闇派閥を畑の肥やしにするタイプの農家さん 作:ダンまち=スキー
これまでデメテル・ファミリア所属なのに主神であるデメテルの出番がほぼ無かったのは、出会いを書くとシリアスになるし、普通に出しても何の面白みもない日常の話になるから。つまり私の実力不足です。
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その日、シオンはある失敗からやけ酒をしていた。奢りだから着いてこいとそこら辺の冒険者を適当に誘っての大宴会である。
「かーっ! マズイ!」
「ならなんで飲んでんだよ」
「雰囲気だよ雰囲気、アトモスフィア」
シオンは一体化した
「酒には酔えなくてもよ、旦那は女が
「羨ましいですねぇ。僕はエルフが好きだけど、娼館で相手して貰うにも高くて高くて」
「俺ぁエルフは好かん! あんなうすほそじゃあ物足りねぇぜ!」
「おいおい待てよ」
慰めから光の速度で猥談にシフトした冒険者たち。それ自体は別にどうとも思わないシオンだが、途中で待ったをかけた。
「女エルフ四天王のうち、3人は巨乳だろ!」
「「「た、たしかに……」」」
オラリオで有名な女エルフと言えば、アストレア・ファミリア唯一の生き残りにして今でも治安維持に務めるリュー・リオン。そしてロキ・ファミリアのリヴェリア、アリシア、レフィーヤだ。
「異議あり! それは悪意ある抽出にすぎない! うすほそがエルフのスタンダードです!」
「つかハイエルフのリヴェリア様の体型はトップシークレットだろ!」
「俺は古い付き合いだからな。ふっ、お前らは知らんのか……あいつは物凄い着痩せするタイプだ」
「「「うおおおおおおおおおおお!!!」」」
酒場中で上がる歓声が空気を震わせた。ここに女性陣がいれば絶対零度の視線を向けられるし、エルフがいれば不敬だと襲ってくるが、生憎ここは豊穣の女主人ではなく場末の酒場。男連中しかいない。
「ところで巨乳じゃない1人は……」
「もちろんリオンだ。いやー、エルフらしいうそほそな体型で安心感すら覚えるなwww」
「誰が貧相な身体だと?」
「「「あっ……」」」
瞬間、シオンはハリウッド映画さながらに窓を突き破って逃げた。その姿は奇しくも義理の息子とそっくりであった。ちなみに普通に捕まった。
◇
「……スキルまで使うか? 普通」
速度に比例して攻撃力が上がるスキルと
「つかなんでいるんだよ」
「デメテル様が探していました。早く行きますよ、下郎」
「はい……」
という事で連行されたデメテル・ファミリアのホーム……ではなく街外れの倉庫。そこには異様な光景が広がっていた。デメテルを中心として、オッタル、ヘディン・セルランド、ヘイズ・ベルベット、リヴェリア・リヨス・アールヴ、フィン・ディムナ、アイズ・ヴァレンシュタインというイカついメンツが並んでいたのだ。
「えーっと、闇派閥の残党が集まって一斉蜂起するから対策会議をしてる……とか?」
「喜ばしい事に違うね」
と、フィン。
「じゃあこの前のベルテーンか? いや、アレはむしろ良いことをしたと思うが……」
「その件については、無許可で大規模な戦闘をしたこと以外は概ね問題ありません」
と、リオン。
「じゃあ何なんですか、デメテル様」
「デメテル? そんな慈愛に満ちた優しき神はここにはいない。今の私は
「アッハイ。というかこんな
豊穣神としての側面も持つフレイヤとは古い付き合いなので昔の彼女について色々教えると言われ勧誘されたオッタル!
ハイエルフであるリヴェリアに万が一が無いよう着いてきたオッタルの保護者ヘディン!
沸点が低いファミリアの仲間たちがやらかさないよう着いてきた苦労人ヘイズ!
最高級のジャガイモから作られたジャガ丸くんに一瞬で買収されたアイズ!
アイズが心配で来た
親指がうずかないから恐らく問題ないけどなんか面白そうだから着いてきたフィン!
最強の戦士、最強の魔法剣士、最強のヒーラー、最強の魔導師、最強の指揮官という理論上最強パーティみたいなドリームチームである。
「リオン、結局これはなんなんだ」
「いえ、私も知りません。デメテル様?」
「その名は捨てたわ。私は残酷な命令を下す
「これ本名を呼ぶ度に少しずつ偽名が伸びていくシステム?」
どこからか持ってきたサングラスをクイッとしているデメテルの姿に2人は困惑しっぱなしである。後ろに控えてる方々は何を思ってここにいるんですか…?
「ちなみに暴れて逃げようとしても無駄よ? 私達はこれで連絡を取り合って完璧な連携をとりあなたを追い詰める」
「
「ええ、いつも都市に貢献してるでしょ〜と脅して……コホン、頼んで貸してもらった品よ」
「落ち着いてくださいデメテル様、周りに被害が出たらどうするんですか」
「ウラノスに駄々を言って……コホン、とにかく人払いは済んでいるわ」
「うっそだろ……」
その本気度にこれから一体何をされるのかとシオンは恐れ
「単刀直入に聞きます。我が眷属シオン、あなたは浮気をしていますね?」
「は?」
シオンは困惑した。そもそも質問の意味が分からなかった。結婚していないのだから浮気もクソもない。背に刻まれた恩恵は神の方から逆探知できるので改宗を疑われている訳でもない。なんのなんのなに?
「フレイヤとの仲を取り持ってくれた時のことを覚えていますか?」
「まあ、大体は」
豊穣神の側面を持つ女神として古くから付き合いのあるデメテルとフレイヤだが、下界に降臨してからはあまり交流がなかった。していなかったというよりは、フレイヤの方から一方的に避けられていた形だ。
遊ぶ約束をしていたのに尋ねてもちっとも会ってくれないし、いつもバベルに引きこもっているし、たまに見かけたと思えば話しかけるなオーラを振りまくし、そのクセいつもつまらなさそうな顔をしているし……その心と相反するように煌めく宝飾品に退屈そうな顔を映す神友をデメテルは見ていられなかった。ので、シオンに愚痴をこぼした。
その次の日の事だ。シオンはデメテル・ファミリアのホームにフレイヤを連れて来た。2人きりでフレイヤと話した時にその顛末を聞いたのだが、なんと門前払いに屈さず眷属を蹴散らしながらバベルを登り、オッタルにボコボコにされながらフレイヤのところまでたどり着いたらしい。帰ってきた時は心配させまいと治療も着替えも済ませて普通にしていたが、とんだ大冒険である。
「それは、とんでもない事をしたね。いやホント」
「階層主と戦う方が幾分マシというものだ」
フレイヤ・ファミリアとバチバチの関係で度々ぶつかるロキ・ファミリアの2人はドン引きである。
「話がしたいだけなのに通してくれないんだから困っちゃうよなぁ」
「阿呆が、貴様のような危険人物を通してたまるか」
「誰がじゃい!」
口を開いたと思えば毒を吐いたヘディン、平常運転であった。
「で、その時の事がなんだってんです?」
「あなたは言いましたね。『病めるときも健やかなるときも、あなたを敬い、あなたを慰め、あなたを助け、この命ある限り忠誠を尽くす』と」
「言ったような気もしますね」
「誓ったんですか? 私以外の女と……」
「リオン、お前は何を言っているんだ」
オッタルがフレイヤにそんな風なことを言っていたから真似してカッコつけたようなつけてないような。本人としてはそんな認識である。多分その場でノリで言った。リヴェリアから向けられる視線の温度が1段階下がった。
「こ、こんなことを言っておきながら、他所に女を作るなんて……浮気でしょうが! この!この!」
「痛い!痛い!異議ありです!」
「ほう? それでは事情聴取を始めます」
Q.暴力、後、事情聴取。こんな非道が許されていいのか?
A.この戦力を法で止められないので許される。
「オラリオの司法はどうなってんだ!」
「まず、そこにいるリオンと夜な夜な出掛けては朝帰りしていますね?」
「え、いや、ちが」
「この卑しいエロフがッ!」
爆弾発言である。ヘディンはすかさずリヴェリアを庇うように前に立って言った。
「穢らわしい、これと同族など信じられん。今すぐリヴェリア様から離れろ。穢れる!」
「違うんですリヴェリア様! 信じてください!」
実際2人で闇派閥の残党を探しながら治安維持に務めているだけである。悪人は夜に活発になる生態をしてるのだ。
「闇派閥を愛しい男とイチャつく口実にしてアストレアに顔向けできるの!? 恥を知りなさい!!」
「うわあああああああああああ!!!」
キャパオーバーした純粋エルフはどこかに走り去った。向けられる疑いの視線に耐えられなかったらしい。
「やっぱり言い掛かりの魔女裁判じゃねぇか! もう解散しろお前ら!」
「報酬を貰ってるから、仕事はする。もぐもぐ」
「うちのお姫様はこう仰っているからね、僕たちも帰らないよ」
「クソがッ!」
フィンは実に楽しそうにしていた。普段は困らされてばかりなのでさぞいい空気を吸っているとみえる。
「それじゃあ
「いや、あの子を疑うのはアカンでしょ……」
アンナは平穏な日常を送っていたら急に誘拐されて豚モンスターモドキみたいな人間の愛人にされかけるというトラウマ体験をしている。しかも父親にギャンブルの借金のカタとして売り払われるというオマケ付き。そんな状態から助けてくれた人間に雛鳥の如く付いてくるのは仕方の無い事だろう。
「そーんなわけないでしょうがこのスットコドッコイ!」
「スットコドッコイ?!」
「あの娘はあなたといると笑顔マシマシで声が一音高くてメスの顔をしてるの!!」
「なんてこと言うんだこの女神!」
実情はともかく*2、シオンからすれば酷い言いがかりだった。アンナは妹のように猫可愛がりされているのだ。
「こんなところにいられるか! 俺は帰らせてもらう!」
「逃げられるとでも?」
「どけ! 俺はお兄ちゃんだぞ!!」
「仕方ない、それでは本題に入りましょうか──アルフィアのことです」
ピタッとシオンの動きが止まる。それは、この場にいる全員が解散しなかった理由。あの恐るべき魔女の暴虐はトップクラスの冒険者をして未だ記憶に新しいほど鮮烈だった。
「あなたはオラリオから出た時、彼女に会っていますね?」
「……まあ、はい、大体はそうです」
周りを見渡して、シオンは大人しく事情を話した。隠したら本当に袋叩きにされるからだ。アルフィアを対黒竜の戦力として治療したこと、彼女の唯一の血縁であり天涯孤独の少年を引き取って育てていること、少し前までゼウスがいたがヘラの気配を感じたと言って消えたこと等。
「信じられないかもしれないが、あいつは立派に母親やってるよ」
「嘘だな」
「嘘だ」
「嘘だね」
「嘘だろう」
上から順にオッタル、ヘディン、フィン、リヴェリアである。オッタルに至っては我関せずと言わんばかりに沈黙を貫いていたのにこれだけは疑わざるを得なかったらしい。
「アレは傍若無人、傲岸不遜が服を着て歩いているような女だ」
「そ、そんなに言う?」
シオンはここに本人がいなくて良かったと心の底から思った。
「ちなみに息子にしている最低限の教育*3がそろそろ終わるらしいから、近いうちにこっち来ると思うぞ」
「ふざけるな、なんとかしろ」
「無理無理、俺じゃ勝てないから(笑)」
「本当にふざけるなよ貴様」
何度もボコボコにされた経験がよみがえって乾いた笑いをこぼすシオンに、ヘディンは青筋を浮かべた。
「ところでシオン」
「なんだフィン。あの女王様を止める方法を聞きたいなら無駄だぞ」
「いや、そうじゃなくてね。1人の子供を2人で育てているなら、君はアルフィアと結婚しているのかい?」
ギュルン、と音が鳴りそうな勢いでデメテルの首が動き、シオンの姿を捉える。
「してないぞ。ただまあ、2人の事は大切に想ってるよ」
セーフ、なんてとても言えない。そこには穏やかな父の顔があった。デメテルは脳が破壊されるのを感じた。
こいつらうまぴょい*4したんだ!
「来たれ、ミストルテイン!」
「ちょ」
「天を裂き、地を穿つッ!!」
「待っ」
その日、倉庫街の一角が吹き飛ぶ事件が発生した。
幸いにも死傷者は出なかった。
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『ベルテーン』
・民の病気を治すため国を収める主神が用意した生命の泉をモンスターに乗っ取られてどえらい事になった国。沼の王と呼ばれるまで進化したモンスターに生贄を捧げて何とか存続していた。
・国の悲願?
・朝起きたら沼の王がバカデカい樹木に変わっていて国家中枢が大混乱に陥った。
『シオン』
・生命の泉は病に苦しむ民にとって必要不可欠であるとベルテーンの主神に聞いたので無限の肥料にするのは諦めた。骨折り損のくたびれもうけ→やけ酒→連行。
・生命の泉をリソースとして無限に再生する沼の王に千日手となったが、天を衝くほど巨大に成長した宿木の圧倒的な吸引力で沼の王を削り切った。人生で最長の戦闘時間だったのでドチャクソ疲れた。
・デメテルは命の恩人なので、いざという時は己の命を賭して守るくらいには大事に思っている。なお同じくらい大切な人間が複数いる模様。
『デメテル』
・もう許さねぇからなぁ?(豹変)
・無限の寿命と種族:神という圧倒的なアドバンテージを自覚したので一旦許した。死んだ後に天界で好き放題すればいいじゃないという発想。こいつ邪神みたいなこと言ってんな。
『ベルくん』
・ハーレム?絶対に作りません(鋼の意思)
『ヘイズ』
・頼むから問題よ起きてくれるなと祈りながら仕事をサボっていた。