新・信長公記 〜信長くんと2人の名探偵〜   作:ごじょう

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第2話「名探偵と未来人」②

――数十分後。

 

キュアット探偵事務所。

 

「へぇ~~~。」

 

事務所の中。

 

ソファに座ったジェット先輩が、目の前にいる男をじっと見つめていた。

 

その視線の先にいるのは――。

 

黒い学ランを身にまとった、あの男。

 

織田信長。

 

……いや。

 

正確には、織田信長のクローン。

 

私はみくると一緒に、これまでのことをジェット先輩に説明していた。

 

2122年から来たこと。

 

1999年にタイムスリップしてきたこと。

 

そして――。

 

「それで、織田信長がここにいるってわけか。」

 

ジェット先輩が、腕を組みながら頷く。

 

「そうそう!!」

 

私は元気よく頷いた。

 

みくるも隣で頷く。

 

「うん!」

 

「…………。」

 

ジェット先輩は、しばらく黙っていた。

 

そして。

 

「……。」

 

信長さんを見る。

 

「…………。」

 

もう一度、私たちを見る。

 

「…………。」

 

そして、もう一度信長さんを見る。

 

「って……。」

 

ジェット先輩が立ち上がった。

 

「信じられるわけねぇだろ!!!」

 

「えぇぇぇ!?」

 

思わず声を上げる。

 

私は信長さんを見る。

 

信長さんは、何事もなかったかのようにソファに座っている。

 

しかも――。

 

何かを食べていた。

 

「……信長さん?」

 

「何だ。」

 

「何食べてるんです……?」

 

「干し柿だ。」

 

「こんな時に干し柿!?!?」

 

みくるが勢いよく突っ込んだ。

 

けれど、信長さんはそれでも全く動じていない。

 

むしろ、手に持っていた干し柿をこちらに差し出す。

 

「美味しいぞ。」

 

「……。」

 

「俺の大好物だ。」

 

「……。」

 

「ほれ。貴様も食べるか?」

 

「いるかぁぁい!!!!!」

 

みくるのツッコミが、事務所中に響き渡った。

 

「今はそういう話をしてるんじゃないでしょ!!」

 

「そうなのか?」

 

「そうよ!!」

 

「……そうか。」

 

信長さんは、何事もなかったかのように干し柿を口に入れた。

 

「もぐ……。」

 

「…………。」

 

ジェット先輩が呆然とする。

 

「……なんなんだよ、こいつ。」

 

私は思わず苦笑した。

 

「えっと……信長さん?」

 

「何だ。」

 

「一応、話を戻していい?」

 

「ああ。」

 

私は改めて尋ねる。

 

「何か証明できる?」

 

「俺が織田信長であることをか?」

 

「うん!」

 

「……。」

 

信長さんは少し考えた。

 

そして。

 

「特にない。」

 

「ないの!?」

 

「俺は俺だ。」

 

「それじゃ証明にならないよぉぉぉ!!」

 

ジェット先輩がさらに頭を抱える。

 

「お前ら、本当に探偵なのか!?」

 

「探偵だよ!!」

 

「だったらもっと証拠を集めろ!!」

 

「証拠ならあるよ。」

 

みくるが冷静に口を挟む。

 

「写真に写っていた謎の機械。」

 

「……あ。」

 

私は思い出す。

 

「そうだった!」

 

みくるは続ける。

 

「信長さんは、あの機械を2122年に存在していたものと同じだと言っていた。」

 

「それだけじゃ『織田信長』の証明にはならないだろ。」

 

「それは……そうだけど。」

 

「あと。」

 

みくるが指を立てる。

 

「私たち3人にしか聞こえなかった、あの電子音。」

 

「……。」

 

ジェット先輩の表情が少し変わる。

 

「それも信長さんは、自分が2122年から来た時に聞いた音と同じだと言ってる。」

 

「……。」

 

ジェット先輩は黙り込む。

 

そして、ちらっと信長さんを見る。

 

「……本当に、未来から来たってのか?」

 

「そうだ。」

 

信長さんは即答した。

 

「俺は2122年から来た。」

 

「…………。」

 

ジェット先輩は腕を組んだまま、信長さんを見つめる。

 

「……。」

 

「…………。」

 

数秒の沈黙。

 

そして。

 

「……まあ。」

 

ジェット先輩が小さく息を吐く。

 

「少なくとも、普通の奴じゃなさそうだな。」

 

「でしょ?」

 

私は笑った。

 

「でも、織田信長っていうのは――。」

 

ジェット先輩は信長さんを指差す。

 

「まだ信じてねぇからな。」

 

「えぇぇぇ!?」

 

「当たり前だ!!」

 

私は思わずみくるを見る。

 

みくるも苦笑していた。

 

「まあ……普通はそうなるよね。」

 

「みくるまで!?」

 

「だって、私たちだって最初は叫んだじゃん。」

 

「あ……。」

 

確かに。

 

『「「織田信長ぁぁぁ!?」」』

 

「って。」

 

「お前らも同じじゃねぇか!!」

 

ジェット先輩のツッコミが、事務所中に響き渡った。

 

「ははは……。」

 

私は苦笑する。

 

「……っていうか。」

 

みくるが、私にだけ聞こえるくらいの小さな声で言った。

 

「ポチタンのことはどう説明するのよ!?」

 

「……あ。」

 

私は固まった。

 

そうだった。

 

忘れていた。

 

この事務所には――。

 

「私たちがプリキュアだってことはもうバレてるし、大丈夫だと思うけど……。」

 

私も小声で返す。

 

「いや、そういう問題じゃねぇだろ。」

 

ジェット先輩が、私たちの会話に割って入ってきた。

 

「え?」

 

「いきなりポチタンが喋れば、いくら自分を信長だって信じてるやつでも――」

 

「……?」

 

その時。

 

ジェット先輩が、ふと気づく。

 

「あれ?」

 

さっきまで信長さんが座っていたソファ。

 

そこに――。

 

誰もいない。

 

「……信長はどこに行ったんだ?」

 

ジェット先輩が言う。

 

みくるも周りを見渡す。

 

「……あれ?」

 

私も見る。

 

「信長さん?」

 

さっきまで確かに、そこに座っていた。

 

なのに――。

 

いない。

 

「どこ行ったんだ?」

 

ジェット先輩が辺りを見回す。

 

その時だった。

 

事務所の奥の部屋から――。

 

「貴様は可愛いやつだな!」

 

「ポチポチィ~~!!」

 

「…………。」

 

「…………。」

 

「…………。」

 

私。

 

みくる。

 

ジェット先輩。

 

三人が、ゆっくりと顔を見合わせる。

 

「…………。」

 

「…………。」

 

「…………。」

 

「「「なぁぁぁぁあぁ!!!!!?????」」」

 

三人の絶叫が、キュアット探偵事務所に響き渡った。

 

「う,う,嘘でしょ!?」

 

私は慌てて奥へ走る。

 

「ポチタン!!」

 

勢いよく,奥の部屋の扉を開けた。そこには――。

 

信長さんがいた。

 

しかも。

 

ポチタンを両手で抱き上げている。

 

「こやつ、ポチというのか。」

 

「い,いや!!正確にはポチタンっていう……!!」

 

「ポチポチィ~♪」

 

「うむ。」

 

信長さんは満足そうに頷いた。

 

「可愛いやつだ。」

 

「ポチポチィ~!」

 

ポチタンも嬉しそうに鳴く。

 

「…………。」

 

ジェット先輩が、口を開けたまま固まっている。

 

みくるも目を丸くしている。

 

私は――。

 

「……信長さん。」

 

「何だ。」

 

「……驚かないの?」

 

「何がだ。」

 

「いや、だって……。」

 

私はポチタンを見る。

 

そして信長さんを見る。

 

「ポチタン、喋ってるんだけど!?」

 

「そうだな。」

 

「そうだなじゃないよぉぉぉ!!!」

 

「お前、そこ驚くところだろ!!!」

 

「なぜだ。」

 

「なぜって……!」

 

ジェット先輩が頭を抱える。

 

「未来から来た織田信長が、妖精見て普通に『可愛い』で済ませてんじゃねぇよ!!」

 

「妖精?」

 

信長さんがポチタンを見る。

 

「……確かに、珍しいな。」

 

「それだけ!?」

 

「しかし――。」

 

信長さんはポチタンをもう一度抱き上げる。

 

「可愛いことに変わりはない。」

 

「ポチポチィ~~!!」

 

「…………。」

 

ジェット先輩が完全に言葉を失う。

 

私は思わず笑ってしまった。

 

「なんか、普通に仲良くなってる……。」

 

「ポチポチィ~♪」

 

「うむ。」

 

信長さんも満足そうに頷く。

 

そしてジェット先輩が、ぼそっと呟いた。

 

「……こいつ、本当に織田信長なのか?」

 

「だからそう言ってるだろ。」

 

「てか、なんでポチタンのこと一瞬で受け入れるんだよ!!!」

 

「……。」

 

信長さんは、少し考える。

 

そして。

 

「可愛いからだ。」

 

「理由それだけかよ!!!」

 

「織田信長…。恐るべし…!!!!」

 

とてつもなく振り回された夜だった。

 

でも――。

 

ふと見ると、信長さんはポチタンを抱いたまま、穏やかに笑っていた。

 

さっきまで見せていた険しい表情が嘘みたいだった。

 

この人、こんなふうに笑うんだ。

 

私は、少しだけ意外に思った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

信長さんがポチタンと遊んでいる。

 

「ポチポチィ~♪」

 

「ははは。そうかそうか。」

 

「ポチ~♪」

 

「よしよし。」

 

信長さんは、すっかりポチタンを気に入ったらしい。

 

さっきまで私たちが「織田信長が未来から来た」という、とんでもない話をしていたとは思えないほど、楽しそうにポチ

タンと遊んでいる。

 

「……。」

 

私は、その様子をちらっと見る。

 

「……まあ、いっか。」

 

そして、私はみくるとジェット先輩に向き直った。

 

信長さんには聞こえないように、少し声を落とす。

 

「ねえ。」

 

「ん?」

 

「今のうちに、信長さんがどうしてこの時代に来たのか、考えてみよう。」

 

「そうだな。」

 

ジェット先輩も腕を組む。

 

「本人から聞いた話じゃ、2122年から突然1999年に飛ばされたんだろ?」

 

「うん。」

 

「だったら、何か原因があるはずだ。」

 

みくるが頷く。

 

「信長さん自身も、どうしてタイムスリップしたのか分かってないみたい。」

 

「じゃあ……。」

 

私は少し考える。

 

そして、ある可能性が頭に浮かんだ。

 

「……まさか。」

 

「どうしたの、あんな?」

 

「もしかして……。」

 

私はポチタンを見る。

 

そして、少し不安そうに言った。

 

「まさか、ポチタンがもう一回タイムスリップを……?」

 

「え?」

 

みくるもポチタンを見る。

 

「ポチタンが?」

 

「だって、私が1999年に来た時も、ポチタンの力だったんでしょ?」

 

私はポチたんを見つめる。

 

「だったら、信長さんもポチタンの力で……。」

 

「それはない。」

 

ジェット先輩が即答した。

 

「え?」

 

「マコトジュエルの力がまだ足りないだろ。」

 

「……あ。」

 

私は思わず口を閉じた。

 

「そうだった……。」

 

ジェット先輩は腕を組んだまま続ける。

 

「そもそも、あんながここに来た時と今じゃ状況が違う。ポチタンが自分の意思で何度も時間を飛び越えられるなら、

 

とっくに何か起きてるだろ。」

 

「じゃあ、ポチタンが原因じゃない……。」

 

「たぶんな。」

 

みくるが静かに考え込む。

 

「……。」

 

「……。」

 

事務所の中が、少しだけ静かになった。

 

その時。

 

みくるが、ふと顔を上げた。

 

「……写真。」

 

「写真?」

 

私は聞き返す。

 

「うん。」

 

みくるは、事件の時に見た写真を思い出しているようだった。

 

「写真に写っていた謎の機械……。」

 

「……あ。」

 

私も思い出した。

 

「そっか…あの機械!」

 

あの写真の端に写っていた、見慣れない機械。

 

私は最初、依頼人さんとカイちゃんのことばかり見ていて、そんなものが写っていることすら気にしていなかった。

 

でも――。

 

信長さんは、あの機械を見た瞬間に明らかに様子が変わった。

 

みくるは続ける。

 

「円形状のリングが取り付けられてて……。」

 

「うん。」

 

「そんなに大きくない機械……。」

 

みくるは指で空中に形を描く。

 

「信長さんは、あの写真を見た瞬間,何かを知っているような反応をした。」

 

「……。」

 

「それに、あの音。」

 

「ピッピッ、ピーー……。」

 

私は小さく呟いた。

 

あの、タイマーみたいな電子音。

 

私とみくると信長さんには聞こえて、依頼人さんには聞こえなかった音。

 

「……あれが、信長さんのタイムスリップと関係してるのかも。」

 

みくるが言った。

 

「写真に写っていた機械そのものが、時間を移動させる装置だったとしたら……。」

 

「信長さんが1999年に来た理由も説明できる。」

 

ジェット先輩が続ける。

 

「なるほど……。」

 

私は頷く。

 

でも、すぐに別の疑問が浮かんだ。

 

「でも……。」

 

私は腕を組む。

 

「まさか、これも怪盗団ファントムの仕業?」

 

「……。」

 

ジェット先輩が黙る。

 

「もしあの人たちがあの機械を使って、信長さんを2122年から1999年に連れてきたんだったら……。」

 

私は言葉を続ける。

 

「信長さんがここに来た理由も、怪人が生まれたことも、全部つながってるんじゃない?」

 

「そうだと理由がはっきりしていいがな。」

 

ジェット先輩が言った。

 

そして――。

 

少し困ったような顔をする。

 

「ただな。」

 

「?」

 

「一つ、分からないことがある。」

 

「何?」

 

ジェット先輩は、ポチタンと遊んでいる信長さんを見る。

 

「……あいつらが、信長――」

 

一瞬、言葉を止める。

 

「……いや、自分を信長だと信じ込んでる変なやつを、この時代に連れてくる理由は何だよ。」

 

「変なやつって……。」

 

私は思わず苦笑した。

 

すると――。

 

「ん?? 何か言ったか??」

 

「「!?」」

 

私とみくるは、同時に振り返った。

 

信長さんが、ポチタンを抱いたままこちらを見ている。

 

「……聞いてたの!?」

 

「何をだ?」

 

「うううん!! 何でもないよ!!!」

 

私は慌てて首を横に振る。

 

「そうか。」

 

信長さんは、それ以上気にする様子もなく、再びポチタンに視線を戻した。

 

「ポチ,お前は本当に面白いやつだな。」

 

「ポチポチィ~♪」

 

「……。」

 

私とみくるは顔を見合わせる。

 

……今の、絶対聞いてたよね?

 

でも、ジェット先輩の言いたいことは分かる。

 

「そうだよね。」

 

みくるも頷いた。

 

「あの人たちが何か目的を持って信長さんを1999年へ連れてきたのなら、その目的があるはず。」

 

「そう。」

 

ジェット先輩は腕を組み直す。

 

「ただタイムスリップさせるだけなら、わざわざ2122年から連れてくる意味が分からない。」

 

「……。」

 

私は信長さんを見る。

 

「信長さんは、何も知らない。」

 

「うん。」

 

「自分がどうしてここに来たのかも。」

 

「……。」

「じゃあ――。」

 

私は考える。

 

「誰かが、信長さんを1999年に連れてきた。」

 

みくるが続ける。

 

「そして、その理由はまだ分からない。」

「……。」

 

三人の間に、沈黙が落ちた。

 

その時――。

 

「ポチポチィ~♪」

 

明るい声が聞こえた。

 

振り向くと、信長さんがポチたんを抱き上げている。

 

「高い高〜い,だぞ。ポチ。」

 

「ポチ~~~♪」

 

「はははは。」

 

信長さんが笑っている。

 

すると、ポチタンの視線が、信長さんの側に置いてある箱に向いた。

 

「お! 何だポチ。干し柿が欲しいのか??」

 

「ポチ!」

 

ポチたんが嬉しそうに鳴く。

 

「しょうがないやつだな、貴様は。少しだけだぞ。ほれ。」

 

信長さんは干し柿を箱から出し,ほんの少しだけちぎると、ポチタンに差し出した。

 

「ポチポチ~♪」

 

ポチタンは嬉しそうにそれを受け取った。

 

「……。」

 

私は思わず、その姿を見つめた。

 

さっきまでの真剣な話とは、あまりにもかけ離れた光景だった。

 

「……本当に、何も知らないのかな。」

 

私が呟く。

 

みくるが私を見る。

 

「どういうこと?」

 

「ううん……。」

 

私は首を横に振る。

 

「ただ、信長さん自身も知らないところで、何か大きなことに巻き込まれてる気がする。」

 

「……私も、そう思う。」

 

みくるが答えた。

 

ジェット先輩も、信長さんを見つめる。

 

「だったら――。」

 

その声が、少しだけ低くなる。

 

「まずは、あの機械を調べるしかないな。」

 

「うん!」

 

私は頷いた。

 

「信長さんがどうして1999年に来たのか。」

 

「ええ。でも,どうやって…。」

 

「「「……。」」」

 

三人の間に、再び沈黙が落ちた。

 

その時だった。

 

「……なるほどな。」

 

背後から声がした。

 

「「「え?」」」

 

振り返る。

 

信長さんが、ポチタンを抱いたままこちらを見ていた。

 

「信長さん!?」

 

どうやら、いつの間にかこちらを見ていたらしい。

 

ジェット先輩が少し驚いたように尋ねる。

 

「お前、聞いてたのか?」

 

「少しな。」

 

信長さんはそう答えると、ポチたんを撫でながら続けた。

 

「それで,これからどうする。」

 

「え,何?」

 

「俺はこの場に,どうやって留まれば良い。」

 

「……。」

 

私はみくるを見る。

 

みくるも、少し考え込む。

 

確かに――。

 

信長さんは、突然2122年から1999年へやって来た。

 

元の時代に帰る方法も分からない。

 

それなら、しばらくの間は私たちと一緒に行動することになる。

 

でも――。

 

キュアット探偵事務所に置いておくなら、何か役割が必要だ。

 

ただ「信長さん」として置いておくわけにもいかない。

 

「……どうしよう?」

 

「そうだね……。」

 

私が呟くと、みくるも考え込む。

 

ジェット先輩も腕を組んだまま唸る。

 

「探偵事務所にいる以上、何か仕事をしてもらった方がいいだろうな。」

 

「仕事……。」

 

私は信長さんを見る。

 

すると、信長さんは静かに言った。

 

「俺は、貴様らの判断に従う。」

 

「え……?」

 

信長さんは、私たちを真っ直ぐに見た。

 

「こうやって招き入れられた人間に、その判断を強制する権利はない。」

 

「……。」

 

その言葉に、私は少し驚いた。

 

信長さんはもっと、自分のことを自分で決める人だと思っていた。

 

でも――。

 

今は、私たちに委ねてくれている。

 

みくるも、少し考えたあと口を開いた。

 

「それなら……。」

 

私は、ふと閃いた。

 

「じゃあ、助手はどう?」

 

「助手?」

 

信長さんが聞き返す。

 

「うん。」

 

私は頷いた。

 

「私とみくるの探偵助手。」

 

「探偵助手……。」

 

「私たちが事件を調べる時に一緒に動いてもらったり、困った時に手伝ってもらったり。」

 

みくるも頷く。

 

「信長さんなら、凄腕の助手として活躍できそう!」

 

「確かにな。」

 

ジェット先輩も納得したように頷いた。

 

信長さんは、しばらく黙っていた。

 

そして――。

 

口元に、ほんの少し笑みを浮かべる。

 

「……面白い。」

 

私は思わず顔を上げた。

 

「引き受けよう。」

 

「ほんと!?」

 

「ああ。」

 

信長さんは頷いた。

 

「貴様らの助手――か。」

 

「うん!」

 

「面白い役目だ。」

 

そう言うと、信長さんは再びポチたんを見る。

 

そして――。

 

「さぁ,まだまだこやつとも遊び足りん。」

 

「ポチ?」

 

信長さんはポチたんを抱き上げる。

 

「お、どうした。まだまだ遊びたいのか?」

 

「ポチ〜♪」

 

「ははは。そうかそうか。」

 

信長さんは楽しそうに笑った。

 

さっきまで、私たちは真剣に「信長さんをどうするか」を話していた。

 

それなのに――。

 

今はもう、すっかりポチたんとの遊びに夢中だ。

 

「……。」

 

私は思わず苦笑する。

 

でも。

 

これで決まった。

 

信長さんは――。

 

私たち二人の探偵助手だ。

 

 

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