【無自覚TS】ダンジョンで記憶喪失になった女の子だけど、周りの反応がなんかおかしい   作:じっくりコトコト弱火メス堕ち

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シリアス回
そろそろTSした理由をですね


幕間 スプートニクの誓針

 窓のない部屋で、十数名が長机を囲み向かい合っていた。探索者連盟の上役、1級探索者、そして警察機構の役職持ち、この国の未来を左右するような面々が向かい合い、互いの顔色を探っていた。

 

「それで、検査結果は?」

 

 口火を切ったのは探索者連盟に属する一人だった。

 

「お手元をご覧ください」

 

 白衣を纏った研究者然とした女性が手元の端末を操作する。

 各々の手元にホログラムが投影される。そこに浮かび上がるのは黒髪に黒目、中性的な少年の顔写真と、その探索者としての概要。

 

 書かれている名前は、『霧島 雷斗(らいと)』。

 

「2級探索者の冬木繁が連れ帰った霧島雷斗とされる少女ですが、外見はおろか、DNA、歯型、指紋……その全てが霧島雷斗のものと一致しませんでした」

 

「魔力紋は?」

 

「それについても同様です。本人の記憶がない以上、彼女を霧島雷斗とみなす根拠は冬木繁の証言のみです。よって仮称『スプートニクの誓針(せいしん)』は現状、正体不明の少女が取り込んでいると言わざるを得ません」

 

 室内に重苦しい沈黙が満ちた。しかし白衣の女性は気にすることなく端末を操作し、話を続ける。

 

「状況を再確認します。およそ20日前、4級ダンジョン探索者である宮本礼二と早川愛菜ペアが8層の探索中、未発見の小部屋を発見しました」

 

 ホログラムの画面が切り替わり、動画が再生され始める。映ったのは若い男女二人と、その向こう側にある白い小部屋だ。

 

『ねーねー、もしかしてこれ未発見の小部屋じゃん?』

『マジかよ……このいっぱい落ちてる剣みたいなやつ、まさかマジックアイテムか?』

『うそっ! これ売ればあーしら大金持ちじゃん!』

『ああ! しょっぱいゴブリン狩りともおさらばだ』

 

 それはたった10秒の短い動画だった。別に不正をしているわけでもなく、ただただ純粋に喜んでいるだけだ。それ故に、その結末を知る者たちはみな一様に苦い顔をした。

 

「……この後は?」

 

「アイテムを拾い集めている途中で、配信は突然終了しました。この後彼らがどうしたのかは不明です。ただ」

 

 何が起きたかだけはわかる。白衣の女性は目を伏せて続けた。

 

「その後、8層に未登録のモンスターが出現。1級探索者を含む十数名が死亡し……生き残ったのは冬木繁と、霧島雷斗とされる少女の二人のみです。そして、討伐されたモンスターの体組織からは早川愛菜のDNAが検出されました。」

 

 画面にモンスターの写真が映る。数メートルを超える体躯に、病的なまでの白い肌。顔には縦に裂けた、昆虫のような口があり、背中からは左右非対称な複数の手が生えていた。

 

 それが、早川愛菜の末路だった。

 

「宮本礼二については、モンスターの体内より体組織の一部が見つかりました。捕食されて死亡したものと推測されます」

 

「……信じられんな。人間がこうなるとは……」

 

「早川愛菜と目されるモンスターの体内からは、破壊されたマジックアイテムも検出されました。分析結果より、『スプートニクの誓針』と同一のものと断定。冬木繁少年によると、霧島雷斗はスプートニクの誓針を自身に使用し、瀕死の状態である冬木繁を回復させた。そして霧島雷斗は現在の姿に変化した。情報を総合すると、スプートニクの誓針は願望器系のマジックアイテムだと考えられます」

 

 願望器系。その言葉に空気が張り詰めた。

 マジックアイテム――正式名称は特定異物。ダンジョンから稀に発見される、魔石よりも重要視されるものだ。効果はものによって様々だが、人(・)の(・)願(・)い(・)を(・)叶(・)え(・)る(・)タイプのものはどんな代償が必要であれ特級、要回収対象に指定される。

 

「人をこんなふうに変えちまうもんを、自称3級探索者が体内に取り込んでいると。随分ふざけた状況だなぁおい」

 

 なじるように言ったのは、赤髪の青年だった。

 

「……自称ではありません。冬木繁の証言に基づいており」

 

「もっと問題じゃねえか。せめて霧島雷斗の思い出一つくらい語ってくれりゃあ考えてやるけどな。何も覚えてないわ、身体も霧島雷斗とは全くの別物……成り変わった他国のスパイならまだマシだな。人間に化けたモンスターでもおかしくねえぞ」

 

 赤髪の青年は室内にいる面々を睨みつけた。

 

「さっさと体内から回収すりゃいいだろ。なに日和ってんだ」

 

「そうはいかないのよ」

 

 遮ったのは、女性の声だった。前髪をインテーク状に分けた彼女は、赤髪の青年を向かい側から嗜める。

 

「1つ、霧島雷斗と一致しないとはいえ、彼女のDNAは明らかに人間。スパイという証拠もない以上、人権は保証されるべきね。2つ……スプートニクの誓針を取り出すには彼女の殺害が必須になる。そうでしょう?」

 

 彼女は白衣の女性へ視線を向けた。

 

「はい。スプートニクの誓針は、心臓付近の脊髄と融合しています。摘出すれば彼女は確実に死亡します」

 

「どうでもいいだろ。さっさとやれよ。一人の探索者と特級異物、比べるまでもねえだろ」

 

「はっ、本音が漏れたわね。3つ。4級下位の探索者ですら、1級を複数死傷させるモンスターに成り果てた。……3級上位の実力を持つとされる元・霧島雷斗が変異した場合……どれほど死傷者がでるかしら?」

 

「逆だろ。そうなる前に処理しようって言ってんだよ」

 

「あら、1級探索者なのに願望器系アイテムの危険性をご存じない? その程度の記憶力でライセンス更新できるのかしら」

 

「抜かせ。嫌と言うほど知ってるから言ってるんだよ。手遅れになる前に処理するべきだ」

 

「安定している願望器を刺激するなんて、それこそ愚の骨頂ね」

 

 沈黙。これ以上は平行線だと悟った彼らは、無言で殺気を飛ばし合った。

 

「少女のことよりも解決するべき問題があります」

 

 それを止めたのは、白衣の女性だった。

 

「動画の分析、そして現地調査の結果よりスプートニクの誓針のほとんどは、何者かによって持ち去られたことが分かっています。私達は一刻も早く回収する必要があります。たとえ――」

 

 自分が何者かもわからぬ少女と、その周りにいる学生たちを囮に使ってでも。

 

 




ライカはスプートニクにのせられ、そして帰ってこなかった。
次回からまた無自覚TSライフに戻ります
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