父にお願いをして、自分の個性の制御訓練をしてもらえることになった。父は体が気体……もっと言うと『大気*1』になる。つまり、体が透明になるということ。
隔世遺伝で産まれてきた父に祖父母も随分と苦労してきたらしく、父の個性の制御をうまく手伝えなかったことを悔やんでいた。
「沢山息を吸って、吐いて。自分を風船だと思って呼吸をするんだ」
それでも消防士になった父を、家族みんなで誇りに思ってる。勿論俺もだ。
──ゆっくりと息を吐く。浮遊し輪郭が朧げだった体に、形と重さが生まれていく。だんだん高度が下がっていき、やがて音もなく座り込んだ。普通に呼吸をすると、ぱたんと倒れた。
(……体、戻ったのか)
仰向けになった体をこどもの力で起こすと、父が驚いたような目でこちらを見ていた。
「凄いじゃないか、操!まだ3日だぞ、3日!」
「お父さん?」
「
大声で叫ぶ父にきょとんとしていると、どたばたと階段を駆け上がる母……叶の足跡が聞こえて、やがてドアが開いた。
「本当!?まだ3日じゃない!」
「操は凄い子だ!きっと凄いヒーローになるぞ!」
どうやら、うちの両親は親バカのようだ。
両親からの期待を無碍にするのも、ましてや俺自身の夢を叶えないわけにはいかないので、無難にヒーローを目指す。
(……まずは、人の体と気体の体の制御か)
こればかりは経験がものを言うだろう。コツを掴むまで父から教われば、なんとかいける筈だ。
「お父さん、もっかいやろう」
「え?」
「ヒーロー、なりたい」
……子供の演技ってどうやるのかわからないけど、まぁ多分大丈夫だ。だって両親が目をキラキラさせてる。
「まあ!あなた、操がヒーローだって!」
「ああ……!お父さんも、操のために頑張っちゃうぞ!」
……俺そっちのけで舞い上がる両親を尻目に、俺はゆっくりと息を吸い始めた。
・
・
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「……ふぅ」
少し時が経って、5歳。……俺の記憶が正確なら、轟燈矢──荼毘が一回死ぬのは、この時の筈だ。だがそれは、俺が緑谷出久と同年代だったらの話。もしもヒロアカが既に終わっているのだとすれば、俺が関与できることは無い。まあそれはそれで万々歳なんだが。
「操、かなり形態変化に慣れてきたんじゃないか?」
「うん、もう完璧だよ!」
「凄いなぁ操は!お父さん嬉しいぞ〜!」
ひゃっほーう!
おう、抱っこでぐるぐる回転はやめてくれお父さん。地味に息が吸いづらい。
「あなた、そろそろ操も"あそこ"に行った方がいいんじゃないかと思うんだけど」
「……そうだな。そろそろ操にも、経験を積ませた方がいい。幼稚園だけじゃない、他の子供の個性を見るのはいい刺激になる」
……"あそこ"?少なくとも俺の原作知識にはなさそうだが……。
「よし、叶。今度休みが取れたら予約してくれるか?俺は仕事が重なりそうでな」
「わかったわ。操のことはこっちで見ておくわね」
今日はもうゆっくり休みなさい、と母に嗜められ、気体の体から戻る。ふわりと着地をすると、急に眠気がやってきた。
「あら、もう眠いの?」
「もうお風呂も歯磨きも終わったし、このまま寝てもいいんじゃないか?」
「その前に、少し汗を拭こっか」
タオルで汗を拭って、その日は驚くほど早く眠りについた。
【気体
【気体
操の両親。中学生からの付き合いであり、少し複雑だった叶の家庭に大気が「うるせぇ!」と一瞥し、そのまま駆け落ち婚。それが影響したのか、親バカになった。
今は消防士となった大気が稼ぎ頭で、叶は某ヒーロー事務所で事務員として働いている。
操の個性は父親の遺伝で、世代を経て強化されている。
父の個性は『大気』。体を大気に変えることが出来るが、それだけ。ものは持てる。ちなみに服は大気にならないので、戻ると裸。何回か妻に悲鳴をあげられたことがある。
炎の影響を受けにくい。そして窒息をしない。そのため、優れた消防士として重宝されている。
母の個性は『声援』。自身の憧れている人物に「頑張れ」と言うと、一時的にその人物のステータスが向上する。個性の発動は任意。
ラブラバの色違い的なものだが、ラブラバとは血縁では無い。遠い先祖まで遡れば、あるいは。