最高のヒーローになるんだこいつ!   作:揚げパンcat

2 / 6
制御方法

 父にお願いをして、自分の個性の制御訓練をしてもらえることになった。父は体が気体……もっと言うと『大気*1』になる。つまり、体が透明になるということ。

 隔世遺伝で産まれてきた父に祖父母も随分と苦労してきたらしく、父の個性の制御をうまく手伝えなかったことを悔やんでいた。

 

「沢山息を吸って、吐いて。自分を風船だと思って呼吸をするんだ」

 

 それでも消防士になった父を、家族みんなで誇りに思ってる。勿論俺もだ。

 ──ゆっくりと息を吐く。浮遊し輪郭が朧げだった体に、形と重さが生まれていく。だんだん高度が下がっていき、やがて音もなく座り込んだ。普通に呼吸をすると、ぱたんと倒れた。

 

(……体、戻ったのか)

 

 仰向けになった体をこどもの力で起こすと、父が驚いたような目でこちらを見ていた。

 

「凄いじゃないか、操!まだ3日だぞ、3日!」

「お父さん?」

(かなえ)ー!操が、操がもう形態変化を覚えたぞー!」

 

 大声で叫ぶ父にきょとんとしていると、どたばたと階段を駆け上がる母……叶の足跡が聞こえて、やがてドアが開いた。

 

「本当!?まだ3日じゃない!」

「操は凄い子だ!きっと凄いヒーローになるぞ!」

 

 どうやら、うちの両親は親バカのようだ。

 両親からの期待を無碍にするのも、ましてや俺自身の夢を叶えないわけにはいかないので、無難にヒーローを目指す。

 

(……まずは、人の体と気体の体の制御か)

 

 こればかりは経験がものを言うだろう。コツを掴むまで父から教われば、なんとかいける筈だ。

 

「お父さん、もっかいやろう」

「え?」

「ヒーロー、なりたい」

 

 ……子供の演技ってどうやるのかわからないけど、まぁ多分大丈夫だ。だって両親が目をキラキラさせてる。

 

「まあ!あなた、操がヒーローだって!」

「ああ……!お父さんも、操のために頑張っちゃうぞ!」

 

 ……俺そっちのけで舞い上がる両親を尻目に、俺はゆっくりと息を吸い始めた。

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

 少し時が経って、5歳。……俺の記憶が正確なら、轟燈矢──荼毘が一回死ぬのは、この時の筈だ。だがそれは、俺が緑谷出久と同年代だったらの話。もしもヒロアカが既に終わっているのだとすれば、俺が関与できることは無い。まあそれはそれで万々歳なんだが。

 

「操、かなり形態変化に慣れてきたんじゃないか?」

「うん、もう完璧だよ!」

「凄いなぁ操は!お父さん嬉しいぞ〜!」

 

 ひゃっほーう!

 

 おう、抱っこでぐるぐる回転はやめてくれお父さん。地味に息が吸いづらい。

 

「あなた、そろそろ操も"あそこ"に行った方がいいんじゃないかと思うんだけど」

「……そうだな。そろそろ操にも、経験を積ませた方がいい。幼稚園だけじゃない、他の子供の個性を見るのはいい刺激になる」

 

 ……"あそこ"?少なくとも俺の原作知識にはなさそうだが……。

 

「よし、叶。今度休みが取れたら予約してくれるか?俺は仕事が重なりそうでな」

「わかったわ。操のことはこっちで見ておくわね」

 

 今日はもうゆっくり休みなさい、と母に嗜められ、気体の体から戻る。ふわりと着地をすると、急に眠気がやってきた。

 

「あら、もう眠いの?」

「もうお風呂も歯磨きも終わったし、このまま寝てもいいんじゃないか?」

「その前に、少し汗を拭こっか」

 

 タオルで汗を拭って、その日は驚くほど早く眠りについた。

 

 


 

【気体 大気(たいき)

【気体 (かなえ)

 

操の両親。中学生からの付き合いであり、少し複雑だった叶の家庭に大気が「うるせぇ!」と一瞥し、そのまま駆け落ち婚。それが影響したのか、親バカになった。

今は消防士となった大気が稼ぎ頭で、叶は某ヒーロー事務所で事務員として働いている。

 

操の個性は父親の遺伝で、世代を経て強化されている。

 

父の個性は『大気』。体を大気に変えることが出来るが、それだけ。ものは持てる。ちなみに服は大気にならないので、戻ると裸。何回か妻に悲鳴をあげられたことがある。

炎の影響を受けにくい。そして窒息をしない。そのため、優れた消防士として重宝されている。

 

母の個性は『声援』。自身の憧れている人物に「頑張れ」と言うと、一時的にその人物のステータスが向上する。個性の発動は任意。

ラブラバの色違い的なものだが、ラブラバとは血縁では無い。遠い先祖まで遡れば、あるいは。

*1
ここで言う大気は、地球の大気。窒素約78%、酸素約21%、二酸化炭素やアルゴン等その他約1%

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。