そろそろかぐやを出したい…… なんて言っておいて、下の上とは何事なのか
(今回、独自設定多めです)
「……知り合い?」
「いや……、違うけど」
突如声をかけてきたのだから、もしやと思い三人に尋ねるもどうやら違うらしい。インターネット上のお友達だとか、アバターだから誰だかわからないけどもクラスの人だったり、とか。
あり得ると思ったんだが……。
ざっと見渡せば周囲に立つ九人の男たち。鬼だったり、イノシシだったり、はたまたお化けだったりとをモチーフにした衣装に身を包んでおり、まるで小さな百鬼夜行の様だ。
「えっと、……俺に何か用ですか?」
「あぁ、もちろん。俺ぁ、兄ちゃんって言っただろ?」
四人の中で男はお前だけじゃないか、とそう言いながら一人が代表して前に出てくる。
モチーフは……、狼だろうか? 灰色の髪を大雑把に散らした下に、ワイルドな造りをした顔がのぞき見える。
切れ長の瞳がこちらを捉えた。
「なぁ兄ちゃん。アンタもツクヨミの住人なわけだ。となりゃあ、このシマの……、いや、この世界の絶対不可侵の原則を知ってるはずだよなぁ?」
「絶対不可侵……?」
なんだそれ、聞いたことないぞ。
吸血鬼には吸血鬼の、そして吸血鬼狩りには吸血鬼狩りの独特なルールが存在していたが、それと同じようなものがあるのだろうか。
俺は酒寄さんたちに視線を向け、知っているかを尋ねるも、全員が顔を横に振る。いったい、どういうことだ?
「……この子たちも知らないみたいですけど。そんな原則、本当にあるんですか?」
「あぁ、あるさ。そして、嬢ちゃんたちは知らなくてもいい原則でもある」
「……なんだそれ」
もはやナゾナゾの領域じゃないか。俺は弁えておくべき原則で、けれども女子達は知らなくてもいいルールなんてさ。
しかしいくら悩んだところで意味はない。
だって、そもそもが知っているはずもないのだから。脳の中の記憶をどんなに漁ったって、無いモノを探していれば見つかるモノなどあるはずもなし。
こちとらツクヨミ初心者だ。俺の中のツクヨミノートはまっさらな白紙だって、胸を張って言える。
「待ってください。実は彼、今日初めてツクヨミにログインしたんですよ。だから……」
「ほぉ……。それなら先輩プレイヤーからのありがたい指導を頂けるってわけだ。ますます断る理由がねぇだろ……、なぁ?」
酒寄さんが俺と彼との間に入って仲裁しようとするが、聞く耳を持ってくれない。
話が進まない、というよりは話がもう終わってしまっているのだ。少なくとも、彼らの中では、とっくに。
俺がルールを破ったというのも、だから彼らの要求通りに連行されるというのも、そしてその先で彼ら曰く「指導」とやらを受けることも。
全部、既に彼ら九人の中では決定事項として定まっているのだ。
ならばもういっそのこと……。
「――いいよ、iroさん」
「は……、何言ってんの?」
ずい、と俺の為に前に出てくれた酒寄さんを後ろに引き、代わりに俺が前に出る。
「なんだ、潔いいな。そう言うヤツは好きだぜ?」
くつくつと男が笑う。それに合わせるようにして後ろの八人も笑い声を漏らした。
オオカミの見た目をしている癖して、その行動は真逆の羊みたいだ。羊は群れとしての動きを重視し、リーダーの動きに他の個体が従う、などと聞いたことがあるが、まさにそれそっくり。
「ちょ、ちょっと七夜……?」
「正気……?」
綾紬さんと諌山さんがそれぞれ俺の着ている和服の袖をくい、と引っ張る。
その表情は不安げで、こちらを心配そうに見つめていた。
「まぁ、これが一番手っ取り早いしね」
だから彼女たちに少しでも安心してもらおうと、にこりと笑みを浮かべて振り返る。
……が、忘れていたが俺は今、天狗の面をしていたので、どんな表情を浮かべてもあちらには伝わらないのだった。
気を取り直そう。
「……で、結局なんですけど。俺は何をしてしまったんです?」
とりあえず、彼らの要求をのむことにしたので、代わりに今回の件の原因について教えて欲しい、とそう真っ直ぐに伝えた。
今回は仕方ないが、次回から気を付けることはできる。知らなかった、で通るほど世界は甘くないのは、ただの高校生でしかない俺だって知っている現実だ。
「――お前は、酢豚にパイナップルを入れるか?」
「……はい?」
だが、俺の質問に帰ってきたのは答えではなく、さらなるナゾナゾであった。
酢豚と言えば、あの中華の酢豚だよな。甘辛い餡で野菜や豚肉を炒めた、あの料理。というか、それ以外の酢豚を俺は知らないが。
パイナップル入りの酢豚、というものがあるのは聞いたことはある。俺は聞いたことしかないが、それは大分好みが別れる味をしているらしい。
パイナップルを酸味としてとらえるか、それとも甘みとして捉えるかで大きく評価が変わるのだとか……。
しかし、何故に今その話題を?
「質問を変えよう。――お前は、唐揚げに勝手にレモンをかける奴をどう思う?」
「……?」
先ほどから何を言っているんだ、この人型オオカミは。
俺、別に変なこと聞いてないよな? 面を貸せ、って言われたから「わかりました。代わりに、理由を教えてください」って言っただけだよな。
別に食の好みの雑談をしたい訳じゃないんだが。
「お前がしたことは、つまりはそういうことだ……」
どういうことだ。まったくわからん。
「な、なんと……!?」
「なんか真美にだけ事の重大さが伝わったらしいんだけど……」
はぁ、とため息をつく綾紬さんと、世界の真相を知ってしまったような表情を浮かべる諌山さん。
俺たち残りの三人は置いてけぼりなのだけれども、四人中三人に伝わらない例えというのは、例えとしてどうなんだろうか。
「……どういうことだと思う?」
「アホッ、すっげぇわかりやすいだろ!」
「うーん、人によらないかなぁ……」
なんなら仲間の残り八人の皆さんでも、伝わった人も居れば伝わってない人も居るみたいだし。
「……んんッ」
気まずくなったのかそう、わざとらしい咳を一度して場をリセットする。
「まあ、要はだ。お前の罪は……」
「罪は……?」
そこで男は一呼吸を挟み、緩急をつけ結論を言い放つ。
「百合の間に挟まったこと……、だ」
――あたりを、静寂が支配した。
「百合?」
花の種類の話か、それともまた分かりにくい例え話だったりするのだろうか。
それとも何らかの隠語か何かか。わからない。
だが、俺以外の三人はどうやらその「百合」とやらが指し示す意味を知っているらしく、「あぁ……」なんて声を漏らしていた。
勘違いじゃなければ、その表情は何かに呆れ果てているように見える。少なくとも、先ほどまでの心配そうな色は薄くなった。
急に張り詰めていた空気が弛緩したように感じる。
とりあえず、誰でも良いから解説を……。そう思っていると。
「この場合の百合ってのはね、つまり……」
俺が話に付いていけていないことを察してくれた酒寄さんが、近寄り耳打ちして教えてくれる。
ふむふむ、なるほど。
百合ってのはつまり、女の子同士が仲良くしていることを指していて……。
「女子三人グループで遊んでいる中に、俺が唯一の男として混ざっていることは、百合を妨害することになるから罪になる、と」
「あぁ、そうだ……。この世界、インターネットの海の世界での常識だろう? 知らなかったとは言わせんぞ」
いや、まったくもって知らなかったんだけれども。なんだ、未来の世界では女の子同士が楽しそうにしている光景が人気なのか?
そう言われて俺は軽く振り返る。
女の子同士の、仲の良さそうな光景。
(そう言えば、こっちに来る前に最後に見たのって……)
アルクェイドとシエル先輩のミサイル同士の衝突のような喧嘩だったか。あれも、彼らの言う百合に入るのか? だとしたらかなり物騒な概念ということになるが。
……いや、アレは例外か。さすがにあの二人の関係性を基準に使うのは無理がある。
俺は思考をちょっと別に移してみる。
(そうだな……。例えば、琥珀さんと翡翠とかか?)
脳内でシミュレーションを開始。
あの姉妹が仲良さそうに遠野邸で働いていたとする。琥珀さんは掃除を、翡翠は洗濯をしていたとして。
そこに急に男……、つまりは俺が混ざってきて彼女たちに言うのだ。
『すみません、喉が渇いたのでお茶を淹れてもらってもいいですか……?』
と。
……いや、いつもの光景だな、これ。
あまり彼女たちに迷惑をかけたくはないんだけれども、一度あの味を知ってしまったらどうしても自分で淹れたお茶が飲めなくなってしまったのだ。
同じ茶葉を使っているはずなのに、彼女たちのお茶と比較したら俺の淹れたお茶は泥水と言ってもいいくらいには格に差が出る。
ダメだ、具体例を考えようとしてみても上手くいかない。
百合とは、何とも難しい……。
……と。ふと気になった俺は質問を投げかける。
「それじゃあ、俺はリアルで彼女持ちなので、あの子たちとはそう言う関係にならない、って言ったらどうなるんです?」
女の子同士の間に挟まることがアウトだというのは結局、男が混ざったら恋愛の匂いがしてくるから、ということなのだろうと予測する。
確かに女子同士の語らい、というファンタジーに対し、男女の恋愛というリアリティは若干、生々しいかもしれない。
故に、恋愛展開になることが起こりえない男が介入している場合はどうなのか、と。
純粋にそう、気になったのだったが……。
「あぁん? そんときゃ、そうだなぁ……」
ずん、と一度弛緩した空気が再度引き締まる。
否、先ほどまで以上に重苦しいものへと展望した。
「リア充は死ね、つぅことで。軽くニ、三回は死んでもらうことになる……、か?」
どうやら、完全なる藪蛇であったらしい。
場所は変わって、ツクヨミの繁華街からKASSENとやらのフィールドへと移動してきた俺たち。
KASSENというのはヤチヨ制作の、今この世界で最も人気のあるゲームらしい。酒寄さん曰く、まごうことなきの神ゲー、だとか。
その理由としては様々挙げられるらしいが、特に素晴らしいのは……
「モードが多種多様なんだよね」
「へぇ……」
酒寄さんの説明になるほど、と俺は頷き返す。
なんでもこのKASSEN、一対一に多対多、対NPCに対プレイヤーもとそれらすべての組み合わせに対応しているだとか。
要はパーティゲームと格ゲーとをセットで売っているということ、らしい。
故にどんなプレイヤーでも、一つは自分の好みに合ったモードがプレイできるから、とそれはそれは大勢のプレイヤーに愛されることになったとか。
ちなみにその操作感はヤチヨ作、ということもありツクヨミ内での操作と非常に似ていて、それも人気に拍車をかけているとか。ツクヨミとKASSENはもはやセットで、みたいな空気感があるとか。
一応、剣を振る、みたいな日常動作から大きく離れた動作では脳波が安定しないため脳波操作だけで限界が生じ、コントローラーの使用が必須になるという違いがあるにはあるらしいが……。
むしろそれ以外に違いがない、というのがユーザーの心をつかんで離さないという。
そして今回、もちろん何の理由もなくこのKASSENの地に連れられてきた訳ではない。
――SETSUNA。
それはKASSEN内のモードの一つであり、その性質としてはプレイヤー対プレイヤーの一対一による戦闘というもの。古き良き格ゲーのそれ、というやつだ。
ルールも至極簡単で、格ゲーと殆ど同じ。
対峙し合った二者が、脳波とコントローラーとを用いた操作によりアバターを動かして戦闘を行い、先に相手のHPバーを削り切ればそのセットを獲得。
二本先取、最大三試合。シンプルもシンプルで、要は相手より勝てばいいってわけだ。
「……ねぇ、本当にやるの?」
俺は手に持ったナイフの感触や刃渡りの長さを確かめながら、その声に振り返る。
「まぁ、せっかくの機会だしね」
「私たちとしてはせっかくの初ツクヨミなんだし、できれば良い思い出になってほしいんだけど……」
「別にあの人たちのこと無視したって、どうにかなるわけじゃないし」
三人はそれぞれ全員が、心配そうに俺を見つめている。その理由には、これから始まることに関係していることは、俺にもわかる。
何も、俺たちは何の意味もなくこの地にやって来たわけではない。
というか、この地にやってきてやることなど一つしかないのが道理というものだ。
なぜならばここはゲーム、KASSENのフィールド。ならばやることなど、KASSENを除いて、他にはあるまい。
――俺はこれから、あの九人とSETSUNAにて勝負を行う。
それが奴らの言った「面を貸す」の具体的な内容であったのだ。
「……うん、手に馴染む」
確かめていたナイフの出来栄えに俺は頷く。普段使用しているあのナイフには到底及ばないが、それでも十分に武器として扱える程度には俺の身体に合った形状をしていた。
三人の言いたいことはわかる。
つまりは、このゲーム初心者の俺がこれから経験者九人に嬲られ、それが苦い思い出とならないかと心配してくれているのだ。
ゲーマーにとっての敗北とは、即ち成長の機会だが、ビギナーに与えるべきは成長の機会ではなく、このゲームは楽しいんだという実感であってほしい、というのは俺だってよくわかる。
「準備できたか?」
あのオオカミの男がやって来た。その手には街中では見られなかった、大きな両刃の鉈を携えている。
どこかで見たような気が、と思ったがそうだ。ヴローヴがあの大槍を取り出す前は、あんな感じの鉈を用いていたっけ。
「えぇ、こっちはいつでも大丈夫ですよ」
「くくっ、そうかよ」
そう笑うと、男はくぃ、と首を動かし俺を誘導する。
近くに他の人が居るとマッチングできないから、酒寄さんたちから離れようということらしい。
俺は心配げな三人に「それじゃあ、またあとで」とだけ言い残し、その先導に着いていく。
だが大した移動距離も無し、すぐに目的地へと到着した。
「九人が相手ってことは……。こっから最短で十八連戦ってことか」
先は長いぞ、と俺はぐぐぐ、とその場で身体を伸ばし、筋肉のコリをほぐし、全身のギアを上げていく。
いや、まぁ、仮想空間のアバターボディなので、そんなことをしなくてもいいんだけれども。癖と言うヤツだ、仕方がない。
「あぁん? 何だ、初心者のくせに俺たちに全勝する可能性があるってのかぁ?」
「もしくは全敗か、だが……。前者なら舐められたもんだし、後者なら張り合いがねぇな」
そう取り巻きたちが俺の言葉に反応する中、一人、まじめな顔でこちらを見つめてくる男がいる。
……あのオオカミだ。
「……おめぇ、なんか武術やってんのか?」
なんでそう思ったのか。そう尋ね返すと。
「バカ野郎。この世界でんなマジな準備体操をする奴が武術未経験なわけねぇだろうがよ」
「なるほど……」
その言葉に納得する。
言われてみればたしかに。ゲームに慣れれば慣れる程、電子の世界じゃ準備体操などするはずも無し。
ならば初心者なら、となれば初心者で武術の経験がなければ戦闘前に身体を解す、なんて思考自体が湧くはずがないのだ。
まあ正確に言えば俺は武術など収めたことはない――有馬の家に居たはずなのだが――のでハズレなのだが。単純に都古ちゃんの影響だ、コレは。
俺はざっ、ざっ、とつま先で足元の土を蹴り、地面の状態を測る。
乾燥度合いや材質で、速度や反射が大きく変わってくる。動いている最中に知らなかった、では遅いのだ。
本当の殺し合いでは、その一秒が命取りであることを、俺は嫌というくらい味わった。
「……で、貴方が最初でいいんですか?」
ちらり、と男を流し見る。彼は俺の質問にふん、と鼻を一度鳴らしてから
「あぁ、いいぜ……」
そう言うと、その場であの大きな鉈を構え始める。
俺はそれを、準備完了の合図だと受け取り、同じく試合が開始できる程度の距離を開けてからナイフを右手に握り、その場で構えた。
大きな鉈を構えたオオカミと、それに対峙する普通の男子高校生。
前の世界でも生まれたこの構図に奇妙な縁を感じ取り、自然と俺の口角が上がった。
そのせいか、普段ならば口にしないような挑発の言葉もするりと漏れ出てしまう。
「俺も気になっていたんだ……」
ブゥン、と視界上に戦闘開始合図のウィンドウが表示される。
――3。
敵との距離を目視で測る。
凡そ五メートル程か。互いに全速力で正面へ走るのならば、一秒ともせずに接敵することだろう。
――2。
「日本のオオカミはとっくに絶滅したはずだろ? なら……」
ナイフにはいろいろと持ち方があるが、俺は逆手で右手に持ち、構える。
技術的な正しさなど知らない。だが、それが今は最適であることは身体が自然と察知していた。
――1。
残り一秒。あと一秒。
もう、始まる。すぐに始まる。これから、というかもう……。
「――ッ」
始まっている。
俺は視界の中のカウントがゼロとなった瞬間、その場で足に全力の力を籠め駆け出した。
予測通り一秒以内に互いが互いの射程圏内へと踏み込む。
「――オラッ!!」
俺の脳天目掛けて振り下ろされた鉈を視界にとらえた。
ぐん、とすごい勢いで刃と頭蓋との距離がゼロへと近づいていく。きっと、このままならば一秒ともしないで俺の頭はヤツの刃に縦方向に両断されることになるだろう。
――が、既にそれは過去の話だ。
「……あぁ?」
どこか抜けた声が頭上から聞こえた。
それは死者が自身の志に初めて気が付いたときの声。とうに斬られた身体が、ようやく斬られたのだと理解した叫びだ。
目の前の男の身体が後ろへと倒れる。その身体はヒットポイントの全損により、桜のようなエフェクトへと変化させられながら散っていきながらも……。
――その全身に刻まれた無数の切り傷がありありとその存在感と異質さとを放っていた。
ふぅ、と息をついてから俺は姿勢を正し、ナイフを振る。血に汚れるはずがないが、これも癖のせいだ。
……などと、あっけないのが第一線、第一幕の全容であるのが若干心残りだった俺は、この戦いにオチをつけるべく、良いかけであった言葉を以て締めにすることにする。
「なら、こっちでも絶滅しておいた方がバランス良いんじゃないか……、ってね」
「志貴ってば喧嘩吹っ掛けられてるじゃない。いいわね、好きよ、こういうの」
「まったく貴女という人は、好戦的なんですから」
「えー、別にいいでしょ? あっちじゃどんなに派手にやっても死なないんだし、そもそもが娯楽の殺し合いなんだから」
「それはそうなのですが……」
「百合、女の子同士の花の園、そこに入る男の影。私と翡翠ちゃんの世界に志貴様もご参戦。……悪くないですね」
「良いわけがないでしょう。使用人としての立場を弁えなさい」
「えー。秋葉様ってばケチンボ! ねぇ翡翠ちゃんはどう思いますか?」
「え……? そんな、急に言われても」
「ほっときなさい、翡翠。琥珀の戯言に付き合っていたらそれだけで日が沈みますから」
「おー、志貴ってばやるぅ! 接近と同時にああやって斬りつけるの、志貴の十八番だもんねー」
「経験者が言うと重みが違いますね。あちらの彼のように、貴女もああやって桜の花びらとなって消えてくれたら人類の為だったのですが」
「何、喧嘩売ってんの?」
「いえ、別に。人類を代表しての民意を口にしたまでですので」