闇派閥を畑の肥やしにするタイプの農家さん   作:ダンまち=スキー

7 / 10

日課の日間ランキング漁りをしてたら1番上に本作があっておったまげました。シルバーウィークの思い付きがまさかこんなに評価されるとは……
評価感想ここすき誤字報告、全てありがたく受け取っております。本当にありがとうございます。



俺はお父さんだぞッ!!

「こんなところでも土いじりか」

 

「趣味なんでな……ベルは寝たか?」

 

「ああ。全く、私が母親の真似事をする羽目になるとはな」

 

 やれやれとでも言わんばかりの口振りとは裏腹に、アルフィアの顔には柔らかな笑みが浮かんでいた。

 

 真似事とは言いつつ、少し前まで天涯孤独であったベルにとっては、真実アルフィアが唯一の家族であり母親なのだろう。目を瞑ったまま、ちっとも笑わず、けれどぎこちない手つきで、頭を撫でてくれる。小言を口にしながら、時には仕置きをし、それでもいつも小さな手を握って守ってくれる。ベルに母親を教えたのは、神経質で、我儘で、乱暴で、とても不器用な目の前の女だった。

 

 2人の間には、確かな家族の愛情があった。

 

「病気だって治ったんだ、もう何も心配する必要はない。真似事じゃなくちゃんと母親してやれよ」

 

「……貴様、何を辛気臭い顔をしていた」

 

「いやいや、俺の事はいいからベルのとこに……」

 

「隠すな、話せ、今すぐに」

 

「はぁ……はいはい」

 

 シオンはため息を吐いて立ち上がり、ポケットに手を突っ込んで月を見上げた。

 

 ここ最近で分かったのは、アルフィアは女王様であるという事だ。この家において唯一の法はアルフィアの機嫌を損ねない事である。家の方を見ると、セクハラしようとしたゼウスは今も壁に埋まっていた。救出は許可されていなかった。合掌。

 

「いや、なんだ? 俺がもっと早く冒険者になっていれば、もっと必死にダンジョンに潜っていれば、お前の妹も──」

 

 言い切る前に、シオンの頭を衝撃が襲った。

 

「いってぇな畜生! なにす──んん?!」

 

 気付けば抱き締められていた。

 

「……最初はここに住む予定など無かった。未来を求めるのなら私を打倒し英雄の器を示せと譲らず……戦い敗れ、妹のもとへ逝くつもりだった」

 

「あの、今の状態でそれをやられると、オラリオは多分ヤバいんですけども……」

 

「私は雑音が嫌いだ、黙って最後まで聞け」

 

「アッハイ」

 

 シオンは抵抗をやめた。そうさせる圧があった。

 

「本当に一目見て、去るつもりだったんだ。だが、あの子の白い髪を見た時、もうダメだった。気付けばあの子の前に立ち、決して離すまいと抱き締めていた」

 

 知っている。美しい夕暮れの中、シオンはそのリアクションを見て勝利を確信し、ゼウスとニヤニヤしていたら福音(ゴスペル)され家ごと吹き飛んだ。忘れられるわけがない。

 

「とはいえ、そう遠くないうちに別れの時が訪れる事は覚悟していた……だが、今は違う。あの子の成長を見守ってやれる。あの子を1人にしないですむ」

 

「…………」

 

「全てお前のおかげだ、シオン……ありがとう。お前がどう思っていようと、確かに私はお前に救われたよ」

 

 感謝の言葉と共により一層の力を込めて抱き寄せられる。気付けばシオンは、困ったように彷徨(さまよ)わせていた手をアルフィアの背中に回していた。

 

 そして、月光がスポットライトのように抱き合う男女を照らすその光景を、隠れて見ていた2人。

 

「おじいちゃん、なんでお母さんはお父さんと話す時だけ目を開けてるの?」

 

「そりゃあ愛しい男の顔を目に焼き付けるために決まって『福音(ゴスペル)』ぎゃああああ!!?」

 

「お、おじいちゃぁぁぁぁぁん!!?」

 

 その日、ベッドからは綺麗な星空が見えた。ベルは2人の真ん中で手を繋いで寝た。ゼウスは朝まで体の下半分を地面に埋められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

(傍若無人に見えて根は凡俗か。全く、無駄なことで悩んでいたものだ)

 

 深夜、アルフィアは1人で起きていた。宿木(ヤドリギ)で肉体を魔改造されて以降、睡眠があまり必要なくなったのだ。食事に関しても魔力さえあれば飲まず食わずで生きられるのではないかと思うほど。ちなみにシオンはより一層な筈なのだが、普通に爆睡していた。数時間は起きないだろう。

 

(私は雑音が嫌いだ。だが、シオン。お前のことは……)

 

 そっと耳に髪をかけ、ゆっくりと顔を近付ける。

 

「……フン」

 

 一瞬の接触を終え、彼女の知り合いが見れば目を疑うような柔らかい笑みを浮かべながら、再度ベルの手を握って床に就く。その時、握られたベルの手がピクっと震えた。それを察知した瞬間、アルフィアは素早く顔を90度傾けて下手人の横顔を見る。

 

「……見たな?」

 

 ギギギ……と、音を立てそうな動きでベルのクビが横に振られた。潔白の証明をしているつもりか、目は閉じられたままだった。

 

「忘れろ」

 

 デコピン一閃。頭蓋に響くこの世の終わりのような音を最後に、ベルの意識と記憶は消失した。

 

 

──────────────────────────

 

 

『シオン』

・ご近所付き合いとして、ちーちゃんの力を借りて村の周りに防壁を建て、スキルで畑の土壌を改善し、周囲に生息していたモンスターを絶滅させた。

・村に住む人々から遠くで働いていたベルくんの父親だと思われている。

 

『アルフィア』

・なんだかんだ言いつつ母親している。ベルくんが英雄になりたいと言い出したので地獄の特訓メニューを考え中。

・宿木人間に改造されて健康体になったが、宿木の持ち主でも無いし植物操作のスキルも無いのでシオンほど強化はされていない。とはいえ素で強すぎるので村の防備は万全。

・村に住む人々から遠くで働いていたベルくんの母親だと思われている。

 

『ゼウス』

・ザルドの事は残念だと思いつつ、それでも幸せな家族の姿を見られてニッコリ。

・アルフィアのステータスを更新する際、目隠しに我慢できずセクハラしようとしたら、セクハラすることを読んでいたアルフィアに神速で殴られ天井に突き刺さった*1。

・村に住む人々からベルくんの祖父だと思われている。

 

『ベルくん』

・父と母がやべぇ奴すぎて驚きの絶えない日々だが、2人と祖父を家族として愛している。

・素性を聞かされていないし髪色が白いのでシオンのことをアルフィアの夫で自分の父親だと思っている。

 

『デメテル』

 ・脳が破壊される未来を幻視した。

*1:
発展アビリティ:神殺の影響でロックはぶっ壊した

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