【望月ころも先生公認「蚊ニキ」二次創作】蚊ニキの蚊ニッキ(日記)   作:くまく

5 / 5
蜂ネキ
お兄ちゃんの美容法?


「りこ、いつまで寝てるの?いい加減に起きなさい」

 

朝、7時30分。珍しくママの声で起こされた。

11月に入って日が短くなり、ついつい寝坊しがちになる。中学の吹奏楽部の朝練は今日は無いから、いつもより遅めに起きちゃった。

 

(そういえばママ、今日はパートのお店が休みだったっけ…)

 

私のママはスーパーで働いていて、仕込みのシフトがあるからいつも朝早いんだ。今日は全店休業日だから、珍しくこの時間でも家にいるから、なんだか不思議な感じ。

 

「ふああ…」

 

あくびをしながら顔を洗うために洗面所に入ると…

 

「おおお……コレはノリがいいぞォ!」

 

鏡に向かってキラキラ笑顔を振りまく蚊がいた。

 

「〜っぱ、メンズ基礎はアク◯モイス一択だよな〜こんな乾燥きつい時期も、お肌うるツヤスベスベ〜」

 

頬を赤らめながら瞳を潤ませ、両手(?)を頬に当ててうっとりしたアホな蚊は…私のお兄ちゃん。

手のひら大の蚊で、派手な黄色い胴体に大小4つの羽根を持ち、細い手足(?)は4本。丸い顔に2つの触角があり、本人いわくつぶらな瞳と端正なくちばし(口吻)があるイケメンらしい。

 

いつ、お兄ちゃんが蚊になったのかはわからない。

けど、なんの問題もないから放置してる。

ママもパパも周りのみんなも、何も言わないし。

 

そしてそのお兄ちゃんは、最近お肌のお手入れに目覚めたみたいで、夏ぐらいからママやパパの基礎化粧品をこっそりと使ってる。

 

「おはよ、お兄ちゃん。けど、ちょっと退いて!顔洗うから!」

 

私は専用のネットで洗顔石鹸を泡立てつつ睨みつけると、お兄ちゃんの体がビクッと揺れた。

 

「お、おはよりこ。スマン、すぐ退くわ…あ、でも。ソレ取って」

 

と、お兄ちゃんが指差した先は……

ママの美容クリーム。

 

「ぶふっ!」

 

泡を顔につけてる最中なのに、思わず吹き出してシャボン玉みたいに泡が飛んだ。

 

「お兄ちゃん、お肌の手入れに力入れ過ぎ!」

「いやぁ~時代ですからあ〜コレからはメンズもキレイを意識しなきゃねッ☆彡」

 

指先にちょこんとクリームをつけて、お兄ちゃんの顔にぶに、とつけると、そのまま細い両手でゆっくりていねいに伸ばしてる。そして、またうっとりしながらつぶやいた。

 

「ぷるぷるもちもち〜☆彡」

「ぶはっ!ちょ、やめてよー!遅刻するじゃん!?」

 

相変わらずノリが良すぎるお兄ちゃんは、いちいち私のツボにハマる。けど、キリが無いから我慢して顔を洗い終わった。

 

(私もそろそろ化粧品いるかな〜?)

 

日焼け止めを塗りながら、ちょっと考えちゃう。早い同級生の中には、もうこっそりとメイクをしている子がいる。小学生から100均のメイクを使っている子は珍しくないんだよね。

ママは、りこにはまだ早い!って言われてるし、友達のさくらも“うちらはそのままがキレイなんだよ”って言ってるけど…お兄ちゃんすら、お肌のお手入れ頑張ってるの見ると、私ももうちょっと色々したほうがいいかな?って思えちゃうんだよね。

 

(でも、お兄ちゃん…なんで急にお肌の手入れなんて始めたんだろ?)

 

中高6年間は卓球部で頑張ってたから、そんな余裕がなかったからだけなのかな?

お年頃と言えばそうだけど……。それまで極端に外見を気にする様子はなかった気がするんだけど。

 

制服に着替えると、バタバタとダイニングに足を踏み入れた。

 

「遅いわよ。お兄ちゃんもう食べてるから。りこも早く食べちゃいなさい」

 

ダイニングテーブルの椅子に座ると、ママのお小言を聞き流しながら、朝のトーストをホットミルクで流し込む。

お兄ちゃんは「グッドテイスト!」とサムズアップしながらバタートーストを抱えてもぐもぐしてた。あんな小さな体によくトーストやサラダやコーヒーが入るんだ。物体質量どうなってんだろ?

 

ダイニングの時計は7時50分を指してる。学校の始業は8時15分。

徒歩で20分近くかかるから、そろそろ出ないとヤバい。

焦って最後のひとくちをミルクで流し込んだ私は、食器を流しまで運んで置く。洗おうとしたら、ママが「きょうはやっておくわよ。早くいきなさい」というから、お言葉に甘えることにした。リュックを掴んで、バタバタと玄関に向かう。

 

「ごちそうさまでした!いってきまーす!」

 

玄関のかまちで急いで靴を履いていると、ブゥンという羽音とともに、お兄ちゃんの声が聞こえた。

 

「りこ、いってらっしゃーい!車に気をつけるんだゾ☆」

「……わかってるよ!」

 

お見送りは嬉しいけど…その言葉は、お兄ちゃんが言うとシャレにならない。夏に私の代わりに車に轢かれて入院したんだから。

また素直になれなくて、もやもやしながら勢いよくドアを開いた瞬間……

 

なにかが玄関に飛び込んできた。

 

それは、蜂(ハチ)。

お兄ちゃんと同じくらいの大きさで、オレンジ色の体に黒い縞模様。おしりに針があって、頭の触角には赤いリボンがついてる?ぱっちりした目にはまつげ。口?は赤い…口紅?細い手足は4本。羽根は4枚。

 

なんだか、可愛らしい蜂だった…蜂にしてはデカいけど。

 

呆然とした私の前で、蜂は礼儀正しく両手を合わせてぺこりとお辞儀をした。

 

「突然のご訪問、失礼いたします。私(わたくし)……西園寺薫(さいおんじ かおる)と申します……優様はご在宅でいらっしゃいますでしょうか?」

 

……蚊ニキならぬ、蜂ネキが、そこにいた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。