ヒヒイロカネの落とし子~転生者は異能学園で何を成す?~ 作:ヒカル・ムラクモ
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俺は潮風を浴びながら、星陵までの20分ほどの船旅を楽しんでいた。入れる範囲で一番高いところに登ったり、逆に低いところに向かって魚が見えないか探してみたりしていた。しかしノドが乾いてきたので休憩室へ向かおうとすると、2人の取り巻きらしき女子を連れ、金髪のツインテールに青い雷のようなモノを纏わせた女子が声をかけてきた。
「貴方、朱月の人よね?」
「そうだけど、あんた誰?」
「この方のこと知らないの!?」
「いくら朱月の人であっても失礼では?」
俺の返答に取り巻きらしい子たちが色々言ってくるが
「すまんガチで見覚えがない」
そう答えるとツインテールの子と取り巻きの子もずっこけるようなリアクションをした。
「見覚えがないとは失礼ね!。ワタクシは
「あぁ…KAGAMIインテリジェンスのご令嬢か。それじゃあ俺も名乗らせてもらおう。俺は朱月仁、朱月コンツェルン現当主の甥っ子だ」
「それで何が目的だ?ただ挨拶しにきた訳じゃないだろう?」
「もちろんですわ」
俺がそう言うと加々見美乃梨は不敵な笑みを浮かべ、金髪ツインテールをふわりと揺らした。後ろの二人も「「その通り」」と言うように頷いている。
「ワタクシが貴方に接触した理由はひとつ。学院に入る前に、今年一番のライバルの面構えを拝みに来たのよ。朱月の『落とし子』がどれほどのものか、せいぜいワタクシを退屈させないでちょうだいね!」
フフンと鼻を鳴らした美乃梨は、扇子をこちらに向け、宣戦布告するとテンプレじみた「オーホッホッ!」という高笑いと雷を強く光らせながら取り巻きの二人を連れて去って行った。
「いきなり名指しで絡まれるとはな……やっぱり目立つ立場なんだな、俺」
嵐のように去っていった彼女たちの背中を見送りながら、俺は苦笑交じりに呟いた。3人の姿が見えなくなると俺は休憩室へと向かった。
休憩室では星陵の制服を着た新入生たちでごった返していた。すでに何人かの生徒が交流していてドリンクバーからジュースをとって談笑してた。
俺が休憩室に入ると先ほどの美乃梨のような値踏みをするような視線が俺に注がれる、が俺はそれを無視してオレンジジュースを飲むためにコップを取りに行こうとすると、人とぶつかってしまった。
「ッ…、ぶつかってしまってごめん!ジュースとかこぼしてないか!?」
「構わん、僕も何を飲むか考えていたところだ」
「そうか、良かった……名前を聞いてもいいか?」
安堵して胸を撫で下ろし、相手の顔を見上げる。そこにいたのは、整った顔立ちにさらさらした紫色の髪をしたどこか浮世離れした静けさを纏った同世代の少年だった。胸元には俺と同じ星陵の1年生を示す徽章が留められている。
「構わないよ、僕は
「あぁ、俺は朱月仁っていうモンだ」
「“朱月”ってあの朱月かい?」
「そ。三日月「刀真でいいよ」んじゃそっちも仁って呼んでくれ。…刀真が想像するあの朱月だよ」
そう話すと刀真はとても驚いた顔をする。心なしか周囲の人も少し緊張した面持ちとなり、何人かは俺と話す刀真を羨ましそうに見ていた。
刀真はグラスにジンジャーエールを注ぎならもこちらに視線を向けていた。その視線は先ほどの美乃梨たちのようなライバル視するようなモノではなく純粋な興味といった風合いの眼差しだ。俺もグラスにジュースを注ぎ入れると刀真が再び話しかけてきた。
「そういえば仁くん、さっきの加々見さんとのやり取りも見ていたけれど、ずいぶんと賑やかなスタートになりそうだね」
「見てたのかよ、まぁ退屈はしなくて済みそうだよ。つーかアイツのこと知ってるのか?」
「中学が同じなだけだよ。彼女は中学でも一番の有名人で優等生なんだ」
「へぇ~」
しばらく俺と刀真が談笑していると船内に低く重厚なアナウンスが響き渡った。
『本船はまもなく、国立星陵異能養成学院・専用港へ着岸いたします。生徒の皆様は下船の準備をお済ませください』
「おっと、到着か。…行こう仁くん、ここからが本番だね」
「ああ、そうだな!」
俺と刀真はグラスを空にすると、混み合う休憩室から甲板にでる。船が岸壁へと滑り込み、重厚なロープで繋がれる。タラップが架けられると、待ちきれないといった様子の新入生たちが一斉に島へと足を踏み出していった。
俺と刀真も港へ降りると、目の前にそびえ立つ巨大な校門と校門に記された「国立星陵異能養成学院」の文字。広大な敷地の奥には、これから5年間を過ごすことになる洗練された校舎群と寮らしき建物が広がっていた。
「ここから俺の、新しい生活が始まるんだな」
周囲の熱気と微かな緊張感を肌で感じながら、俺は一歩、星陵の地へと強く踏み出した。
◇◆◇◆
「新入生はこちらでーす!入学式は第一体育館でおこなわれまーす!」
俺たちが門をくぐると日焼けしたガタイの良い教師らしき男性が新入生の誘導をおこなっていた。彼以外にも色々な教師らしき人たちが誘導している。
「凄いな、教師1人1人が優れた能力者だ。」
「仁くんわかるのかい?」
「あぁ。けど経験則と勘みたいなもんだよ。朱月は優れた能力者が多くてね教師の体重運びとかが兄貴や護衛の人たちに似てるんだ」
「へーそうなんですの?」
「そうそう兄貴もここの学生で─って加々見美乃梨、いつの間に!?」
「ふふん、ワタクシの耳を誤魔化せると思ったら大間違いですわ!」
いつの間にか俺たちの背後に忍び寄っていた美乃梨は、金髪で蒼雷を纏ったツインテールをフリフリと揺らしながらドヤ顔で胸を張った。後ろの二人も当然のように控えている。
「気配を完全に消して近づいてくるなんて、大したご令嬢だな」
俺が呆れ半分に苦笑する。そのまま俺、刀真、美乃梨、取り巻き2人の5人で歩く
「そういえば、あー」
「名前呼びで構わないですわよ、
「そっか。美乃梨の後ろの2人の名前って何?」
「ではお二人とも名乗りなさい」
最初にポニーテールの少女が名乗った。
「私は
次にボブカットの少女が名乗る
「私は
「「どうぞよろしく」」
2人の息の合った挨拶に刀真も「お~」と感嘆の声をだしていた。
「あら?貴方の隣、誰かと思えば三日月刀真なの?」
「ん?僕のことを知っているのかい?」
「えぇ。貴方は知らないでしょうけど、ワタクシ達が通っていた私立星雲中学で貴方は見た目性格実力の三拍子が揃っていて女子からの人気が凄まじかったのですわ。ま!ワタクシの求めるレベルには届きませんけどね!」
そんなこんなで話していると前方の視界が急に開けた。島の中央に鎮座する、白亜の巨大な講堂が目の前に姿を現す。俺たちは教師の誘導に従い、決められた列へと移動するため、一旦4人とは別れる。
「それじゃ、また後でね仁くん」
「後ほどですわ、仁様」
講堂の巨大な扉に女性の教師が魔力を込めると、扉に幾何学模様が現れ、音を立てて開く。重厚な扉を潜り抜けると、天井が恐ろしく高い広大なホールが広がっていた。全国から集められた優秀な新入生たちが、緊張した面持ちで続々と指定の席に着いていく。
俺は指定された自席へと腰を下し、周りを見回す。ステージの上では、教員たちが厳かな表情で並んでいる。周囲を包み込む独特の静けさと高揚感に、胸の奥が熱くなるのを感じた。
一筋縄ではいかない仲間やライバルたち。そして『ヒヒイロカネの落とし子』としての運命。
俺の「国立星陵異能養成学院」での5年間の学生生活のはじまり─入学式の開始を知らせる鐘の音が鳴る。
早くバトル展開に持って行きたい