酒寄彩葉に泣かされる優柔不断で悪いモブの話~逆行編~ 作:ゴリラ皇子
「かぁー!噂のかぐやちゃんが月のプリンセスで、ヤチヨちゃんが未来のモブちゃんだったとは…新解釈の登場か」
「なにそれ面白すぎ」
「興味深いな」
「み、帝様が彩葉のお兄さん………きゅう」
「モブちゃんがヤチヨって…マ?」
ツクヨミの会議スペース、そこに集まったお馴染み仲良しメンバーとお兄ちゃん達ことブラックオニキス、モブちゃんの親友オタ公さん、そしてサプライズゲスト
どうせ説明するのなら早い方がいい、という満場一致の結論によりこの場を設けたのだけれど…
「なーんかカオスだねぇいろぴー」
「にゃー」
猫DOGEを抱っこしながらボヤくモブちゃんへ同意するように頷く
先ず早々に真実が気絶した
お兄ちゃんの溢れ出るファンサ力に身体が耐えられなかったみたい
次にお兄ちゃん、妹に未来の記憶があって親友のモブちゃんが電子生命体という事実に絶句。暫く天を仰いでいた
そしてオタ公さんは親友と推しが同一人物というぶっ飛んだ事実に、背中に宇宙を背負ってフリーズしてた
最後に1番場をカオスにしていたのが…今回のサプライズゲスト
「…!…!?」
「はい…はい…その節は本当に申し訳なくぅ…彩葉ぁ〜助けてぇぇえ〜!」
「わん!」
部屋の隅で現在進行形でかぐやを懇々と説教している月人の皆さんだ
言わずもがな、かぐやへのサプライズゲストである。だって事前に言うと逃げようとするし…いざと言う時は凄い頼りになって格好良いんだけどねぇ
まぁこればっかりはかぐやが悪いから、甘んじて受け止めてもらうしかない
「それで?彩葉のお願いってなに?ヤチヨCUP優勝を譲ってくれとかじゃないっしょ?」
「当然、それは自分達で勝ち取るよ。お兄ちゃんへお願いしたいのは、実は引越しの保証人になってほしくて…」
お兄ちゃんへ私達が住んでいたマンションのスクショを送る
このマンションには様々な思い出が詰まっている、そう…大切な思い出が
あそこはもう私達の帰る家なんだ
というのもあるが…切実な問題として相変わらずかぐやが物増やしすぎなのと、防犯上の問題だ
防犯についてはヤチヨが手配してくれるらしいが、自分達でも気をつけるに越したことはない。早めにセキリュティの高い家に引っ越すのは当然だろう
「…家賃大丈夫なんか?」
「そこは大丈夫、ヤチヨも協力してくれるし」
暫くはかぐやとヤチヨ頼みになっちゃうだろうけど、いざとなれば特許の1つや2つ売却すれば…なのでそこまで心配することはない
「…いいよ、お兄ちゃんに任せな」
「ありがとうお兄ちゃん!流石、話が分かる!」
「ほんっと、逞しくなったみたいで安心したわ」
そう言ってどこか肩の力が抜けたように笑うお兄ちゃんの姿に、涙腺が緩みそうになるのをグッと堪えた
ずっと、気にかけてくれてたんだもんなぁ
ありがとう…お兄ちゃん
私達の話が終わったタイミングで、かぐやがヨロヨロとこちらへ歩いてきた
あらまぁしっかり絞られたようで
「彩葉ぁ〜月人がいじめるぅ〜!」
モブちゃんステイステイ…目が本気過ぎ
説教がひと段落した所で、私へ申し訳無さそうな顔をして謝る月人さん達を交え…今後について話し合う
かぐや姫について
タイムスリップについて
ハッピーエンドへ向けての物語を紡ぐために
会議は白熱したけど、何とか良い着地点を迎えられたんじゃないかなと思う
そんな会議も終わり、皆んなが解散した頃
私とヤチヨと月人さんはある試みのための秘密会議を開いていた
「じゃあ理論的には可能ってことですか?」
「…!」
「うん大丈夫、でも試したことはないから試行錯誤が必要かもー?だって。しっかし、彩葉も無茶言うねぇー」
「今までだって散々無茶なことしてきたでしょ?平気へーき」
月人さん達の協力があれば絶対に実現不可能なことってわけでもないしね
でも、私だけじゃ意思疎通がとれなくて…忙しいヤチヨに付き合って貰うのが申し訳ないなぁとは思う
「彩葉」
ヤチヨが私の肩へ頭をのせるように寄りかかってくる。まだ体温を感じる機能なんて実装していないのに、不思議と温かさを感じた
「ありがとね"私"のために頑張ってくれて…ヤッチョは平気だから、もっと頼ってー?」
「…うん、ありがと。頼りにしてるよ」
指を重ね合わせる、私とかぐやとヤチヨの仲良しの印。かぐやがいない時にやったと知られたら拗ねるので、彼女には秘密だ
「月人さん達も、改めて宜しくお願いします」
そう言って頭を下げる私へ、月人さん達はゆっくりと頷いて肯定を返してくれた
こうして私達の秘密の作戦は進められて行ったのだった
目が覚める
正確に言うなら設定した時間が来たのでスリープモードを解除した、といったところか
瞼を開ける
睡眠の必要がなくなった日から続けている人間だった頃の真似事、最低8時間睡眠。まぁ無視することも稀によくあるけど
眠る時は大抵ツクヨミで、ツクヨミ以外ではあまり眠らない。というより眠れない。だって万が一世界と切り離されたら、怖い
ツクヨミなら、ツクヨミになら…取り残されても良いかなと思っていた
光が目に入る
人が少ない明け方の時間は、嫌いではないけど少し寂しい
目に映るのはいつもの見慣れたツクヨミ…ではなく
思わず、といった感じで目を見開いた
目に映るのは天使か?いや、この金髪に特徴的なアホ毛はもしや…!
『か、かぐや!?』
「むにゃ…ふわぁ〜モブちゃんおはよ〜!」
推しの寝顔!?うっわ睫毛長っ!顔ちっさ!可愛い!し、心臓が口から飛び出すかと思った…あぶねぇ
どういう状況なのかを把握しようとした所で、モブちゃんは昨晩のことを思い出す
かぐやからの「モブちゃん〜配信手伝ってぇ〜!」というお願いを秒で引き受け、MO=BUとしてKASSENのコーチを行いそれはそれは楽しい時間を過ごした。そして「かぐや達の新しいお家、見たくない〜?」という甘過ぎる誘惑にまんまとハマり、かぐやのスマホへお邪魔してうひょうひょと楽しんだモブちゃんは…なんか流れでお泊まりすることになって現在に至る
「ふんふんふふ〜ん♪」
モブちゃんはキッチンの撮影用だろうスマホスタンドへ立てかけられ、鼻歌を歌いながら朝ごはんの準備をしているかぐやを眺めていた
『(やすらぐぅ〜〜〜!)』
「今日のご飯はねぇ〜白いご飯に塩ジャケ、熱中症対策のお野菜たっぷりお味噌汁とかぐや特製だし巻き卵、青菜のおひたしをそ・え・て☆」
『かぐぴ、ウチのために毎日味噌汁を作ってくれん?』
「ヴェエ〜!?毎日じゃ飽きちゃうよ〜!」
それが意外と飽きない、何故なら日本人の血液の5割は味噌を含む大豆製品で構成されている
それにしても、朝からこれ程の料理を…やはりかぐや、天才か…とモブちゃんが戦慄していると、どうやら彩葉達も起きてきたようで
「おはよ、ん〜良い匂い」
『おっはよー!今日も美味しそうだねー!』
「おはよ〜!もうすぐできるから少しだけ待っててね!」
「お、おはよ、いろ…ぴ…!?」
モブちゃんは再び大きく目を見開いてフリーズした
「(美の女神?)」
そこにいたのはまごうことなき女神…いや彩葉か?やっぱり女神か??
パジャマ姿で髪もボサボサだけど、色気を超えた凄みすら感じる…!グレートですよ…こいつはぁ…!モブちゃんはこの世の全てに感謝を捧げつつ涙を流して気絶した
「?モブちゃん泣いたまま動かなくなっちゃった〜?」
『いつもの発作だから気にしなくて良いよー☆』
和やかな雰囲気の中進む朝食の時間を、モブちゃんはヤチヨの隣で眺めていた
今日のご飯は上手く炊けただの、雨が降りそうだから洗濯物気をつけなきゃだの…どこのご家庭でもしていそうな、そんなありふれたやり取り
だけど、モブちゃんにとっては
『ヤチヨ』
『なんだいなんだい?』
彩葉がいて
かぐやがいて
そして、ヤチヨがいる
ご飯を食べて、笑って、時には喧嘩したりもして、仲直りして、一緒に眠る
そんな当たり前の日常が、明日も明後日もきっと続いていく
夢に見た景色はキラキラと輝いていて…そのあまりの眩しさに目を細めた
『ウチさ、絶対守るよ。この景色を』
ヤチヨが愛した…命を賭してやり遂げる、覚悟という名の光を宿したモブちゃんの瞳は、その目に映る景色と同じようにキラキラと輝いていて
『モブちゃんなら大丈夫、ヤッチョが保証しちゃう!』
『うん、ありがと…いやはや説得力がちがいますなぁ』
世界が彩りに満ちていく
「ところで、モブちゃんの部屋なんだけど…ヤチヨとFUSHIと元光る竹との同室で大丈夫?」
『なんですとぉ!?』
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