気づいたら人生2周目だった方々による「最悪」を避ける物語 作:もみじししゃも
「…どういう状況だこれ」
冬美ちゃんが切羽詰まった声で早くお母さんのいる病院へ来いって言うから
お父さんと一緒に来たけど
なんで病院のロビーが凍りついてんの?
「やっときましたか轟さん…」
「これは一体どういうことだ?冷がやったのか?」
「まぁ…はい」
「………責任持って俺が溶かそう。燈矢は先に冷のところへ。お前が呼ばれているんだろう」
「らしいけど…わかったわ。んで、お母さんはどこ?」
「病室へ戻りました、行きましょう案内します」
お父さんがんば、結構広範囲で凍ってるから溶かすの大変だろうけどガンバ
…俺、お母さんに会っていいのかなぁ
今更思い返せば結構ひどいこと言った気がするんだけど
いいのかなぁ
「ねぇ、俺ほんとに会っていいの?」
「いいか悪いか、というより会わせないとまたあの人暴走しそうですから。仕方なくです」
そっかぁ…
というかこの医者、結構轟家の家庭事情詳しそうだな
「色々、あなたのご兄弟から聞いていますから。治療のためにも知る必要がありましたし」
あ、そゆことね
「今は、違うのでしょう色々と」
「まぁ、ん、一応」
「なら大丈夫だと思いますよ、なぜだか今の冷さん、すごく安定してますし…なにか覚悟の決まった顔をしていますから」
覚悟決まった顔?
なんだそれ
「さ、この部屋です。どうぞ」
「どーも」
さて、どうなってんのやら…
部屋に入ると、お母さんがベッドの端に腰掛けていた
あと困惑気味の夏くんとなんかの覚悟が決まった冬美ちゃんもいた
「…………燈矢、正座しなさい」
「は??」
なぜに???
急だなおいなんだってんだ?
「それから冬美と夏雄は一回外に出ていなさい」
「え?あ、うん…え、いいの?」
「夏、出ておきましょう」
「え、ちょっと姉ちゃん…」
おぉ引っ張られてった…
夏くーん…
あと冬美ちゃん!しれっと俺を正座させるな!え、立っちゃだめ?駄目かもなぁ
「…燈矢なのね。小さい頃に顔がそっくり。ちょっと大人びてはいるけれど」
「そりゃぁ…最後に会ってからもう10年位経ってんだから当然だろ…」
…気まず
気っまずい
「冬美からあなたが帰ってきたからのいろいろをとりあえず聞かせてもらったわ…大変だったわね。特に4日前とかは」
「あ?あぁまぁ…久しぶりに派手に暴れれたからいいけd…あ、いやなんでもない。お父さんがいたから大丈夫だったよ、うん」
「別に隠さなくてもいいわよ。わかってる。そもそもあなたの顔がもとに戻ってる時点でお察しでしょう」
…あ、え、マジ?
うっそだろ、マジかよ
「思い出したわ、色々」
「…どこまで」
「あなたが山荘跡地で爆発しそうになったこととかかしら」
「……………マジで色々思い出したんだな」
「やっぱりあなたもよね。じゃないとまず家に大人しく帰ってきてるわけないんだもの」
まぁあんときはほぼ燃え尽きてたから色々どうでも良かったし
「あと多分冬美も思い出してるわ」
「マジかぁ…」
お母さん…やべぇ更に気まずい
「とりあえずそうねぇ…前のことをぐちぐち言ってしまっても仕方ないし………正座させたのも気分だし…」
気分かよ
吹っ切れてんなぁお母さん
「ねぇ、今なにがどうなっているの?それから炎司さんは?あの人はどうしてるの?」
「どうしてるもこうしてるも………お父さんも思い出してるよ、前のこと」
「そう…」
「すっごい申し訳なさげな悟りを開いた顔してたから絶対そう」
「…一気に私たちだけ年を取った気分ね」
「まぁ、たしかに…?ごめんわかんねぇわ」
「あなたはあのあとすぐに死んでしまったものね」
「生きてたのがおかしかっただろあれは」
「焦凍に感謝しなさい」
「一応感謝はしてるよ、蕎麦奢ったし」
「それで済むのかしら」
「すまねぇよ、多分」
焦凍のおかげで、最後にみんなと話せたし
まぁ、うん
「燈矢、あなたこれからどうするつもりなの?」
「あ?んー、ヒーローになるつもり」
一応正直に答えたら、お母さんが急に立ち上がった
なんだよなんだよ
「理由を聞いてもいいかしら」
「あ?理由?…少なくともお父さんの夢のためじゃない」
「じゃあ、なんで?」
なんで…か
「”荼毘”は、あんとき完全に燃え尽きたよ、復讐とか、んなことマジで1ミリも思ってない。ただいまは…んー、なんつうか…えっと…」
くっそ恥ずい
言えるかっての
「いいなさい」
「はい、言いますごめんなさい」
お母さんこえぇ、特に雰囲気が
急に強い人になったな
あの頃は頼る気にもなれないぐらい弱かったのに
「…………焦凍を守ってやりたいなって思ったからです」
「聞こえないわ」
「焦凍を守ってやろうかなって思ったから!!あと普通にヒーローなりてぇからなるんだ!!」
「よく言えました」
なにが”よく言えました”だ、いわせたんだろが…
「にしても、いいの?焦凍のこと」
「………今じゃただの可愛い弟だよあいつ。お母さん覚えてる?あの日、焦凍が俺になんて聞いたか。『好きな食べ物なに?』だぜ、他に言うことあるだろ恨み節とか。なんというかもう…うん、毒気抜かれたわ完全に」
『おんなじだ』って返されて、つい謝っちまうぐらいには
「いいじゃない、頑張りなさい」
「あれ、止めねぇの?」
「止めようとしても止まらないでしょう?それに、あのときは私が完全に間違えていたわ。なっていいのよ、なりたい自分に」
「ふーん、じゃ、頑張るわ。小卒だけど」
「………それは、そうね、頑張りなさい」
はーい
「さて、炎司も来てるわよね」
「来てるけど?今ロビーで氷溶かし中」
「呼んでくれるかしら」
「医者に止められるだろ」
「大丈夫よ、あなたと静かに会話できてる時点で」
たしかに
とりあえずロビーに戻ってきたら、焦凍もいた
冬美ちゃんに呼ばれたかな?
ほぼ氷溶け切ってるな、あとは蒸発させるだけか
「つーわけでお父さん、お母さんが呼んでるぜ」
「行ってこい親父、あとは俺と燈矢兄で終わらせる」
「なっ……行っても構わないのだろうか」
「…行ってあげてください、はい、うん(思考放棄中の医師)」
2時間後、戻ってきたお父さんの顔は白かったし、ちょっと体に霜が降りてた
なにされたんだよお父さん…