IS インフィニット・ストラトス 努力の天才   作:xix

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第18話 後始末と下準備

 

 

第三アリーナ管制室

 

 

そこで飛色はコンソールを動かしながら、記録動画を観ていた。

 

放課後になって早めにアリーナへ来たのだが、ピット入口でISを纏った鈴、セシリア、ラウラの三人が対面しているところを飛色は見つけた。

そして対戦をするのではと予測して、管制室の録画機能を起動させておいたのだ。

 

ラッキーなことに管制室のロックが解除されていたため、勝手に使用したが……。

 

 

 

おかげでラウラの戦闘データの収集ができ、セシリア、鈴の最新データも得ることが出来た。

 

学年別トーナメントが近いため、この情報の意味は大きい。

 

各個人で行われる試合では専用機持ちが圧倒的に有利。

つまり優勝を目指す場合、確実に誰か一人と当たるということになる。

 

だからこそ、それに当たる三人の戦闘データは優勝の鍵の一つとも言える。

 

だからといって、二人の命などどうでもいいと思っていた訳ではない。

ラウラが流石に殺しまではしないと考えていたからこそ、手を出さずに観戦していたのだ。

 

そして流石に鈴とセシリアの状態を確認して不味いかと思い、装着しておいた訓練機で構えたが、狙いを定めようとした瞬間に一夏が突っ込んでいったのだ。

 

その際のラウラの行動データも取れたため、飛色とってはうれしい誤算ではあったが、すぐに決着がついたため、自分も行動を起こしておいた。

 

そして千冬がラウラを止めて、ことが終えたというのだった。

 

 

 

 

 

「(……このタイミングでか)」

 

 

飛色はラウラの動作の一つ一つを確認し、それらをノートに綴っていく。

鈴たちの方は一夏の訓練などの際にこっそり見たりして確認したため、やや多く存在している。

 

しかしラウラの方は起動させる所すら見たことがないめ、現在は彼女のことを率先してまとめていた。

 

 

「………?」

 

 

18度目の再生中、違和感を感じた飛色は動画を停止させ、凝視する。

そこに映っているのはライフルを撃ちながらビットを起動させるセシリアと、その射撃の雨を回避するラウラ。

 

 

「(……なぜだ?)」

 

 

AICについては飛色も完全ではないが理解している。

ISを起動させる上で重要な役割――浮遊、加速、停止をするパッシブ・イナーシャル・キャンセラー。

通称PICを発展させたもので、空間に特殊なエネルギーを放出して干渉、それにより物体の動きを停止させる。

 

ラウラの場合は右腕を突き出すことでイメージをしやすくし、行っているのだと、何度か繰り返し見ていて考察できた。

 

途中でセシリアのビットが一斉に接近したときは、構えずに全体拡散させていたのも確認できた。

 

 

 

だが、今の画面に映るものからは他と違う感覚がし、飛色は別画面に同じ動画を再生し始める。

 

そして気になっていた別の箇所を先ほどのように停止させた。

 

 

「…………おかしい」

 

 

ライフルを撃ちながらビットを動かす場面は他にも見て取れるが、起動させたと思われる時とそうでない時があった。明らかに何かあるとわかり、飛色は手を顎に持っていき思考を巡らせる。

 

発動したと思われるタイミング、手の動き、視線の動き、その時の気温、湿度等の環境状態。

そして周りで徘徊する……

 

 

「!!」

 

 

何かに至った飛色は、その考えをノートに記録していく。それも素早く。

 

その後、別のデータを見ていくことでそれが段々と確証に近づいていく。

 

そしてある一箇所(・・・・・)を見た瞬間、それは確信へとなった。

 

 

 

「………なるほどな。 ………織斑には感謝せねば」

 

 

少しだけ、口元が不気味に歪んだ飛色であった。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

ところ変わって保健室

 

時間は第三アリーナの件から一時間が経過し、一夏とシャルルが怪我をした二人、セシリアと鈴の見舞いに来ていた。怪我人二人は今さっきシャルルに言われたことに苛立っているのか、貰った飲み物をがぶ飲みしている。

 

そんな時―――

 

 

 

ドドドドドドッ………!

 

 

 

「な、なんだ? 何の音だ?」

 

「じ、地震?」

 

突然聞こえてきた地鳴りと揺れ。廊下から聞こえてくるそれはだんだんと近づき………

 

 

 

ドカーーン!

 

「織斑君!」「デュノア君!」「遠木君!」

 

 

豪快な音と共に保健室の扉が吹き飛ぶ。一夏は扉って吹き飛ぶんだな……などと思うが、続いて女子の集団が保健室に崩壊したダムの様に流れ込んできた。いや、雪崩れこむといっても過言ではない。

 

女子の一団は一夏とシャルロットを飲み込み、見つけるなり手を伸ばしてきた。

 

伸びてくる大量の手はまさしくホラーそのもの………

 

 

「な、なんなんだ!?」

 

「ど、どうしたの? みんな……ちょ、ちょっと落ち着いて」

 

「「「これ!」」」

 

 

女子の大群が出してきたのは出してきたのは『緊急告知!』と大きく載った申込書だった。

 

 

「え? な、なにこれ……?」

 

「なになに………え~っと、『今月開催する学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦闘を行うため、二人一組での参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは』―――」

 

「ああ、そこまででいいから!とにかくっ!」

 

 

読む途中で遮られ、再び迫ってくる手……。二人はその光景に思わず退いてしまう。

 

 

「私と組もう、織斑君!」

 

「私と組んで、デュノア君!」

 

 

そう、そこにいたのは全員一年生。

学園で三人しかいない男子と組もうと勇み迫ってきているのだろう。

 

 

「え、えっと……(う、うわ~! なんでこんな時にいないの飛色~)」

 

 

シャルルも状況を理解したが、内心で焦りだす。

ペアになればコミュニケーションを取るなどで一緒にいることも長くなり、正体がバレてしまうかもしれない。

だから今この場では自分を女子だとわかっているのはこの学園で飛色だけのため組みたかったが、不幸なことに彼は今そこにいない。

 

そんな心の中で涙目となっているシャルルに気づいたのか、一夏は「みんな聞いてくれ!!」と大声で叫ぶ。狭い空間でその声はよく響き、喧騒がピタリと止んだ。

 

 

「俺はシャルルと組むから諦めてくれ!」

 

「ええっ!?」

 

 

きっぱりと一夏は答えると、シャルルは驚きの声を上げる。一夏からすれば、シャルルが困ったような表情をしていたのと、女子と組むより同じ男同士がいいと考えてのことなのだろう。

 

 

「いいだろ、シャルル?」

 

「えっと……」

 

 

それに戸惑うシャルル。

 

しかし考え直してみれば、それは好都合かもしれない。

 

いつも一夏と訓練しているが、これまでバレなかったのだし、男同士ということでこの場を乗り切れるかもしれない。仲も悪くなく、寧ろ友人として好意も持てる。

 

そう思うと、飛色の次に挙げられる候補と言えば一夏ということになる。

 

 

「………うん。僕は一夏と組むことにするよ」

 

 

若干遅れてシャルルが一夏に承諾する。

 

 

「まあ、そういうことなら……」

 

「他の女子と組まれるよりかはいいし……」

 

「男同士って絵になるし……ごほんごほん」

 

「なら私は遠木くんを探すわ!」

 

 

すぐに納得したのか、一団は気を落としていったが、誰かがそういうと、女子たちはハッとなり、駆け足で去っていった。

 

おそらく飛色を探しに行ったのだろうが………

 

 

どうにかピンチを切り抜けてホッと一息つくシャルルだった。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「………ん?」

 

 

すでに空は漆黒に染まり、星が輝いている。

 

データのまとめが終わり、帰路に着く飛色は寮の入口に視線を向ける。

 

そこには先ほど一夏たちをペアに選ぼうとした女子の一団がうろうろしていた。

 

 

「(………様子がおかしい)」

 

 

様子見で近くの茂みに隠れ、耳を澄ませる。

 

あまり遠くもない為、ギリギリ話声は聞こえてきた。

 

 

「遠木くんはまだかしらね………」

 

「ねぇ、もう諦める?」

 

「バカ! 彼が最後の望みのようなものでしょ!」

 

「(………???)」

 

 

どうやら自分を待ち伏せしていると気付く飛色。

 

しかしその要因がわからない。今の会話にあった『望み』という単語から察するに

『恨まれるようなことをした』などというわけではなさそうだ。

 

かといって、このままなのもどうかと思い、もう少し話を聞く。

 

 

「でもペアになれるのは一人だけだよね?」

 

「だから皆がここで待ち伏せしてるんでしょうが!」

 

「ボーデヴィッヒさんは強かったけど、なんか怖くもあったしさ……」

 

「凰さんもオルコットさんも出られなくなっちゃったし」

 

「織斑くん達もペアになっちゃったからね~」

 

「(…………まさか)」

 

 

次々と出てくる会話を聞き取り、整理する。

 

まず彼女たちは自分を待ち伏せしている。

そして次に出たのは専用機持ちの面々。

最後に『出られなくなった』ということと『ペア』というワード……

 

思い当たったのが、帰る途中で見かけた緊急広告。

 

『学年別トーナメントでは二人一組での参加を必須とする』

 

そんなものを、ちらりと見たのを思い出す。

 

 

 

そして先ほどの会話………

 

要するに彼女たちは、優勝するために飛色と組んでみようということなのだろう。

 

できれば飛色も優勝は狙いたいのだが、相方がシャルルならともかく、苦手意識のある女子、しかも初対面の子と組んで自分がうまく動ける可能性など低くなることだろう。

 

シャルルと組みたかったが、どうやら一夏と組んだということなのだろう。

 

となれば、なるべく強く、男勝りのような性格を感じる奴と組みたいと思考するが、そんなのが

都合よく……………

 

 

 

「(……………いた)」

 

 

一人、これに最も当て嵌まる人物がいた。

 

ただし彼女のことだから自分から言わなければならないだろうが……

 

 

そう考え出すと、飛色は待ち伏せしている団体に見つからないよう、こっそりと寮の裏口へ回った。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「ふぅ……(まずまずといったところか……)」

 

 

寮に入ってから出来た用を済ませた飛色は自室に着く。

 

用というのは勿論トーナメントのペアに関してのこと。

 

思わぬ展開があったが、その結果は上々。

しかし今後の課題となる物はあるため、油断せずに行こうと考える飛色だった。

 

 

「きゃんっ!」

 

「?」

 

 

扉を開けるといきなり悲鳴がした。

誰のかと言えばルームメイトであるシャルル以外に有りえないのだが。

 

何事か不思議に思う飛色であったが、そのまま部屋に入っていく。

 

 

「今戻っ………………た……?」

 

「いたた、あー……足引っ掛かっちゃっ………え?」

 

 

視線の先にいたシャルルは………ズボンに足を引っ掛けて転んでいた。

 

そしてその姿―――上半身は胸を隠すためのコルセットしかつけておらず、下のほうは

引っ掛かったズボンと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女物の下着……

 

 

「き―――――」

 

「!!」

 

 

叫ぼうとしたシャルルに感づき、飛色は回れ右すると同時に瞬時に腕を広げる。

 

そして―――

 

 

 

 

 

パァァァァァァンッ!!

 

 

 

 

 

「「……………」」

 

 

以前もやった手を叩いて生ずる爆音が炸裂。

それに驚いたシャルルはどうにか悲鳴を飲み込むことができた。

 

ひとまず安心かと、飛色が思ったその時

 

 

 

コンコン

 

 

『遠木くーん、今の音なにー?』

 

「「!!」」

 

 

ノックと共に隣の住人らしき声が聞こえ、それに反応して飛色たちはビクリと跳ねる。

だが飛色は「俺が時間を稼ぐ、その間に着替えろ」と小声でシャルルに言い聞かせると、入り口まで向かっていく。それにシャルルも若干遅れるが、すぐに着替えを再開した。

 

 

「……すまん、蚊が居た」

 

 

飛色はドアを開け、廊下にいる女子にそう答える。

とっさに思いついた嘘だったが、少し前に見せた炸裂音の出し方を思い出してくれたようで、向こうは納得してくれたようだ。

 

ただ、去っていく際に、これからは抑えてほしいと言われてたが……

 

 

 

 

 

「………すまん」

 

「い、いや、いいよ………もともと僕が悪かったんだし………」

 

 

飛色が戻るころ、シャルルはすでに着替え終わってベットに腰掛けていた。

対する飛色はすぐに部屋着になると、顔を赤くしながら先ほどのことを謝罪する。

シャルルもそれを咎めるつもりは特にないようだが、その顔は飛色と同じようになっている。

 

 

「それと………別件でも、すまん」

 

「? 何のこと?」

 

「トーナメントがタッグマッチで行われると聞いた。お前は俺と組んだ方がいいだろうに……」

 

 

別件といわれてわからなかったが、説明を聞き理解する。

 

そして自分が一夏と組んでしまったことをすでに知っているんだろう。と考えついた。

 

 

「(う~ん、飛色が悪いわけでもないのに……それに……僕のことを心配して?)」

 

 

そう思いながらシャルルは飛色に視線を向ける。

軽く謝るときなどは表情を変えない飛色であるが、今は少し違って、普段より真剣な顔をしていた。

 

 

「(…………優しいな、飛色は)」

 

「それと凰とオルコットのことは聞いた。出場停止のようだが……」

 

「うん。二人とも、ISのダメージレベルがCを超えてたみたいだからトーナメントには、間に合わないみたい」

 

「そうか。 ………今日は疲れた。もう寝る」

 

 

そう告げると飛色は布団を被り横になる。

 

 

「あ、うん。 ………おやすみ」

 

「………………おやすみ」

 

 

軽い模擬戦とデータ処理で疲れが溜まっていたのか睡魔に襲われ、それに従う飛色であった。

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「………飛色は優しいね」

 

 

僕は飛色のベットに座りながら、そんなことが口に出た。

 

一夏にバレそうになったときも、わからないことがあったときも、間違いをしちゃったときも……

 

飛色は僕を助けてくれたよね。嫌な未来を考えて、僕よりも辛い筈なのに……

 

 

横にはキッチリとした姿勢で寝ている飛色が寝息をたてている。

 

 

 

…………そいえば

 

 

僕はふと、飛色の言っていたことが思い浮かんだ。

 

 

 

『ここにいればいいだろ』

 

 

………そんなこと言われたの初めてだったな。

 

僕にとってお母さんが唯一の居場所だったけど、それ以外に何も無かったね……

 

こうしろ、ああしろって言われて……でも

 

 

『俺は自分で考え、自分で行動する。……お前も、自分で考えて、自分で決めろ』

 

 

……………僕が考えて、僕が決める……

 

 

あの人の部下はこうしろとか言ってきたけど……

 

厳しい言い方だったけど、飛色は選ばせてくれたよね。

 

 

 

 

 

「……………おやすみ、飛色」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

時は経ち、六月最後の週。

 

 

学年別トーナメントはその週を丸々使用して行っていく。

 

会場は試合前だというのに慌しい。

 

雑務や会場の整理、来賓の誘導などなど……

 

生徒は自分の仕事をして、更衣室へと急ぎ、着替えをする。

 

 

 

しかし更衣室の一つは男子専用ということになっているため、女子は多少窮屈な思いを、男子は解放的な思いをしていた。女尊男卑のよとは思えない光景である。

 

 

「しっかし、ご苦労なこった」

 

「三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認にそれぞれ人が来ているからね」

 

「………そんなことを考える暇があるのな機体のチェックでもしていろ」

 

 

着替えながらモニターで観客席の様子を見る一夏にシャルルが説明し、そんな二人にノートを持つ飛色は注意する。

 

読んでいるのはもちろん、対戦相手のデータやら、参考になる戦術(タクティクス)について記録したりしたもの。

 

 

「あはは………あ、そろそろ対戦表が決まるはずだよ」

 

 

苦笑して時計を確認したシャルルがそういってくる。

 

なぜ事前に連絡されてないかというと、なにやらトラブル(噂では生徒会メンバーの一人がドジを踏んでトーナメント表をのデータを消してしまったとか)が起きたようで、今朝から抽選クジを作り、組み合わせが出来次第発表することになっている。

 

 

「一回戦一組目なんてのなら運がいいよな」

 

「え?」

 

「待ち時間にいろいろ考えなくて済むだろ?こういうのは思い切りのよさで行きたいからな」

 

「(……………どこの熱血野郎思考だ)」

 

 

 

織斑一夏に対しての観察結果その5:先を考えずに突っ走る思考をする。

 

 

飛色が新たに記憶していると、対戦表が出たようで、三人ともモニターに視線を向けていく。

 

 

「「―――――え?」」

 

「……………」

 

 

出てきた氏名を見た瞬間に固まった一夏とシャルルだが、次いで飛色を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

Aブロック1回戦

 

 

 織斑 一夏&シャルル・デュノア

 

     VS

 

 遠木 飛色&ラウラ・ボーデヴィッヒ

 

 

 





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