You and SpidayS   作:あおい安室

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1:A Ordinary Day=1048
2:TThe Drawing M Day=1610◁
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4:C V D
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7:A O D


The Drawing M Day

 

 ある日を説明しよう。親愛なる隣人とすれ違い、Mを描いた日を。

 

 体を動かすことは、昔から好きじゃない。スポーツは苦手だし、キャンプも億劫。だから勉強に精を出し、ガリ勉なんて古い言葉で呼ばれるくらいに努力してきたが、実る前に枯れ落ちた。

 現実から逃げるように部屋に籠り、パソコンで好きなコンテンツを調べる時間が長くなってしまったが、変わらなければならないという思うくらいには腐ってはいない。以来、私の休日に外で過ごす時間がルーティーンに加わえることにした。

 小さなキャンバスとイーゼル、残り少ない絵の具。リュックサックに詰め込んで、年季が入った階段を上る。息が少し荒くなる頃、アトリエの扉が見えてきた。

 

 室外機の点検業者くらいしか来ない屋上の片隅に、私だけの小さなアトリエがある。

 倉庫から錆が目立つ黒フレームの折りたたみテーブルと、プラスチック製のありふれたガーデンチェアを引っ張り出し、リュックサックの中身を並べれば、完成だ。背が低いアパートの屋上から、高層ビルが立ち並ぶニューヨークを見上げる。空へ落ちていくような気分を堪能し、筆を握る。

 

 今日も、The Drawing Day/絵を書くことが、私のありふれた日常。

 

 頭の中で絵の構図を決めたところで水を忘れたことに気づく。私にも絵の具にも水は必要不可欠だ。

 怪談の昇り降りに気が滅入るが、水無しでは描けない。ヒイヒイと息を切らせながら、水筒片手に戻ってきた私の眼の前には、夢のような来訪者が待っていた。

 

 大きな双眼にスパイダーマーク、よく見るとスーツにはクモの巣模様があるとの噂は事実であったと、確信した。

 眼の前に、本物のスパイダーマンがいる。

 

 嘘でしょ、夢だと言ってよ。

 

 思わず口から言葉がこぼれた。だが、すぐに全く同じ言葉を繰り返すことになった。本物のスパイダーマンはいる。だが、いる場所が問題だった。

 私のミニアトリエの上だった。テーブルやイスどころか、画材までぐちゃぐちゃに潰した上に、彼はいた。

 

 嘘でしょ、夢だと言ってよ。

 

 本当にごめんと繰り返す親愛なる隣人の姿に、これが夢だったらどれほどに良かっただろう、と悔やみそうだった。せっかくの出会いへの興奮は、消え失せていた。

 

 


 

 曰く、いつものように空中を飛び回っていたところ、クモ糸切れで墜落しかけていた。万事休すと思ったその時、私のアトリエを緩衝材に不時着したらしい。

 多少の打撲くらいだから大丈夫、とは本人の弁だが、命に別状がないことは喜ばしい。

 

「えっと……こんな感じでどうかな」

 

 ガラクタとなったテーブルとチェアを起用に組み合わせ、足りないところはクモ糸、もといウェブで補強したイスが完成した。座ってもキシミ1つ聞こえない中々の出来だ。

 ただ、それも今だけだろうねとぼやく。隣人が目をしかめた。

 

「手厳しいね。僕に非があるのはそうなんだけど。僕のこと嫌い?」

 

 それとこれとは話は別かな。こんな話を聞いたことはあるかい。

 

 ある老婦人が買い物帰り、突然袋が破れたんだ。アイスクリームやら何やら、せっかく買ったものが散乱して困り果てたその時、我らが親愛なる隣人が駆けつけた。

 彼はクモ糸でさっと袋を作るだけでなく、老婦人の荷物運びまで手伝った。ここまでは美談だが、ここからは喜劇。

 ビルにぶら下がるにもヴィランを捕まえるにも使われるクモ糸だ、粘着力がすごくて買ったものが袋に張り付いたそうな。糸が溶ける頃にはアイスクリームも溶けるし、荷物にはクモ糸臭の香水付き。

 親切心での行いであっても、安易にクモ糸を使うのは考えもの、というわけだ。

 

 つまるところ。このイスの留め具もいずれは溶けてガラクタに戻るということだ。

 

「そ、そういうことね……なるほど、いい勉強になったよ、今後は気をつける。やっぱり代わりのイス買ってくるよ」

 

 別にいいさ。気にしてないから。どうせもうすぐ引っ越すからね、使わなくなる。今日一日持てばいいから。

 さて、私に時間はあっても、あなたの時間を奪うのは忍びない。早めに済ませるから、そこに立って。

 

「わかった。ポーズのリクエストってある?」

 

 去年のデイリービューグル8月3日号表紙のポーズで。

 

「あれってスパイダーマンの正体に迫る!とかでマスクを外したスパイダーマンのコスプレ写真だったと思うんだけど。流石にマスクは脱げないよ」

 

 冗談だよ。ファンとして気になるけれど、君にだってプライバシーがある。例えば……

 

「……例えば?」

 

 ……私より推定年下というところか。背が低いし、何より細身だし。ティーンエイジャーのヒーローとは、大変だろうね。

 

「ど、どうかな。中身はすごく聡明な代わりに背が低い大人の科学者かもしれないよ」

 

 そこは想像次第ってことさ。彼は正体不明だったからこそ、正体が明かされた時、話題となった。

 いずれ君にもそんな時が来るかもしれないし、来ないかもしれない。ただ、これだけは忘れないでほしい。

 

 君は、スパイダーマンはすごく愛されていたヒーローってことをね。

 故に、君の正体を探る者がいるということは、それだけ期待されているということの裏返しでもある。これから君が親愛なる隣人となるのか、あるいは、別の存在になるのか。皆が見ているよ、2代目。

 

 眼の前のスパイダーマンは力強く頷いた。期待は裏切らない、という意思を示すように、黒いスーツの2代目スパイダーマンは頷いていたのだ。

 

 そう、私のよく知っている赤と青のスパイダーマンは数週間前に命を落とした。それと入れ替わるように現れたのが、この2代目スパイダーマン。偽物でないかと言われることもあったが、彼は先代と同じ様に、親愛なる隣人として活動していることを知っている。先代が背負っていた大いなる責任を継ぎ、若くも戦いに身を投じる姿を、知っている。

 

 そんな彼であれば、いい絵のモデルになるだろう。鉛筆を握る指先に力がこもった。

 

 


 

 

 ギリギリ再生できたイスと異なり、画材は全て駄目になった。キャンバスやイーゼルはガラクタになったし、絵の具はほとんどスパイダーマンが潰した。なんだったらスーツに妙な汚れがついているのがそれだ。

 壊れた画材を見て、モデルになることを申し出てきたスパイダーマンだったが、肝心の絵を書きようがないのが正直なところである、が。幸い鉛筆類が部屋に残っている。それと、落書き帳代わりのスケッチブックを引っ張り出して、空きページに彼をスケッチすることにした。

 ひとまずの試し書きが完成したので、見せてみる。

 

「すごいね!まだ5分しか立ってないのに、輪郭線バッチリ」

 

 好評なようで何より。ここからが難しいのが、スパイダーマンの厄介なところ。先代は赤いスーツに黒いクモの巣が張り巡らされていたが、2代目の蜘蛛の巣はほとんどスーツと同化している。この距離でも目を凝らさないとわからないから、どうやって描いたものか悩ましい。

 

「あー……そのことなんだけどさ」

 

 何?

 

「実は、このスーツそろそろ新調するんだ。絵の具が落ちないからじゃないよ」

 

 えっ。

 

「最近いい素材を見つけてね、これより丈夫なスーツを作ろうと思ってる。ただ問題があって、表面加工が難しいんだよ。クモの巣張り巡らせようとしたら、1日どころじゃないね。でも、表面の質感は本物みたいかも」

 

 それはなんとも。ということは、次のスーツは毛むくじゃらか。

 

「そうじゃないって。蜘蛛の表面は結構ザラザラしてるんだよ。今度の素材は太めかつ強度の高い糸で表面が編まれてるから、それっぽい感じになる予定」

 

 なるほど、そういう路線。それはそれで面白そうだね。とはいえ、いくら耐久性が高くてもそれだけじゃ不安だから、もう一手ほしいね。

 

「というと?名デザイナーの意見を聞きたいね」

 

 プロテクターはどうかな。サッカー選手がスネにつけるようなやつだよ。あれを要所につけておけば、銃弾はともかくナイフくらいなら対策になるはずさ。

 

「いいアイデアだね、参考にするよ」

 

 贅沢をいうと、先代みたいな合金製アーマーがいいんだけどね。アレはすごく重くて俊敏性が損なわれるし、冷気に弱かったりで弱点もあったとか。今なら強化プラスチックでも作れたりするだろうし、素材の選択肢は広いはずだよ。

 と、いうわけで。こんな感じでどうかな、2代目。

 

「え?うわっ、すごい!これこそまさに、アルティメットだね」

 

 個人的には、アメイジングの方が好みかな。

 スケッチブックの中には、粒状の繊維が目立つ新スーツのスパイダーマン。体の各所に艶めいた部位があるが、ここは件のプロテクターをイメージした。ついでに、手書き感あふれるスパイダーマークのりデザイン、赤いラインも配置し直してみた。

 もっとも、赤鉛筆はないので塗っていない部分でイメージさせるだけだが、うまく伝わったようだ。

 絵を見ている彼の前で、ページを破る。丸くしている眼の前で、ページを折りたたみ、ポケットサイズにして、差し出した。

 

「いいの?」

 

 いいとも。これから先、多くは持っていけないから。さて、お詫びのモデル仕事はこれで終わり。短い間だけど、付き合ってくれてありがとう、2代目。

 

「こちらこそありがとう、アルティメット・デザイナーさん。最後に1つ、お願いしてもいいかな」

 

 何を?スーツ作りの手伝いは無理だよ。あくまでも絵が専門だからさ。

 

「それは自分で頑張るよ。その、さ。スケッチブック見せてくれないかな」

 

 これを見たいんだ。流石に恥ずかしいよ。

 

「僕も絵を描くのが好きなんだ。ストリートアートが趣味だけど、スケッチブックに落書きもそれなりに。それでさ、君が描いた絵を見たいんだ。さっきちらっと知ってる顔が見えたし」

 

 そういうこと。いいよ。同業ってことなら、君も仲間だね。

 これ描くの苦労したんだよ。ネットにほとんど情報出てなくて、荒い写真と目撃情報から描いた帽子が似合う新人スパイダーマン。君と違って全然見かけないんだよね。何か知らない?

 

「えーっと……このスパイダーマン達はちょっとしたゲストというか。ニューヨーク以外のところで戦ってるスパイダーマンで……ピーター・パーカーのスパイダーマンの訃報を聞いて、駆けつけてくれたんだ」

 

 なるほど。世の中にはたくさんのスパイダーマンがいるってことか。スパイダーマンのことはだいぶ知ってたつもりだけど、まだまだ知らないことだらけだ。

 

「なら、君が知らないであろうことを1つ。このスパイダーマンはモノクロだよ」

 

 モノクロだって?映画じゃないんだよ、2代目。写真が失敗して色が写ってないだけで、本当はこういう深めの青と赤のスーツだと思うんだけど。

 

「本当だって。白黒のダンディなスパイダーマンだった。雨混じりの風に吹かれるコートが似合ってたよ」

 

 帽子だけじゃないのか!コートを身にまとったスパイダーマン、か……いいね、それはいいことを聞いた。後で描き直さなくっちゃ。ところで同じ時期に白いスパイダーマンと怪しいヤツが目撃されているんだけど、彼らについても教えてもらえたり?

 

「あー……見た目だけならね。ところで怪しいヤツって?」

 

 スパイダーマン柄の小人と、謎のロボット。小人は妖精か何か、ロボットはヴィランじゃないかと噂だよ。

 2代目は空を仰ぎながら、見た目だけならそうなっちゃうかぁ、と嘆いた。悩んだ末に、一応スパイダーマンの一種であることを教えてくれた。メカのスパイダーマンはまだ納得できるけど、豚のスパイダーマンってなんだろう。スパイダーピッグ?やはり妖精のたぐいなのか、からかわれているのか。

 

 真実は2代目の頭の中だけにある。

 

 それからは、スケッチの延長戦。私の推測したスパイダーメンズのイラストを元に、2代目の修正指示が入る。現物はないもの、彼の表現は的確だったし、なんだったら簡単なイメージ図まで書いてくれた。彼の絵も、中々上手だった。

 

 最後に修正したのは、白いスパイダーマン。なんと、女性らしい。

 体の輪郭が男女であまりにも違うためか、見た目だけ……といいつつ、例外的に教えてくれた。

 私みたいに綺麗で可愛い女の子のスパイダーウーマン、とのことだが、お世辞でも嬉しいものだ。そう言われると一度会ってみたくなるが、残念ながらもう帰ってしまったらしい。

 

 いつか会えるかも、とは言ってくれたが。

 

 もう、そのいつかは来ない。

 

 絵を描き終えると、彼は階段を降りてストリートを駆け出した。クモ糸、もといウェブシューターの液を補給しに行くらしい。最後にスパイダーマンの秘密、として教えてくれた。

 よほど私は気に入られたらしい。スパイダーマンには縁がある。ずっと前から、ウェブシューターは知っている。相棒が、教えてくれたから。

 

 だから、私は。スケッチブックを切り刻み。

 壊れたキャンバスを補修して、”M”を描いた。

 

 


 

 

 それから、ある日。ありふれた日に、一人の隣人がアトリエを訪れた。

 そこには絵の具汚れが少し残っているだけで、イスはガラクタへと戻っている。アトリエらしさが消え失せたそこには、主の姿はどこにもない。ただ、黒いビニールで包まれた贈り物が、白く半透明のテープで倉庫に貼り付けられていた。さながら、スパイダーマンの糸のようだった。

 

 テープに紛れてメモが1つ。あなたの親愛なる隣人兼アルティメットデザイナーより。

 

 隣人はテープを剥がし、贈り物を受け取る。ビニールを剥がすと、1枚のコラージュが現れた。

 

 直ぐ側の摩天楼を背景に、いくつかのスパイダーマンのイラストをコミックのように差し込んだ絵。

 その中には、隣人がよく知っているスパイダーマンがいた。白いパーカーのスパイダーウーマン、モノクロの探偵じみたスパイダーマン、デフォルメした豚地味たスパイダーピッグ、笑顔を浮かべたスパイダーマシーン。

 彼らとともに並び立つのは、隣人の姿。その背景、摩天楼の向こうから覗く空に、赤と青のスパイダーマンと、ピーター・パーカーがいる。

 二人は背を向け、遠くなっていく。彼等は振り返りながら、微笑んでいる。隣人を見守っているようだった。

 

 これを作ったであろうアトリエの主への感謝の言葉に、返す者は誰もいない。その代わり、キャンバスの裏に手紙が1つ差し込まれていた。序文を見た時、隣人はマスクの裏で目を見開いた。

 

 親愛なる隣人”M”へ。

 

 

 突然"M"と呼ばれたことに君は動揺したかもしれない。君の本名がマイケルだとしたら、なおさら、ね。だが、私は君の本名は知らないことを断っておく。代わりに、私はスパイダーマンの正体がピーター・パーカーであることを知っていた。それも、彼が死ぬ前から。

 

 幼い頃から、私はスパイダーマンのことが好きだった。デイリービューグルを始めとした世間がスパイダーマンを嫌っていた頃から、彼のことが好きで、彼が出ていた新聞や事件に係る物品、果てはテレビ出演した時のフィルムまで。

 

 誰が呼んだか、スパイダーマンを集める少女。色々集めていたら……彼にバレてね。

 

 私の部屋を訪れた彼との会話は、今でも覚えてる。事件の裏話、スーパーパワーにウェブシューター、悪と戦う理由・大いなる責任。そして、彼がピーター・パーカーということも。彼は語ってくれた。最後には相棒と呼ぶことを許してくれた。

 たかが一般人にそこまで話してくれるわけがないだろうって?そうとも、あの時の私は一般人じゃなかった。

 

 重病に侵され、余命数週間の少女だった。だから、教えてくれたのだろう。

 

 だけど、幸いなことにあの前後でヒーローやヴィランの動きが活発になったこともあってか、医療の進歩も凄まじかった。余命数週間が数ヶ月、数年と。少しずつ、寿命は長くなった。デイリービューグルの取材と称してしてやってきたピーターが「相棒、調子はどうだい?」なんて聞いてきた時は、驚きで心臓が止まるかと思ったよ。

 

 でも。もうピーターは来ない。スパイダーマンはいなくなった。

 

 それを知った時、私の延命治療も限界が見えてきていた。だから、昔住んでいたアパートに戻ることにした。戻って、コレクションを然るべき人たちに渡した。彼の親族や、彼を支えていた人たちへ届け、ピーター・パーカーがいたことを伝えられるように。

 それから私は絵を描くようになった。やることがなかったというのもあるけど、コレクション以外にもスパイダーマンの記憶は色々あったから。集める少女から、描く女性になった。

 

 その前後で、2代目の話を聞いた。

 彼の名を語る偽物じゃないかと不安だったけど……安心したよ。

 君の活躍を調べたけど、それだけじゃない。君と出会って、話して。君のことを知って、確信した。

 

 君は、私がよく知ってるスパイダーマンじゃない。

 ピーター・パーカーじゃない。だけど。親愛なる隣人だ。

 新しいスパイダーマンだ。スパイディだよ。

 

 だから、私は君にこの絵を送る。

 タイトルは"M"。MilestonesのM。マイルストーン・道しるべだ。

 

 ピーターはどんな苦境に立たされても、戦い続ける。それが正しいことであると、示してきた彼の姿に憧れ、彼のようになりたかったから、スパイダーマンを集めていたんだ。

 2代目。スパイディ。君が歩んでいく道の先には、大いなるスパイダーマンがいる。それは遠い道しるべだ。ピーターのようになるのは難しいことだろう。多くの苦難が待ち受け、犠牲を強いられることがあるかもしれない。

 

 だけど、君は一人じゃない。

 

 ピーターは君を見守ってくれるだろうし、君と同じ道を歩む仲間たちもいる。君はいつか、アメイジングで、スペクタキュラーで、アルティメットな、素晴らしいヒーローになれる。私はそう信じている。

 

 そして、いつか。私のように、大いなる力を持たない人が苦難に立ち向かう時の、道しるべになるだろう。

 私はスパイダーマンを道しるべに、いくつもの治療に耐え、ここまで生きてきた。彼の姿に、何度も勇気づけられてきた。

 だから、彼を失った時、どれほど深く絶望し、君が現れたことにどれだけ勇気づけられたことだろう。

 君がいてくれたことへの感謝の気持ちで、この絵が完成したんだ。

 

 ちょっと雑な作りだから、いつまでも残しておくのは難しいと思う。壊れたら、いつでも処分してくれて構わない。君が挫けそうになった時に勇気づける、道しるべのような記憶になってくれれば、それでいいから。

 

 ありがとう、私のマイルストーン。スパイダーマン。

 

 スパイダーマンを集め、描く少女

 

 

 隣人は手紙を折りたたみ、キャンバス裏にウェブで貼り付けようとして、彼女の言葉を思い出してやめる。縁に差し込み直し、大切にビニールを掛け直す。"M"を胸に、隣人は空へ飛び立った。 

 

 

 今日というある日を胸に、生きていく。

 

 親愛なる隣人とすれ違ったのは、たった1日。それでも、大切な道しるべ。

 

 今日は、The Drawing Milestones Day。

 道しるべを描いたのは少女か、スパイダーマンか。

 

 




Next Spiday

自分が何者であるか、探さなければならない。

Be S Day = 616

だからこそ、自らに責務を課した。
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