闇派閥を畑の肥やしにするタイプの農家さん 作:ダンまち=スキー
リューさんを曇らせすぎたのでちょいテコ入れ。
……の筈だったんだけどなぁ。
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「ぶはははははwww似合ってるぞリオンwww」
「くっ……殺せッ!」
目の前で爆笑しているシオンを見て、リューは今すぐ頭に装着されている
しかも勤務初日をどこからか聞きつけたのか、シオンが開店と同時に訪れたのである。そこからしばらく──というか現在進行形で、リューは疾風と恐れられる姿が見る影もないほどポンコツにポンコツを重ね、シオンの腹筋に多大なダメージを与えた。しかしシオンは長時間居座っているのにどこにそんなに入るのかと言わんばかりのペースでしっかり飲食しているので、背後で自分を監視しているLv.6の鬼強いドワーフはご満悦。よって追い出す事も出来ない。
(ああ……これが私への罰だと言うのですか……)
罰である。自分に襲いかかってきた暗殺者+賞金稼ぎと激闘を繰り広げたリューは豊穣の女主人をそこそこ荒らし、彼女らもろとも店主のミアにシバかれ今に至る。義理堅いエルフである事も災いし、逃げ出すことも出来ない。治療から食事まで世話になっておきながら恩を返さず逃げ出すなど誇り高い森の種族の名折れである。
「全くリューは世話がかかるのニャア〜、このアーニャ様が直々に教育してやるのニャ!」
「おうバカ猫、お前も注文間違えてるぞ」
「コーヒーを注文されたつもりはないけど、注文したってことにしてやるのニャ!」
「シオンヲイジメヌンデ…」
窓の外で青空が広がる昼下がり。頼んだコーヒーを紅茶に変換されつつ、シオンは不景気そうな顔で接客に悪戦苦闘する制服姿のエルフを見ていた。
「報復に備えて護衛だなんて、優しいんですね♪」
「げっ、シル」
シオンは露骨に嫌そうな顔をして対面に座った薄鈍色の髪をした店員を見た。なんとなーく正体を察しているので関わりたくないのだ。しかも目的がバレている。
彼女の言った通り、シオンはリューを守るためここにいる。闇派閥はもとより、連中とつるんで甘い汁をすすっていた輩も復讐の対象としていた彼女は非常に敵が多い。なので今作っている魔道具が完成するまでは可能な限り近くにいる方針なのだ。
開発に際し、リューが寝ている間も近くで魔道具を作りながら寝ずの番をしているので、それに耐えられる宿木ボディには感謝である。
「店員さーん注文いいですかー? あとスマイル1つおなしゃーす」
「私にもお願いしまーす♪」
「し、しる……」
「ほら、お得意様がお待ちだよ! 捨てられた子犬みたいな顔してないで行ってやんな!」
あまりの仕打ちに品行方正なリューをしてやさぐれそうになる苦境である。
◇
その日、豊穣の女主人には助けを求める夫婦が訪れていた。大所帯のガネーシャ・ファミリアより少数精鋭*1でフットワークの軽いアストレア・ファリミア所属の
「──で、賭けに負けて娘を質に入れたと? オイオイ、俺の前でよくもそんなことが出来たな」
「ひ、ひぃ!?」
シオンに手を肩に置かれた瞬間に椅子から崩れ落ちて目とか鼻とかから体液を垂れ流す男は、実の娘を担保に賭博をしたようだった。シオンも怒るより先に呆れが来るとんでもねぇクズである。
両手で顔を覆い泣き崩れる妻にはシルが肩に手を添えて慰めていた。リューは非難と軽蔑が込められた絶対零度の視線で男を射抜いている。*2
被害者の名前はアンナ。神に求婚されるほどの美少女であり、花屋で働いていたためシオンも面識があった。
手口からして元から狙われていたのではないかとリューは考察したが、もしそうだった場合、デメテル・ファミリアのお膝元で犯行に及んだということになる。これは、絶対に、許されざる事だ。
というわけで、情報を集めに行ったのだが……
「なんだリオン、その目は」
「……いえ。朝の男の件といい、あなたがこの街でどのような存在なのか再認識しただけです」
情報屋のいるアングラな酒場に足を踏み入れた瞬間、シオンを目視した者達は首に縄をかけ足場を外される寸前のような顔をして震え出した。日頃の行いである。
「そうなるだけのやましい心当たりがあるって事だろ。おら、お前等。アンナについてとっとと話せ」
分かったのは交易所に連れていったという事だった。かといって依頼人が商会なのかは不明。ということでまたまた場所を移し、ヘルメスを叩き起こして調査させた結果、アンナを買い取ったのは
「アスフィには苦労をかけたな、また今度おもしろい魔道具をプレゼントしてやろう」
「やめなさい。あなたが作ったものの使わない魔道具を送るたび、その解析で彼女の仕事は増えている」
単なる賭博場ではなく、"大"賭博場。外国資本によって発展し過ぎた魔石製品貿易に次ぐ巨大産業、繁華街に存在するギルドも運営に口を出せない
ただし、今回の場合それはマイナスに働く。ギルドが口を出さないと言うことは、シオンを止める人間が誰もいないという事だからだ。
「しかし、それによって利益も得ているギルドはガネーシャ・ファミリアの守衛を施設に張り巡らせている。私とて単独で事に及ぶのは不可能に近い。しかし問題は……」
そう、問題は戦力ではなく逃げられる事。
というわけで変装してやって来ましたエルドラド・リゾート。招待状を手に入れるのはデメテル・ファミリアの伝手を利用すれば楽勝……では無かったが、まあいけた。ただちょっとした問題があった。
「なぜあなたの変装はそんなに完璧なのですかっ! わ、わたしは、こんな格好をさせられて……」
「俺は半分木だから、
その問題とは、小国の貴族夫婦に扮しての潜入となる事。面識があったら変装もクソも無いので、初めて呼ばれるかつ今まで交流がなかった相手と条件を絞り込んだ結果、やむを得ずこうなったのだ。
そして、そう、夫婦である。つまりは男女1組。当初はデメテルとどこから聞きつけたのかシルが立候補したのだが、前者は体型が隠しきれないほど豊満だったこと、後者は普通にクソ危ないということで、リューが代わりになった。
変装に関しては、シオンは前述の通り。リューは美しいライトグリーンのドレスと舞踏会で貴族がつけてそうな目元を隠す仮面を装着している。しかし慣れない格好と夫婦らしい演技は相当な負荷をお堅いエルフにかけているらしかった。
「くっ……背に腹はかえられません。それでは行きましょう、アリュード」
「お手を拝借します、麗しの君……おい、この程度の接触で顔を赤くするな」
「し、していません! 私のことはシレーネと呼ぶように!」
「はいはい」
多少の挙動不審はともかく、招待状を見せて問題なく警備員の隣を通り過ぎ、2人は煌びやかな光に包まれる賭博の楽園──エルドラド・リゾートに潜入した。
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『市民』
・なんで疾風が店員やってるんだ…?
『冒険者』
・なんで疾風が店員やってるんだ…?
『ギルド』
・なんで疾風が店員やってるんだ…?
『闇派閥』
・なんで疾風が店員やってるんだ…?
『アスフィ』
・シオンに有益な魔道具を押し付けられる度にその安全性や作用機序について調べないといけないので仕事が増える。それで助かっている人も沢山いるので表立って文句は言わないが、シオンを見かけると物凄く恨みのこもった視線を向ける。
『シル』
・良い魂をした店員ゲット〜♪
・私に嫌そうな顔をしながら接するなんて……ふっ、おもしれー男。ちょっかいかけちゃお〜♪ それじゃあずっと守ってたことリューに言っちゃうね……
『リュー』
・私は……弱いッ!*3
・この件が解決した後、特注の魔道具をプレゼントされたタイミングを見計らって同僚にずっと守られていたことを教えられ情緒が乱れる。
『シオン』
・宿木に食べさせる事で無限に食べられる人外。身体を宿木で大改造してから生物的な欲求が薄くなっているので、悪化する前に忘れていた娼館に行こうと画策している。行ったことがバレてヤバいことになる&魅了を