かぐや姫だって月の姫   作:すっごい性癖

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一万字超を経てようやくクロスオーバーらしさが出てきた……

クソ長くなりそうだったので前後編に分けます 後編は出来るだけ早く投稿する予定です

(ちなみに、途中にオリジナル設定をぶち込みますが志貴がツクヨミに行くためだと思ってください。それもこれも全部、直死の魔眼が悪いんです)


直死の魔眼はスマコンを受け付けない(前)

 

 ノエル先生の登場に面食らった俺だが、それ以降は大した波風が立つことも無く穏やかな転校初日を送れていた。

 

 それというのも、ノエル先生の登場のインパクトで転校生である俺の印象が薄まったことが原因だろう。

 

 休み時間などでも、男子たちは挙ってノエル先生に話しかけに行っていた。恋人がいるのか、とか、どんな人がタイプなのか、とか。前の世界でも同じような質問をしていたクラスメイトが居たっけか、そういえば。

 

 さすがに生徒専用の掲示板に女子達が彼女の悪口を書き込む、なんてことはしていないようだけれども。その点だけで言うと、この学校は俺の通っていた高校よりも民度が良いともいえるかもしれない。いや、ウチの高校の民度が終わっていただけなのだろうが。

 

 彼女にはこの世界について尋ねたいこともあるのだが、当分は無理そうだ。空いている時間は常に、何人かの男子生徒が彼女に詰め寄っているみたいだし。

 

 彼女の性格的にも、今の特別扱いはなるべく長く味わっていたいことだろうし、こちらのために時間を割いてくれるとも思えない。

 

 あの人、素で性格悪いしなぁ。

 

 ……と、言う訳で転校生特有の入れ食いフィーバータイムも無く、その話題性の殆どを美人教育実習生に掻っ攫われた俺はというと。

 

「へー、遠野君って今一人暮らししてるんだー」

「あぁ……。まぁ、と言っても本格的に始めたのは昨日からなんだけどね」

 

 どういう訳か、クラスの女子生徒三人と一緒にお昼ご飯を食べることになっていた。

 

「なるほどー。てか、同じアパートのお隣さんがまさかの転校先でクラスメイトで、そんでもって席も隣同士になるってどんな確率よ?」

「それについては俺もびっくりだよ。酒寄さんとは昨晩、初めて顔を合わせたくらいだし」

 

 俺の言葉にこくこく、と首を縦に振って同意を示す酒寄さん。

 

 田舎とは違い、東京都もなると高校の数だってケタ違いだ。そりゃあお隣さんが自分と同い年、って可能性くらいは無くもないだろうが、その上で通う学校も一緒になるとなると途端に確率は大きく下がる。同じクラス、隣の席だなんてのは当然、言うまでもない。

 

「あ、今更だけど自己紹介、まだだったよね? 私が諌山真美でー」

「私が綾紬芦花です。よろしくね」

 

 ニコリと大きな花が咲いたかのように笑う諌山さんと、一転、クールで美しい華を連想させる笑みを浮かべる綾紬さん。

 

 ちょっと違うかもしれないが、北風と太陽の童話を連想する。そんな感じの二人組だ。

 

 二人とも、どうやら酒寄さんの親しい友人らしく、彼女が転校生の俺のことを知っていたことに興味を持ったとのことで話しかけてくれた。

 

 多分それは、担任から俺の面倒を見ることを命じられた友人のサポートをする意味合いでもあったのだろう。

 

 控えめに言って素晴らしい友人過ぎないか? 羨ましい。俺の友人で言うと有彦なんかはこういう時、絶対に俺の手伝いなんてしないだろう。

 

 まぁそもそもアイツは滅多に学校に来ないんだけれども。

 

「てかさ、遠野君ってば、それでホントに足りるの? おにぎり一個だけ、とか女子より少ないけど」

「あぁ。もともと、食は細い方なんだ」

 

 やや心配げにこちらを見つめる諌山さん。口にはしないが綾紬さんと酒寄さんもこちらを心配げに見ている。

 

 恐らく、自己紹介で身体が弱い、なんて言ったのもあって気を使ってくれているのだろう。こちらとしてはこれが平常運転なので、そこまで心配してもらうと逆に申し訳ない。

 

 諌山さんの言った通り、俺の昼飯は登校途中のコンビニで買ったおにぎりが一個だけだ。俺がこちらの世界に持ってきたお金が使えるか、といった検証の意味もあったのだが、無事使えて一安心といったところ。

 

 ついさっきフィルムを剥がしその頭頂部を齧ったので残り五、六口の命と言った所なおにぎりは、海苔の風味が豊かで美味しい。未来って、コンビニのおにぎりも進歩しているんだなぁ、と感心させられた。

 

 ちなみに中身は鮭である。

 

 諌山さんは大きめのタッパーを二つ、パンパンに敷き詰めたお弁当を豪快に食べ進め、綾紬さんはちょこんとしたサイズの小さなお弁当と別で持ってきていたスープを自身の前に並べている。

 

 酒寄さんのお弁当は、なんだろう。お弁当というより、お惣菜って感じだ。

 

 昨夜、彼女はバイトに行くなどと言っていたし、もしかしたらその先でもらった賄い飯をお弁当に詰めているのかもしれない。

 

 なんて予測を勝手に立ててみたりするが、いくら考察してもその真相は闇の中だ。少なくとも、今の俺に知る手立ては一切ない。別に知る必要も無いんだが。

 

「にしても災難だったねぇ、転校生君? ホントだったら一週間はクラスの主人公だっただろうに」

「ねー。話題とか全部、藍染先生が持ってっちゃったし。遠野君的には、残念だったりする?」

「いや、別に……。どっちかって言うと目立つのとか、あんま好きじゃないから助かるかな」

 

 というか、どこから来たのかとか質問攻めにあったらボロを出してしまいそうだし。そこら辺の設定も、ヒマがあったら作っておいた方が良いかもしれない。

 

「まぁ、先生にも頼まれたしさ。何か困ったことがあったら、相談してね? 隣の席同士なんだし」

 

 ごくん、とおかずを飲み込み口元を拭った酒寄さんがこちらを見ながらそう告げる。

 

 上品というか、育ちが良いんだなぁ、なんて思いながら、そう言うところもなんだか秋葉っぽいな、と思わず笑ってしまいそうになる。

 

「あぁ、ありがとう」

 

 そう言いながらも、出来るだけ彼女の迷惑になるようなことはしないようにしようと、心に誓う。

 

 というのも彼女、明らかに無理をしているし。表面こそ取り繕っているものの、その中身はズタボロなんじゃないだろうか。

 

 自分も身体が丈夫じゃない方の人間だからわかるが、酒寄さんの纏う雰囲気は限界一歩手前、あるいは人間として問題となるラインを一歩通り過ごした人間特有のそれだ。

 

 眼鏡をずらして彼女を見てみたらきっと、その身体に這う死の線も常人よりもはっきりと浮き出ていることだろう。

 

「彩葉だけじゃなくって、私たちにも頼ってね? あれじゃん? 三人寄れば矢は折れない、的な?」

「真美ってば文殊の知恵と三本の矢の話がごっちゃになってるじゃん」

 

 そのことに諌山さんも綾紬さんも当然気が付いているのか、すかさずそう付け加えてくる二人。

 

 天然なのかボケなのかはわからないが、おどける諌山さんとツッコミを入れる綾紬さんとのコンビネーションは絶妙で、酒寄さんに気を使っている感を低減している。きっと、俺がこの学校に来るよりも前から二人はこうしていたんだろう。

 

 せっかくだ。

 

 三人ともが頼ってくれ、と言ってくれたことだし、その好意に甘えさせてもらうこととしよう。

 

「それじゃあ一つ、聞きたいことがあるんだけど良いかな?」

「ん、何? 私たちに分かることならいいんだけど」

 

 ちらり、とこちらに目線を向ける酒寄さん。他の二人もこちらに「言ってみ、言ってみ?」と語りかけるような視線を投げかけてくれている。

 

「俺、田舎出身であんまり機械とかって詳しくないんだけどさ。街中とかでみんな使っているコンタクトみたいな機械って、何なの?」

「……へ?」

 

 そう問う俺の言葉を聞いた三人はまるでハトが豆鉄砲をくらったような表情をして顔を見合わせだす。

 

 どうやら、俺はこの世界的には相当な常識知らずな質問を今したらしい。

 

 だが、今朝の登校中に最も気になったのがそれなんだから仕方ないだろう。ぶっちゃけ、SF映画の世界みたいで興奮したし。

 

 俺だって男の子なんだ。ロマンには弱い。

 

「コンタクトみたいな機械って……。スマコンのこと、だよね?」

「すま、こん……?」

「スマコンを知らないって、遠野君。山奥とかからやってきたの?」

 

 あんぐり、と口を開けて驚いた表情をする酒寄さんたち。

 

 その表情から察するに、「この箱の中で人が喋っているのはなんだ!?」と叫ぶテレビを初めて見た人間級の発言を俺はしてしまったのか。

 

「じゃあスマコンを知らない、ってことはツクヨミとかも知らないってこと?」

「ツクヨミって、日本神話の? アマテラスとかスサノオとかと一緒に出てくる」

「マジか……」

 

 絶滅危惧種の動物を見るような、そんな目で見てくる酒寄さん。

 

 しかし、ツクヨミって本当になんなんだ? 神様の名前が日常会話で出てくるなんて、無宗教なこの日本で滅多にないことだけれども。

 

「……ツクヨミって、もうすぐ総アクセス人口が一億を超すんじゃなかったっけ?」

「私も見たよ、そのニュース。今時の学生でツクヨミユーザーじゃない人の方が珍しいってのに……」

「まさかユーザーじゃないどころか、存在すら知らないなんて」

 

 ひそひそ、と三人は小さな声で耳打ちし合い話し合う。だが驚きの割合がデカかったからか、その声のボリュームを抑えきれなかったのか、会話の内容は筒抜けだった。

 

 

 

 

 ……暫くしてから彼女たちは耳打ちを辞め、こちらに向かいなおし、そして何も知らない無知な俺に、丁寧にスマコンとはどんなもので、ツクヨミとは何なのかを説明してくれた。

 

「なる、……ほど?」

 

 あまりの情報量の多さに俺は脳みその要領がパンクしそうになりながらも必死にそれらを整理する。

 

「つまり、あのコンタクトみたいな奴を目に入れるとパソコンの画面みたいな奴が現実世界でも見えて、動画とかを見たり、本やニュースも見れる。そんでもって何ならゲームもできる、と」

「そーそー」

「何だそれ、控えめに言って凄すぎない?」

 

 目にあの薄いレンズを一枚入れるだけでそれだけのことが出来るって。技術の進歩にしたって進み過ぎじゃないか? 十五年ちょっとでそんなものが普通に売られるようになるってさ。

 

「凄すぎるって言われれば……、まぁ、凄いよねぇ?」

「あぁ、うん。言われてみれば、って感じだけど。ずっと当たり前のように使ってたし」

「改めて言われると、って感じだよね」

「はー……」

 

 むしろ今更そこに驚く人が居ることに驚いた、とそう女子三人衆は苦笑いをする。

 

 そんな彼女たちの素の反応でより、やっぱり俺の居た世界とこの世界とは別のモノなんだな、と認識させられた。

 

 で、スマコンってのは目に入れる携帯電話みたいなものとして。

 

「そんでもって、ツクヨミってのはそのスマコンを使うと行ける別世界みたいなものと」

「正確にはスマコン限定ってわけじゃなくてスマートグラスとかスマホでも良いんだけどね? まぁ、没入感が全然違うから殆どの人はスマコンでログインするかな」

「……俺の携帯でも行けるかな?」

 

 興味を持ったオレはポケットから携帯を取り出し三人の前に差し出してみる。

 

 三人の話を聞いていて、俺も好奇心が抑えきれなくなった。架空の世界に作られた和風でSFな夢の世界、なんて言われて興味を持つなって方が無理な話というもの。

 

 俺はワクワク、ドキドキと好奇心に胸を弾ませるも……

 

「あぁ、いやぁどうだろ……?」

「コレは、ねぇ……?」

「……!」

 

 更に気まずそうな苦笑いを浮かべる諌山さんと綾紬さんと、なぜか同類を見付けたかのような表情でこちらを見つめてくる酒寄さん。

 

 前者二人はわかるが、酒寄さんはいったいどうした。

 

「ちょっと……、いやぁ、だーいぶ型が古いみたいだし。多分、サポートされてないんじゃないかなぁ?」

「そんな……!?」

 

 ガクリ、とその場で俺は打ちひしがれる。全身から力が一気に抜け落ちた。

 

(せっかくの未来だというのに、俺はその最新技術を楽しむことが出来ないというのか!?)

 

「よしんばログインできても、多分動きもカクカクだろうしね」

「なる、ほど……」

 

 諦めるしかないのだろうか。

 

「この際だし、スマコン買っちゃえば? 便利だよー。便利すぎて、学校じゃ使えないけども」

「宿題もテストもアレがあったら一瞬だからねぇ。持ってきたのバレたら即没収レベル」

 

 確かに、話を聞くだけでもその便利さは伝わってきた。

 

 俺個人としても使ってみたいし、ぜひ手に入れたいのだが……。

 

「金がなぁ……」

「……!」

 

 ピクン、と俺のボヤキに反応する酒寄さん。だから君は何でそこで反応するんだ。

 

「あれ、遠野君ってば意外と苦学生?」

「バイトとかしてみたら? ウチの学校、バイト禁止じゃないしさ」

「いやぁ、そうだなぁ……。恥ずかしい話、スマコンどころか学費やアパートの家賃も怪しい身なんだよね」

「……!!」

 

 怖い。

 

 ぎゅん、って動いたぞ。ぎゅんっ、って。人間の首ってそんな勢い良く動いていいモノじゃないだろう、酒寄さん。アルクェイドがやってギリの動きだぞ、それ。

 

「あははー、この子のことは気にしないでねー。……ちょっと彩葉ってば、同族を見付けたはぐれの野生生物じゃないんだから」

「だって、真美……!」

 

 感極まったかのような表情をする酒寄さんとそれを抑え込み、どうどうと頭を撫でて押さえつける諌山さん。母親と娘のようにも見えるが、どっちかというと飼育員と動物園の動物みたいだ。

 

「それにお金云々を置いておいても、俺、体質的にコンタクトがダメなんだよね」

「そうなの? ドライアイが酷いとか? それじゃあスマートレンズはどうかな。没入感は減っちゃうけど、スマコンより安いよ」

「あー、うん」

 

 曖昧な返事を返す俺と、そんな俺の返事に「……?」なんて不思議そうな顔をする綾紬さん。

 

 せっかくこちらに寄り添って答えてもらった所、申し訳ない。

 

 だが、馬鹿正直に「実は物の死にやすい線が見れるのでダメなんです」なんて言う訳にもいかないから笑って誤魔化す以外に道が無いのだ。

 

 先生から貰ったこの眼鏡を通すことで俺はかろうじて生きていられている。

 

 これを外した瞬間、俺はこの世界の脆さに晒され、脳は沸騰し、たちまち廃人と化すことだろう。死の世界とはそういうものだと、俺はとうの昔に思い知っている。

 

 だから眼鏡よりも内側に裸眼に装着するコンタクトレンズや、そもそもの眼鏡を取り外して装着しなければならないスマートレンズなるものを俺は使えないのだ。

 

 

 

「あ、じゃあアレはどうかな?」

「アレ?」

 

 

 




「シスターノエルの登場には面食らいましたが、まぁ、良いでしょう」
「ちょっとシエル? 部下の監視くらい、ちゃんとしときなさいよね」
「まぁ、そのノエルさんはすぐに男子生徒に連れ去られてどこかに行ってしまいましたが」
「出来れば最後まで遠くに連れ去ってほしいところです。あんな軽そうな人を兄さんに近づけたくはありません」


「おやおや、志貴さんってばさっそくクラスの女子三人と一緒にご飯を食べてますよ! まったく、手がお早いですねー!」
「姉さん、言い方が悪い。酒寄様は担任の方に頼まれて志貴様のご面倒を見てくださるだけです」
「……それにしてもやけに可愛い子ばかりですね。未来の日本ではあれくらいが基準になるんですか?」
「顔面の美醜について、どうこう言うつもりはありませんが……。兄さんには遠野家の長男として、自覚のある行動を心がけてもらいたいところです」


「遠野君の登校風景を眺めていてわかっていたことですが、あちら側の世界はかなり技術的に進んでいるようですね」
「あの感じだと、こっちの世界よりも更に神秘は薄そうね。魔術師とか、ほんと絶滅危惧種なんじゃないの?」
「少なくとも野良の魔術師なんかは大きく数を減らしていることでしょうね」
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