最高のヒーローになるんだこいつ!   作:揚げパンcat

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燈矢の死は夏ではなく冬だったみたいです。修正を入れておきました。


みんなのヒーローアカデミア大作戦③

(ああ、移動の訓練を怠ってなくてよかった……!!)

 

「つか寒(さみ)い……!」

 

 現在、神奈川県上空。雲が流れるような高度で俺は飛行していた。俺が家に着いてノートにメモをしていた時に根津校長から来た連絡は、それはもう素早かった。

 

『小型ロボから、「瀬古杜岳の方から焼けたプラスチックのような香りがする」と通信が来た。君の個性で浮遊が可能なこと、ガス形態では呼吸の必要がないことはわかっているから、神奈川県上空に輸送機を用意しておく。すぐに来てくれ』

『──うん、わかった!』

 

 両親には、散歩と適当に誤魔化した。そのまま部屋の窓から飛び立って、上空へ。ちょうど夜で、住宅街に人がいなかったのはありがたかった。

 

(これか、輸送機!)

 

 本当に小型の機械だったが、どうやらガス検知器を組み込んであったらしい。俺のガス形態に対応してきたか。

 

「ヘイタクシー、瀬古杜岳まで一直線で!」

『アイヨ!』

 

 超加速による空気抵抗は意味がない。俺自身が空気だから。

 

(燈矢は必ず救ける。AFOの手を出させはしない)

 

 更に、加速していく。

 

 

・

・

・

 

 

(なんだこれ、とんでもなく熱い……!!)

 

 瀬古杜岳直上、雲の中でさえ熱が来ていた。気体になったとしても、熱そのものを逃がせるわけじゃない。燈矢やエンデヴァーの炎も、轟焦凍の氷も効く。当たりはしないが。

 

「1人の人間が出せていい火力かよ……」

 

 輸送機には少し離れた場所で待機してもらおう。熱で故障しそうだし。

 

 そうして、飛び降りる。

 

「──隠密(ステルス)気化(チェンジ)」

 

 『大気(アトモスフィア)』

 

 この技は、俺の完全オリジナル。個性が成長したのか知らないが、自分の体を様々な気体に変えられるようになった。

 

 大気、それは父の個性。父と同じように、体が透明になっていく。いや、空気(外)と同化し、曖昧になっていく。俺という存在はあるのに、その存在の固定が緩くなった感覚。緩い境界を以て、俺は瀬古杜岳に飛び込んだ。

 

「あっっづ……!」

 

瀬古杜岳は、とんでもなく熱かった。これ全部燈矢の炎か!!

 

「待ってろ、今助けるからな!」

 

 念のため、俺の体の二酸化炭素を多めにしておく。

 

「……見つ、けた」

 

 そう漏れ出た声は、自分でも驚くほどに淡白で。

 原作キャラに出会えたというのに感慨深いということもなく、ただただ現実だけがそこにあった。

 

(……達成感も、喜びも、何もない)

 

 そこにあったのは、体の一部──おそらく燈矢の皮膚──だったもの。既に炭化してしまっている。掴むとぱらぱらと砕けて、火の粉当たって火種になっていく。

 

(人が死にそうになっているというのに──)

 

 体が、動かない。

 

 まだ、これはフィクションだという感覚が大きすぎる。俺にとっての現実世界と、燈矢にとっての現実世界は違う。数学的にねじれていて、交わることも向かい合うこともない世界。

 

「……っ!!」

 

 動け。

 

「動、けぇぇえええええ!!!」

 

 全力を懸けて、それでどうにか動いた俺の手は、どうしても俺をヒーローにしたいらしい。

 

 そのまま、燈矢の左腕をぎゅっと掴む。

 

(気体の身体なのに、灼けるみたいだ……!!)

 

「な゛ん゛、だ、ごれ゛ぇええ゛え゛え゛」

 

 燈矢の腕を掴んだら、反応した……?

 

「──まさか」

 

 まだ、意識があるのか……!?

 

(隠密(ステルス)気化(チェンジ)、解除!!)

 

 ガスの身体で、精一杯広げて、エンデヴァー(轟炎司)の体の大きさを再現して。

 

 目いっぱいぎゅっと、抱きしめた。

 

「聴こえるか、燈矢!!!!」

「……ぁ……ゔん゛っ!!」

 

 っ、通じた!!

 

「ごめんな、ごめん!!瀬古杜岳、遅れて……!!お前のこと、ちゃんと見れてなかった!!」

 

 この言葉が、燈矢にはどう聞こえているだろうか。言葉だけ聞けば、エンデヴァーのようにも感じる。

 

「息、吸えるか!?」

「……っ、は゛、ぁ……!!!」

 

 よし、吸えた!

 まだ少し酸素が残ってる……!

 

「ガスローブ*1」

 

 シーザー、お前の技も使わせてもらうぞ。

 

 (上に……飛ぶ……!!)

 

 

 FLOAT!!

 

 

 冷却、しなきゃ……!!上に……上に!!

 

(……燈矢の意識は、もう無いだろう)

 

 周りに見えるひつじ雲は、今いる上空の気温がマイナス30℃前後だということを意味している。

 

「さっっっみィ……!!」

 

 シュアアアアアアアア、と冷やされていく燈矢の身体はすっかり焼け焦げていて、弱々しくも鼓動が聴こえることすら信じられなかった。

 

「……まだ、生きてる」

 

 地上を見下ろすと、赫く燃える瀬古杜岳が見えた。

 

「これ全部、燈矢1人の火力か」

 

 とりあえず、高度を下げよう。燈矢の身体が冷えたら、今度は低体温症で死んでしまう。

 

「見つけた、救急車」

「うわ!なんだ君!?」

「おい子供抱えてるぞ!瀬古杜岳から助け出したのか!?」

「──っ、お願い、します!!」

 

 救急車に乗っていた人の覚悟を決めた表情を見た俺は、つい安堵してしまって。

 

(あ……やば、眠りそう)

 

 かくんと、意識を落とした。

*1:
シーザー・クラウンが使用した、ガスで拘束する技。ガスなのでどれだけ暴れても解くことが出来ないため、捕縛に適している。ちなみにシーザーは毒ガスで使った。




これにて、轟燈矢の救出完了です。救命は外科医に任せましょう。
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