よう実短編集   作:カツカレー!

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七瀬翼のメロンビキニ

高度育成高等学校の長い夏休み。

綾小路清隆は、自室のベッドに仰向けになり、天井の一点を見つめていた。

 

過酷を極めた1学期最後の「全学年無人島サバイバル特別試験」は幕を閉じ、

生徒たちにはようやく平穏な長期休暇が与えられていた。

 

南の島の照りつける太陽、スコール、容赦ないポイント競争、

そして水面下で繰り広げられた月城理事長代理らとの死闘。

それらはすべて過去のものとなり、今はエアコンの効いた快適な学生寮の一室で、

誰にも邪魔されない時間を過ごしている――はずだった。

 

しかし、ここ数日、綾小路の睡眠の質は著しく低下していた。

原因は明確だった。目を閉じると、暗闇の向こうから「ある情景」が鮮明に、

かつ執拗に浮かび上がってくるのだ。

 

無人島での試験中、一時的に行動を共にし、

様々な苦難を乗り越えた一年Dクラスの女子、七瀬翼。

彼女が試験の合間、身にまとっていたあのメロン色のビキニ姿である。

 

「……ふぅ」

 

綾小路は小さくため息をつき、額に手を当てた。

普段は感情の起伏が乏しく、常に冷静沈着、

あらゆる事象を合理的に処理する機械のような男だと一部からは思われている。

だが、彼とて健康な男子高校生だ。

それも、ホワイトルームという極限の無菌室で育ち、

一般的な思春期のグラビアや恋愛沙汰から隔離されてきた反動か、

内面に秘めた「男としての本能(いわゆるムッツリスケベ)」のエネルギーは、

自覚している以上に凄まじかった。

 

七瀬翼の肢体は、一言で言えば「暴力的」だった。

普段の制服姿やジャージ姿からでも、その発育の良さは隠しきれていなかったが、

いざ布地の面積が極端に少ない水着姿になった時の破壊力は、

綾小路の精緻な脳内シミュレーターを容易にフリーズさせるほどだった。

 

きゅっと引き締まった細いウエスト。

それとはあまりに不釣り合いな、自己主張の激しい豊満な胸部。

メロン色の生地が、こぼれ落ちそうなほどの双丘を辛うじて繋ぎ止めている。

さらに、武道で鍛え上げられたという太腿は、単に細いだけでなく、

健康的で弾力のある肉感的なラインを描いていた。

 

無人島にいる間は、試験のプレッシャーや周囲の警戒、

そして七瀬自身の「目的」に関する緊張感があったため、

綾小路も表面上は平然を装うことができた。

だが、安全な寮に戻り、張り詰めた糸が切れた瞬間、

抑え込まれていた煩悩が文字通り大爆発したのだ。

 

夜な夜な脳裏で再生される、波打ち際に佇むメロン色の七瀬。

寝返りを打つたびに、シーツの感触が彼女の柔らかな肌の錯覚へと変換される。

 

(このままでは、精神の平穏が保てない。何より、思考の効率が落ちる)

 

合理的かつ利己的な判断として、

綾小路は「この煩悩は、脳内だけで処理しようとするから肥大化するのだ。

いっそ現実の彼女と接触し、その姿を網膜に焼き付けることで、

一時的な飽和状態を作って処理すべきだ」という、

およそ冷静とは言い難い結論に達した。

 

翌朝。綾小路はベッドから起き上がると、

端末を操作し、七瀬にメッセージを送った。

 

『七瀬。夏休みの予定はどうなっている?

もし良ければ、明日、ケヤキモールのプールに付き合わないか。

それと――可能なら、無人島の時に着ていたあの水着を持ってきてくれると嬉しい』

 

我ながら、なかなかに直球で破廉恥な要求を含んだ文章だ。

しかし、文章全体を「事務的かつ自然な提案」のように偽装する技術は、

ホワイトルームで培った……わけではなく、

彼の天性のムッツリ属性がなせる業だった。

 

数分後、端末が震えた。

 

『綾小路先輩!お誘いありがとうございます!明日ですね、喜んでお供させていただきます。

水着の件、了解いたしました。先輩のリクエスト、大切に預からせていただきますね!』

 

メッセージからでも伝わってくる、七瀬の二つ返事の快諾と、

一切の裏を疑わない純真無垢なエネルギー。

綾小路は画面を見つめたまま、「よし」と小さく呟いた。

彼の、煩悩解消(あるいは拡大)のためのプールデートが決定した瞬間だった。

 

 

翌日。夏の青空が広がる絶好のプール日和だった。

ケヤキモールの屋内・屋外複合プール施設は、

夏休みということもあって多くの学生たちで賑わっていた。

綾小路は指定された集合場所のベンチに座り、

水着に着替えた七瀬が更衣室から出てくるのを待っていた。

自身はシンプルな黒の海パンに、ラッシュガードを羽織った無難なスタイルだ。

 

周囲の男子生徒たちの視線が、一箇所に集中するのが分かった。

ざわつき、そして息を呑む気配。

綾小路がそちらに目を向けると、更衣室のガラス扉から、

おずおずと足を踏み出す七瀬翼の姿があった。

 

「あ……綾小路先輩。お待たせいたしました」

 

そこにいたのは、ここ数日、

綾小路の睡眠を完全に支配していた「メロン色の悪魔」そのものだった。

 

眩しいほどの白い肌に、鮮やかなメロン色のビキニがこれ以上ないほど映えている。

無人島の時は大自然の背景も手伝って野生的な美しさがあったが、

プールの澄んだ青い水、そして人工的な光の下では、

彼女の肉体の「造形美」がより一層際立って見えた。

胸元のボリュームは、やはり視覚的な暴力だった。

動くたびに、メロン色の布地が限界を訴えるように揺れ、

中央の深い谷間が強烈な自己主張を放っている。

ローライズのボトムからは、引き締まった下腹部と、

眩しいほどに露出した骨盤のライン、そして健康的な太腿が伸びていた。

 

七瀬は、綾小路の視線を全身に浴びると、

心なしか頬を林檎のように赤く染め、

両手を身体の前で合わせてもじもじとし始めた。

 

「その……やはり、少し恥ずかしいですね。

学校のプールとはいえ、先輩にこんなにじっくり見られるのは……」

 

そう言いながら、七瀬は上目遣いで綾小路を見てくる。

その瞳には拒絶の色はなく、むしろ愛らしさと、

かすかな期待が混ざり合っているようだった。

 

「いや、よく似合っている。無理なリクエストをして悪かったな。

だが、どうしてももう一度見たいと思ってしまったんだ」

 

綾小路は、表情筋を完全にコントロールし、

まるで「今日の天気は良いな」とでも言うような平然としたトーンで、

とんでもない本音を口にした。

 

すると七瀬は、はにかむような、言葉にできないほど可憐な笑顔を浮かべた。

 

「ふふ、先輩がそう言ってくださるなら、着てきた甲斐がありました。

――先輩になら、見られても平気ですから」

 

(……クリティカルヒットだな)

 

綾小路の胸の内で、何かが音を立てて崩壊しかけた。

彼女のその全幅の信頼を寄せるようなセリフと、

メロン色の凶悪なプロポーションのギャップ。

この少女は、自分がどれほど男の理性を試しているのか、

おそらく1ミリも理解していない。天然ゆえの恐ろしさがそこにはあった。

 

「じゃ、行こうか。まずはあっちの流れるプールからにしよう」

「はい!よろしくお願いします、綾小路先輩!」

 

七瀬は嬉しそうに一歩踏み出した。

その際、彼女の胸元が「ぷるん」と大きく揺れたのを、

綾小路の動体視力は一瞬の狂いもなく捉えていた。

 

プールに入ると、水温の心地よさが肌に伝わってきた。

しかし、綾小路の脳内温度は上昇する一方だった。

 

「冷たくて気持ちいいですね、先輩!」

 

七瀬は水深1.2メートルのプールに入ると、

子供のように無邪気に笑い、手のひらで水を軽く撥ねてきた。

水滴が彼女の鎖骨を伝い、メロン色のビキニの隙間へと吸い込まれていく。

その一連の動きから、目が離せない。

 

「そうだな。室内と違って、外の空気を感じながらの水泳は悪くない」

「無人島の時は、生きるための水浴びという感じでしたから、

こうして純粋に遊ぶ目的でプールに来られるなんて、本当に幸せです」

 

2人はしばらく、流れるプールに身を任せてゆっくりと進んだ。

途中、大きな浮き輪を1つレンタルし、それに七瀬を乗せることにした。

 

「わあ、すっぽり収まりました。先輩、引っ張ってください!」

 

浮き輪の中央に座り、両足を水面に投げ出した七瀬。

その姿勢になると、上半身が前傾するため、

ビキニの胸元がこれでもかと強調される。

上から見下ろす形になる綾小路にとっては、

まさに「ご褒美」以外の何物でもない光景が広がっていた。

浮き輪のロープを握り、ゆっくりと歩く綾小路。

背後からは、七瀬の楽しそうな声と、水が揺れる音が聞こえる。

 

「先輩、次はボール遊びをしませんか?あそこにビーチボールが売っていました!」

「いいな。やろう」

 

売店でビニール製のビーチボールを購入し、

少し人が少ない広めのエリアへと移動する。

そこからが、綾小路にとっての「試練」の本番だった。

 

「いきますよ、先輩!はいっ!」

 

七瀬がボールをトスする。

武道をやっているだけあって、運動神経は抜群だ。

しかし、問題は彼女がジャンプしたり、

ボールをレシーブしたりする際の「肉体の躍動」だった。

ボールを打つために七瀬が両腕を突き上げる。

その瞬間、メロン色のブラが上へと引っ張られ、

アンダーバストの境界線が危ういほどに露出する。

さらに、着地するときの衝撃で、

彼女の豊かな双丘は激しく上下左右にバウンドした。

 

(素晴らしい弾力だ。いや、そうじゃない。

オレは今、ボールを見ている。ボールの軌道を予測しているんだ……)

 

綾小路は必死にマインドフルネスを試み、自己の理性を保とうとした。

だが、七瀬が「あ、弾んじゃいました!」と、

胸を大きく揺らしながらボールを追いかけて走る姿

(水中なのでスローモーションのように見える)を目にするたび、

彼の「男の計算式」はすべてバグを起こして消去された。

 

「先輩、ナイスキャッチです!」

「あ、ああ。七瀬も、いいトスだった」

 

表面上は、完璧なポーカーフェイスを維持している綾小路。

しかし、彼の視線は、七瀬が水面から顔を出した瞬間に髪をかき上げる仕草、

その際に強調される脇のライン、そして水に濡れて肌に張り付くメロン色の布地へと、

確実に、そして貪欲に吸い寄せられていた。

 

その後、ウォータースライダーにも挑戦した。

2人乗りの大型ボートに乗り、暗いチューブの中を急降下するアトラクションだ。

前方に七瀬、後方に綾小路が座る。

 

「きゃああっ!先輩、結構速いです!」

 

カーブを曲がるたび、遠心力で七瀬の背中と、綾小路の胸が密着する。

ラッシュガード越しとはいえ、彼女の背中の柔らかさ、

そしてかすかに伝わる体温が、綾小路の皮膚感覚を狂わせる。

密室の暗闇の中、七瀬のシャンプーの香りと、

プールの塩素の匂いが混ざり合い、彼の嗅覚を刺激した。

 

「ふう、スリル満点でしたね!」

 

スライダーを滑り終え、着水プールに出たとき、

七瀬は少し乱れた髪を直しながら、満足そうに息を吐いた。

その胸元は、激しい衝撃のせいか、先ほどよりも少しビキニの位置がズレているように見えた。

メロン色の生地が、乳頭の数センチ手前まで下がっている。

 

(……これは、指摘すべきか、それともこのまま凝視し続けるべきか)

 

天才・綾小路清隆をもってしても、この二択は人生最大の難問の一つだった。

結局、彼は紳士的な(そしてムッツリな)対応として、

「七瀬、少し水着がズレているぞ」と、極めて冷静な声で指摘した。

 

「ひゃっ!?」

 

七瀬は顔を真っ赤にして、両手で胸を隠すようにして後ろを向いた。

 

「す、すみません!お見苦しいところを……!」

「いや、見苦しくはない。むしろ……」

「むしろ……?」

 

七瀬が振り返り、潤んだ瞳で続きを促す。

 

「いや、なんでもない。少し休憩にしよう」

 

綾小路はそれ以上言葉を続けるのをやめた。

これ以上は、自分のポーカーフェイスが決壊する危険性があると察知したからだ。

 

 

夕方になり、プールの照明がオレンジ色のライトアップへと切り替わった。

昼間の喧騒が嘘のように、大人の雰囲気が漂う空間へと変貌していく。

 

2人はプールサイドのデッキチェアに並んで座り、冷たいドリンクを飲んでいた。

七瀬は、メロン色の水着の上に、薄手のパーカーを羽織っていたが、

フロントのジッパーは開け放たれており、その豊かな渓谷は相変わらず健在だった。

 

夕日に照らされた七瀬の横顔は、昼間の無邪気な少女のものから、

どこか神秘的な大人の女性の雰囲気を醸し出していた。

 

「今日は本当に楽しかったです、綾小路先輩」

 

七瀬はストローをくわえたまま、プールを見つめて呟いた。

 

「無人島では、私、先輩に対して色々と身勝手な振る舞いをしてしまいました。

それなのに、こうして夏休みに遊んでくださるなんて……」

 

彼女の言う「身勝手な振る舞い」とは、彼女の過去や、

松尾との関係からくる綾小路への敵対心と、その後の和解のことだ。

 

「気にするな。無人島での経験があったからこそ、今の関係がある。

オレも、お前とこうして過ごす時間は嫌いじゃない」

 

綾小路の本音だった。半分はメロン色の煩悩によるものだが、

もう半分は、七瀬という真っ直ぐな後輩への純粋な好意だ。

 

七瀬は嬉しそうに微笑み、

デッキチェアから身を乗り出して、綾小路の顔を覗き込んできた。

 

「そう言っていただけると、救われます。

私……これからも、先輩の一番近くで、先輩をサポートしていきたいです。

学校のことでも、それ以外の……プライベートなことでも」

 

彼女の顔が、肉薄する。

開いたパーカーの隙間から、メロン色のビキニに包まれた胸が、

綾小路の腕に触れそうな距離まで近づいていた。

夕暮れの光が、彼女の肌の産毛を黄金色に染め上げ、

信じられないほどの艶めかしさを演出している。

 

「プライベート、か。期待しておこう」

 

綾小路は、自身の鼓動が少し早くなっているのを感じながら、そう答えた。

 

「はい!期待を裏切らないよう、自分を磨いておきますね!」

 

七瀬は満足したように、再び笑顔をはにかむ。

彼女の「自分を磨く」という言葉が、

肉体的な意味なのか、精神的な意味なのか。

どちらにせよ、現状でも十分に完成されているその肢体が、

これ以上魅力的になったら、自分の理性がどうなってしまうのか、

綾小路には予測がつかなかった。

 

 

夜、20時。

七瀬を寮まで送り届け、自室に戻った綾小路は、

シャワーを浴びて再びベッドに横たわっていた。

 

部屋の中は、昼間のプールの熱気とは無縁の、静寂と冷気に包まれている。

 

「……作戦は、完全に失敗だな」

 

綾小路は片手を額に当て、深い嘆息をもらした。

 

当初の目的は、「現実の七瀬のビキニ姿を見ることで、

脳内の妄想を飽和させ、煩悩を処理する」ことだった。

 

しかし、現実はどうだ。

 

現実の七瀬翼は、脳内の妄想よりも遥かに柔らかく、

遥かに破壊的で、遥かに魅力的だった。

 

目を閉じると、昼間よりも解像度が上がった

「メロン色の悪魔」が、鮮明に脳裏に蘇る。

ボールを追いかけて弾む胸の感触、スライダーで密着した背中の柔らかさ、

水滴が伝う白い肌、そして「先輩になら見られても平気です」と言った、

あの破壊的な笑顔。

 

すべてが、綾小路の脳内メモリを侵食していた。

一時的な飽和どころか、完全に燃料を追加された形になり、

彼の煩悩の炎は昼間よりも激しく燃え上がっていた。

 

(収まるどころか、尚更収まりが効かなくなってしまった……)

 

普段、どんな難題にも最適解を導き出せる天才が、ベッドの中で、

一人の後輩女子の水着姿によって身悶えしている。

もしこの姿を、坂柳有栖や龍園翔、あるいは一之瀬帆波たちが見たら、

驚天動地、天地がひっくり返るほどの衝撃を受けるだろう。

しかし、これこそが綾小路清隆という男の、

誰にも見せない「本質(ムッツリ)」の一部でもあった。

 

「七瀬、翼……か」

 

その名前を口にするだけで、下腹部のあたりが熱くなるのを感じる。

 

これから先、夏休みはまだ続く。

そして二学期が始まれば、また日常の中で彼女と顔を合わせることになる。

 

その度、あのメロン色のビキニ姿を、

そして今日の間近での感触を思い出さずにいられるだろうか。

 

高度育成高等学校の闇を支配する男は、今夜もまた、

一人の少女の健康的なお色気という、抗いようのない「暴力」によって、

朝まで眠れない夜を過ごすことになるのだった。

彼の嘆息は、静かな部屋の中に、虚しく、しかし熱を帯びて消えていった。

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