第三話 最強なのに帰ってこない
最強の剣士が仲間になった。
その事実は、俺に久しぶりの希望を与えてくれた。
攻撃が当たらないクルセイダー。
一日に一発しか魔法を撃てないアークウィザード。
能力値だけは高いが、知力と幸運が壊滅的なアークプリースト。
そんな問題児たちを抱えてきた俺のパーティーに、ついにまともな前衛が加わったのだ。
これからは、もっと安全にクエストをこなせる。
苦労に見合うだけの報酬も得られる。
借金に怯えず、普通の冒険者らしい生活が送れるかもしれない。
――そう思っていた時期が、俺にもありました。
「カズマさん。申し訳ありません」
冒険者ギルドへ向かう途中、イリウスが立ち止まった。
「どうした?」
「剣を忘れました」
「戦士が剣を忘れるなよ!」
「すぐに取ってきます」
「一人で行くな!」
反射的にその襟首をつかむ。
ギルドへ行く途中とはいえ、イリウスを一人で宿へ戻せば、次に会えるのは何日後になるか分からない。
下手をすれば、別の町で保護されている可能性すらある。
「場所は覚えています。宿の二階、右から三番目の部屋です」
「その宿へ行くまでの道を覚えているのか?」
「もちろんです」
自信満々の顔だった。
「では、あちらですね」
「逆だ」
「……こちらでしたか」
イリウスが何事もなかったかのように向きを変える。
「やっぱり俺も行く」
「カズマ、過保護ではありませんか?」
めぐみんが呆れた目を向けてきた。
「昨日、受付から俺たちの席へ戻る途中で倉庫へ迷い込んだ奴だぞ。目を離せるか」
「ですが、イリウスは最強の剣士です。魔物に襲われても問題ないでしょう」
「俺が心配しているのは、魔物じゃなくて目的地に着けるかどうかだ」
「カズマさん。僕は方向音痴ではありません」
「本物の方向音痴は、みんなそう言うんだよ」
結局、俺たちは全員で宿へ引き返すことになった。
イリウスの剣は、部屋の枕元へ綺麗に立てかけられていた。
安物の、ごく普通の剣だ。
もっと良い武器を買うよう勧めたのだが、本人はこれで十分だと言って譲らなかった。
「良い剣を持てば、もっと強くなるんじゃないか?」
宿を出ながら尋ねると、イリウスは首を傾げた。
「この剣でも、魔物は斬れます」
「そりゃそうだけど、途中で折れたら危ないだろ」
「折れないように振れば問題ありません」
「それができるのはお前ぐらいだよ」
俺たちは改めてギルドへ向かった。
今日はイリウスが加わってから、初めてのクエストを受ける予定だった。
難しすぎず、かといって五人で受けても報酬が安すぎない依頼。
掲示板を眺めた結果、俺は一枚の依頼書を選んだ。
「巨大ガエルの討伐?」
アクアが嫌そうに顔をしかめた。
「もっと華やかなクエストにしましょうよ。女神と王子様がいるパーティーなのよ?」
「お前はともかく、イリウスの正体は隠してる設定だろうが」
「私はともかくってどういう意味よ!」
「巨大ガエルは動きが遅く、攻撃方法も単純です。初めて連携を確認する相手としては悪くありません」
めぐみんが依頼書を覗き込む。
「それに、私の爆裂魔法ならまとめて殲滅できます」
「お前は一匹相手でも爆裂魔法を使うだろ」
「当然です。数によって爆裂魔法の価値が変わることなどありません」
「少しは変わってくれ」
ダクネスは期待に満ちた表情で、自分の鎧を撫でていた。
「巨大ガエルか。全身を粘液まみれにされ、抵抗もできず丸呑みにされる危険な魔物だな」
「何で嬉しそうなんだよ」
「カズマ。私は皆を守る盾だ。何があっても敵の前から退くことはない」
「飲まれたいだけだろ」
「そ、そんな不純な理由ではない!」
頬を赤くするな。
最後にイリウスを見ると、本人は依頼書を真剣に読んでいた。
「巨大ガエルに襲われている農家があるのですね。すぐに向かいましょう」
「待て。行くのはいいが、先に決めておくことがある」
俺は全員を見回した。
「今回は連携の確認が目的だ。勝手な行動は禁止。特にイリウス、絶対に一人で離れるな」
「分かりました」
「怪しい奴の話もすぐに信じるな」
「困っている人を疑うのですか?」
「その返事の時点で不安しかない!」
俺はイリウスの肩をつかんだ。
「誰かを助ける時も、必ず俺に確認しろ。いいな?」
「はい。必ずカズマさんへ確認します」
真っすぐな瞳で答えるイリウス。
俺は少しだけ安心した。
「では、アクア様のお言葉は?」
「アクアの話も俺に確認しろ」
「ちょっと!」
抗議する駄女神を無視し、俺たちは初クエストへ出発した。
◇
巨大ガエルの出没地は、アクセルから歩いて一時間ほどの草原だった。
近くにはいくつかの農場があり、牛や山羊が放牧されている。
晴天。
見晴らしの良い平地。
冒険者を丸呑みにするほど巨大とはいえ、所詮はカエルだ。動きは遅く、攻撃方法は長い舌と丸呑みだけ。
そして俺たちには、岩すら安物の剣で両断するイリウスがいる。
これは勝った。
「いました」
イリウスが遠くを指さした。
草原の中央で、緑色の巨大な塊が跳ねている。
巨大ガエルが二匹。
まだこちらには気づいていない。
「よし。まずダクネスが前へ出て注意を引け。イリウスは横から近づいて一匹を倒す。もう一匹は俺とアクアで――」
「カズマさん」
「どうした?」
「倒しました」
「……何を?」
イリウスが剣を鞘へ収めた。
直後、遠くにいた巨大ガエル二匹の身体が同時に崩れ落ちた。
何が起きたのか分からなかった。
気づいた時にはイリウスが元の場所へ戻っており、巨大ガエルは一匹ずつ綺麗に両断されている。
「えっ?」
アクアが間の抜けた声を出す。
「今、あそこにいませんでしたか?」
めぐみんが何度もイリウスと巨大ガエルを見比べる。
「はい。近くまで行って斬りました」
「近くって……往復したのか?」
「はい」
「俺が一文話す間に?」
「急いだ方がよいかと思いまして」
やはり異常だ。
剣技だけではない。身体能力そのものが、俺たちとは桁違いだった。
ダクネスが感心した様子で巨大ガエルの死体を見る。
「これほどの速さなら、敵は攻撃することすらできないだろうな」
「ふっ……しかし、速さだけでは爆裂魔法の威力には及びません」
めぐみんが対抗心をむき出しにした。
「お前、さっき連携の確認だと言ったよな?」
「イリウスだけで終わらせては連携になりません。次は私が仕留めます」
「お前の場合、連携どころか一発で行動不能になるだろ」
そんな会話をしていると、さらに三匹の巨大ガエルが現れた。
仲間の死体の匂いを嗅ぎつけたらしい。
「ちょうどいい。今度こそ作戦通りに行くぞ。イリウスは右の一匹だけだ。全部倒すなよ」
「分かりました」
「私は左の一匹を爆裂魔法で!」
「爆裂魔法も禁止だ! 周りの農地まで吹き飛ぶ!」
「では私は中央の個体を引きつけよう」
ダクネスが大剣を抜いて前へ出る。
巨大ガエルが、のそのそとこちらへ向かってきた。
俺も剣を構える。
アクアは後方で支援魔法を準備し、めぐみんは不満そうに杖を抱えていた。
「助けてくれえ!」
その時だった。
草原の向こうから、男の叫び声が聞こえた。
振り向くと、遠くの丘で農夫らしい男が大きく手を振っている。
「魔物が! うちの家畜が襲われているんだ! 誰か助けてくれ!」
イリウスの表情が変わった。
「カズマさん!」
「待て。まず状況を――」
「一刻を争います!」
「だから待てって!」
俺が止めるより先に、イリウスは地面を蹴った。
一瞬で草原を駆け抜け、農夫のもとへ向かう。
「おい、イリウス! 単独行動は禁止だと言っただろ!」
当然、俺の声は届かない。
「大丈夫ですよ、カズマ」
めぐみんが平然と言った。
「イリウスなら、魔物を倒してすぐ戻ってきます」
「その後、ここへ戻ってこられると思うか?」
「あっ」
めぐみんの顔から余裕が消えた。
そうこうしている間にも、巨大ガエルは迫っている。
「とにかく、こいつらを片づけてから追うぞ! ダクネス、正面の奴を止めろ!」
「任せろ!」
ダクネスが前へ飛び出した。
「さあ来い! お前の粘つく舌で、私の身体を好きなように――」
「余計なことは言わなくていい!」
巨大ガエルの舌が伸びる。
ダクネスは避けなかった。
むしろ両腕を広げて受け止めた。
「くっ……! この強引な巻きつき……いいぞ……!」
「よくない! 抵抗しろ!」
舌に巻かれたダクネスが、巨大ガエルの口へ引き寄せられていく。
次の瞬間、鎧ごと丸呑みにされた。
「ダクネス!」
「心配いりません! 巨大ガエルは金属を嫌うため、鎧を着たダクネスを消化することはできません!」
めぐみんが説明する。
「そういう問題じゃないだろ!」
残る二匹が俺たちへ迫った。
イリウスさえ戻れば、一瞬で終わる。
俺は周囲を見回した。
丘の向こうへ消えたイリウスは、まだ戻ってこない。
「カズマ! あいつ、こっちを見ているわ!」
アクアが指さした巨大ガエルの口が開く。
「避けろ、アクア!」
「きゃあああああ!」
アクアは見事なほど何もない場所で転んだ。
長い舌が足へ絡みつき、そのまま口へ引きずり込まれる。
「カズマ! 助けて! 私、女神よ! 女神を食べても美味しくないわよ!」
「食われてから説得するな!」
アクアの上半身が口の中へ消える。
俺は慌てて駆け寄り、外へ出ている両足をつかんだ。
「めぐみん、手伝え!」
「待ってください。今、絶好の位置へ集まっています」
「まさか……」
めぐみんが杖を掲げていた。
三匹の巨大ガエルが、ほぼ一か所へ固まっている。
「おい、やめろ! ダクネスとアクアもいるぞ!」
「大丈夫です。二人なら爆裂魔法にも耐えられます」
「根拠のない信頼を見せるな!」
「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操る者!」
「詠唱を始めるな!」
だが、俺がアクアの足をつかんでいる間に、めぐみんの魔法は完成してしまった。
杖の先へ巨大な魔力が集まる。
「エクスプロージョン!」
白い閃光が草原を覆った。
直後。
腹の底まで揺さぶる爆音とともに、巨大な爆風が襲いかかる。
「うわあああああっ!」
俺はアクアの足をつかんだまま吹き飛ばされた。
土煙。
焦げた草の匂い。
耳鳴り。
しばらくして顔を上げると、草原の中央には大きな穴ができていた。
三匹の巨大ガエルは倒れている。
ただし、爆心地から少し離れていた二匹は気絶しているだけで、討伐には至っていない。
「や、やりました……」
めぐみんが満足そうに倒れた。
「やってない! 二匹生きてるぞ!」
「後は……任せました……」
「任せるな!」
巨大ガエルの口から、全身粘液まみれのアクアが這い出してきた。
「ひどいわ! もうお嫁に行けない!」
「安心しろ。元から行く予定なんてないだろ」
「何ですって!?」
もう一匹の口からは、同じく粘液まみれのダクネスが転がり出る。
「はあ、はあ……。爆発の衝撃まで体内に響くとは……巨大ガエルの腹の中、侮れないな……」
「お前は満足そうだな!」
気絶していた巨大ガエルが動き出した。
こちらの戦力は、魔力切れで動けないめぐみん。
粘液まみれのアクア。
同じく粘液まみれだが、なぜか頬を赤くしているダクネス。
そして俺。
「イリウス! 早く帰ってきてくれ!」
俺の悲痛な叫びが、虚しく草原へ響いた。
◇
結局、俺たちは巨大ガエル二匹から逃げることになった。
ダクネスが盾となって注意を引き、アクアが動けないめぐみんを背負い、俺が二人を追い立てる。
依頼対象を五匹も発見したというのに、討伐できたのは爆裂魔法の直撃を受けた一匹だけ。
最初にイリウスが倒した二匹は、勢い余って素材まで細切れにしてしまい、討伐部位の回収ができなかった。
つまり、報酬の対象はたった一匹である。
「何が最強の剣士だ! 肝心な時にいないじゃねえか!」
俺たちは草原の端でイリウスを待っていた。
アクアとダクネスからは強烈なカエルの粘液臭が漂っている。
めぐみんは魔力切れで地面に横たわったままだ。
「遅いですね」
めぐみんが顔だけを上げる。
「あいつ、絶対に迷ってるぞ」
「イリウスは自分が方向音痴だと認めていませんからね」
「認める認めないの段階じゃない。これはもう災害だ」
「でも、助けを求める人を放っておけなかったのでしょう?」
アクアが珍しくイリウスを擁護した。
「イリウス君は優しい子だもの。きっと私の信徒だからね!」
「善意だけで全部許されるなら、警察はいらないんだよ」
「けいさつ?」
「忘れてくれ」
空が赤く染まり始めた頃。
遠くから、何かがこちらへ近づいてきた。
「カズマさん!」
イリウスだった。
肩には子牛を担ぎ、両腕には山羊を一匹ずつ抱えている。
その後ろを、十頭以上の羊が列を作ってついてきていた。
「……何だ、それ」
「先ほどの農家の家畜です」
「見れば分かる」
イリウスは俺たちの前で子牛を下ろした。
「牙狼の群れに襲われていました。すべて倒したのですが、怯えた家畜が森の中へ逃げてしまいまして。探しているうちに遅くなりました」
「全部で何匹倒した?」
「十四匹です」
「十四匹!?」
めぐみんが勢いよく顔を上げた。
「私の爆裂魔法は、巨大ガエル三匹を同時に仕留めました!」
「一匹しか倒せてないぞ」
「細かいことを言わないでください!」
イリウスは俺たちの姿を見回した。
粘液まみれのアクア。
同じく粘液まみれで満足そうなダクネス。
地面に倒れたまま強がるめぐみん。
泥だらけの俺。
「皆さんは、どうされたのですか?」
「見れば分かるだろ! 巨大ガエルに襲われたんだよ!」
「申し訳ありません。すぐに戻るつもりだったのですが」
「農場は丘のすぐ向こうだったよな? どうして戻るのに何時間もかかった?」
「家畜を探していたからです」
「それだけか?」
イリウスが視線をそらした。
「……途中で、道を少し確認しました」
「迷ったんだな?」
「迷ってはいません」
「じゃあ、ここへ戻るために誰かへ道を聞いたか?」
「七人ほどに尋ねました」
「完全に迷ってるじゃねえか!」
「念のため確認しただけです」
本人はどうしても認める気がないらしい。
「それより、依頼はどうなりましたか?」
俺は無言で、夕焼けの草原を指さした。
遠くでは、俺たちが逃した二匹の巨大ガエルが、元気に跳び回っている。
「まだ残っているのですね。すぐに倒してきます」
「待て!」
今にも走り出しそうなイリウスの襟首をつかむ。
「今日はもう帰る! これ以上お前を自由にすると、次はどこの国まで行くか分からない!」
「ですが、依頼対象が」
「日が暮れたら、俺たちまで帰れなくなるだろ!」
「アクセルなら、あちらではありませんか?」
イリウスが指さしたのは、アクセルとは正反対の方向だった。
「ほら見ろ!」
「これは夕日です。城壁ではありませんでした」
「城壁と夕日を間違えるな!」
俺が怒鳴る横で、めぐみんがイリウスを睨んでいた。
「十四匹……」
「どうした?」
「イリウスは牙狼を十四匹倒したのですね」
「はい」
「ならば明日、私は爆裂魔法で十五匹以上を倒します」
「おい。変な対抗心を燃やすな」
「受けて立ちます」
「イリウスも乗るな!」
めぐみんは地面へ倒れたまま、満足そうに笑った。
「では、どちらが多く魔物を討伐できるか勝負です。負けた方は、勝った方の言うことを一つ聞く。それでどうです?」
「構いません」
「十二歳と十三歳が討伐数で張り合うな! もっと普通の遊びをしろ!」
「カズマ。二人とも年齢が近いのだ。仲良くなれそうでよかったではないか」
ダクネスが微笑ましそうに言う。
「これが仲良く見えるのか?」
「少なくとも、良い好敵手にはなるだろう」
当人たちは既に、次に討伐する魔物について話し合っていた。
めぐみんは爆裂魔法の威力を自慢し、イリウスは一撃で倒せる魔物の種類を挙げている。
妙に楽しそうだった。
まったく異なるタイプだが、二人とも強さへのこだわりがおかしい。
嫌な組み合わせが誕生してしまった気がする。
◇
翌朝。
俺はイリウスを連れて、アクセルの道具屋へ来ていた。
「何を購入するのですか?」
「お前に必要な物だ」
「新しい剣でしょうか」
「違う」
俺が購入したのは、頑丈なロープと方位磁針。
それから、アクセル周辺の詳しい地図だった。
「まず、この地図を持て。現在地を見失ったら、近くの人へ確認しろ」
「地図なら読めます」
「上下を逆に持った奴が言うな」
「前回は、少し見方を間違えただけです」
「あと、この方位磁針。太陽やコケを見て進むんじゃなく、これで方角を確認しろ」
「必要ないと思いますが」
「必要かどうかは俺が決める」
最後に、購入したロープの片端をイリウスのベルトへ結ぶ。
もう片方を自分の腕へ巻きつけた。
「カズマさん。これは?」
「命綱だ」
「僕は山登りへ行くのでしょうか?」
「お前が勝手にいなくならないための命綱だよ!」
道行く冒険者たちが、俺たちを見て笑っている。
イリウスは恥ずかしそうにロープを見つめた。
「僕は、そこまで方向音痴ではありません」
「なら、昨日はどうして戻ってこなかった?」
「困っている家畜を助けていました」
「その後は?」
「道を確認していました」
「それを世間では迷子と言うんだ!」
俺たちが言い争っていると、向こうからめぐみんがやってきた。
「何をしているのです?」
「見て分からないか? イリウスが迷子にならないようにしているんだ」
めぐみんはロープでつながれた俺とイリウスを見た。
そして、とても良い笑顔を浮かべた。
「散歩中のペットみたいですね」
「誰がペットだ!」
「カズマが飼い主で、イリウスが大型犬でしょうか」
「僕は犬ではありません」
「では、どちらが先に目的地へ着けるか勝負しますか?」
「受けて立ちましょう」
「受けるな! お前は俺とロープでつながってるだろ!」
俺の制止を聞かず、めぐみんとイリウスが同時に走り出す。
当然、イリウスとロープでつながれている俺も引きずられた。
「待て! 止まれ! どこへ行くかぐらい先に決めろ!」
「目的地は冒険者ギルドです!」
めぐみんが叫ぶ。
「分かりました!」
イリウスは力強く答えた。
そして、めぐみんとは正反対の方向へ走り出した。
「お前は本当にどこへ行くつもりだああああっ!」
こうして俺たちのパーティーには、最強の剣士が加わった。
ただし、戦場へ無事に到着できるかは、俺の努力にかかっていた。