新・信長公記 〜信長くんと2人の名探偵〜   作:ごじょう

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今回は短めです〜


第2話「名探偵と未来人」③

 

――翌朝。

 

朝の光が、キュアット探偵事務所の窓から差し込んでいた。

 

「ふぁ~……。」

 

私は大きく伸びをする。

 

「おはよ~~。」

 

「おはよう、あんな。」

 

みくるが一緒のタイミングで部屋を出てきた。パジャマから着替えたのは良いものの、まだまだ眠すぎる。

 

みくると一緒に、朝の支度を終えて階段を降りていく。

 

まだ少し眠たい。

 

昨日はいろいろありすぎた。

 

織田信長が2122年からタイムスリップしてきて。

 

その信長さんが、今この事務所にいる。

 

……改めて考えると、とんでもない話だ。

 

「今日から、またいろいろ調べないとね。」

 

「うん。」

 

そんなことを話しながらリビングへ向かう。

 

そして――。

 

「……。」

 

「……。」

 

私とみくるは、同時に足を止めた。

 

ソファに誰かが座っている。

 

朝のテレビを見ながら、ゆったりとくつろいでいる人物。

 

「…………。」

 

「…………。」

 

黒い学ラン。

 

金色の髪。

 

「「信長さん!?」」

 

私たちは思わず声を上げた。

 

信長さんが、ゆっくりとこちらを振り返る。

 

「おお,なんだ。貴様らか。」

 

私は慌てて信長さんのところへ駆け寄る。

 

「信長さん! 何してるんです……??」

 

みくるも少し驚いた様子で尋ねる。

 

すると信長さんは、ものすごく当然のことを聞かれたような顔で答えた。

 

「テレビを見ておる。」

 

「いや、それは見れば分かりますけど……!」

 

信長さんは再びテレビに視線を戻す。

 

「この時代のテレビは、どれも面白いな。」

 

「……。」

 

「見ていて楽しいぞ。」

 

「…………。」

 

みくるが、ぽつりと呟く。

 

「……本当に織田信長なの……??」

 

「みくる?」

 

「だって……。」

 

みくるは信長さんを見る。

 

「もっとこう……天下統一とか、「出陣じゃあ〜〜!!!」とか……そういう感じの人じゃないの?」

 

「どういう感じだ。」

 

信長さんが振り返る。

 

「い、いえ……何でもありません。」

 

2122年から来た未来人。

 

織田信長のクローン。

 

そんな人が、朝から1999年のテレビ番組を楽しそうに見ている。

 

なんだか少しだけ――普通の人みたいだった。

 

その時だった。

 

テレビ画面が切り替わる。きっと,信長さんが変えたのだろう。

 

『――続いてのニュースです。』

 

アナウンサーの声が響いた。

 

『まことみらい市内にある宝生美術館に、怪盗団ファントムから予告状が届きました。』

 

「……!」

 

私とみくるの表情が変わる。

 

『予告状には、次のように記されていました。』

 

画面に、一枚の予告状が映し出される。

 

白い紙。

 

その中央には、怪盗団ファントムの名前。

 

そして――。

 

『明日、夜八時。「星明かりのプリンセス」をいただく。 怪盗団ファントム』

 

「……星明かりのプリンセス。」

 

私は呟いた。

 

それは、宝生美術館が所蔵している――緑色の宝石を有した首飾り。

 

「……。」

 

みくるが画面を見つめる。

 

そして、私を見る。

 

「あんな!」

 

「うん! みくる!ポチタン!」

 

「ポチ!」

 

ポチタンが、どこからともなく姿を現す。

 

「美術館に行こう!!」

 

「うん!」

 

「待て。」

 

その声に、私は振り返った。

 

信長さんが、不思議そうな顔をしている。

 

「どうしたんだ?」

 

「え?」

 

「なぜ急に美術館へ行くことになった。」

 

「あ、それはね――。」

 

私は説明を始める。

 

「私たち、怪盗団ファントムを追ってるんです。」

 

みくるが続けた。

 

「その怪盗団から、今みたいな予告状が届いたんです。その首飾りが盗まれるのを止めないと!」

 

「なるほど。探偵事務所だからな。」

 

信長さんは頷いた。

 

私はさらに説明を続ける。

 

「怪盗団ファントムは、私たちが追っている敵で――」

 

「……。」

 

「この前も事件を起こしていて――」

 

「……。」

 

「だから、今回も美術館に行って――」

 

「……。」

 

「……信長さん?」

 

返事がない。

 

「信長さーん?」

 

もう一度呼ぶ。

 

それでも――。

 

信長さんは、テレビ画面から目を離さなかった。

 

「……?」

 

さっきまでの穏やかな表情が消えている。

 

険しい。

 

何かを見極めるような目。

 

「信長さん……?」

 

みくるも不思議そうに声をかける。

 

「どうしたんですか?」

 

すると――。

 

信長さんが、ゆっくりとテレビ画面を指差した。

 

「おい。」

 

「え?」

 

「あれを見てみろ。」

 

私とみくるが、画面を見る。

 

「……?」

 

予告状が大きく映し出されている。

 

そこに書かれた、怪盗団ファントムからの予告。

 

だけど――。

 

信長さんが指差しているのは、その左上だった。

 

「左上に、数字が書いてある。」

 

「数字……?」

 

みくるが目を細める。

 

私も画面をじっと見る。

 

「……あ。」

 

小さく書かれた数字。

 

そこには――。

 

「2122」

 

「…………。」

 

私の声が止まった。

 

「……2122?」

 

みくるも呟く。

 

「2122……。2122年ってこと…?」

 

二人とも、しばらく画面から目を離せなかった。

 

だって――。

 

その数字は、私たちにとっても、信長さんにとっても、ただの数字じゃない。

 

「信長さんが……いた時代。」

 

私は、ゆっくりと信長さんを見る。

 

「……。」

 

信長さんは答えない。

 

ただ、テレビ画面に映った「2122」という数字を見つめている。

 

さっきまでテレビを楽しそうに見ていた表情は、もうどこにもなかった。

 

険しい顔。

 

何かを考えている。

 

けれど――。

 

信長さんは、何も言わない。

 

「……信長さん?」

 

呼びかけても、返事はない。

 

みくるも不安そうに信長さんを見る。

 

「……。」

 

信長さんは、ただ黙っている。

 

その沈黙が、かえって私たちを不安にさせた。

 

やがて、みくるが口を開いた。

 

「……ねえ、あんな。」

 

「なに?」

 

「予告状に書いてあるってことは……。」

 

みくるは「2122」の数字を見つめる。

 

「信長さんのタイムスリップは、怪盗団ファントムの仕業ってことなの!?」

 

「……!」

 

私は息を呑んだ。

 

「ファントムが……信長さんを2122年から1999年に連れてきた……?」

 

「だって、そう考えれば辻褄が合うでしょ。」

 

みくるの声が少しずつ強くなる。

 

「信長さんがどうしてこの時代に来たのか、まだ分かってない。」

 

「うん……。」

 

「そこに、2122という数字が書かれた怪盗団ファントムの予告状が届いた。」

 

「……。」

 

「偶然とは思えない…。」

 

私も画面を見る。

 

「じゃあ……。」

 

胸の奥が、少しずつざわついていく。

 

「怪盗団ファントムは、最初から信長さんのことを知ってたってこと……?」

 

「その可能性はある。」

 

「……。」

 

私は信長さんを見る。

 

それでも――。

 

信長さんは何も言わない。

 

ただ、「2122」という数字をじっと見つめている。

 

「信長さん……?」

 

もう一度呼びかける。

 

「……。」

 

返事はない。

 

そして――。

 

しばらくして。

 

信長さんが、ゆっくりと立ち上がった。

 

「俺も同行させてもらう。」

 

「……!」

 

私は驚いて信長さんを見る。

 

「信長さん……?」

 

「貴様ら迷惑はかけない。むしろ,手伝わせてもらおう。しかし…。」

 

そして,こちらを向いた。

 

「この予告状の意味も追わせてもらう。」

 

何かを確かめようとしている。

 

そして――。

 

「……。」

 

信長さんは、もう一度だけ「2122」の数字を見た。

 

「………そうか。」

 

それ以上、何も語らなかった。

 

その姿を見ながら、私は思った。

 

この予告状は――信長さんと、何かつながっている。

 

そして。

 

私たちはまだ知らなかった。

 

この「2122」という数字が、これから始まる事件の大きな手掛かりになることを。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私は、拠点に映し出されたテレビの画面をじっと見つめていた。

 

画面に映っているのは、まことみらい市の宝生美術館。

 

ニュースでは、明日の夜八時に「星明かりのプリンセス」をいただくという、怪盗団ファントムの予告状について報じられている。

 

「……。」

 

私は黙って、そのニュースを見ていた。

 

私の腕の中には、マシュタンがいる。

 

「計画通りね。」

 

マシュタンが、そう言った。

 

「ええ。」

 

私も静かに答える。

 

予告状は、ちゃんと届いた。

 

ここまで予定通り。何も問題はない。

 

――そう思っていた。

 

その時だった。

 

テレビ画面に映し出された予告状。

 

私は、何気なくその左上に目を向けた。

 

「…………。」

 

そこに、小さく数字が表示されている。

 

2122。

 

「……え?」

 

思わず、目を細めた。

 

「2122……?」

 

こんな数字、私は知らない。

 

もちろん、私が書いたものでもない。

 

「……これは……。」

 

マシュタンが、私の顔を見上げる。

 

「どうしたの?」

 

「……。」

 

私は答えられなかった。

 

ただ、その数字を見つめていた。

 

2122。

 

一体、誰が。

 

どうして、こんな数字を――。

 

「…………。」

 

胸の奥に、言葉にできない違和感が残った。

 

そして私は、もう一度だけ、その数字を見た。

 

「……これは……。」

 

――その数字が何を意味するのか。

 

この時の私は、まだ何も知らなかった。

 

 

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