪で逃げ延びることができたのだ。

「ふぅ……間一髪だったねぇ。平子くんには悪いことをしたけれど、背に腹は代えられないよ」

汗を拭いながら並走する京楽春水。

すると、その横を走る市丸ギンが、ふと狐のような笑みを残したまま口を開いた。

「……なぁ、二人とも。ここから脱出したあと、浦原喜助のところへ逃げ込むつもりやったやろ?」

「うむ! あやつならば浦原商店の地下室に匿ってくれるはずだ!」

ルキアが自信満々に答えるが、ギンは首をゆっくり横に振った。

「甘いなぁ、ルキアちゃん。……ホンマにあの浦原喜助が信用できる思てんの? あいつ、山じいや卯ノ花隊長が直接乗り込んできたら、一瞬でワイらを売るで」

「「……ッ!?」」

「あ……確かに!!」

ルキアと京楽の顔が一瞬で引きつった。

前回の「浦原地下室・無限地獄」のトラウマが蘇る。あの男なら、山じいの圧に屈する振りをして、あるいは自分の保身のために、爽やかな笑顔で「やあやあ、三人なら地下におりますよー」と即答する姿が容易に想像できた。

「だからな……ワイはここから『無間(むけん)』に行くわ」

「なっ……!?」

ルキアが目を見開いて叫んだ。

「一人がけズルいぞ市丸隊長!! 自分だけ一番安全(?)な刑務所に隠れる気か! そもそも我らが入ったら一発で捕まるではないか!」

「いや……ルキアちゃん、落ち着きなよ」

京楽春水が、なるほどと深く頷きながらギンの意図を読み解いた。

「納得したよ。考えたね、市丸くん……。無間はその特殊な性質上、一度入った罪人の霊圧を、次に別の罪人が入ってくるまで部屋全体が記憶し続ける。僕やルキアちゃんが無罪(?)で一緒に入ればすぐ察知されるが……市丸くんなら完全に誤魔化せる」

「えっ……? どういうことですか京楽隊長?」

「かつて市丸くんが入っていた収監室に入れば、そこは元々『市丸ギンの霊圧』で満ち満ちているんだよ。そして山じいや隠密機動もその特性を熟知しているから、『まさか脱獄囚が自分から元の無間に戻って隠れているわけがない』とタカをくくって、わざわざ探そうとすらしない。……食料さえ持ち込めば、ほとぼりが冷めるまで完璧に隠れ切れるってわけだ」

「な……なんという盲点……!!」

ルキアが戦慄する。まさに灯台下暗し、最高峰の密室隠蔽トリックであった。

「……そうやねん」

ギンは遠い目をしてフッと息を吐いた。

「ほんまならワイだけサクッと無間に隠れたら終わりなんやけど……あの山じいの地獄を共に生き抜いた戦友を見捨てるのも気が引けるわ。だから……あんさんら二人にも『取っておきの策』を授けたるわ」

「「おお……!!」」

「現世に着いたら、まず浦原商店に行くねん。で、京楽はん、あんた『次期総隊長権限』を使って、浦原から『霊圧遮断の外套(がいとう)』を強引に押収(搾取)するんや」

「外套を……?」

「いいかい、誓って言えるけど、浦原は絶対に二人を売る。すでに瀞霊廷から『脱走者三名を捜索せよ』の情報は回っとるはずやからな。あいつはブラフを交えて、隠密機動が来るまで二人を引き延ばそうとするはずや」

ギンの声が、恐ろしいほど冷徹で実践的な熱を帯びる。

「あいつがもし『とりあえず、安全な地下室でお隠れになって待っていてください』って誘導してきたら……100%アウトや。あの地下室、前回酷い目にあったからわかるけど、一方通行で扉を締め切られたら外から鍵かけられて終わりやねん」

「「うぐっ……!!(心当たりがありすぎる)」」

「だからな、『霊圧遮断の外套を用意しますから、それまで地下室へ』と言われたら、間違いなく売られとる。逆に、もしその場ですぐ外套を出してきたら、それを着てそのまま瀞霊廷に戻って、隊舎で何食わぬ顔してやり過ごせばええ」

あまりにも完璧で、浦原喜助の行動パターンを裏の裏まで読み切ったプロの計略!

京楽もルキアも、目を見張って感心するしかなかった。

「すごいな市丸くん……。君はなぜそこまで浦原喜助の思考が読めるんだい……?」

京楽が尋ねると、ギンはフッと目を細め、どこか遠い世界を見るような眼差しになった。

「……ワイが藍染惣右介の部下だった時……藍染はんは浦原喜助を異常なまでに警戒しとったんや。だからワイも要(東仙)はんも、藍染はんから『浦原喜助の行動理念と心理誘導のパターン』を、永遠と……それこそ嫌というほど徹底的に教え込まれたんや……」

「「((ヒ……ヒエッ……っ!!))」」

あまりにも闇が深く、説得力が凄まじすぎるバックボーンに、京楽とルキアは思わず一歩引きつった。

「……でな? もし浦原が二人を地下室へ誘導しようとしたら、速攻で引き返して黒崎一護の家へ行け」

「一護の家……!?」

「そうや。一護のとこには、山じいからの捜索情報は絶対に行かへん。もちろん、天理はんのところにも行かへんはずや」

「なぜだ?」

「決まっとるやろ? 『こんなショーもない愚痴と罰ゲームで隊長格が脱走した』なんて、護廷の恥中の恥や。現世の英雄(一護)や天理はんに知られたら護廷の面目が丸潰れやからな。……あ、ちなみに天理はんの店だけは絶対に近づいたらアカンで? 天理はんをこの騒動に巻き込んだと知れたら、今度こそ護廷十三隊が本気で二人を潰しに来るからな」

「「(ガクガクブルブル……!!)」」

「で、なんで一護の家かと言うたら……アイツなら『霊圧遮断の外套』の予備も含めて、絶対に3つは持っとるからや」

「な……なぜ一護がそんなものを予備まで持っているのだ!?」

ルキアの問いに、ギンはニヤリと鼻で笑った。

「アイツ、ガサツやろ? 予備持たせとかんと、いざという時に絶対ミスるやん。あの浦原喜助が、そんな一護の性格を計算に入れてへんと思うか? ……ただし、『ちょっと貸せ』ってストレートに言っても一護は警戒するから、『ちょっと調査のためにな』とか何とか言って上手く奪う(借りる)んや。まぁ、そこらへんの交渉は京楽はんに任せるわ」

「……完璧だ」

京楽春水は、脱帽するように深く帽子を目深にかぶり直した。

「完璧すぎるよ、市丸くん。君を味方に持てて、本当によかった」

「ふふ、まあワイら『地獄を生き抜いた戦友』やからな。……それじゃ、ワイはここらで無間へ向かうわ。健闘を祈っとるで」

シュッ……!

断界の闇の中、市丸ギンはひらりと身を翻し、元来た道を通り抜け、一人「最も安全な密室(無間)」へと消えていった。

残された京楽春水と朽木ルキア。

「よし……ルキアちゃん。市丸くんの授けてくれた超・高度な心理作戦……絶対に成功させようじゃないか!」

「うむ! 浦原の裏をかき、一護から外套を奪い、絶対に生き残ってみせますぞ!!」

二人の瞳に、市丸ギンから託された「裏の裏をかく希望の光」がメラメラと燃え上がっていた——。

こうして、市丸ギンの『対・浦原喜助コンサルティング』を受けた二人は、現世の浦原商店へ向けて一直線に飛び出していったのでした!

 




無間の設定をこの話に合わせる為、変更しました。もちろん原作には、こんな設定無いのでご理解下さい
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