闇派閥を畑の肥やしにするタイプの農家さん 作:ダンまち=スキー
シリアス注意
その知らせは、大聖樹*1の世話をして地の精霊と農業トークしていた時に来た。
なんと、今日は闇派閥との一大決戦らしい。
「聞いてないんですけどォ?!」
「君は自分の守りたいものを守ってくれればそれで構わないよ」
ニッコリ微笑んでそう言うのは、ロリババアならぬショタジジイ、オラリオの勇者ことフィン・ディムナである。
恐らく俺はフィンに嫌われている。なぜなら普段から言うことを聞かないから。情報共有したって一人で突撃して闇派閥を皆殺し……じゃなくて皆肥やしにするもんだから、勇者としてのイメージを大事にする彼としては使いにくいんだろう。
ただ防衛を任されることに異存はない。デメテル・ファミリアは所属人数と所有する土地の広さにおいてオラリオでぶっちぎりのトップだが、その大半はLv.1で、なんなら
◇
「嘘だろ……」
シオンの眼下で、都市が燃えていた。
過去に遭遇した自爆兵が量産され、劣る戦力を魔道具による自らの命をかえりみない爆発……即ち自爆によって補う悪魔の戦術で、街中に破壊を撒き散らしていた。
男たちの苦悶、女子供の絶叫。都市が、
途切れることのない爆音と剣戟、悲鳴と怒号。
必死に手を伸ばす冒険者からこぼれ落ちる数多の命。
人が
秩序に穴が開き、混沌が渦を巻く。
さらには、天に突き立つ光柱が生まれる。
1つ、2つ、3つ……最終的に、合計9つ。
それは、神の送還。主神を失った冒険者は当然ながら
闇派閥が歓喜し勢い着く。いつも邪魔ばかりしてくる厄介な冒険者を、赤子の手をひねるように殺せる。それは、疑う余地のない大虐殺だった。
闇夜を切り裂く光柱。
減っていく命の音と熱。
喉が枯れ泣き喚く正義。
暗雲に隠された星空。
崩壊する秩序。
「告げよう、今の貴様等にぴったりな言葉を──」
この地獄絵図を覆すのは簡単だ。
「──脆き者よ、汝の名は『正義』なり」
轟き渡る悪の宣言。響き渡る混沌の嗤い声。
邪悪は胎動の時を終え、この日、産声を上げた。
英雄の都は、敗北した。
◇
破壊と慟哭、恐怖と絶望。
街が燃え、血が流れ、数多の星々が散った。
後に死の7日間と呼ばれる、オラリオ最大の悪夢。
その日、オラリオは最も長い夜を過ごし……そして、最も昏い朝を迎えた。
月が無く、まだ暗い夜明け前。家族、友人、仲間……愛する者達は遺灰と化して空を覆い、陽の光を忘れた
立ち昇るいくつもの黒煙は、まるで弔いのようだった。
しかし、残された人々は、それが哀悼なんてものではないことを知っていた。その煙に宿るのは、無念と悲憤、苦痛と恐怖だ。
「急げ! まだ生存者がいるぞ!!」
焦燥する民衆が朝と夜の境目で絶望に暮れる中、それでも冒険者たちは、傷だらけの体で救助活動に励んでいた。
炎の奥に折り重なる亡骸、瓦礫の海に埋まった亡骸。そしてまた、必死の回復魔法も虚しく、あっけなく瞳から光が失われる。
重なる痛哭がその惨状を表していた。
「一体、どれだけの……クソっ!」
シオンは正義を掲げるほど殊勝な冒険者ではない。異世界転生者ではあるが、チートを授けられていない。ファミリアの仲間達を守らなければならない。闇派閥に物資を与えるわけにはいかない。アンブロシアの供給を絶たれるわけにもいかない。
──畑を離れられない言い訳は、いくらでも出来た。だが、それでも、今日ばかりは……己の無力を呪い、血が滲むほど手を握りしめた。
そしてそんな状態で。自分たちを救ってくれた冒険者に石を投げる民衆を見ても、シオンは心穏やかだった。彼らを愚かだと断ずるのは簡単だが、それは自分がたまたま普通より強かったから言えることだ。追い詰められた時に分かるのが本性だとよく言われるが、追い詰められた時に分かるのは所詮、追い詰められた時の姿。それをシオンはよく分かっていた。
それはこんな状況でまだ正義として在れる冒険者たちの高潔さと強さもまた。
やらない善よりやる偽善。良い言葉だが、シオンは少し違うと思っている。だって、やらない善は悪だ。助けられるのに敢えて見捨てて助けないことを選ぶのだから、紛れもなく。
そして、やる偽善は善だ。生来の気質なのだから、善人でない事は罪ではない。だが、善く在ろうとしない事は罪だ。偽善だろうが何だろうが、自らのリソースを削り他者に尽くすなら、それは紛れもない善であり、この上なく尊いと、シオンは思っている。
例え暗雲立ち込めそれが星空を覆っても、無窮の夜天に
冒険者とは、冒険する者。ここからが本意気。
・オラリオに無許可で生やされた大聖樹はシオンの手によって爆速で成長させられ一瞬で大樹になった。当初はオラリオ中のエルフがブチ切れたが、精霊の集う聖地となったので今は手のひらを返してシオンを守り人扱い。僅かな力しか持たず意思疎通もほぼできない下位精霊たちが沢山いる他、隠しているがそこそこ強大な地の精霊が住み着いている。多分しばらくすると