(まぁ、書こうと思ったらその度にこの回の後に追加する形で投稿すればいいんですがね)
今回も彩葉視点です 短いです タイトルは誤字じゃないよ
ゴールデンウィークの連休明けから突如、アパートの隣人となった男の子、遠野志貴。
彼とは紆余曲折……、というほどの大事は無かったが、多少の右往左往の後に現在のような心地の良い友人関係を築くようになったのだが。
どうにもその志貴の様子がおかしい。
いや、正確に言うと……。
「遠野君の周りの様子がおかしい……?」
ちゅう、とストローで紙パックのオレンジジュースを飲みながら芦花が私の言葉を繰り返す。白いプラスチック製のストローにうっすら桃色の跡が残っているのが艶めかしい。
「それって、どういう……?」
はぐ、とその手に持ったクソデカメロンパンに対し大きな一口でかぶりつく真美。相応に大きな歯形がメロンパンに刻まれるも、それ以上にメロンパンはクソデカで、相対的に小さい人噛みに見えてしまうのはリアルのバグだろうか。
おい、神よ。ちょっと世界の作り方を間違っているぞ。なんで同じ飲食の仕草だっていうのに、こうも落差が生じるというのか。
……私? 私はいつもどおり、バイト先であるBANBOOcafeの賄いを詰めたタッパーをもさもさと食べていますが、何か?
「具体的に言うとね……」
そういってから私はちょいちょい、と二人に手招きをした。
意味はそのままわかりやすく、ここから先はオフレコだからナイショね。耳を近づけて、というものだ。
二人は私の意図をちゃんと汲み取り、こちらへと耳を寄こす。
「実は……」
「……え、マジ?」
「確かに、言われてみればそうかも」
――事の発端は昨晩のバイト終わりでの出来事だった。
『あっ、あの……!』
『はい……? どうしました?』
昨日は私と彼のシフトが重なっていたため、バイト後は一緒にアパートに戻る約束をしていた。それは防犯の意味もあるが、そもそも一人で帰るより幾分か面白みがあるというのもある。
けれども、いくら待てど彼が出てこない。
先に帰り支度を終え店の外で待っていた私は何事だ、と志貴の様子を見に向かった。
一番最初に向かったのは店の裏手である、従業員入り口だ。
そこで私が見つけたのは。
『えっと、あの……』
私が見つけたのは、店の裏手、その出入り口の前に居た待ち人である志貴と。
『これ、受け取ってください!』
そんな彼を出待ちし、勇気を振り絞って両の手でまっすぐと手紙を手渡す女の子の姿。
顔を真っ赤に染め上げ、今にも火が吹き出しそうな様相でありながらも、ピンと伸ばした姿勢には一本の芯があり、彼女の真剣さが遠くから眺めることとなった私にも伝わってきた。
想いを告げる、とは即ちこういうことなのだな、と。
「彩葉ってば他人の告白見ちゃったの~? 無粋ですよー?」
「しょうがないでしょ、見ちゃったものは……」
「場所が場所だしねぇ」
擁護してくれた芦花に抱き着き、敵対した真美へは手向けとばかりに怒りの視線を送っておく。きっ、と睨みつけるのだ。
……なんか、真美はノーダメージそうなのに、なんで芦花は今にも倒れそうなくらいに瀕死なのだろうか。
流石に瀕死の友人に抱き着くのは忍びないので離れて、
「あ……」
……。
やっぱり離れるのは辞めて置くことにする。
「それだけじゃなくってね。ここ最近、バイト中もバイト後も、何ならバイト前も関係なくお客さんとか、中にはバイト仲間からそういった告白的な何かを受けているらしいんだ」
「へー。モテ期ならぬ、モテ貴が志貴君にやって来たってわけかぁ」
誰ウマだよ、とツッコミを入れながら私は本日のお昼であるタコライスを口に運ぶ。タコライスと初めてその単語を耳にした時はタコが入っているライスなのかと思っていたが、どうやら違うようだ。
「あ、私そう言えば隣のクラスの女子から志貴君の連絡先を教えて欲しいって言われたわー」
「私も何回かはあるかな、そう言うの」
そう言ってげんなりする二人組。その表情だけで何を考えているかは伝わってくる。
「まぁ遠野君ってガチガチのイケメン、って感じじゃないけど普通に顔立ちとか整っているし、性格も良いじゃん?」
「そりゃモテるよねー、って感じ」
私も、二人の言いたいことはわかる。でも……。
と、そこで。
「何を話してるの?」
そう言いながら、にゅ、と私たちの会話へと入り込んでくる件の男、遠野志貴。
「わっ、本人登場だ……。アツいね」
「こぉら、真美? 茶化さないの」
「へいへい、わかってるって……。んでさ、志貴君、ぶっちゃけ最近モテてるらしいけどどうなの?」
芦花の静止も気に留めず、真美はぶっこんだ。
聞きにくい、とか、躊躇っちゃう、とか。そういったズルはしないと言わんがばかりに、直球に。
そこがきっと真美の良いトコロなんだろう。……悪いトコロもそこではあるのだが。
志貴は、少しだけ悩んだような表情を浮かべると、それから口を開く。
「マジで殺されないかだけが心配だよ……」
ははは、まさか、殺されるだなんて大げさな。
そう笑い飛ばしたかった私たちなのだが、そう語る志貴のその表情のリアルさに声を失った。
ぶるり、と身体が震える。
私たちは、それ以上その話題を深掘ることはできなかった。
誰だって、命は惜しいのである。
今日もお休みです