IS インフィニット・ストラトス 努力の天才   作:xix

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随分と遅れました……
アットノベルスに投稿していた奴を出します



第20話 勝利への連携

「……………」

 

「……………」

 

 

向き合う4人は、互いに相手を見定める。

 

 

「一回戦で当たるとはな……待つ手間が省けた」

 

「ヘッ、それはこっちも同じだぜ」

 

 

ラウラが喋り始め、それに一夏が答える。

こちらでは早くも視線で火花を散らしているように錯覚してしまう。

 

 

「まさかボーデヴィッヒさんと組んでたなんてね」

 

「………悪いか?」

 

「ううん。勝つことを考える飛色らしいよ」

 

 

首を振ったシャルルは「ただちょっとビックリしたかな」と付け加える。

 

そんなやり取りをしていると、シグナルランプが点灯し始めた。

四人は戦闘に集中するため会話を中断する。

 

そのまま一夏はやや前屈みなりながら片手に雪片を握り締め、シャルルは気持ちを落ち着かせるために深呼吸する。

その一方でラウラは即行で片付けようと腕を引き、飛色は相手である二人を観察するように睨みつける。

 

 

それぞれが備えると、やがてカウントは1になり―――

 

 

「「叩き潰す!」」

 

 

ピーーーーーーーーーー!

 

一夏とラウラの叫びを皮切りにトーナメント一戦目が開始された。

 

 

「うおおおっっ!!」

 

 

開始と同時に、先手必勝と言わんばかりの気迫で一夏が急加速で突撃した。そしてその加速の仕方は相変わらず出鱈目。教科書にある滑らかなものとはまったく違い、強引にするようであった。

そしてその先にいるラウラたちは―――

 

 

「! ………」

 

(………え?)

 

 

ラウラが引いていた腕を戻して自然体になった。

 

徐々に差が縮まってくると同時に、一夏はその行為に違和感を感じる。

以前の様にAICを起動させて動きを止めようとするかに思えたが、今はそれをやめるかのように、渋々と戻したように見えていた。かと言ってラウラは素で受け止めて迎撃するようにも見えない。

 

一瞬……ラウラヘ畏怖の念を抱いく一夏だが、数秒にも満たない時間で動きを変えることはできない。纏わりついく寒気を振り切るかの様に、掲げた雪片をラウラへと振り下ろした。

 

 

「なっ!?」

 

 

しかし、その剣先から手応えを感じることはなかった。

 

一夏の口から驚愕の声が漏れる。それはラウラの行動を見た故だ。てっきりAICで動きを止めにくるのではと考えていた一夏であったが、ラウラが取ったのは行動はそれと全く異なるもの。

 

 

身体を逸らして、シャルルへ(・・・・・)向かっていった。

そう、ただ一夏を無視をしただけ(・・・・・・・・・・)

 

 

「………バカが」

 

「え?」

 

 

ラウラの行動が奇想天外なもので、一夏はとっさに反応できず高速のまま横を通り過ぎたところを―――後ろから飛色の罵倒とラファールの脚が迫っていた。

 

 

「って、うわぁああ!!」

 

―――ドガァァァンッ!!

 

 

自身の加速も重なったせいか、飛色に蹴飛ばされた一夏はアリーナの壁に激突した。

 

 

「い、一夏!?………っ!」

 

 

激突時の轟音と舞った塵の中に消えたパートナーに、シャルルは悲鳴に近い声を上げる。

白式の爆発的な加速力が裏目に出てしまったせいか、激突した箇所から一夏の反応もない。

 

しかしそんなシャルルが驚愕した瞬間を見逃さずに、ラウラが距離を詰めてきた。

それに逸早く反応したシャルルはすぐさま後退する。

 

 

「……偶々作戦に組み込まれいた物だったよな?」

 

「……正直、俺もその通りになって何も言えん」

 

 

呆れたような口調で言葉を漏らす二人。

 

そう、予測しておいた対処法の一つとして、飛色がラウラに告げていたのだ。一夏の武装とラウラのAIC。

以前は腕のみをAICで拘束していたが、それの対処方法を一夏が思いつかなかった場合………

 

そうなると接近戦しかない一夏は開幕直後に先制してくる。考えもなしに突っ込んで。

というよりも、一夏の模擬戦を見ていたときは開始と同時に突っ込むものばかりであった。

 

そのため“先がわかっているなら(かわ)すだけで十分だ。エネルギーも減らないし”という考えで一応教えておいたが、成功するとは思ってもいなかった。

 

 

戻ってこない一夏を尻目に、ラウラと飛色の二人は迅速に行動を始める。ラウラはシャルルの後ろに回って連射用に切り替えておいたレールカノンを、飛色は両手にサブマシンガンを発現させる。そしてシャルルを中心に二人は向き合うような形にな円軌道を描きながら射撃を浴びせていく。すると今度は、二人の動きに不規則な加速が生じてきていた。

 

高等テクニックの一つである『シューター・フロー』での円状制御飛翔(サークル・ロンド)

射撃と高度なマニュアル機体制御を同時に行い、尚且(なおか)つ回避と命中の両方に意識を割かなければいけないもの。

機体制御に必要なPICは通常、自動制御となっているが、その場合は無駄の大きい動きをすることになる。細やかな動きにはマニュアル制御での操作が必要になる。しかしそうした場合は機体制御に気を向けていなければいけない。

 

本来初心者に出来ないことであるが、飛色は常日頃から右手と右目、左手と左目での別々のことが出来るようになっている。考える動作が二つ、三つ増えた所で問題はこれと言ってなかった。しかし、少しだけ自動制御に慣れてしまった体をマニュアル制御で操作できるのがトーナメント前までの課題となっていた。

 

今ではラウラとタッグの協力によって訓練の効率が良くなり、その結果、やや粗雑な操縦と射撃時、そして現在行っている連携の三つのみであるが、制御はできるようになっていた。

 

 

「くぅ……!」

 

 

実際効果があるようで、シャルルは常時装備のと新たに展開したシールドで左右から放たれる射撃に耐える。というよりも耐えるしかない。飛色の実力は自分より下であるが、問題はもう一方のラウラ。飛色に特攻しようが、それでは彼女に背を向けてしまい、彼女に仕掛けようにも距離が離れているためAICの餌食になってしまうだろう。

 

 

「………C」

 

「了解」

 

 

秘蔵回線(プライベート・チャネル)を開きながら飛色が再びアルファベットを呟くと、ラウラがそれに頷く。

ガードに専念しているシャルルはそれに気付かず、そのまま何周目か分からない円運動をする飛色が視線の先で

 

 

「え? うわぁ!!?」

 

 

背後から襲ってきた何かが足に絡みつき、シャルルはそれによって宙に浮く。

よく見れば、それはラウラのワイヤーブレード。先ほどの飛色の指示で飛ばして来たものだった。

 

一瞬動揺したシャルルはすぐに解こうとしたがそれも空しく、遠心力で投げ飛ばされる。

しかも

 

 

「いつつ……」

 

「ああああ! 一夏離れて!!」

 

「え?」

 

 

アリーナの壁に激突していた一夏が立ち直ったところへ、シャルルが降ってくる。

 

もし、絶対防御が働いていれば衝撃を相殺し、一夏は素早く立ち直ることができたのだろう。

しかし、ISは壁に全力で衝突した程度では働かない。通常の防御では衝撃を完全に緩和することはできなかっようで、一夏たちにとって最悪のタイミングで起き上がってしまった。

 

そして投げ飛ばされた本人は気づいたがその先にいた一夏は反応が遅れる。

 

 

「うおぉ!?」

 

「うわぁぁ!!」

 

 

ぶつかった拍子で二人は悲鳴を上げながら姿勢を崩す。

その間にラウラはプラズマ手刀を展開しながら接近し、飛色もアサルトライフルを展開して援護できるよう構える。

 

ギキィン!

 

接近して、ラウラはそのまま振りかぶろうとしたが、その直前で立ち上がった一夏に雪片で受け止められる。

そのまま一夏は、力任せに押し返そうとするが

 

 

「ぐっ、こんのぉ!」

 

「数では私が勝っているぞ」

 

「一つしか変わらねぇだろ!」

 

 

苦言を吐く一夏だが、状況の悪さは変わらずにそのまま手刀と剣でぶつけ合いだす。剣を操るISの出力やその質は白式が勝っているが、数と大きさではラウラのレーゲンが上回っている。機体性能のみで総じていくと、互角といったところだ。

 

そうなると、勝敗は操縦者の技量に左右されるのだが―――

 

 

「そら!」

 

「くっ!!」

 

 

やはり、技量はラウラが圧倒的に上。二つの手刀で斬撃を繰り出しながら突撃し、一夏に反撃の隙を与えない。

そして二人が対立している間にシャルルも起き上がり、シールドを収納して連装ショットガン≪レイン・オブ・サタディ≫を展開する。

 

 

『一夏、サポートに回る?』

 

『いや、俺はこのままラウラの相手をする』

 

『……………わかっ―――うわっ!!』

 

 

プライベート・チャンネルで会話していた二人だが、その最中にシャルルが悲鳴を上げる。

ロックや接近機体の警告音(アラート)も出なかったというのに、突如衝撃が来たからだ。

 

続いて銃声と共にシャルルへの銃弾の雨が降り注ぐ。その原因は飛翔して距離を取った飛色の遠距離射撃だった。

 

 

「……俺の素の(・・)目視範囲(ロックレンジ)スコープ機能なし(・・・・・・)での射撃範囲(スナイプ・レンジ)を嘗めるな。会話してるのが口の動きで丸わかりだぞ。特に織斑はよく動かしているしな」

 

「「なっ!?」」

 

 

飛色からの開放回線(オープン・チャンネル)を聞いた二人だけでなく、観客全員が驚愕する。

それはつまり、飛色の視界内であった場合はプライベート・チャンネルであっても、口の動きが見えてしまえば会話が筒抜けになってしまうということだ。

プライベート・チャンネルは脳内通信といった便利なものでやっているわけではない。

そのシステムは電話での通信と同じで、声に出したものをISが採取し、指定した相手に対してのみそれを通信しておくという物。

要するに、口を動かしての普通の会話になってしまう。

 

開放回線(オープン・チャネル)との違いと言えば、周りに聞こえるようにスピーカーの様な機能が付くか付かないかというぐらいだ。

 

そしてそれは、飛色が最近学んだ(・・・)こと………口の動きから何を言おうとしているのかわかる簡単な読唇術。それとの相性が非常に悪かった。

最近は一年生での重要ヶ所のまとめが出来た飛色。そこで、今回のトーナメントの様な多数のISが相手の場合、プライベート・チャネルを使用される可能性が高いと考えていた。そしてその対策として至ったものが、自分の超視力による読唇術を覚えること。それからは睡眠時間を通常より削って、本を中心に様々な情報から覚えていったのだ。

 

そしてもう一つ。

遠距離からの狙撃をする際は装着したスコープを覗き、それによって体勢を整え、ターゲットとの距離感を合わせることで射撃する。

 

だというのに、今の射撃は何十メートルも距離がある紛れもない遠距離射撃。それをスコープ機能なしで、つまり飛色は先ほどの工程を素の視力と感覚で行った。

 

 

「………気を緩める暇があるのか? 特に織斑」

 

「え? 何―――」

 

「余所見とは随分と余裕だな!」

 

「がぁ!?」

 

 

飛色の言葉が何を意味するかわからず、今度は唖然としてしまった一夏に衝撃と皮肉な叫びが来る。

ラウラの手刀が一夏に炸裂したものだ。それにより怯んだ一夏に畳み掛ける勢いで彼女は迫る。

 

一夏は手刀が来ると思い雪片を横に、防御の構えを取るが、ラウラは一夏の前で停止した。

なっ、と驚きの声をあげ油断した瞬間、一つのワイヤーブレードが放たれ、一夏は左腕を拘束される。

 

 

「一夏!」

 

「お前の相手は俺だ」

 

 

一夏に気を掛けたシャルルに飛色は連射を続ける。それを躱したりシールドで防いだりして回避するシャルル。一夏も残った腕でギリギリ、ワイヤーブレードを弾いたりしている。

完全に流れを持って行かれている状況に、一夏とシャルルはかなり焦ってきていた。

 

試合前から一夏たちには決めていた作戦があった。その内容は『飛色を先に倒す』という、そのままの意味のもの。それを選択した理由は、ラウラにあった。

 

ラウラはもともと一対多の戦闘に特化して、自分側が複数の状態での戦いを想定していない。つまりパートナーの援護をしたりしないだろう。だからこそ、一夏たちはそこを狙って、二対一にしようと考えていた。

 

 

が、飛色の加入でそれは完全に打破されていた。

 

接近戦をラウラに任せて、飛色は距離を取っての援護射撃。前衛と後衛に分けてやるという基本的なものであったが、それが非常に手強い。

 

しかも現在は単独行動の様に見えるが、始めのシャルルへの射撃やその後の指示から、ちゃんとラウラとの連携が出来ているのがわかる。一夏はわかっていないが、シャルルは二人の射撃を喰らっている時に見た物でそれがかなりのものだというのも理解していた。

 

 

「だったら!」

 

 

叫ぶのとほぼ同時に、シャルルは高速切替(ラピット・スイッチ)でアサルトライフル≪ヴェント≫の展開。

そのまま迎撃し始め、同時に一夏との距離が少しづつ縮まっている。

 

 

「ちっ……!」

 

 

その状況を理解するも、シャルルの威嚇射撃に舌打ちする飛色。

時折ちゃんと狙ってくる弾もあるため、飛色から少しづつ距離を離して一夏に近づく。

 

 

「…………!!」

 

 

そんな時、よく見えるシャルルの表情………正確には、口端が上がり………笑っていた。

その笑みは飛色に何か寒気を感じさせ、一瞬……ほんの一瞬であるが、飛色が止まる。

 

 

―――――それと同時に、シャルルがその場から消えた。

 

 

いや、消えたように見えた(・・・・・・・・・)

 

即座にシャルルを探し出すが、見つけた瞬間にはショットガンを構え、ラウラへ攻撃をしていた。

 

 

(……………どういうことだ?)

 

 

シャルルのリヴァイヴでは一夏たちに一気に近づけるほどの加速は通常不可能だった筈である。事前に調べておいたステータスからはそう考えられていた。となると、シャルルが隠していたと考え出す。しかし思い返せば今さっきのは爆発的な(・・・・)加速。それには見覚えがあった。それは一夏の模擬戦でよく見た操縦技術―――

 

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)か。だがそんなデータは………)

 

 

なかった、そう思い出すが、よくよく考えてみれば一夏と模擬戦をする相手をこれまで何度もやったのだ。

そこにシャルルの持ち前である“器用さ”が合わさることで、一夏のを見て覚えた。そう結論を出す。

 

何せ彼女には高速切替(ラピッド・スイッチ)という操縦者の器用さを要求する技術を持つのだ。

つまり見てしまえば、少し練習するぐらいで出来る……とも取れてしまう。

 

 

「くっ!」

 

 

シャルルの援護射撃でラウラは一夏からいったん離れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏に近づくシャルル。相手である飛色もラウラの元へ一旦向かった。

 

 

「あ、あっぶねぇ」

 

「大丈夫?」

 

 

一夏を心配するシャルル。それに一夏は「なんとかな」と軽く返すが、実際は厳しい。当初の作戦がうまくいかないというのもあるがそれだけではない。

先ほどのラウラとの斬りあいと、飛色の狙撃。それによって一夏はシールドエネルギーは、既に半分近く削られていたからだ。

これは一夏自身にとってかなり厳しい。何せ機体のモットーで、シールド・エネルギーを必要とする『零落白夜』の使用が制限されたということなのだから。

 

 

「………強いな」

 

「! ……うん。ボーデヴィッヒさんもそうだけど、飛色もね」

 

 

一夏が漏らした言葉にシャルルは肯定する。ラウラが強いのは先日の一件で理解できていた。

おそらく一年の中では最強なのだということも。

しかし飛色については認識が甘かったと、試合をしていて思い知らされた。

 

シャルルは少し前に飛色の秘密の特訓をしていたことはわかっていたが、どこまでの実力を持っているのかは知ることが出来なかった。

そして今までの操縦技能―――PICのマニュアル制御、スコープなしでの遠距離狙撃、秘蔵回線(プライベート・チャネル)の打破―――これだけのことを実現させている。

 

ISに乗り始めたのは一夏と同じ三ヶ月ほど前。

 

専用機も持っていない。

 

なのに………これだけのことをしている。

 

 

「でも……負けられないな」

 

「うん」

 

 

負けられない………負けたくないという感情が一夏の中で渦巻く。

 

 

「遠木……いや、飛色!」

 

「………なんだ?」

 

 

名前で呼ばれることを好まない飛色であるが、試合中であり人前でもある。この時ばかりはそれに触れず、呼び掛けに応じる。

 

 

「ラウラもだが、こっからが勝負だ!」

 

「「……………」」

 

一夏の叫びが木霊(こだま)する。

 

ラウラはそれを聞き、標的(一夏)を睨みつけ、飛色も視線をさらに鋭くしていく。

 

 

 

 

 

――――――――――口端を少しだけ上げながら。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「ふぁー、どっちもすごいですね。二週間ちょっと……いや、一週間ちょっとですかね。それだけであそこまで連携が取れるなんて」

 

言い直したのは先週から雨が降り出し、殆どの生徒が訓練できなかったからであろう。アリーナの観察室兼管制室でモニターに映る戦闘を眺めている真耶は感心する。

その光景は、ラウラに対して一夏とシャルルが連携で攻めるというものであるが、飛色の狙撃によりシャルルが妨害されているものだった。とはいっても、二人の連携が決して効果がないわけでもなく、ラウラ達も少しダメージを受けてきている。

 

 

「織斑くんたちはコンビネーションで攻めてますが……遠木くんたちは始め以降連携を取りませんね」

 

「それは少し違いますね山田先生。むしろ遠木たちの方がチームワーク……いや、この場合はチームプレイが取れているだろう」

 

 

真耶の疑問に千冬が答えるが、それを聞き再び?を頭に浮かべる。

 

 

「あいつらは確かに織斑たちと対照的な戦い方を今している。一見チームプレイを重視してるかしてないかでは織斑たちの方がしている様に見える………が、私に言わせれば、遠木たちの方がよっぽどできている」

 

「ええ!?」

 

 

千冬の発言に真耶は驚愕する。言っている通り、一夏とシャルルは若干シャルルに頼りがちとなっているが、協力しながらの攻撃、防御等を行っている。具体的に言えば、今もラウラのAICに捕まるシャルルに一夏が攻めて、それを解除させたり、逆に一夏がやられていればシャルルが援護している。

一方でラウラはほぼ独断行動させて、飛色もそれに対して何も言わずシャルルや一夏を狙い撃っている。

ラウラや飛色がそれぞれ不利になっていようと、それは変わっていない。

 

 

「もちろん遠木たちはそ れ(チームプレイ)を重視してるわけじゃなく、できてる(・・・・)というだけだ。個人プレイをやらなければいい訳ではない。大事なのはそれぞれが相手を仕留めようと、仲間よりも勝ちにこだわろうと常に考える気持ち、それがあってこその連携だ。ただの仲良しこよしはチームプレイとは言わん。だからと言って、支障が出れば意味ないがな………」

 

 

百戦錬磨を経験した戦乙女(ブリュンヒルデ)である千冬だからこそ、そんな考えもでき、説得力もある。

真耶も説明を聞いて「はぁ、なるほど……」と頷きながらモニターに視線を戻す。

 

 

(それにしても遠木の奴、ボーデヴィッヒをどう説得したんだ? 他人の意見を聞かないアイツが遠木の指示に従っているなど考えられんが………)

 

 

二年前、ドイツ軍でラウラの部隊で教授していた千冬はラウラの性格をよく知っている。優秀であるのだが、強さと攻撃力をイコールであると考え、それが絶対であるというこという思考、そして唯我独尊という形になっている。ついこの間、自分と二人で話した時もまだその状態であった。

 

しかし今のラウラは飛色が偶に言う指示に従い、先ほど説明した通りチームプレイが取れている。

 

 

(……………さて、どうなることか)

 

 

 

ワアアアッ!

 

 

 

会場が一気に沸きだし、歓声が直に響いてくる。

 

「あ! 織斑くん零落白夜を出しましたね。一気に勝負をかけていくんでしょうか?」

 

「さあな。………さて、試合が荒れてくる。ここからはどう転がってくか見物だぞ」

 

「はい!」

 

 

そして二人は再びモニターを見る。そこに映る自分たちの教え子を。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「行くぜ!」

 

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)『零落白夜』を発動した一夏が、『高速切替(ラピッド・スイッチ)』でハンドガンをコールしたシャルルと共に前に出る。

 

それとほぼ同時に飛色は先ほどの様に距離をとり、ラウラは一夏に真っ向勝負を仕掛けていく。

 

かと思いきや、ラウラは一夏の前に出た瞬間にAICを起動させて拘束攻撃に切り替えてくる。

 

それにギリギリ反応できた一夏は急停止、転身、急加速で躱し一旦体勢を立て直す。

 

 

「ちょこまかと………!」

 

(あそこまで動けるようになっていたか……)

 

 

一夏の動きで腹を立てるラウラと、成長具合を分析していく飛色。

連続でAICを起動されれば拘束される可能性は十分だと試合前のデータから予測していたが、今のところ成功はしていない。そうなると作戦に若干の修正を加えなければならない。

 

 

――――と、考えながら飛色は鳴っていた警告音を聞いて回避行動をとり始める。

 

 

先ほどから飛色はシャルルからの牽制射撃を受けていた。

しかも先ほどより連射性が高いからか、上手く銃を構える前に狙われてしまい射撃ができなかった。

 

 

「ちぃっ、ならば!」

 

 

舌打ちしたラウラはワイヤーブレードを一夏に向けて放つ。しかしそれはバレルロールでくぐり抜けられ、その隙に一夏が一気に接近してきた。

 

 

「おっらああ!」

 

「!?」

 

 

しかも一夏は開始直後の時と振り方………攻撃の仕方が異なっていた。

始めは振って行う斬撃であったが、今は切っ先を向けたままの突撃(・・)であった。

 

AICを使用する場合には捕える対象を、まずは捉えなけれ(・・・・・)ばならないこと(・・・・・・・)である。その対象がどんなものであれ、それは変わらない。しかし今やろうとしている物はエネルギー無効化の能力がある『零落白夜』状態の雪片を持つ一夏。

 

斬撃であるならば、腕の動きが線のようになっており捉えやすいが、突撃は()で攻めてる。

難易度が上がるのはほぼわかっていた。

 

 

「無駄なことを……!」

 

 

そんなことを言いながらラウラは意識を集中させ、AICを起動する。

 

すると一夏の動きがピタリと止まった。

 

そのままレールカノンの照準を合わせようとするが―――

 

 

「………忘れているのか? これは―――タッグマッチなんだぜ?」

 

「!?」

 

 

その言葉で慌てるラウラであるが次の瞬間、装備されたレールカノンが爆散する。

すぐ近くにいたシャルルからの射撃が炸裂したのだ。

 

 

「ちっ!」

 

 

ラウラは舌打ちながら後退し機体の損傷を、一方で一夏は手を握ったりしてAICがまだ起動されているかを、それぞれ確認していく。

一夏は完全にAICの固定から解放されていた。

 

 

「やっぱり………思ったとお――りぃ!?」

 

 

確信を突いたかのような一夏に銃撃の連射がされ、それを寸前で察知したが何発か喰らってしまう。

その実行人物である飛色は、一瞬の隙が生まれたというのに致命傷を与えられなかったこと、そしてもう一つの理由から奥歯を噛み締める。

 

 

(まさか………ばれたのか?)

 

 

一夏の途切れた言葉でそう考える飛色。

何がかといえば、ラウラのAICのこと。

 

実はこの兵器、致命的な弱点が存在する。それは『停止させる対象物に意識を集中させていなければ効果を維持できない』というものだ。

なぜ飛色が知っているかというのは、ラウラの戦闘記録映像から情報を収集した時に得たからである。セシリアのビットを止める瞬間には必ず一斉に、密集している時のみであり、位置のバラつきが大きかった場合には使用しなかったことから、まず不信感を抱き始めた。

その感覚の正体がわかったのは一夏を停止させた後に自分が行った射撃。一夏を拘束していた時に不意打ちを仕掛けたのと同時に一夏が再び動けるようになっていたのだ。つまり解除方法には使用者の意識が正常である場合で、『何らかの刺激などを与えればいい』という考えに一瞬なったのだが、セシリアのことと重ね合わせてみると、『集中するような行動になる必要がある』という考察が出来た。

 

後にラウラとの交渉が成立した際に確認のために本人に聞いたが、その考えは間違いではなかった。

 

もしそれが本当に気づかれたのだとしたら、また作戦の修正をしなければならないと考え―――

 

 

「!!」

 

 

―――ようとしたところで、先ほどと同じようにシャルルからの射撃が来る。

 

 

「ボーっとしてるなんて余裕だね飛色!」

 

 

勢いよく叫びながら連射を続けてくるシャルル。飛色はその射程圏内から離脱しようと回避しながら後退していく。

 

 

「一夏、今だよ!」

 

「ああ!」

 

「!!?」

 

 

いつの間にか飛色の後ろには一夏が居た。回避に集中しすぎて周りが見えてなかったか、はたまたラウラと一夏が一対一をして気にしなくてもいいんじゃないかと少しの慢心から来たのか、それにはギリギリまで反応できず―――

 

 

「うおらぁ!」

 

「くぅっ!」

 

 

零落白夜の一撃を喰らい、飛色は地上に切り飛ばされた。

 

 

「よし!」

 

「っ! 一夏後ろ!」

 

 

ようやく一撃入れられた一夏は小さくガッツポーズするが、シャルルの叫び、そして機体からの警告音でハッと我に返る。

 

 

「私を忘れるとはな!」

 

「げ!」

 

 

振り向けばラウラが目前まで迫ってきていた。しかもその両腕にはプラズマ手刀を展開しており、一夏に切りかかってくる。

 

 

「やらせない!」

 

「邪魔だぁ!」

 

 

しかしそれはシャルルの援護射撃で届くことはなかったが、それでも切りかかろうとしていく。今度はシャルルにワイヤーブレードを放ちながらである。

 

 

「うぁ!」

 

「シャルル! ――ぐぁ!」

 

 

両方の攻撃は先ほどより鋭さを増しており、まずはシャルルがワイヤーブレードで飛ばされ、続いて一夏がプラズマ手刀を受けて墜ちていく。そこに畳み掛けていくようにラウラは一夏へ接近していく。

 

 

「これでぇ!」

 

 

今のラウラには排除対象である一夏にしか目がないのか、冷静さの欠けた行動。

 

故に―――

 

 

「まだ終わってないよ!」

 

「な!?」

 

 

高速で突撃してきた機影に気づかず、吹き飛ばされる。

その機影―――シャルルのリヴァイヴはそのままラウラへ連射をしていく。

 

 

「くっ、『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』か!」

 

 

試合中にも使用していたデータになかった技術。奇襲に持って来いのそれを見せられたラウラは焦りそうになったが、右腕を出そうとする。

そしてAICをシャルルに対して起動させようとしたが、それは後ろから来た衝撃で叶わなかった。

 

 

「!?」

 

 

突然のことで視線を巡らせるラウラ。そしてすぐ後ろを見れば、アサルトライフルを構えた一夏が。

銃口からは弾を撃ち出したからか、小さな煙が出ていた。

 

後付装備がない一夏の機体であるが、今持つのは以前行った射撃訓練の際にシャルルが使用許可の認証をした銃である。試合中に使用していたものを、弾切れしていない状態でシャルルが放っておいたのだ。

 

 

「こ、のぉ、死に損ないがぁぁ!!」

 

 

憤怒の形相でラウラは一夏へワイヤーブレードを飛ばした。

しかし完全に冷静さを失ったその攻撃は当たることがなく空を切る。

 

 

「ちぃ! なら―――」

 

「こっちの方を気にした方がいいよ!」

 

 

そう告げたのは、ラウラの目の前に居るシャルルであった。

 

 

「この距離なら外さない!」

 

 

するとシャルルが常時装備していた盾の装甲が弾け飛ぶ。その内側には、単純な攻撃力だけなら第二世代最強とも謳われていた装備。リボルバーと杭が合わさったような見た目。六十九口径パイルバンカー≪灰色の鱗殻(グレー・スケール)≫。通称―――

 

 

「『盾 殺 し(シールド・ピアース)』……!?」

 

 

焦りの表情を浮かべるラウラだが、遅かった。

シャルルのパイルバンカーがラウラの腹にクリティカルヒットする。

 

 

「ぐぅぅぅっ!!」

 

 

その攻撃力の高さからか、一撃でラウラのシールドエネルギーは大きく持っていかれる。

更にその衝撃に耐え切れなかったのか、ラウラは吹き飛ばされアリーナの壁に背中を打ち付けられた。

 

 

「うおおおお!!」

 

 

とどめを刺そうとするべくラウラへ向かうシャルル。

射程圏内にラウラを入れ、再び撃ち出そうとしたが………

 

 

ドガァン!

 

 

先ほどのパイルバンカーとは違った音がその場に轟く。

それは打ち込む瞬間に杭の先が弾かれたのだ。

 

 

―――――ラウラの相方によって。

 

 

「ギリギリか」

 

 

少し離れた場所から、飛色がスナイパーライフルを構えて口にした。

零落白夜の一撃を受けはしたのだが、ギリギリで踏みとどまったようだった。

 

 

「一夏、そっちお願い!」

 

「おう!」

 

 

飛色に向かっていく一夏。それから距離を取りながら、飛色はシャルルへ射撃をしていた。

 

 

「そいつを倒されると、こちらが困るからな!」

 

「なら―――」

 

 

シャルルが飛色へ目標を変えようとした瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う………ああああああああああっ!!!」

 

 

 

ラウラの絶叫が、その場に響いた。

 

 

 




約2ヵ月、投稿もせずですいません。
学年末試験や提出物が多くて多くて……

次話は今週中に投稿できるようにします。
ラウラへのフラグはどちらが立てるのか……実はまだ決まってなかったりです
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