エーテリアス少女は終末の夢を見るか 作:TOPS製エーテリアスメカ
ここはパパゴホロウ深部、人々の記憶を吸い取り投影する。そんな摩訶不思議な異界とも言える危険な空間で一人のホロウレイダーがいた。
「はぁ、はぁ、逃げないと」
彼の仲間は死に、ホロウという暗闇の迷宮を照してくれるキャロットを持つボンプも道中で破壊された。
そんな絶望的な状況の中、彼はウリディンムと呼ばれる複数の目を持つ異形から逃走していた。
「ウグっ、はぁ、肺がやられたか?」
彼はバッグから注射器を取り出し、迷いなく動脈に刺した。
「これ何発目だっけ?」
もう何発目か忘れてしまった抑制剤の注射器を中に投げ捨てる。
彼にはもう気にするほどの余裕はないが、既に抑制剤に含まれる成分の致死量の三倍を超えており、この先出られたとしても余命幾ばくかの状態だった。
意識が朦朧とする。
過剰量の抑制剤で抑えているとはいえ、侵蝕症状はひどく、体からは結晶が生えており、エーテリアス化の兆候が現れていた。
「クソっ行き止まりかっ」
ウリディンムの足音が聞こえてくる。だがしかし彼が辿り着いたのは一つの研究室だった。
恐らくこの場所の元となった人物は研究員だったのだろう。
「マジかよ。マジかよ」
ウリディンムの足音が聞こえてくる。自分の縄張りを荒らす不届きものを八つ裂きにする為に。
心臓がバクバクと音を立てる。抑制剤の副作用だろうか、それとも目の前の命の危機の為か、もしくはその両方か。
「……こうなったら!」
彼は一世一代の賭けに出た。
ここに必要な機材は全てある。
もうこんな身体では脱出などできないだろう。自分の体がどうなってもいい、無惨にも散っていった仲間達の無念を晴らすのだ……。
………
……
…
「ーーイド!」
「ーェェーイド!」
「ウェェーーーーイド!起きなさいよこのアホンダラ!」
「あー!もう五月蝿いなー!」
私の尊い眠りを邪魔するのはだれ!
「誰に向かってその口を聞いてるのよ!」
寝起きで意識がはっきりしない中、自身を起こすピンク髪の女が見えた。
ニコだ! でもなんで?
「えっニコっ、あれっ目覚ましは?」
確か目覚ましを設定してたはずなんだけど……。
それにニコが持ってるその袋ってまさか……。
「そこでグチャってなってたから掃除したのよ!」
ニコの袋には無惨にも粉砕された私の軍用合金製の目覚まし時計(18代目)が入っていた。
「私の20万ンンンンンンーーー」
仲間達の遺産で買ったのに。たった一週間でこんな姿になるなんて……。
「勿体無いから、依頼終わった後でリサイクルショップに売りに行くわよ!」
……んーまあ仲間の遺産は無駄にしない様にしないとね!
「ってそんなことはまあいいのよ。今日は大事な依頼よ!早く朝食食って準備しなさい!」
そのニコの言葉に従い、私は大急ぎでロビングに向かった。
「ビリー、アンビー、おはよう!」
「ウェイド、おはよう」
「おはようだぜ!ウェイド!」
ん?何故私が邪兎屋と一緒に暮らしているのかって?
過去にホロウで倒れていた私を助けてくれた恩を返す為、私は邪兎屋の臨時バイトとして一緒に暮らしているのだ。ニコとアンビーはもう食ったらしく、机の上に置かれていた水道水と、1/3にカットされた卵トーストを食べた。
まあ仲間達と一緒にブイブイかましてた時よりかはちょっとだけ貧相だけど、やっぱり心が込められた食事は美味しいな!
「飯は食い終わった?」
「うん!」
「じゃあ準備して!今日は赤牙組を相手にするんだから!万全にね!」
そして何と今回の依頼はあのパエトーンがホワイトノイズにハッキングされ、アカウントを捨てるきっかけの依頼なのだ。
なんでそんなことを知っているのかって?それはね、話せば長くなるから今は言わない!
部屋に戻って寝癖に溢れた控えめのゲーミング色に変異した髪を解き、そしてお気に入りの青のジャケットを着る。
そして私の得物であるクロスボウを丹念にチェックして、それに加えて本命である特殊矢もチェックする。
この中には闇医者兼化学者である私自らが丹念に調合した毒物が入っていて、私の子供と言ってもいい存在なのだ。
銃に特殊弾薬積んだほうが強くないかだって?
だが矢は便利である。
クロスボウが使えなくても投げられるし、鏃がついてるので直接相手にも刺せる。
まさに便利なのだ。
「ウェイド、準備は終わった?」
「終わったよ!クロスボウも毒物もいい感じ!」
「じゃあ出発するわよ」
邪兎屋の車に乗り、先日研究所を襲撃し、金庫を奪った赤牙組のいると思われる高層マンションへと向かう。
ニコとアンビー、ビリーは知らないだろうな。
これから彼ら、いや世界の運命が動き出そうとしていることに……。
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