ヒヒイロカネの落とし子~転生者は異能学園で何を成す?~   作:ヒカル・ムラクモ

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前回の後書きでも書いたけど早く戦闘シーンまで持って行きたい


第3話

壇上に上がった校長の姿は、教育者というより軍人を思わせる佇まいだった。

オールバックにした白髪に、左目から左頬にかけて刻まれた傷跡。壮年とは思えないほどのたくましいガタイ。

それもそのはず【国立英星異能養成学院】の校長梶田重太郎(かじたしげたろう)は、元第二師団所属の異能力者であり、『第三次世界大戦を防いだ男』と称される伝説的英雄だからだ。

俺の大叔父の友人で3回くらい会ったことがある。

 

 「ガハハッ!もっと肉を喰え!!」

 

と兄貴と一緒に焼き肉に連れて行ってもらったことがある。少し前のことを思い出に浸っていると梶田さんがマイクの前に立ち、ゆっくりと会場全体を見渡した。

 

その鋭い眼光が通った瞬間、ざわついていた講堂内が一瞬にして水を打ったように静まり返る。

 

「新入生諸君、入学おめでとう」

 

マイクを通した低く重厚な声が、講堂の天井を震わせる。

 

「諸君も知っての通り、この国立英星異能養成学院は、対アヤカシ・モンスター、そして異能犯罪に対抗しうる最精鋭を育成するための場所だ。ここでの5年間は、生半可な気持ちで生き残れるほど甘くはない。およそ1年に40人ほどの退学者が出る」

 

ここで校長は一度言葉を切り、壇上からまず新入生次に教師達に視線を向けた後再び言葉を紡ぐ。

 

「だが、恐れるな!己の【魔術】、【異能】を磨き、仲間と切磋琢磨し、誇りを持ってこの門を潜った君たちなら、必ずやこの国の新たな柱となるだろう!我々教師は君たちが一人前の異能力者として旅立つその日まで全力で鍛え上げることを誓おう!」

 

そう言って校長は腕を天高く掲げた。そして俺や美乃梨、刀真ら新入生、教師や来賓も割れんばかりの拍手を鳴らした。

 

「次にご来賓の挨拶になります」

 

こうして入学式は滞りなく進んでいった。

 

◇◆◇◆

 

「これで入学式を終了いたします。1年生は教師の誘導に従ってください」

 

入学式が終了し、俺は教師の指示に従って席を立つ。

体育館を後にした俺たち1年生は、整然と並びながら校舎の奥へと誘導されていった。廊下の窓から差し込む陽光が、最新鋭の設備を誇る星陵の校舎を眩しく照らし出している。

 

案内されたのは、1年生のフロアにある大きめの多目的ホールだった。前方のスクリーンには、すでにクラス分けのリストが大きく映し出されている。

 

(さて、俺のクラスは……)

 

大画面を見つめていると、次々に名前と所属するクラスが表示されていく。大画面にスクロールされる名前を目で追うと、すぐに自分の名前を見つけることができた。

 

『1年1組 出席番号1番 朱月仁』

「…この番号になったの朱月家(ウチ)が関わってんのか?」

 

そう呟いた瞬間

 

「流石に考えすぎではなくて?」

「うわおっ!美乃梨か…」

「僕もいるよ~」

 

美乃梨と刀真に突然声をかけられた。

 

「ん、お前らか。クラス分けどうだった?」

「仁くんとおんなじ1組だよ」

「ワタクシもですわ。同じクラスなら、どちらが上か勝負しやすくて好都合ですわね」

「そういえば取り巻きの2人はどうしたんだい?」

 

刀真が美乃梨に聞くと美乃梨は少し困ったような顔をした。

 

「あ~あの2人は2組の所属になりましたわ…」

 

美乃梨がチラリと視線を送ると、離れた列にいる上岡と下屋のふたりが、分かりやすく「ショボ〜ン」と肩を落としていた。

 

「おーいそこの3人組ー、もう移動しなさーい」

 

と、教師に注意された。よく見ると校門付近で誘導をおこなっていた日焼けした男性教師だった。胸元に下げられたネームプレートには、『本島慎(もとしましん)』と書かれている。熱血そうだがどこか親しみやすい雰囲気を漂わせた本島先生は、呆れたように手招きしながら俺たちを手招きした。

 

「ほらほら、立ち話なら教室に着いてからにしなさい! 1組の教室は3階だぞー」

「「「はーい」」」

 

俺たちは声を揃えて答えた。そして美乃梨は名残り惜しそうに2組の列へと向かう上岡と下屋の二人へと向き直った。

 

「鈴、凪。クラスは離れてしまいましたけれど、休み時間や放課後はいつでも来なさいな!」

「「はいっ美乃梨様っ!」」

 

3人の様子を見て

 

「あの2人は打算とかじゃなく心の底から美乃梨を慕ってるんだな」

 

元気を取り戻したふたりの様子を見て、俺はボソッと呟いた。

 

「そうだね中学でも打算で加々見さんに近づく人間は多かったけど、最終的には純粋に彼女を慕う者達だけが残ったよ」

 

と刀真が答えた。美乃梨が戻ると

 

「では行きますわよ!ワタクシのライバルとライバル候補!」

 

と言いながら小走りで教室へ向かっていった。そして俺と刀真は苦笑いしながら追いかける。

 

◇◆◇◆

 

俺たちは教室に到着すると、決められた席に座った。クラス内は教卓から見て縦に五列、横八列の計40人のクラス。教室には俺たち以外には3人の生徒がいた。

 

1人は女子生徒でクリーム色の髪をロールしたツインテールにし、左右にイチゴを模した髪飾りを付けている。

もう1人は男子生徒で吊り目と膝裏まで伸びた長い黒髪が特徴的だった。

最後の1人も男子生徒で特徴的なのは銀髪とハチマキのように頭に巻いたオレンジ色のバンダナ、推測だが2m近いすらりとした長身。

 

3人は談笑していたが、俺たちが入ってきたのを見ると一瞬こちらに視線を向けたが何もなかったかのように再び話し始めた。

 

俺たちもクラス全員が揃うにはまだ時間がかかると踏み、俺の席の周りに集まって雑談を始めた。

 

「それにしても3人とも同じクラスになるとは思わなかったよ」

「そうだな、まだクラスメート全員を見ていないから完全ではないものの日本屈指の名家出身の俺、日本でも10本の指に入る大企業KAGAMIインテリジェンスの令嬢がいるからな」

「まあ、ワタクシたちが入るクラスですもの。当然最高の環境と人材が集められているはずですわ!」

「ハハ…そう考えるととんでもない人たちとお近づきになったなぁ」

 

刀真は遠い目をし、美乃梨は胸を張り、自信満々に胸元で腕を組んだ。青い雷の残光が、彼女の興奮に応じるようにふわりと揺れる。

 

「……にしても、あの3人組もなかなか癖が強そうだね」

 

刀真が窓際で談笑する3人組に視線を向ける。スカスカな教室の中で、その3人は手慣れた様子で会話を続けていた。

俺たちが入ってきた瞬間に走ったあの鋭い視線——単なる好奇心ではなく、互いの実力を一瞬で見極めようとする観察眼は、彼らもまた一筋縄ではいかない猛者であることを物語っていた。

 

「そういえば朱月仁、貴方先ほどワタクシたちを注意した教師の名前を見て少し驚いたような表情をしていましたわね」

「確かに」

「あ~あの先生は兄貴からこの先生の話は聞いとけって言われてたんだ」

 

◇◆◇◆

 

入学式の1週間前のことだ。俺は兄貴に英星のことについて聞いていた。

 

『なぁ兄貴、英星ではこの先生の授業はしっかり聞け!っていうのある?全部大事っていうのは前提で』

『なら魔力操作実習の本島先生の話はしっかり聞いとけ。あの先生の授業は授業はとにかく実践的だ。特に魔力の「纏わせ方」と「無駄のない循環」についての教え方はズバ抜けてる。教科書通りの型にはまった教え方じゃなくて、生徒一人ひとりの癖や異能の特性、魔術の得意不得意を見極めた上で最適な方法を教えてくれる」

『あぁ後これは余談になるんだが、見た目はガテン系だけど、戦闘においては魔術による遠距離攻撃がメインだ。本人曰く「戦闘用の【異能】ではないから」らしい』

 

◇◆◇◆

 

「へぇ…興味深いね。見た目は完全にゴツゴツした前衛の武闘派って感じだったのに、まさか遠距離の魔術師タイプとはね。人は見かけによらないとはこのことか。」

 

俺の話を聞いた刀真は整った顔を興味深そうにして顎に手をあて何か考えていた。その瞳には探究心のような鋭い光が宿っている。

 

一方、美乃梨は金髪のツインテールをふんわりと揺らし、腕を組んでフンと鼻を鳴らした。

 

「フフフ…ワタクシの蒼雷光の女神(デア・フルグア)に隙などありませんが…興味は沸いてきましたわ。自分の異能やクセに合致した魔力操作を学べるなら受けて損はありませんわね。耳寄りな情報感謝しますわ」

「僕も本島先生同様異能より魔術がメインだから大きな学びになりそうだ。仁くん、ためになる情報ありがとう。それにしても仁くんにはお兄さんがいて英星(ここ)の学生だったとは思わなかったよ」

 

ふたりから感謝されつつ、そのまま他愛もない会話を続けた。その結果、美乃梨の好物がザルそばで、刀真の好物が鉄火巻きだという意外な事実が判明した。

数分後、次第に生徒が集まり出し、全員が自分の指定席に着いたタイミングで、本島先生が教卓の前に立った。

 

「あー1年1組の皆さん入学おめでとう。今日から約1年間君たちの担任を務めることになる本島慎(もとしましん)だ。魔力操作実習の担当教員でもある。よろしくね」

 

爽やかに挨拶すると、本島先生は教卓の上にいくつかの物品を並べた。

 

「とりあえず今から出席番号と名前を呼ぶから呼ばれた人からこの封筒、タブレット、充電器の三点を渡すよ。呼ばれたらき

ちんと返事してくれ。封筒は指示があるまで開けないでね」

 

そう言って見せたのは、A4サイズの茶封筒と、タブレットの写真がプリントされた箱だった。

 

「それじゃ出席番号1番、朱月仁さん」

「はい!」

 

しっかりと声をあげ、教卓に向かう。封筒を受け取っておじぎをする。

 

「出席番号7番、加々見美乃梨さん」

「はい」

 

俺の左斜め後ろに座る美乃梨が上品に立ち上がる。続いて——

 

「出席番号8番、木野(きの)苺(いちご)さん」

「はい」

 

美乃梨の次に俺たちより先に入っていたトリオの紅一点が呼ばれた。さらに

 

「出席番号10番、鋼月竜弥(こうづきたつや)さん」

「ウス」

 

気怠そうに返事をしたのは、トリオの銀髪バンダナ男だ。さらにしばらくして——

 

「出席番号21番、長井黎(ながいれい)さん」

「はい」

 

トリオの長髪の男が立ち上がる。教卓に向かうまでに何度も髪が他の人の机に当たっていた。

 

「出席番号29番、三日月刀真さん」

「はい」

 

その後刀真も呼ばれて今クラス内で知っているやつらが全員呼ばれた。

 

◇◆◇◆

 

「さて、これで全員に行き渡ったね。それじゃ封筒を開けて」

 

本島先生の指示に従い全員が茶封筒を開封し、中身を取り出す。封筒の中身はA4サイズのプリントが2枚と1冊の冊子、そして学生証だった。

 

「まず学生証を見てごらん。この学校での学生証は、単なる身分証明書じゃない。今日から君たちが生活する寮の部屋の鍵であり、食堂や購買施設での決済カードでもあるんだ」

 

先生の説明を聞いてクラス中が学生証に注目する。俺も学生証に【神鉄傾聴】を使って注目してみると微少な魔術回路と希少金属の“声”が聞こえた。

 

「学院内で物を購入するときは日本円を用いるか、学院内の購買施設のみで使用可能なポイントを用いてもらう。レートはおよそ1P(ポイント)につき10円となる。新入生の学生証には初期設定として【5000P】が入っている。さらに、入試の筆記・実技の成績に応じて、それぞれ最大100Pずつ加算されているぞ。筆記・実技とも満点なら最大5200Pスタートというわけだ。現在のポイントは、配布したタブレットの学籍アプリで確認できる」

 

続いて指示に従いタブレットを起動する。プリントに記載されたパスワードでフリーWi-Fiに接続し、アプリを開くと、自分の顔写真と名前、そして所持ポイントが表示された。

俺の現在の所持ポイントは——【5140P】。

詳細をタップすると、内訳がずらりと並んでいた。

 

入学 +5000

筆記 +65

実技 +75

 

(…使ったらどこで使ったのかも表示されるのか?)

「ポイントはその月最後の土曜日に1000Pが配布される、無駄遣いは控えるようにね。ポイントについて何か質問はあるかい?」

「質問です」

「三日月くん。何かな?」

「アプリにポイントがどういった理由で増えたか表示されていますが、使用してポイントが減ればどこで使用したか表示されますか?」

「そうだね。君の言ったとおりポイントが減るとアプリにいつ・どの店で・何のために使ったかが表示されるようになっている」

(ナイス質問、刀真!)

 

心の中で拍手を送っていると、今度は別の場所から手が挙がった。

 

「先生ウチも質問」

「どうぞ木野さん」

 

質問してきたのはトリオの紅一点である木野苺だ。

関西弁や京都弁を思わせるようなイントネーションで本島先生に質問する。

 

「配布されるポイントを増やす手段はあるん?」

「当然ある。ポイントっていうのはね言うなれば君らへの学園での成果に対する『報酬』だからね。自力で引き上げる手段はいくらでもある」

 

そう言うと先生は指を一本立て、教室全体を見渡すようにして話し始めた。

 

「まずは基本中の基本、小テストや定期テストで高得点を叩き出すことだね。座学の点数はそのままダイレクトにポイントへ反映される。定期テストだと平均手を超えることで配布ポイントが増える。図にあらわすと(自分のテストの点数-学年全体の平均点)×2=配布ポイントに付与されるポイントとなるね。」

 

本島先生はペンを手に取りホワイトボードに式を書き出す。

 

「小テストの場合は自分のテストの点数-クラス全体の平均点=配布ポイントに付与されるポイントになる」

 

先生はしゃべりながらもホワイトボードに式をどんどん書いていく。

 

「だがもし中間テストや期末テストといった試験で赤点を取るようなことがあれば逆に配布されるポイントは減らされる。星陵学院の赤点ラインは教科の平均点-20点未満で赤点だ。そして赤点の場合は(学年全体の平均点-自分のテストの点数)÷2=配布ポイントから引かれるポイント(小数点切り捨て)だ。小テストでは赤点はないから安心してくれ。」

「だが予習復習は欠かさないようにね」

 

本島先生は2本目の指を立てる。

 

「2つ目は、実技試験で高い評価を得ること。どれだけ座学ができても、実戦で使えなきゃ英星の生徒とは言えないからな。実戦での機転、戦果、魔力操作の精度などが評価対象だ。……まあ、実技は試験官の評価基準によるから、筆記ほど明確な計算式はないがね」

 

2つ目に関しては少し困ったような顔をしながら解説し、3本目の指を立てた。

 

「そして最後。これは日頃の姿勢だね。授業中に鋭い発言や良い解答をした時、授業をしている教師の自己判断で5Pをその場であげることができる。俺も含めて教師陣は全員、君たちの積極性をしっかり見てる。授業を面白くしてくれるような好プレーを見せてくれた生徒には、その場でボーナスポイントを出すよ」

「他に何か質問がある人はいないかな?」

 

本島先生は教室全体に問いかけるが、特に反応がなかったため質問を切り上げた。

 

「では良い質問をしてくれた三日月くんと木野さんにPをあげよう!」

先生のその言葉を聞き、2人は顔を輝かせた。

 

「それじゃあ次は寮を見に行こうか!」

 

本島先生の威勢の良い一言に、教室全体から「おおっ」と期待に満ちた声が上がった。




仁の好物は白身魚の天ぷら
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