貞操逆転世界で恋愛相談役 作:パチモンマスター
俺は死んだ。
ハッキリ言おう。死んだのだ。
年甲斐もなく泣き言を言いながら、しょうもない理由で死んだのだ。醜悪極まる我が身は朽ち果て、さりとて思考は止まっていない。ならばすべきは
「生き返らせてーッ!!!」
「んな無茶な」
現在、成人男性(享年23歳:童貞)は神の足にしがみついていた。
「神よ!何故そんな悲しいことをおっしゃるのですっ!!」
「なーにが悲しいことよ。思ってもないことをペラペラと…そもそも君は信仰心の欠片もないでしょーが」
「今芽生えたもーんっ!!」
「こいつっ…」
嫌だい嫌だいっ!調子乗って雪山で転んでそのまま雪だるまになって死んだなんてっ!そんな馬鹿な死に方じゃあ死んでも死にきれないよっ!
「はぁ…人は死ぬもの、人生は一度きり。分かりきってることでしょう。その摂理に反して君だけ特別扱いなんて、そんなの
駄目でしょう?」
「特別扱いしてーっ!」
「ええ…」
誰が何と言おうと生き返ってみせる!こんなところで諦めてたまるかぁっ!
「こんなところでって、もう死んでるんだけど」
「思考盗聴イヤーッ!!」
そんなこと出来るなら生き返らせることも出来るんじゃんっ!イケるやんっ!
「可能ではあるけどねぇ、だからって無理なもんは無理って、あ…」
「?」
「……ホントに生き返りたい?」
「勿論!」
だからこんなにゴネてるし…
「何をしてでも?」
「…まあ、常識の範囲内なら」
「ふーん…?」
な、なんだ?いきなりニヤけヅラして気色悪いし怖いぞ。
「別に生き返らせなくてもいいんだよ?」
「スマセンスマセンッ!生き返りたいッス!オネオネシャスッ!」
「寧ろ生き返る気ないでしょそれ」
クソッ!こうなったら何でも良い!生き返るなら何だってやってやるさ!
「……まあいいや。じゃあ取り敢えず行っておいで」
「えっ」
トンッ、と何かに押されたような感覚がしたあと、視界が落ちていく。下へ、空中に投げ出されたように落ちていく感覚がする。
「詳細とか条件はいつか伝えるからさ。またね」
「うおおおっ!?」
無くなった筈の生存本能が警告を鳴らす。本能って魂にもあるんだなとか、そんなどうでも良いことを考えながら死を覚悟した時
「因みに、条件達成出来なかったら永遠に奴隷行きね」
えっ
混乱と絶望の中で、俺の意識は落ちていった。
◆◆◆
それからというもの、色々あってかれこれ十余年。俺は随分元気な男の子に育ちました。もう村一番の元気者。そこら中走り回って転げ回り、そんな感じでスクスクと育ちました。親は居ないし天涯孤独の身だけど、前の人生の記憶もあるから悲しさはあまり無かった。それよりもだ。言いたいことがあるのはこの世界についての方。
生き返らせるって言ってたのに、ここ元の世界じゃないんですけど!まあ、確かに場所は指定してなかったから仕方ないのかもしれない。でもだとしたら転生はおかしいでしょ。生き返りの話は何処にいったんだ…。おいおい神サマよぉ…どうなっとるんこれ?契約違反とちゃいまっか?ええ?
『なんか文句言った?』
アッ、何も言ってないっすサーセン。
あの神なんかあったらすぐ話しかけてくるんだよなあ。そろそろ思考盗聴やめてほしいんだけど。アルミホイルか?アルミホイル巻けばええんか?
『それよりさ、分かってるんだろうね?』
へいへい、分かっとりますよ。先日の件ですよね?
『そうそう。きっちりやってね?相談役』
そう、先日遂に神サマからのお達しが来たのだ。曰く、これから入学する高校で女子達の恋愛相談役をして欲しいと言うのだ。何故男子ではなく女子なのかと言われれば、それはきっと、この世界は女子の方が性への関心が強いからだ。もっと言えば、男女の立場が逆転してると言っても良い。男女比も男性3で女性7と色々おかしいし、その分男性は丁重に扱われている。確かこういうのを……何と言うんだったかな。
『貞操逆転世界だね』
そうそれ。そんな世界でこれから相談役を買って出ろということらしい。どうやらこの世界は少子化にも見舞われているらしく、その解消の為に神サマは俺を送ったとのこと。因みにノルマは1年で3カップル成立らしい。
『失敗したら死ぬから頑張ってね』
こいつホンマカス。カスすぎて涙も出ねえ。
『天罰下すよ?』
冗談や~ん!いやいやいや、マジになんなってホントさあ!
『こいつ……はあ、まあいいや。因みに君が一生恋愛的に好かれない祝福かけといたから。女の子とは積極的に接してくれていいよ』
祝福って、それ呪いじゃん。てか人に好かれないの地味に酷いな。転生させてくれたし、別に良いけども。
『仕方ないよ。そうでもしないと直ぐに好きになっちゃうから。その世界の女の子』
前世の男と何も変わらないな。エロ猿ってことね。
『いやいや、それは素晴らしいことだよ。あと、これ一応祝福だからっ。呪いじゃないからっ!』
はいはい分かりましたよ。そろそろ学校着くんで、静かにしててください。一応やるだけやりますから
『雑だなあ…』
そんなこんなで、これから三年を過ごす学び舎へと到着する。
「相変わらずデカいな…」
5階まである校舎に広大な敷地。さぞ人数も多いんだろう。実際登校してきている生徒が数え切れない程だ。しかもほぼ女子。前の世界なら女子校か何かと勘違いしていただろう。
「席は…あそこね」
体育館に入り、配られた紙を見て指定の席を見つけ出す。周りはまだガラガラ。どうやら速く来すぎたらしい。
「あ、ごめんなさいここって…」
「ん?」
横から声をかけてきたのは黒髪の女性。同じのクラスの子かな?
「ああ、ここが34で、そこが35。もしかしてここ?」
「はい。35です」
「おっ、じゃあ隣だ」
配られた紙の中から名簿へと目を向ける。35は…
「あー、みついしさん…で合ってる?」
「え、あ、はい!
「そう、合ってるなら良かった。僕は
「あ、よろしくです…!」
三石橙花と名乗った少女は随分緊張しいな女子だった。たぶんそこまで明るくも無くて、でもそこまで暗過ぎもせず。クラスの中心に居るような子ではないし、中途半端かもしれないけど、いたって普通で、たぶん優しい女の子。そんな子に俺は
「ねえ三石さんさ」
「な、何ですか?」
「もう好きな子できた?」
「ヒュエッ…」
最初からブッ込んでみた。
◆◆◆
私、三石橙花は今年から高校生になる女だ。いつになく緊張しながら向かった入学初日。友達とか新しい生活なんかに不安を感じつつワクワクしていた。
入学式の会場には早めに着いちゃったけど、優しい男の子が答えてくれたお陰でもう後は待つだけ。隣の人が男子なんて運が良いし、このまま男性にも慣れて…もしかしたら彼氏なんか出来ちゃうかも。そんな妄想に旅立とうとした時、隣の男子に話しかけられた。
「もう好きな子できた?」
「ヒュエッ…」
いきなり過ぎて変な音出ちゃった…マズイ、せっかく男子と仲良くなれるチャンスなのに!
「あ、あのその、なんでいきなり?」
「ああそれはさ、折角なら高校生活エンジョイしたいじゃん?なら恋バナの一つでもと思って。若い子はみんな好きでしょ?ゴシップ」
な、なんだろう…もしかして変な人なのかな、この人。
「別に居ないなら居ないでも良いのよ。これから作ればいい話だし…あ、もしかして彼氏作りたく無い派?」
「いや、そういう訳じゃ…」
「でしょー?なら作ろうよ彼氏。高校生の時の恋愛なんて今しか無いんだしさ」
「それはまあ、確かにそうかも…」
言ってることは分かるけど、初対面でする話かなこれ?いや高校生は大人だし、そういうのも早いのかも…!
「でさ、居るの?好きな子」
「いや…居ないです」
「そっか。でもさ、この高校男子が特段少ない訳でもないし、好きな子の一人や二人…いや、十人ぐらいは出来るよ!」
「そ、そんなにはいらないかも」
十人って、それじゃあクラスの男子全員好きになっちゃうんじゃ…うん、やっぱり一途が良いよね。
「あらそう?恋多き
「恋多き
「細かいことは気にしなーい。そんなことやってたらモテないぜ」
「うっ…」
確かに、そういうの一々指摘すると嫌われるって彼氏持ちのやつが言ってたな…。やっぱりそういう気の使えるようなイケてる女がモテるよね…
「あ、というかそうですよ。好きな子が出来たって私じゃ付き合えるかなんて」
「いけるいける。そこら辺はこの僕が何とかしてやるって。この恋愛マスター田中に任せなさいっ!」
「マスターなんですか?」
「経験皆無だけどマスターだよ」
「不安だ…」
それからも話していたら、暫くして入学式が始まった。
祝辞や校長先生の話を聞き流している間、私の頭には彼の言葉が浮かんでいた。
「彼氏かあ」
「頑張ってね三石さん。君に彼氏出来なきゃ僕死ぬから」
「ええ…」
これが彼との出会い。私の友人であり、みんなの恋愛相談役である田中太郎は、最初から何か変だった。
貞操逆転書こうとしたら変なの出来た…これ貞操逆転じゃなくて良いのでは?