今日は授業で当てられる番でもねえし、特別試験もねえから暇なため教室で一人でゲームをしていた。
もっとも俺はいつも孤独であり、孤高の存在、他の有象無象と馴れ合うつもりなど毛頭ねえ。
「あれ?宝泉くん、それポケモンですか?」
同じクラスの七瀬が話しかけてきた。
こいつは他の連中とは違い少しは使えるが、こいつとも馴れ合うつもりはねえ。
「ガキの頃に遊んでたのが懐かしくなってな」
「へー、どれどれどんなパーティなんですか?」
七瀬が俺のゲームボーイを前かがみで覗き込んできた。
胸がぽよんぽよんしてやがる。
馴れ合うつもりはねえが、ポケモンと言う共通の話題に乗っかってやるのもやぶさかではない。
俺は幼少期からいつも独りで遊んでいたし、それを寂しいとも疑問に思ったこともねえが、
ポケモンは娯楽として素直に楽しいし、別にこいつと少し雑談してやるくらいどうってことはない。
俺は七瀬の希望通り、今の自慢のパーティを見せてやった。
ユンゲラー。
ゴースト。
ゴーリキー。
ゴローン。
「なかなかレベル上げても進化しねえんだよな」
七瀬が怪訝な表情を浮かべてやがる。
なんだ?俺のパーティにケチつけようってのか?
少しでも馬鹿にしやがったらそのデカパイを好きにさせてもらうからな。
「宝泉くん。一つ教えてあげます」
俺を相手に上から目線で来やがった。
殴り飛ばしてやろうと思ったところ、七瀬は俺が予想外な事実を突きつけた。
「あ?ユンゲラーは通信進化だと!?」
「はい……。ゴローンも……」
「俺とタメを張れるほど怪力なゴーリキーもか……?」
「カイリキーにするためにはそうするしか方法はありません」
なんたることだ。
通信交換なんて孤高の俺にはまったく眼中になかったぜ。
ずっと仲間など作らず、独りだったからどうりで知らねえはずだぜ。
まさかポケモンにそんな要素があったなんて、
なかなか面白れぇじゃねえかポケモンパイセンよぉ(?)
ちなみに、通信進化とは専用のケーブルを2つのゲームボーイに繋ぎ、
ポケモンを交換することでそのポケモンを進化させることだ。
「しゃあねえ、七瀬ヤるぞ!」
「だが断る」
こいつ……あっさりと俺の要求を断りやがった。
そんなに俺と通信交換するのが嫌なのか?
俺に歯向かうとどうなるか思い知らせて……いや、今は七瀬のことは後回しにしてやる。
「……」
今はなんとしてでもゴーリキーたちを進化させるのが最優先だ。
他のクラス連中は……駄目だ、全員俺を怖がって授業以外どこかへ消えちまってる。
俺は嘆息すると通信交換相手を求めて2年の階へと足を運んだ。
「お、おい須藤、校舎裏来いよ!」
「でさー!」
「何それー」
須藤は小野寺とか言う女子と談笑しながら俺のことを無視して素通りしてしまった。
舐め腐りやがって!
体育祭で俺に形だけとは言え勝利して調子に乗ってんじゃねえだろうな?
今ここで戦争始めてもいいんだぜ?
なあ?おい、聞いてんのか!
「……」
俺はずっと独りだった。
……。
「ゆけ、ゴースト!」
「ゆけ、ゲンガー!」
結局誰とも通信交換できなかったが、天沢とポケモンバトルだけはできた。
しかし天沢は俺が四天王戦でしか見たことねえポケモンを繰り出してきやがった。
「テメェ、なんだそのポケモンは!?」
「何って私のかわいいゲンガーちゃん♪ゴーストから通信進化したんだよ」
ニヨニヨ顔で余裕な舐めたツラしてる天沢に俺は血管をピクピクしていた。
しかし今はポケモンバトルに専念だ。
天沢との殴り合いは後にしてやる。
とは言え、俺のゴーストの進化系であるゲンガーに勝てる見込みは薄い……ならば!
「へ、へへ……こうなったら……」
→マスターボール
ポォーン パシッ!
ひとのポケモンをとるのはどろぼう!
「orz」
めのまえがまっくらになった。
俺はどこまでも独りだった。