話の内容は前回の途中であるものが二つです。
鈴、セシリアの模擬戦騒動の晩
コンコン
『……………』
(……居ないのか?)
裏口から寮へ入れた飛色はトーナメントのペアをラウラ頼むため、彼女の部屋へ訪ねていた。別に明日でもいいと考えていたが、それだと
しかしノックをしても反応がないため、少し時間をおいて出直そうとすると……
『誰だ?』
扉越しで返事される。ラウラにルームメイトが居ないとは聞いたこともあり、声からしてもラウラであるのは間違いないだろう。
「遠木だ。お前に話がある」
『………なんの用だ』
「今日、配られた緊急連絡については知っているか?」
『……ああ、トーナメントに関してだな。で?』
どうやら知っていたようだ。彼女は興味がないのか、素っ気なく返してくる。
しかし飛色はそれに気にすることもなく、話を続ける。
「単刀直入に言わせてもらう。俺とペアを組んでほしい」
『……………いいだろう』
「そうか。なら…………っ!!?」
ラウラが了承するのに飛色は驚愕した。それもそうかもしれない。
さっきまで鈴とセシリアを救出するために飛び出し、あと一歩の所で一夏を仕留めそこなったのは飛色の性と言っても過言ではない。しかし、彼女はそんな相手と組むことを許した。
「……………なぜ許す」
もともと彼女の冷徹さは知っている。それらを承知の上で来たのは女子の集団からすぐにでも逃れるためでもあるが、何も用意せず、手ぶらで話を持ち込むような飛色ではない。
一応、
その理由がわからず、飛色は聞き返した。
『どうでもよかったのだが、お前は女共よりは幾らかマシだからな』
どうやら他の同学年生徒と比較されていたのだろう。確かに飛色はHR前まで教科書を読み、休み時間ではノートを見返し、放課後はすぐに訓練に行く……
休日も、遊びに出かけたりする生徒などが学園に多くいるが、飛色は休んでいる所は滅多に見かけず、アリーナ等で訓練……
こうして見れば他の生徒より真面目であるとでも解釈したのだろう。
「………わかった。なら、明日の放課後に連携訓練の―――」
『断る』
「………」
途中だというのに遮られた。その態度――見えないが――に飛色の眉が反応する。
「なぜだ?」
『お前は試合中、手を出さなければいい』
「……………」
その発言に飛色は呆れる。
今回のトーナメントは二人一組で参加する。だというのに、ラウラは二対一で対決すると言うのだ。
一夏が弱いと今回の件で思ったのだろうが、それは飽く迄、一夏
しかも今回彼と組むのは、実力的には学年上位に食い込んでもおかしくないシャルルなのだ。
ラウラ本人は知らないかわかってないのだろうが、侮ることは出来ない相手になる。
それに飛色が何もしなかったら『ラウラの力』で勝したということになってしまう。
つまり飛色は何も評価されずとなってしまう。それは流石に飛色も嫌なのか、顎に手を置いて考える。
「……ならば、明日は織斑一夏とそのペアに関するデータを見せよう。相手を確実に潰すならばそれぐらいはするだろ?」
『…………それならいいだろう』
こうして、翌日に話をつけることにした
とりあえず組むことに関してはOKだ。そして今はそれでいい。
自分が動けるようにするのはこれからの
翌日
カリカリカリカリカリカリ
「………やはり少ない」
昨夜のちょっとした事故で、
といっても、一夏やシャルルと対戦することはトーナメントがある時点ですでに用意し始めていたため、それほど量もない。
しかも一夏に関しては武装と使用できる操縦技術は近接ブレードの『雪片弐型』、『
これまでの模擬戦と似たような動きが多少あるため纏めやすかった。
「だが………」
そう思いながら、自分が使用していないベットに目を向ける。当たり前だが、そこではシャルルが以前と違って規則正しい寝息を立てている。
昨夜、一夏と組んだのは聞いたのだが、シャルルに関しては情報が多すぎる。
もちろん戦闘面に関してだが。
これまでもリヴァイヴの操作について何度か教授してもらい、手本を見せてもらったぐらいだ。
それも初心者でも出来るようなものから上級者が使うのものまで。
つまりは戦闘方法を多く持っているということだ。となると、必然的に情報について纏めるものも多くなる。
今はラウラに見せるために武装や機体の特徴、見たことがある操縦技術を揃えているが、それぐらいしか渡せないのかもしれない。
それでも、飛色はデータを時間までになるべく揃えていった。
シャルルより少し早く部屋を出た飛色は教室に入った途端、女子の一団に迫られた。が、既に組んでいると聞いてさらに迫られ焦るが、ラウラとだということを説明すると全員がガックリと肩を落とし、席に着いたり自分の教室へと戻っていった。
ラウラでなければ彼女たちは変わってもらおうとあんなことやこんなことをしようと考えていたのは完全に余談であるが……
ようやく解放されてホッとした飛色は、ラウラの席へ向かう。彼女はいつも朝早いとは噂で聞いていたが、確認すれば本当にいた。
話が出来る時間を少しでも取るために飛色も早く来たのだが、彼女はそこで目を閉じ、腕を組んで、
「ボーデヴィッヒ」
「……なんだ」
それでも飛色は近づいて声を掛け、それに反応してラウラは聞き返す。二人とも傍から見れば不機嫌に思われそうな声音だが、本人たちにとっては普通に喋っている気分だ。周りはその空気に怖がって離れたり、怯えたりとでかなり迷惑になっているが……
「放課後はどうする? 管制室などより俺かお前の部屋で見ておきたいのだが……」
「ならば私の部屋だ。授業終了後、
「……午後四時ということだな。………授業終了時間から考えると直ぐだな」
「そういうことだ」
「なら少しばかり待ってもらいたい。追加資料が部屋にあるからな。まとめる時間を考えると……
「………かまわん」
放課後の予定についての何気ない会話だが、見ている者からは声が小さくて、ブツブツと呟く二人。
会話が終了しても、飛色が自分の席に着くまで寒気は続いたのだった。
◇ ◇ ◇
午後6時を過ぎ、私、ラウラ・ボーデヴィッヒは自室で椅子に座っていた。
「……………」
「……………」
ただし、目の前に遠木飛色と向き合う形で。
遠木は腕を組んで目の前の物を見て、一方で私は顎に手を添えながら、思考を巡らせている。
(………よし)
結論に至って、私たちの間にあるテーブルの物に手を掛ける。
「ルーク、C4」
「………ビショップ、G5」
私が駒を置くと、遠木も素早く駒を動かして私に手番を返してくる。
遠木が持ってきたのは資料だけでなく
今は7戦目で、悔しいが私は6敗………遠木が
チェスの強いものは、戦略の立て方もうまい。私の軍でもそうであるとが聞いたことがある。
これでも私も自信はあるのだが、コイツはそれ以上の実力を持っている。
なぜ、こうなったかというとなぜこうなったかといえば、こいつが織斑一夏の情報を提示した後に、
『戦闘時の指揮については俺が取らせてもらいたい』
など抜かしたのが発端だ。
勿論、私は納得いかずに反対したが、コイツは織斑やデュノアの性格面やデータから対応策を考え、作戦パターンを選ぶのに適していると言ってきた。
……それには一理、あるにはある。相手の行動パターンを考えられるのに利用しないのは、アドバンテージを生かさないのと同義。確かに織斑を確実に負かすためにその一手は有効。
遠木は入学当初から織斑の観察をし、デュノアとはルームメイトである。それに比べ私は直接会ったのはこの学園に来てからで、デュノアの奴とも話はしない。興味などないからな。
だが……納得いかない。
これでも私は軍人なのだ。
例えこれほど有効な資料が用意できても、コイツは元一般人。指示に従うなどプライドが許さない。
「……納得がいかないのならば、勝負……というのはどうだ?」
―――何だと?
遠木はそう告げると、持ってきたケースを取り出してきた。
こうして私たちは
そして……
「チェックメイト」
「……」
今、十戦目の決着がつく。
「……俺が作戦を錬る」
十戦中一戦目以降、私はコイツに一度も勝てなかった。
……私もそれなりに腕はあるがコイツはそれ以上だというのか?
遠木は駒と盤を片付けると、先ほど見せたものとは別の紙束を取り出してきた。
「作戦内容は試合当日に決めるが……使用されると考えられるものはこれに記してある。とりあえず目を通しておいてほしい」
遠木は先ほどとは違う紙束を私に差し出してくる。
……まさかこいつ、端から私に勝つつもりだったというのか?
……それはいいとして、私はそれを受け取り、書かれた内容を見る。
……………なるほど、織斑一夏の性格、武装から判断される行動パターン……近接専用の機体であるため遠距離との相性は良いが、瞬時加速で一気に差を詰めてくることが多い。
そして対処方法の一例か……ここは随分と大雑把だ。だが的を射ているといえば、そうであるともいえる方法だ。
(これほどのものをこいつが?)
私はつい、思考してしまう。
これほどのものは少しは腕がなければ出来ないはずだが……
「一応、言っておくが俺はこういうの『は』得意なんだ。それに、確実にその通りに行くとは限らない
からな。飽く迄、想定されるものを上げてみただけだ」
………少し納得いかないが、今はそれで片付けておくか。
「それともう一つ、お前に頼みたいことがある」
? 頼み事だと? ………断りたいところだが、こいつの雰囲気からして作戦に関することだろう。
ならば、指揮を執ると決まったコイツには従うべきかもしれないと私は思う。
ハッキリ言って、私がこの学園に来た初日から、こいつは浮かれている女子どもより真面目だ。
授業は集中して受け、休み時間は休まず、無駄なことは話さない。
織斑一夏と違い専用機を持たないため、訓練機を貸出して自主訓練をしている。そして使えなかったとしても
別の訓練をして己を磨いている。
訓練機が使えない奴の殆どは娯楽か何かをしているが、こいつは違う。
その極めつけは………
「……………」
「ボーデヴィッヒ?」
「!! な、なんだ」
「いや、頼みごとについてなのだが……」
「あ、ああ。それでなんだ?」
「ああ、それは―――――」
それを聞いて、こいつはやはり真面目だと痛感した。
◇ ◇ ◇
「う~ん……」
トーナメントまで三日前となった放課後。
帰路に着いているシャルルは考え事をしながら唸る。
「……なにやってるんだろう?」
誰が、というのはルームメイトである飛色のこと。
最近はトーナメントのために訓練をしてくると言っていたが、先週からずっと雨が降っている。
全てのアリーナには天井など付いておらず、他にある訓練場も殆どが環境が悪いため、できる場所は限られてくる筈。シャルルや一夏、その他大勢―――全て―――の生徒も、雨の日はオフにしようということになっている。
しかし飛色は訓練に行くと言っていのに、生身での射撃訓練場にはいつもいなかった。
門限までには帰ってきているのだが、それでも以前より遅い。そして帰ってくれば、いつも通りシャルルが寝るまで勉強して、朝は早く起きて、部屋で筋トレをしている。
まだ同居してから一カ月経っていないが、自分の転入当初とは生活リズムが違い、気になっていた。
それについても本人は、なんでもない。と言った風に無視か無言状態である。余計気になったシャルルはその日の放課後、勝手について行こうとしたが、気づかれて途中で撒かれたりと……
(今日はもう諦めよかな……)
そう思った瞬間
―――ドガァァンッ!
「!!!」
大きいわけではないが、近くのアリーナから轟音がシャルルの耳に入る。
使われていないはずのアリーナでそんなものがするだろうか、と一瞬シャルルは気になり、アリーナに入っていく。
(何があったんだろう?)
シャルルは観客席のほうへ向かい、小走りする。
以前ラウラと鈴たち騒動でもそうだったが、どのアリーナも管制室より観客室の方が入口に近い。
といっても、今もなお雨が降っているため、今回は屋根付きの席があるゲートを潜っていくことになるが。
「…………え!?」
入ってすぐにフィールドを見たシャルルは驚愕する。
「ハァ……… ハァ……… ハァ………」
そこには訓練機のラファール・リヴァイヴを纏う飛色がいた。
だが、リヴァイヴはどこもが泥だらけ。飛色も自身も息切れをして、限界であることが
「ハァ……… もう一度だ」
しかし、一息して浮遊、上昇をしていく飛色。
ただ、その動きはシャルルが以前見たもの全然違う。
シャルルが女子だと告白してきた時より少し前。共に訓練し、武装や操縦技術の活かし方、特殊なテクニックのコツなどを教え、動きに関することも参考にしていたのを覚えている。
その時に飛色がどれだけISの操縦ができるのかも見せてもらい、リヴァイヴの最高速度を出せてはいなかったものの、それでも十分早く動けていたことも知っている。
だが今の飛色の動きはその時よりも下回っていた。
雨や訓練時間といった環境によるもので疲労が溜まっているとも考えられるが、そうだとしても遅い。わかりやすく言うなら、ISに乗り初めて2、3回目ではないかどうかというレベルでだ。
そんな飛色をシャルルは心配そうに見つめると……
「……開始」
その一言と同時に、周りに設置されてあるマシンガン、レールカノン、ミサイルといった砲台が一斉に火を噴きだした。
それらを飛色はシールドで防いだり、体を捻らせたり上昇や下降といった行動で回避する。
「ぅ………く……」
とはいっても、あまりにも動きが遅いため、急所に当たらないようにするのが精一杯。脚や腕、スラスターといったに次々と被弾している。
流石にレールカノンの様な高火力のものはギリギリ掠るぐらいに抑えることができているが……
「ぐっ……がぁ!」
シールドで防いだ直後、背中から来たミサイルが飛色に炸裂し、飛色は地面に叩きつけられた。
落ちていく飛色には追撃しないようセットしておいたからか、すべての砲台が止まりだす。
雨で煙が立つことはなかったが、墜落地点には小さなクレーターが出来ていた。
(もしかして……)
この時、シャルルは飛色の周りにあるもの……いくつものクレーターがなんなのか理解した。
雨で地が柔らくなっているからか、それは大して深いわけでもない。
だが数は軽く十を超えており、飛色がどれだけやっているのかがよくわかった。
「飛色……」
「ハァ……… ハァ………まだ………」
息を切らしてきた飛色は、地に手を着いて立ち上がり、再び飛翔していく。
そして再開される銃弾の嵐。
環境が悪い状況だというのに、あれほど動きが遅いというのに、すでに満足にできないというのに、飛色は躱したり防いだりといった行動を続けていく。
(………あれ?)
よく見ると、飛色の動きと向かっていく弾丸の種類に違和感を感じるシャルル。
まだ少ししか見ていないが、飛色はシールドで防ぐよりも、躱すことに専念している。
さらに弾丸も、ミサイルなど大口径のものが混ざっているが、どちらかというとマシンガンのような小口径のものが多いような気がする。
「……………」
飛色にはISのハイパーセンサーで自分がここにいることを知られているかもしれないが、今は動かすのに集中しているように見える。声をかければ集中が途切れて被弾してしまうかもしれない。
シャルルはただ飛色をじっと見るだけだった。
「……………10………9………」
しばらくして、アリーナにあるシグナルランプが点灯し始める。
それに反応するかのように、飛色もカウントダウンを始めた。
「………3………2………1………」
『タイムアップです。システムを停止します』
0になると同時に、アナウンスが来て、銃火器の動きが止まりだす。
飛色も浮遊したまま、出していたシールドを粒子化させ、ピットへ向かっていく。
時間も時間のため、今日は終わりにするのだろう。
「(……大丈夫かな?)」
心配そうにするシャルルはピットへ向かう。
シャルルが来てからすでに3時間は経過していた。
毎日遅くに帰ってきた理由はわかったが、あの状態―――纏ったISがボロボロの様―――で動かした飛色のことが気になっていた。
ピットに着くと、ISを解除し、装甲の交換をしている飛色を見つける。
機体の整備については授業でもやったことがあり、訓練後も何度か見たため別段不思議でもない。
使用していたと思われるリヴァイヴは、先ほどと違って新品のような装甲に変わっている。
ちょうど最後の
「……………」
「飛い―――」
―――一瞬、シャルルと目が合った飛色は膝を着き、ドサリ、と倒れた。
◇ ◇ ◇
「………はぁ」
道具を片付けながら溜息するのは、銀髪の転校生ことラウラだった。
飛色の頼みごと……それは訓練に付き合ってもらうことと、操縦技術についてのアドバイスをもらうことだった。
特に操縦技術について重点的にやってほしいと頼まれ、今は中級者レベルの技術、PICのマニュアル制御についての訓練をしていた。
そして教えたことができているか確認のために、先ほどは管制室で設置された自動稼働の砲台の操作をしていたのだ。
……といっても、飛色が墜落したりした場合に止めたり、合図が出たら再起動させたりするようにしながらだが……
「……………」
雨でも訓練するのは
しかしそんな訓練中の飛色を見ていたとき、その光景から思い出す。
………少し前の自分を
………出来損ないの烙印を押され、それでも
「……………教官に報告しておくか」
飛色がする予定だった片付けを続け、ラウラはそう思った。
◇ ◇ ◇
「チェックメイト」
いつも通りのチェス。
いつも通り美味なコーヒー。
いつも通り置かれている茶菓子。
そして……よく起こる敗北。
「………」
悔しい。
自分より
嫉妬してしまう。
自分とどこが違うのかと聞きたいぐらいに……
頭を下げてるから、相手の顔は……見えない。
だが、いつも通りだと思う。
そう………無表情だとわかる……気がする。
それが、余計に悔しい。
自分に勝てるのが当たり前だと思うような相手が……
俺は……俯いた顔を上げてみれば……
「………あ」
◇ ◇ ◇
「………ぅ……………………?」
目が覚めると、白い天井が見える。
どうやら眠っていた……そう自覚すると、自分の状態が気になって上半身を起こす。
周りを見渡していくと、薬品棚が置いてあり、周りはカーテンで閉められている。
そしてベットらしき物の上にいるとわかり………
「………………!?!?」
寝起きで少しボーっとしていた脳が覚醒する。
毛布で見えない自分の膝上あたりには、
「スゥ………スゥ………」
シャルルが寝ているから………
「っ………っ…………っ……………!!!」
直に触っていないわけでもないが、今現在の感覚で、飛色は冷や汗などが出てくる。
これ以上こうしていたくはない……そう思って仕方ない飛色はゆっくり、シャルルを起こさない様に毛布下の足を引いていく。
20分後
「ハァ、ハァ、ハァ………」
ようやく離れられた飛色は、ベットに腰が蹴る状態で息を荒くする。
―――昔はまったくなかった女子との免疫。IS学園に来てから多少はマシになったんじゃないかと思ったが、然そんなことはなかった。
「(落ち着け、落ち着け……)」
未だに続く息切れと早打ちする心臓を正常にしようと、自分に言い聞かせて軽く、そして聞こえないように深呼吸する。
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ふぅ」
漸く止ま―――
「目が覚めたか遠木」
(ドキィッ!!?)
ようやく解けたと思った緊張感も、後ろから声をかけられ、戻ってくる。
驚きで体が跳ねてしまったが、そのまま振り返るとそこにいたのは……
「……驚かさないで下さい、織斑先生」
「私は呼んだけだ。勝手にそうなったお前のせいだろ」
呆れて溜息をつくあたり、本当に態とではないと飛色は思う。
「デュノアとボーデヴィッヒから聞いた。お前が何をしていたかもな。まったく、お前はもう少し冷静な奴だと思ったが、私のクラスは本当にバカの集まりだな」
その言い分はどうかと思ってしまう。が、否めるわけでもない。
問題が発生しているというのに、自ら危険な場へ来た天災の妹。
クラス代表を決める際に、よく考えず日本をバカにしたイギリス代表候補生。
転校早々、生徒を引っぱたいたり、クラスに溶け込もうとしないドイツ代表候補生。
他のクラスメイトには騒がしいという特徴がある。
そして極めつけは……鈍感、そしてこれまでのことで問題児というレッテルがある、担任の弟。
(………確かに
一応、実力は皆それなりにあるとわかっているため、単純なバカというのは、どうかと思う。
そんな考えをして、ふと飛色は思う。
「そういえば織斑先生。仕事はどうしました?」
「今何時だと思ってる。先ほど終わらせて、様子見に来たんだ」
そう言われて、飛色はようやく気付く。外はすでに日が暮れて、今いる保健室も電気を消してしまえば目の前が見えなくなると思う。
一応、今はベット脇の照明機器で薄暗くなっているため、シャルルや千冬の姿は確認できる。
「……すいません、今何時ですか?」
気がついたらこの場所にいたため、正確な時間はわかっていない。
訓練の
確か終了時間の設定で5時半ぐらいだったが、どれだけ寝ていたのかはよくわからなかった。
「22時だ」
「……………え?」
「だから、22時だ」
22時………つまり午後10時………
消灯時間の1時間前である。
(………………………………………はぁ)
予定が大きく狂ってしまい、心の中で溜息する飛色。
実際にやらないのは、
「まあ、起きたのなら自室に戻って休め。私は寮に戻る」
「………了解しました」
流石にアリーナはこの時間使えない。しかも倒れてしまったのなら、もう休んだ方がいいのだろうと結論に至る。
飛色の返事を聞いて、千冬は部屋から出て行く。
「ああ、それと」
と思ったら、背を向けたまま思い出したかのように話す。
「デュノアとボーデヴィッヒに感謝しろよ。お前を運んで、連絡してくれたのだからな」
そういい残して、千冬は去っていった。
「ハァ、ハァ、ハァ………………………」
自室に戻った飛色は息を切らしていた。
理由は目の前に居る………
「スゥ………スゥ………」
寝ているシャルルを運んできたからである。
自室に戻れと言われたため戻ろうと思ったのだが、その時にふとシャルルのことを思い出した。
出来ればこのまま保健室で眠らせた方がいいと思ったのだが、それだと本人から何か言われると思い、こうして運んできたのだ。
ただ運ぶのであれば普通は息切れなどしないだろうが………飛色は心の問題でそうなっていた。
「ハァ………………………………………………あ」
ここで飛色は考え直す。
起こせばよかったんじゃないかと………
「……………ハァ」
自分の固い頭が情けなく感じ、呆れてしまう。
もう考えるのは止めて寝よう、と強引に切り替える。
(…………………………そういえば)
千冬の言い残した言葉を思い出す。
倒れた自分を運んでくれて、報告もしてくれたと………
(………ボーデヴィッヒには謝っておかないとな)
女子に対してそんなことした記憶が薄いのだが、そう決意する。
その後、飛色はシャルルに向き直る。
「………スゥ………スゥ」
「……………」
中性的な顔立ちに、輝くような金髪……
小さめの耳に、艶のあるように見える唇……
十人中十人が振り向くような整っているその容姿は、飛色にとって、何よりも眩しく見えた。
(………………………………………ありがとう)
そう心の中で言い、飛色はベットに入っていった。
ということで、今回のはオリジナルストーリーです。
努力シーンが少ないという意見が多数あったのでこういったものを書かせていただきました。
アドバイス、感想、何でもいいのでよろしくお願いします<(_ _)>