闇派閥を畑の肥やしにするタイプの農家さん 作:ダンまち=スキー
調査の結果、闇派閥の狙いが分かり、配置も決められた。ヤバい敵はかつての最強二大派閥に所属していたLv.7の2人と一体。かつての夜、廃教会で遭遇したアルフィア。重戦士のザルド。そしてダンジョン深層から引っ張って来た階層主。
シオンの担当はアルフィアだ。それもタイマン。色々込みで実質Lv.4より強いとはいえ相手はLv.7、普通なら天地がひっくり返っても勝てない。だが、嬉しいことにこの上ない程の相性有利だ。勝てはせずとも物凄い削りを入れられるとシオンは確信していた。
タイマンを認めさせるにあたり、地の大精霊の事はフィンに話し、作戦に参加する全員が知る事となったが、まあ必要な犠牲だ。大聖樹に集まる不法侵入エルフが増えたりするだけ。とっておきを装備したちーちゃん*1は俺より強いので、デメテルと畑の守りは問題ない。
それじゃあ、イクゾー! デッデッデデデデ、カーン!
◇
決戦の場所はオラリオ直下、ダンジョン18階層。しかしたどり着いたその場所は、本来の広大な森や美しい湖畔、咲き誇る水晶の光源を失っていた。森は消え、大地は割れ燃え盛り、溶けた水晶が滴るその様は、とても
「うわぁっ?! な、なにコレ?!」
「これは竜の壺──深層域と同じ状態になっておる!」
唐突な地面の爆散とそこから立つ火柱。ロキ・ファミリアの第1級冒険者であるガレスとリヴェリア曰く、52階層より下で起こる現象、階層無視の砲撃。つまり、床をぶち抜いて下から撃たれている。
良い知らせは、これについて情報がある事。悪い知らせは、都市最大派閥のロキ/フレイヤ・ファミリアが未だ踏破していない事だ。
「つまり、敵の火力は最低でも52階層クラスと」
「
「呑気か!」
空気を弛緩させつつ、楽園を地獄に変えている元凶がまだ下にいる内に戦闘を整えんとしたその時、彼女は現れた。
「余計なことはするな」
声が響いた先には、灰色の長髪を揺らす、漆黒のドレスを纏った魔女。無数の火の粉が散る紅蓮の戦場でありながら、寒々とした静寂をもたらすその雰囲気。
「この景色の延長こそが神時代の──」
「
「──貴様、その白い髪は……」
「手筈通りに!」
朝一番にオラリオを見下ろし、指が疼くから配置を変えると作戦当日に言い出した時は何言ってんだこのショタジジイと思ったものだが、まさかアルフィアの現れる場所をドンピシャで当てるとは。
強さ良し頭良し顔良しで未来予知じみた直感もあり2つ名が勇者、これもうコイツが異世界転生者だろ。
ともかくRTAの如き会話キャンセルの不意打ち魔法によって交戦に入る。魔法を連射されたら面倒な事になるのでありがて〜^^
「最終勧告は不要らしい……いいだろう、ならば途絶えろ」
「て、手加減とかは……?」
「フッ……
「──っ?!!」
その魔法の威力は、前とは桁違いだった。初対面の時は何か思い入れがあるのであろう廃教会を気遣った手加減をしていた、にしても
「……ちょっとタイムいいすか?」
「
「ですよねぇ?!」
アルフィアの第2魔法である『
部隊と個人で撃ち合える
「ほう…? 硬いな。魔道具の類か?」
「いいや、自前さ。その代償がこの白い髪ってわけだ」
シオンがアルフィアを対策するにあたってした事は、自らの肉体に寄生させた
そして、相性有利と判断した材料はいくつかある。
1つ、魔術師であること。力や耐久のステータスは高くても500/999程度だろう。なんならもっと低いかもしれない。毎回999でランクアップしているシオンと比べれば半分。
2つ、魔法が音であること。シオンの
そして、音はただの物理的な衝撃でしかない。これが威力そのまま炎や雷だったらもう危なかっただろうが、硬質かつ柔軟な
3つ、再生能力。音の魔法が直撃すると三半規管がやられてマトモに動けなくなったり顔中の穴という穴から流血したりするわけだが、
4つ、
「クソっ!」
「掠りもしないのなら得物など振るうな」
魔法にも拳撃にも耐えられる。だが、攻撃が当たらない。
「でなければ、こういうことになる」
「──と、思うじゃん?」
「なっ、くっ?!」
お手本のような太刀取り。しかし武器を奪われたシオンは、脳を貫いて即死させんとする顔面を狙った刺突に手のひらを差し出し、そのまま深く貫通させて剣の
即座に剣から手を離し距離をとられたのでお世辞にも深いとは言えないが、それでも無敵に思えた静寂の魔女に一筋の傷が刻まれた。
「……なるほど。どうやら私を詰ませる為、念入りに戦術を組み立ててきたようだな」
「悪いな、ガンメタで。けど恨むなら強すぎる自分にしてくれ。いやマジで、強すぎるぜアンタ」
病気で長期戦ができない事は面識のあるフィンたちから聞いていた。そして、魔法でも殴ってもダメな千日手。ならば、剣を使いたくなるだろう。こんな事したくなかったし、そもそも戦いはクソだが、負ければ死ぬし、逃げたらオラリオが滅ぶのだから、やるしかない。
そして勝ち筋その5、魔剣ミストルテイン。ファンタジー世界特有の魔力を含んだ謎金属、
ちなみにシオンとデメテル以外が触れると一瞬で全てを吸い尽くされて死ぬ。飲食店に忘れた際、盗人がワンタッチでカラッカラの死体になる事件が発生しこんな危険物を持って歩くなと怒られて以降は
「開幕で植え付けた
「詰みだとでも?」
「俺から逃げて剣でも探すか?」
「…………」
「…………」
しばしの睨み合い。アルフィアは目を開いており、シオンはそれに見蕩れていた。それは明確に隙だった*3。しかし、そんな静寂を切り裂くようにして階下から現れていた怪物の咆哮が響く。
「邪神が終焉を連れて来たが、加勢しなくてもいいのか?」
「問題ない、アイツらはやれる。それよりアンタの動機を聞かせてくれ」
「……もはや隠す意味も無い、か。いいだろう」
そうしてアルフィアが語ったのは、失望と無力。世界に、オラリオに、そして自分達に対して。黒竜は人類史で最強と謳われた眷属たちを蹂躙した。挙句、生き残った者達は黒き終末を恐れ逃げ出す始末。その時に彼女は確信したらしい。このやり方では駄目だった、真の絶望に抗えない冒険者では世界の悲願に届かない……と。
『世界は英雄は欲している』
彼女は言う。モンスターが地上に蔓延り恐怖と絶望に支配された世界に存在した、神に依らない真の英雄が必要なのだと。今の時代にも英雄譚として語り継がれる栄光と伝説を復活させるのだと。古代の人間は確かに、自力でモンスターと渡り合い、あまつさえ神時代の千年で届かなかった黒竜を撃退せしめた。
即ちアルフィアの目的とは、下界の救済。
「見ろ、あれを」
さされた指の先には、黒い竜巻があった。その中心にいるのは
「あれこそが奪われた者の力。恐怖と絶望、その先で手に入れることの出来る至高の領域だ」
シオンは反論できなかった。目の前の黒い竜巻を上回る出力をLv.3でなど、とてもじゃないが不可能だ。そして、出来る人間に心当たりもない。聞いたことすらない。説得に必要なのは言葉ではなく、証明だった。
しかしながら。
「で、本当は?」
「……なんだと?」
シオンは疑問だった。このクソみたいな7日間の初日、アーディ──あの夕焼けのような少女が死に、オラリオの精神的支柱であるガネーシャ/アストレア・ファミリアが崩れ。かつての覇者の登場により実力的な支柱であるフレイヤ/ロキ・ファミリアもガタガタ。街中で起こる自爆テロ、神の連続送還。あの日、2人が暴れていればそれで終わっていた話に思えた。
それなのに、何度も現れては退却し、まるで準備期間を経て立ち塞がるような立ち回り。オラリオをぶち壊すだけならもっと上手くやれた筈だ。でも、そうはならなかった。
「……それで、結局なにが言いたい?」
「逃げられると思うなよって事だ。黒竜と戦う時はお前らも一緒に来て貰う」
「……なんだと?」
「闇派閥をまとめて掃除させて、自分たちは試練になって、あとは任せましたってか? ふざけんな。病気だか何だか知らないが治して最前線に引きずり出してやる」
『シオン』
・ザルドとタイマンしたら3分クッキングされるザコ。異世界転生者として恥ずかしくないの?
『アルフィア』
・改めて見たらあまりにも強すぎる公式チート。シオンがガンメタになってるのは全く意図してなかったので奇跡。まだ暴れる。
『リュー・リオン』
・裏でゲキアツ展開を迎え正義の眷属として覚醒したが、農家さんには関係ないのでカット。書籍を買おう!
・シオンを畑から離してダンジョン入りさせるのが難しすぎて、この先エグい曇らせ展開の発生する可能性が高まっている。みんな、
『ちーちゃん』
・大聖樹と畑に惹かれてオラリオ入りした地の大精霊。
・魔剣ミストルテインと同じ要領で作られたゴーレムに乗り込んでおり、大聖樹と畑に近いところで戦うならオッタルを殴り倒せるくらい強い。
・地面経由で畑の周辺をワープして移動する畑荒らし絶対殺すマン。しかしシオンが恐れられ過ぎているせいで畑荒らしが来た事は無いのでキルスコアはゼロ。
『空間袋ver.3』
・材料費がクソ高いし成功率も低いので量産できていない。今まで試行錯誤を重ねており、ver.1は時間が普通に流れるし重量を持ち主が引き受ける、ver.2は重量を無視できるようになったが時間の流れは変わらず、ver.3にしてようやっと完成した。
『魔剣ミストルテイン』
・アンブロシアのスキルが生えるキッカケになった闇派閥の主神ぶち殺し事件の際、この剣で神を断頭したら神器になった。眼帯ボーイッシュ美少女の鍛治神ヘファイストス様が下界の未知としか言えないレベルの謎武器。シオンかデメテルが呼ぶと飛んでくる。
・実はデメテルが持つとゼウスすらビビらす飢餓の権能とリンクして周囲から生命力と魔力を根こそぎ吸い取り、さらにそれを還元する。つまり神でありながら地上である程度の力を振るえる。バレたらヤバい。