(なんか致命的な誤字をしていたみたいなんですが、ごめんなさい)
定められた結末
――結末は定まっていた。
「……ッ、まだッ!」
――未来は無数の可能性でなく、ただ一本の道にのみ限られて。
「諦められるわけ、無いだろうが!」
――あまりにもあっさりと、やはり帰着すべき運命であったかのようにその時は訪れる。
「……かぐやッ!!」
月から来た少女、かぐや。
彼女を連れ戻そうとする月人たち。
それを何とか阻止しようと集まり、戦うことを決意した八人の戦士。
かぐやの卒業ライブの余興、という表向きの名目で始まった戦は、今、こうして終わりを迎えることになる。
たとえ、どれだけの強者を揃え、万全な策を用意し、そして自身のこれまでの栄光と、この先の成功とを投げ捨てるような違反行為にさえ手を出してなお……届かなかった。
全てに、意味はなかった。
敵の数は無限と言っても差し支えない程に限りを見せず、また、強大な個体には防戦一方と言っていいほどにその実力に差があり過ぎる。
実力はあちらが上。
数もあちらが上。
いったいぜんたい、この条件下で、どうやって勝てばいいというのだろう。
敵はこちらを舐めているのか、あるいはそれがこの世界のルールだと思い、それに則ったのかまではわからないが、残機というシステムで自らに縛りさえ施しているというのに。
――完敗だ。
これは定まった運命で、敗北こそが唯一にして絶対の帰着だったのだろう。
かぐやの期間を阻止するための、対月人戦争は始まった時点で既に結末が決まっていた。
未来なんてものはあやふやで、本来ならば無数に分岐するもののはずだけれども。
この運命――、地球人の敗北とかぐやの月への帰還という未来にだけは、他の『もしも』だなんてこの世界には用意されていないのだ。
たとえ、この戦いを何十、何百と繰り返すような、そんな輪廻が存在していたとしても、その何十、何百の結末は『敗北』の二文字から変わることはない。
「あ、が……っ」
まず初めに、諌山さんが倒された。
金剛力士像みたいな見た目をした月人の持つ、こん棒に叩き潰されてその残基をゼロとした。
「ごめん……、いろ、っは」
次いで綾紬さんが消滅した。
彼女は無数に沸いてくる比較的小さい、量産型の月人に囲まれ身動きを取ることすら許されず、その命を散らされつくす。
「あーもー、くっそ」
乃依さんがやられる。
天女のような見た目をした月人との遠距離戦に敗北し、その頭部を撃ち抜かれて散っていく。
「……ッ」
雷さんは静かに、しかしその瞳には確かな悔しさを乗せて掻き消えていく。
巨大な月人からの突進をモロに受け、その身体を爆散させられる。せめてもの反撃とばかりに、自身を押しつぶした月人へ地雷トラップをお見舞いするも、敵の残機を減らすことは敵わなかった。
「あーもーっ! 私ってばなんでこんなことやってんの!?」
そう言って最初は面倒くさそうに参戦していたノエル先生も、
「だからっ、化け物はみんな嫌いなのよ!」
と、そう言い残し獣のような付き人に喰い千切られて消滅した。
その散り際に、自身を殺した月人を道連れとばかりに槍で串刺しにし、見事討ち取ったのは、彼女の代行者としての矜持が故だろう。
「まだ、諦めてねぇよなぁ!?」
「冗談っ、当たり前でしょ!!」
酒寄さんと帝の二人は、最後まで消えることなく、止まることなく、走り続け、戦い続けた。
「……かぐやは、絶対に渡さない」
酒寄さんは敗北がもはや必至となったこの戦いでも、まだ結末は決まっていないのだと叫ばんがばかりに、敵の本陣へと突っ切り、奥に潜む奴らのリーダーのような月人の首を狙う。
「お前らの相手は、俺だ……ッ。ここから先、一歩も前に進めると思うなよ!!」
帝はそんな彼女を援護するかのように、彼女を打ち取ろうと向かう無数の月人たちを一身で受け止め、なんとか食い止め、数を減らす。
まさに必死。まさに死闘。まさに……。
そんな皆が全力を尽くし奮闘する中、俺、遠野志貴はというと。
「……月が、綺麗だ」
その場でただ立ち尽くし、動くこともせず、呆然と中に浮かぶ月を見上げるのみ。
誰も俺を攻撃しない。動かない俺を、戦闘の意思はない、と判断して捨て置いているのだろう。
だからゆっくり、いつまでも、気のすむまで俺は月を見上げられる。
電子の世界に浮かぶまん丸の月は、非常によく作られていて、見ていてぞっとするほどに美しい。
未来は決定づけられていた。
俺たちの敗北は確定していた。
かぐやちゃんは月へと連れ去られて、俺たちはなんてことない、これまでの日常の日々に戻るだけ。
ちょっと前までの、かぐやちゃんがいなかっただけの毎日に、戻るだけ。
――しばらくして、やはり数の差には抗え切れず、俺たちは月人との戦争に大敗し、かぐや姫は月へと連れ去られるのだった。