IS インフィニット・ストラトス 努力の天才   作:xix

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申し訳ありません。


第21話 一方的な約束

(私は………こんなところで負けるのか?)

 

 

確かに私は今の自分に慢心していたのかもしれない。相手の力量も、データのみで決めつけ見誤った。

教官と話して、私は本当に付け上がっていた。そう、完全に己のミスだ。しかし―――

 

 

(私は……負けられない………負ける訳にはいかない………!)

 

 

先ほどからISの警告音(アラート)が出ているがそんなの関係ない。

 

 

(勝たなければ………いかんのだ………!)

 

 

―――――遺伝子強化試験体C‐0037。識別記号―――ラウラ・ボーデヴィッヒ。

人工合成された遺伝子から作られ、鉄の子宮から生み出された存在………それが私だ。

 

ただ戦うだけのために作られ、生まれ、育てられ、鍛えられる。それだけが生甲斐だった。

私は性能面において最高レベルを維持し続け、部隊では最強―――そう、優秀であった。

 

だがそれは、世界最強の兵器―――ISの出現まで。ただちに私にも、適合性向上のため肉眼へのナノマシン移植手術が施された。

 

それは危険性はなく、理論上では不適合も起きない―――はずであった。

 

私の体は適合しきれず、常に稼動状態となってしまい……制御不能へと陥った。

 

そしてその結果、私はIS専門の部隊で遅れを取り………『出来損ない』の烙印を押された。

 

そんな時………私はあの人に………織斑千冬に出会った。

 

彼女はきわめて有能な教官だった。

 

私はIS専門となった部隊で再び最強の座に君臨した。

 

 

 

それと同時に私は―――彼女に憧れた。

 

 

こうなりたい、この人のようになりたいと。

 

 

 

そして私は訊いてみた。なぜそこまで強いのか、どうしたら強くなるか、と……

だが、返ってきたのは―――私の知らない彼女だった。

 

 

(違う……)

 

 

そんなのは私の知るあなたじゃない。

あなたは強く、凛々しく、堂々としている。

 

―――そんな優しい顔をするのは……あなたじゃない。

 

―――許せない。

 

教官にあんな表情をさせる織斑一夏を―――認めるわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして――――あいつ(・・・)は、まだ戦っている。

 

以前、2対1では勝てないと言ったのに

 

私がいないというのに

 

 

―――あいつは戦っている。初めの教え子(・・・)

 

 

だから私は………負けるわけにはいかない

 

 

 

(力が……欲しい)

 

 

 

 

 

『―――願うか……? 汝、より強い力を欲するか……?』

 

 

声が聞こえる。

そしてその問いの答えは―――既に決まっている。

 

 

(寄越せ、力を……比類無き、最強を!)

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「う………ああああああああああっ!!!」

 

 

ラウラの絶叫がその場に響きわたり、同時にラウラが纏うISに電流が走り出す。

 

 

「な、なんだ?」

 

「―――――!?」

 

「なっ!?」

 

 

一夏、シャルル、飛色は戦う手を止めたが自分の目を疑った。

 

その視線の先……ラウラのIS、シュバルツェア・レーゲンが変化したからだ。

 

装甲となっていたものはぐにゃりと溶けて半液体状になりだす。

そしてそれは―――ズブズブと音を立て、ラウラを飲み込んでいく。

 

 

「なんだよ、あれ……?」

 

 

一夏がそういうのも無理はない。

 

ISがこうして変形したりするのは現段階で主に3つ。

パッケージ装備などによる際の機体改造。

操縦者に適応するようにする『初期操縦者適応(スタートアップ・フィッティング)』。

機体が何らかの理由で進化する『形態変化(フォーム・シフト)』。

 

しかしシュヴァルツェア・レーゲンだったものはそのどれにも類似しておらず、

今は粘土から作られるかのように、成形されていく。

 

やがてそれは少女を象っているように、腕と脚、頭に装甲がつけらた……ISのようになる。

そしてその手には―――

 

 

「雪片……!」

 

「………」

 

 

 

「―――っ!」

 

 

刹那、黒いIS―――敵が一夏の懐へ飛び込み、一閃した。

 

 

「ぐぁ!!」

 

 

一夏が構えた得物―――雪片弐型が弾かれ、地に落ちる。

そして敵は上段に構え、縦一直線の鋭い斬撃を彼に喰らわせる。

 

かろうじて回避できたのか、左腕を少し切られたほどで済んだが、試合でエネルギーが尽きかけていた白式は

その一撃で強制解除される。

 

致命傷を受けていないことホッとしたシャルル。

さすがの飛色も目の前で死なれたりするのは嫌だったためか安心する。

 

しかし一夏はと言うと

 

 

「……………それが………それがどうしたああああ!!!」

 

 

絶叫しながら敵へ突っ込んで行こうとしていた。

しかし

 

 

ガシッ

 

「!?」

 

「……バカかお前は?」

 

 

一夏が突然の浮遊感がしたと思えば、後ろから罵倒される。

そして違和感の正体が頭を鷲掴みにされ持ち上げられてるということ、

声の主が飛色であることに気づく。

 

それでも、頭に血が上っている一夏は反抗しようとする。

 

 

「離せ飛色! アイツ、ふざけやが―――」

 

「……落ち着け」

 

「!? ぐぅぅぅ!!」

 

 

飛色が握力を強めていき、掴まれている一夏は呻き声をだす。

 

 

「くぅ……………あ、あれは……」

 

 

それでも、一夏は目前の敵を睨みつけていた。

今にも飛び掛かりそうな感情は見えなくなり、飛色は掴む手を軽く緩めて聞く。

 

 

「あれは、千冬姉のデータなんだ。千冬姉だけのものなんだよ。それを……くそっ!」

 

 

どうやら敵は、千冬のデータを基に作られているらしい。

武装からも予測は出来たが、たった一回打ち込まれただけで確信したように話す一夏に軽く呆れる。

 

 

「それだけじゃねえよ。あんな、わけわかんねえ力に振り回されてるラウラも気にいらねえ。ISとラウラ、どっちも一発ぶっ叩いてやらねえと気がすまねえ」

 

 

この言葉を聞いた飛色は―――

 

 

 

「………ハァ」

 

 

 

呆れていた。

 

真似事をする、というのは誰でもよくあることである。

勉強をするときの暗記方法や、スポーツの技量を上げる、という事には、コツの一つとして有名選手の動きや成績が優秀な者のやり方を真似るという事がある。

教科書通りの動きをするというのも、同意だ。

 

そして第一回IS世界大会≪モンド・グロッソ≫の総合優勝者である千冬。彼女に憧れ、その真似事をする人物は星の数ほどいるだろう。教科書にも彼女の動きを参考にしたものがあったかもしれない。だというのに、姉だけの動きをするから許せない。というのは理不尽だ。

 

それにその対象はISだけのはずである。数週間であるとはいえ彼女と接してきたからか、敵からラウラの意識は窺われないと思う。ならば暴走などが起きたというのが妥当。彼女は被害者であって、加害者とは言いにくいはずだ。

 

 

「織斑、蛮勇という言葉を知っているか? 今のお前がその状態だ。それと、行く必要があるのかどうかを考えてから動―――」

 

『緊急事態発生! トーナメントの全試合は中止、鎮圧のため教師部隊を送る! 繰り返す―――』

 

 

飛色が言おうとして、アリーナに警報と避難勧告が響く。

それを聞いた飛色は一夏を離し、地面に着かせる。

 

 

「聞いたとおりだ。これでお前が出る必要があると思うのか?」

 

 

そして一夏に問いかける。

この場合、退くというのが正論、普通のはずだ。ISも使えない状態でISだかわからない危険なものへ飛び込む、などという行動をすれば怪我で済むとは到底考えられない。

人は誰でも、自身が傷つくことは避けたいと考えていると思考する。

 

 

「……ちげぇよ」

 

 

しかし一夏は―――

 

 

「違うぜ飛色。全然違う。俺が『やらなきゃいけない』からとかじゃない、俺が『やりたいからやる』んだ。ここで引いちまったら、それはもう俺じゃあ……織斑一夏じゃねぇよ」

 

 

そう断言した。

しかしそれを聞いても、飛色は呆れの溜息を吐く。

 

一夏は『自分のやりたいようにやらせろ』と宣言しているようなものだ。あまりに予想外で奇天烈な返事で少し頭が痛くなり―――

 

 

 

「だ、そうですが……織斑先生」

 

「え?」

 

『……ああ』

 

 

飛色の呟きに対して千冬が返信する。そしてその反応の仕方からして、始めから聞いていたと言うことに一夏は気づいた。

 

 

『……織斑、遠木、デュノア』

 

「「「はい」」」

 

 

少しの沈黙後、千冬から開放回線(オープン・チャネル)が入ってくる。

 

 

『教師としてはお前らを下げていくべきだが、教師部隊の到着まで少し掛かる。それまでアレの足止めをしろ』

 

「っ、千ふ―――」

 

『ああ、それと私は今緊急で入った各企業への事情説明をする必要がある。お前ら三人は臨機応変に対応しろ。以上だ』

 

『え、お、織斑先せ―――』

 

 

ピッ

 

 

「ということだ。織斑」

 

「……遠木」

 

いきなり通信が切れると、一夏は飛色の前で膝を着きだす。

 

「無理だとわかっていても……頼む、やらせてくれ」

 

そういいながら頭を下げる。

 

「……お前は本当に馬鹿か。織斑先生が何を言ったのか理解しろ。『お前ら三人は臨機応変に対応しろ(・・・・・・・・・・・・)』だぞ」

 

「え……あ!」

 

つまり、かなり遠回しにだが『好きに動け』という意味でも取れる。

そして三人ということはそこに一夏も含まれているのだろう。

 

「でも、いいのか?」

 

「……俺の相方が起こした問題だ。俺が何とかするべきでもあるのだろうが、余裕が無いのも事実だ。利用するものは利用させてもらう」

 

本人は至って真面目に答えてはいるが、一夏は利用される側になることに苦笑する。

飛色の言い方はあまりいいものでもないが、今更とも考えるが。

 

「まあ、それでもお前はエネルギーの問題が―――」

 

「無いならもってくればいいでしょ」

 

答えたのは、会話に入れなかったシャルル。

その手には自身の機体から伸びたケーブルがあった。

 

「一夏、白式を」

 

「お、おう」

 

一瞬戸惑った一夏は、言われるがままに待機状態の白式をシャルルへ出す。

そこへ先ほどのケーブルを繋ぎだす。

 

「リヴァイヴのコア・バイパスを開放。エネルギー流出を許可」

 

「……デュノア、エネルギー残量からはどれぐらいの稼動が可能だ?」

 

「たぶん、右腕と武器だけの一極限定モードだったら……零落白夜とかが5秒ぐらいで限界だと思う。飛色たちに結構削られちゃったから」

 

「……織斑、右腕とブレードのみだがいけるな?」

 

「ああ、十分だ」

 

5秒……つまり使用可能なのはほぼ一瞬。その条件から相手を倒すための最善の手を考える飛色。

そしてエネルギーが尽きたのか、シャルルのリヴァイヴが粒子化して消える。

 

「これで残存したエネルギーは全部渡せたよ」

 

「……」

 

「……よし。織斑、作戦はシンプルに一撃必殺で行く。俺が突っ込んで相手を牽制、隙が出来た瞬間にお前が一撃叩き込む、以上だ」

 

それを聞いた一夏はその目に決意を込め、頷く。

 

「なら……行くぞ!」

 

「ああ!」

 

飛色は掛け声共に黒いISへと加速、それに続くよう一夏も走り出した。

相手も飛色へ刀を振り下ろす。速く鋭い袈裟斬りだが―――

 

「(織斑に似て直線的過ぎる!)」

 

直前でマニュアル操作のPICをフル活用して急停止、と共に両腕を前に出してハンドスプリングの型で刀をかわす。

 

「オォォォォ!! ラァ!!」

 

その一瞬を狙い、零落白夜を発動した一夏が相手を断ち斬った。

 

 

 

―――が

 

 

「ギ…ギ…………ギ…………!!」

 

最後の悪あがきか、一夏へと刃を返して振り上げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チェックメイト」

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!

 

―――直前で、飛色の零距離マシンガンが炸裂した。

 

「………」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

試合開始前。

飛色とラウラがピット・ゲートから出る寸前。

 

 

「ボーデヴィッヒ」

 

「なんだ?」

 

飛色が声を掛ける。「また作戦の確認でもするのか」と聞き返すラウラだが、首を横に振り否とする飛色。

 

「あまり問題を起こすなよ」

 

「……ふん。それは私の勝手だ」

 

「ハァ……」

 

似たようなやり取りがタッグを組むことになってから随分と多かったが、慣れずに溜息をする。

 

「なら、お前が何かやろうとしたら止めるぞ。この前のようなことをするなら無理にでもな」

 

「……勝手にしろ」

 

ラウラは短く答えてゲートを潜り、飛色もその後に続いた。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「ギ………ギ………」

 

 

黒いISが停止すると、その形がどろりと溶け出す。

そんな中から力を失い崩れてくるラウラを、飛色は慌てて抱えた。

 

 

「………止めると言ったからな」

 

 

ふん。と鼻で息して、飛色は歩き出す。

上空を見ると、ISを纏った教師たちがこちらへ降下してきた。

 

 




ラウラフラグをどうしようか悩んだ末、今はここまでにします。
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