FINAL FANTASY VIII 父さんは、息子の青春を知らない 作:Kurumimogomogo
バハムートが消えた後、青白い光を放っていた装置は沈黙した。
代わりに、施設の奥で重い機械音が響き、床の一部がゆっくりと開いていく。
「おっ、何か出てきた!」
セルフィが駆け寄った。
現れたのは、地下へ続く階段だった。
壁には古い配管が張り巡らされ、階段の先から冷たい空気が流れ込んでくる。
「まだ下があるのかよ」
ゼルが覗き込む。
「ここからが本番だ」
スコールが答えた。
「本番?」
「ああ。俺たちが探しているのは、この先にいるはずだ」
サイファーがハイペリオンを肩に担ぐ。
「アルテマウェポンか」
「そうだ」
「さっきのバハムートより強いのか?」
スコールは少し考えた。
「……分からない」
「おいおい」
ゼルが顔をしかめる。
「未来で戦ってねえのかよ?」
「戦っていない。存在は知っていたが、ここへ来る機会がなかった」
「じゃあ、どんな奴かも分からねえってこと?」
「ある程度は知っている。だが、実際の強さまでは分からない」
「何だよ、それ」
ゼルが肩を落とした。
「未来の知識って、案外当てにならねえな」
「文句があるなら帰ってもいいぞ」
「帰るわけねえだろ!」
サイファーが鼻で笑った。
「だったらさっさと行くぞ」
「おまえが仕切るな!」
「二人とも」
キスティスが呆れたように言った。
「階段を下りる前に、装備を確認しましょう」
六人はそれぞれ武器と魔法を確認した。
エスタで改造した武器は、バハムートとの戦いでも十分な威力を発揮していた。
ラグナロクを使って各地を巡り、集めた魔法もまだ残っている。
新たに得たバハムートの力も加わった。
「よし、問題ないな」
スコールが言った。
「じゃあ出発!」
セルフィが元気よく階段へ向かう。
「おい、先頭は俺だ」
「えー、いいじゃん!」
「何がいるか分からない」
「分かってるって!」
スコールは小さく息を吐き、セルフィの前へ出た。
六人は地下へ足を踏み入れた。
階段を下りた先には、巨大な縦穴が広がっていた。
何層にも重なる金属製の足場。
壁面には太い配管が張り巡らされ、遥か下方まで続いている。
底は見えない。
「……すっごい」
セルフィが目を丸くした。
「どこまで続いてるんだろう」
「海底までじゃない?」
アーヴァインが下を覗き込む。
「いや、それ以上かもしれないな」
スコールが答えた。
「これだけの施設を作るなんて、相当な技術力ね」
キスティスが感心したように言った。
「エスタの技術が使われているのかしら」
「可能性はある」
スコールは周囲を見渡した。
古い研究施設。
かつて何が研究されていたのかは分からない。
だが、これだけの規模の施設が放棄されていること自体、普通ではなかった。
「おい、こっちに何かあるぞ」
サイファーが壁際を指差した。
そこには古い操作端末が設置されていた。
キスティスが画面を覗き込む。
「まだ動いているみたい」
指先で操作すると、画面に文字が浮かび上がった。
『予備蒸気圧 20』
「予備蒸気圧?」
ゼルが首を傾げる。
「何だそりゃ」
「この施設の動力じゃないかしら」
キスティスが説明した。
「隔壁や昇降装置を動かすために、蒸気圧を使っているみたいね」
「へえ。じゃあ、これを動かせば下まで行けるんだ」
セルフィが画面を覗き込む。
「そう簡単でもないみたい」
キスティスが別の表示を開いた。
施設の断面図が現れる。
縦穴に沿って幾つもの階層が並び、それぞれに隔壁と操作端末が設置されていた。
「予備蒸気圧は限られているわ。隔壁を開けるたびに消費する仕組みね」
「使い切ったら?」
アーヴァインが尋ねる。
「先へ進めなくなる可能性がある」
「……面倒くせえ」
サイファーが顔をしかめた。
「何でそんな仕組みにしたんだ?」
「施設の安全管理のためでしょうね」
キスティスが答える。
「動力を一度に使いすぎないようにしているのかもしれないわ」
「研究者も大変だったんだな」
ゼルが呟いた。
「少なくとも、おまえよりは頭を使ってただろうな」
「何だと!?」
「事実だろ」
「おまえなあ!」
「静かにして」
キスティスが二人を制した。
スコールは断面図を見つめていた。
最下層まで、かなりの距離がある。
予備蒸気圧をどう配分するか。
慎重に判断する必要があった。
「キスティス、下の階層にも端末はあるんだな?」
「ええ。それぞれ独立した操作盤があるみたい」
「なら、順番に確認しよう」
「そうね」
キスティスが頷いた。
「最初の隔壁は四単位で開けられるわ」
「残り十六か」
ゼルが指を折る。
「計算できるじゃねえか」
サイファーが笑った。
「だからできるって!」
スコールは端末へ手を伸ばした。
「開けるぞ」
操作すると、施設の奥から低い音が響いた。
配管が震え、白い蒸気が噴き出す。
巨大な隔壁がゆっくりと開いた。
『予備蒸気圧 16』
「おおっ!」
セルフィが声を上げた。
「動いた!」
「当たり前だろ」
ゼルが言う。
「でも、こういうのってワクワクしない?」
「まあ、ちょっとな」
スコールは開いた隔壁の向こうを見た。
暗い階段が続いている。
「行くぞ」
六人はさらに地下へ進んだ。
最初の階層は、巨大な機械室だった。
天井には太い配管が走り、床には使われなくなった工具や機材が散乱している。
壁の一部は崩れ、そこから地下水が染み出していた。
「何年くらい放置されてるんだろうね」
アーヴァインが周囲を見回す。
「少なくとも最近じゃないわね」
キスティスが答えた。
「こんな場所にもモンスターっているのかな?」
セルフィが尋ねる。
「いるだろうな」
スコールが答えた。
「むしろ、ここから先は警戒した方がいい」
「どうして?」
「……何となくだ」
「何となく!?」
ゼルが声を上げた。
その時だった。
通路の奥から、重い足音が聞こえた。
スコールが立ち止まる。
「……待て」
「どうした?」
サイファーが尋ねる。
暗闇の奥から、巨大な影が姿を現した。
獣のような顔。
筋骨隆々とした巨体。
頭部から伸びる鋭い角。
その姿を見た瞬間、スコールの表情が変わった。
「……ベヒーモス」
「知ってるのか?」
ゼルが尋ねた。
「ああ。かなり強いモンスターだ」
「どのくらい?」
セルフィが首を傾げる。
「月の涙の後、地上で見かけるようになったモンスターの一種だ」
「月の涙?」
キスティスが聞き返した。
「未来で起こる災害だ。月にいる大量のモンスターが、地上へ降り注ぐ」
「……何だそりゃ」
ゼルが目を丸くした。
「そんなことが起こるの?」
セルフィも驚いている。
「ああ。エスタのルナティックパンドラが関わっている」
「ルナティックパンドラ?」
今度はアーヴァインが聞き返した。
「エスタの巨大な施設だ。月の涙を引き起こす装置が搭載されている」
スコールはベヒーモスから目を離さずに答えた。
「未来では、その影響で地上のモンスターが一気に増える。今まで見かけなかった強力な奴も現れるようになる」
「それがこいつ?」
「ああ」
キスティスが眉をひそめた。
「でも、月の涙はまだ起きていないんでしょう?」
「そうだ」
「だったら、どうしてここにいるの?」
「分からない」
スコールは周囲を見回した。
「元々、地上のどこかに生息していたのかもしれない。月の涙の後に数が増えただけという可能性もある」
「なるほどねえ」
アーヴァインが銃を構える。
「つまり、ここには未来で出会うような強敵が、既にいるってことか」
「そういうことだ」
「……勘弁してくれよ」
ゼルが顔をしかめた。
サイファーは口元を吊り上げる。
「面白えじゃねえか」
「おまえは本当にそればっかりだな!」
「強い奴と戦えるんだぞ。悪くねえだろ」
「限度ってもんがあるだろ!」
スコールがガンブレードを抜いた。
「気を抜くな。こいつは力が強いだけじゃない。魔法も使う」
「了解」
キスティスが鞭を構える。
「全員、補助魔法を切らさないようにしましょう」
ベヒーモスが低く唸った。
巨大な爪が床を引っ掻き、火花を散らす。
「来るぞ!」
スコールの声と同時に、巨体が突進してきた。
六人が左右へ散開する。
ベヒーモスの爪が床を抉った。
「速っ!」
ゼルが驚く。
見た目に反して動きが速い。
さらに、魔力も強い。
ベヒーモスの周囲に光が集まった。
「魔法が来る!」
スコールが叫ぶ。
直後、強烈な雷撃が床を走った。
「うわっ!」
セルフィが飛び退く。
足元で火花が散った。
「危なかったあ!」
「シェルを!」
「了解!」
セルフィが防御魔法を展開する。
その間にサイファーとゼルが左右から攻撃を仕掛けた。
「おらっ!」
ゼルの拳が脇腹へ命中する。
サイファーの斬撃が肩を裂いた。
だが、ベヒーモスは怯まない。
巨大な腕を振るう。
「ぐっ!」
サイファーが後退した。
「硬えな」
「だったら!」
アーヴァインが銃を構える。
連続した銃声。
弾丸がベヒーモスの胸元へ集中する。
巨体が僅かに揺れた。
「効いてる!」
セルフィが叫ぶ。
「続けろ!」
スコールが踏み込んだ。
ガンブレードを振り抜く。
引き金を引く。
爆発。
ベヒーモスが吠えた。
しかし、そのままスコールへ腕を振り下ろす。
スコールは横へ跳んだ。
爪が床を砕く。
(攻撃を受けながら反撃してくる……)
単純な力押しでは危険だ。
「キスティス!」
「分かってる!」
キスティスが鞭を振るう。
ベヒーモスの腕に絡みつき、一瞬だけ動きを止めた。
「今よ!」
セルフィがフレアを放つ。
爆炎が巨体を包んだ。
そこへゼルとサイファーが飛び込む。
拳と刃が続けざまに叩き込まれた。
ベヒーモスが膝をつく。
「スコール!」
ゼルが叫ぶ。
「ああ!」
スコールが最後の一撃を振り抜いた。
ベヒーモスが大きく仰け反り、そのまま倒れた。
「……ふう」
ゼルが息を吐く。
「いきなり強かったな」
「でも、何とかなったね」
セルフィが笑った。
「これくらいなら、まだ大丈夫だ」
スコールが言った。
「余裕ぶってんなあ」
サイファーが笑う。
「事実だ」
スコールはガンブレードを収めた。
エスタで改造した武器。
各地で集めた魔法。
そしてG.F.によるジャンクション。
それらが確実に役立っている。
「次へ行くぞ」
六人はさらに地下へ進んだ。
次の階層へ続く隔壁の前には、再び端末が設置されていた。
キスティスが画面を確認する。
「ここは二単位で開けられるわ」
「残り十四か」
ゼルが呟いた。
「まだ余裕あるな」
「先のことも考えないとね」
キスティスが操作する。
隔壁が開いた。
六人は次の区画へ進む。
そこは巨大な貯水槽のような場所だった。
床の一部が水に浸かり、壁には古い研究設備が並んでいる。
「何か、嫌な感じがするね」
セルフィが呟いた。
スコールも同じことを感じていた。
魔力の気配。
しかも、かなり強い。
奥の暗闇から、巨大な翼が現れた。
赤黒い身体。
長い首。
鋭い爪。
「……エルノーイル」
スコールが言った。
「また知ってる奴か?」
サイファーが尋ねた。
「ああ。こいつも月の涙の後に地上で見かけるようになった」
「またかよ!」
ゼルが叫ぶ。
「ベヒーモスより厄介なの?」
キスティスが尋ねた。
「単純には比べられない。だが、かなり強い」
スコールはガンブレードを構えた。
「特に魔法には気をつけろ。まともに受ければ危険だ」
「了解!」
セルフィが杖を構える。
エルノーイルが翼を広げた。
その巨体から、強烈な魔力が放たれる。
「……本当に、ここは何なんだろうね」
アーヴァインが呟いた。
「月の涙が起きる前から、こんな連中がいるなんて」
スコールは答えなかった。
ただ、施設のさらに深い場所へ目を向けた。
(アルテマウェポンだけじゃないのか……)
海洋探査人工島。
ここには、自分が知っている以上の何かが隠されているのかもしれない。
「考えるのは後だ!」
スコールが叫ぶ。
「まずはこいつを倒すぞ!」
エルノーイルが口を開いた。
強烈な魔力が集まる。
「シェル!」
キスティスが防御魔法を展開した。
直後、爆発が六人を包んだ。
熱風が吹き荒れる。
「うわっ!」
ゼルが後退する。
「こいつも魔法使うのかよ!」
「しかもかなり強い」
スコールが答える。
エルノーイルは空中へ浮かび上がった。
そのまま翼を広げ、上空から攻撃を仕掛けてくる。
「飛んでる相手は面倒だな」
サイファーが舌打ちした。
「なら僕の出番かな」
アーヴァインが銃を構える。
連続した銃声。
弾丸が翼へ命中する。
エルノーイルが大きく揺れた。
「セルフィ!」
「任せて!」
セルフィがメテオを唱える。
無数の魔力の塊がエルノーイルへ降り注いだ。
巨体が高度を落とす。
「今だ!」
スコールが叫ぶ。
ゼルとサイファーが同時に踏み込んだ。
「おらあっ!」
「邪魔だ、どけ!」
「そっちこそ!」
拳と刃がエルノーイルを捉える。
スコールも続いた。
ガンブレードの一撃が胸元を裂く。
エルノーイルが悲鳴を上げた。
しかし、まだ倒れない。
巨大な翼を振るい、三人を吹き飛ばす。
「ぐっ!」
スコールが床を滑った。
「大丈夫!?」
セルフィが叫ぶ。
「ああ!」
スコールはすぐに立ち上がった。
エルノーイルが再び魔力を集める。
(次の攻撃を許すな)
「キスティス!」
「ええ!」
キスティスが鞭を振るう。
翼に絡みついた鞭が、一瞬だけ動きを止めた。
そこへアーヴァインが銃弾を撃ち込む。
エルノーイルの身体が傾く。
「スコール!」
「ああ!」
スコールが踏み込んだ。
ガンブレードを振り抜く。
爆発。
エルノーイルが崩れ落ちた。
「……やった」
セルフィが息を吐いた。
「今のはちょっと危なかったね」
アーヴァインが銃を収める。
「でも、連携は悪くなかったわ」
キスティスが言った。
スコールも頷く。
「この調子で行こう」
六人はさらに地下へ進んだ。
第三層へ降りた六人は、壁際の端末を調べていた。
「ここは二単位ね」
キスティスが操作すると、隔壁の向こうから蒸気の噴き出す音が響いた。
『予備蒸気圧 12』
「あと十二か」
ゼルが表示を覗き込む。
「まだ余裕はあるな」
「でも、この先の消費量が分からないわ」
キスティスは施設の見取り図を確認した。
「……あら?」
「どうした?」
スコールが尋ねる。
「この階層に、予備蒸気圧室があるみたい」
「予備蒸気圧室?」
セルフィが首を傾げた。
「使っていない蒸気圧を蓄えている場所ね。まだ機能していれば、補充できるかもしれないわ」
「だったら行ってみようぜ」
ゼルが言った。
「そうだな」
スコールは頷いた。
六人は通路を進み、奥にある小部屋へ入った。
室内には巨大な圧力容器が並び、その中央に操作端末が設置されていた。
「おお、いかにもって感じ!」
セルフィが目を輝かせる。
「勝手に触るなよ」
スコールが釘を刺した。
「分かってるって!」
キスティスが端末を操作する。
画面に予備蒸気圧の補充が可能であることが表示された。
「使えるわ。七単位補充できるみたい」
「七単位も?」
アーヴァインが感心したように言った。
「随分助かるねえ」
「補充するわよ」
キスティスが操作を確定した。
室内の配管が震え、圧力容器から蒸気が送り出される。
やがて端末の表示が切り替わった。
『予備蒸気圧 19』
「よっしゃ!」
ゼルが拳を握る。
「これなら下まで行けそうだな!」
「そうね。残りの隔壁も開けられるはずよ」
キスティスが頷いた。
スコールは見取り図を確認した。
「よし、先へ進もう」
六人は予備蒸気圧室を後にした。
次の階層へ続く隔壁の前には、再び端末が設置されていた。
キスティスが画面を確認する。
「ここは一単位で開けられるわ」
「残り十八か」
ゼルが呟いた。
「まだ余裕あるな」
「先のことも考えないとね」
キスティスが操作する。
隔壁が開いた。
六人は次の区画へ進む。
その先には、巨大な扉があった。
扉の前には、金属製の人影が立っていた。
「……何だ、あれ」
ゼルが呟く。
全身を鎧で覆った巨人。
手には巨大な剣を持っている。
「……鉄巨人」
スコールが呟いた。
「また知ってるのかよ」
ゼルが言った。
「ああ。こいつも月の涙の後に地上で遭遇した」
「……ここ、未来のモンスター博覧会か何かか?」
アーヴァインが苦笑する。
「笑えないわね」
キスティスが答えた。
「さっきから強敵ばかり」
鉄巨人がゆっくりと顔を上げた。
巨大な剣を振り上げる。
「散れ!」
スコールが叫ぶ。
剣が床を叩いた。
轟音。
床が大きく揺れる。
「うわっ!」
ゼルが飛び退く。
「何だこの威力!」
「まともに受けるな!」
スコールが叫ぶ。
鉄巨人はゆっくりと剣を持ち上げた。
動きは遅い。
だが、一撃が重い。
サイファーが横から斬り込む。
金属音が響いた。
「硬え!」
「そりゃ鉄だしな!」
ゼルが突っ込む。
「分かってる!」
スコールは鉄巨人の動きを見た。
攻撃の予備動作が大きい。
だが、正面から攻撃を受け止めるのは危険だ。
「魔法で崩す!」
スコールが叫んだ。
「セルフィ!」
「了解!」
セルフィがフレアを放つ。
爆炎が鉄巨人を包んだ。
しかし、巨体は動じない。
「効いてない!?」
「いや、効いてる」
スコールが答える。
装甲の一部が赤く熱を帯びていた。
「続けろ!」
キスティスが魔法を重ねる。
さらにアーヴァインの銃弾が装甲の継ぎ目を撃ち抜く。
鉄巨人が僅かに後退した。
「今だ!」
ゼルが脚部へ拳を叩き込む。
金属音が響く。
「痛ってえ!」
「だから素手で殴るなって」
サイファーが笑う。
「グローブしてるって言ってんだろ!」
「それで痛いなら同じだ」
「うるせえ!」
スコールは二人を横目で見ながら、鉄巨人の背後へ回り込んだ。
装甲の継ぎ目。
そこを狙う。
ガンブレードを振り抜く。
引き金を引く。
爆発。
鉄巨人の身体が大きく揺れた。
「効いた!」
セルフィが叫ぶ。
「続けろ!」
スコールが叫んだ。
六人が攻撃を集中させる。
魔法。
銃撃。
斬撃。
打撃。
鉄巨人の装甲に亀裂が走った。
最後にサイファーがハイペリオンを振り下ろす。
「これで終わりだ!」
金属音とともに、鉄巨人が崩れ落ちた。
「……ふう」
サイファーが息を吐く。
「なかなか骨があったな」
「鉄だけどな」
ゼルが言った。
「……おまえ、今の面白いと思ったのか?」
「何が?」
「いや、もういい」
スコールは倒れた鉄巨人を見下ろした。
強敵だった。
だが、まだ余力はある。
むしろ、六人の連携は戦うたびに良くなっている。
「次へ行こう」
スコールが言った。
六人は奥へ進んだ。
次の階層へ続く隔壁の前には、再び端末が設置されていた。
キスティスが画面を確認する。
「ここは一単位で開けられるわ」
「残り十七か」
ゼルが呟いた。
「まだ余裕あるな」
「先のことも考えないとね」
キスティスが操作する。
隔壁が開いた。
六人は次の区画へ進む。
通路は次第に狭くなり、壁には奇妙な紋様が浮かび始めた。
「何これ?」
セルフィが壁を見つめる。
「研究施設にしては変な装飾だねえ」
アーヴァインが呟いた。
その時。
天井から、何かが落ちてきた。
「うわっ!」
ゼルが飛び退く。
床に着地したのは、異形のモンスターだった。
獅子のような身体。
蝙蝠の翼。
人間にも似た顔。
「……ガルキマセラ」
スコールが呟く。
「何だこいつ!?」
ゼルが顔をしかめる。
「気持ち悪いな」
サイファーが言った。
「こいつも未来で?」
キスティスが尋ねた。
「ああ。月の涙の後、何度か遭遇した」
スコールが答える。
「……やっぱりか」
アーヴァインが苦笑した。
「ここまで来ると偶然じゃないね」
「そうね」
キスティスが頷く。
「この施設には、何か理由があるのかもしれないわ」
スコールも同じことを考えていた。
月の涙が起きる前から、未来で遭遇した強力なモンスターがこれほど集まっている。
偶然にしては出来すぎている。
(何かあるのか……?)
だが、考えている暇はなかった。
ガルキマセラが甲高い声を上げた。
直後、周囲に魔力が広がる。
「魔法が来る!」
キスティスが叫ぶ。
六人が身構えた。
ガルキマセラの魔法が炸裂する。
衝撃が通路を走った。
「うわっ!」
セルフィが後退する。
「こいつ、小さいのに強い!」
「油断するな!」
スコールが叫ぶ。
ガルキマセラは素早く動き回り、次々と魔法を放ってくる。
狭い通路では回避が難しい。
「ちょこまか動きやがって!」
ゼルが追いかける。
しかし、攻撃が当たらない。
「落ち着け!」
スコールが叫ぶ。
「動きを止める!」
キスティスが鞭を振るう。
ガルキマセラの翼に絡みつき、動きを制限した。
「今よ!」
アーヴァインが銃を構える。
銃声。
ガルキマセラが悲鳴を上げる。
そこへセルフィが魔法を放った。
「フレア!」
爆炎がモンスターを包んだ。
ガルキマセラが床へ落ちる。
「よし!」
ゼルが飛び込む。
拳を叩き込んだ。
サイファーも続く。
最後にスコールがガンブレードを振り抜いた。
ガルキマセラが崩れ落ちる。
「……やっと倒れた」
セルフィが息を吐く。
「小さいくせに厄介だったな」
ゼルが言った。
「大きさで強さは決まらないってことね」
キスティスが答える。
「でも、さっきの鉄巨人より面倒だったかも」
アーヴァインが笑った。
スコールも頷いた。
狭い通路。
素早い動き。
強力な魔法。
条件が悪ければ、ああいう相手の方が厄介になる。
「先へ進もう」
六人は再び歩き始めた。
ついに最下層へ続く隔壁の前へ辿り着いた。
巨大な扉。
その横には、最後の端末が設置されている。
キスティスが画面を調べた。
「……ここね」
「最下層か?」
ゼルが尋ねる。
「ええ」
キスティスが頷く。
「この先が、大海のよどみの最深部」
スコールは扉を見つめた。
ここまで長かった。
バハムート。
ルブルムドラゴン。
ベヒーモス。
エルノーイル。
鉄巨人。
ガルキマセラ。
強力なモンスターたちを倒し、ようやく辿り着いた。
「蒸気圧は?」
スコールが尋ねる。
「残り十七」
「開けられるか?」
「必要なのは四単位」
「なら問題ないな」
キスティスが端末を操作する。
低い音が響いた。
配管が震え、蒸気が噴き出す。
巨大な隔壁がゆっくりと開いていく。
『予備蒸気圧 13』
「開いた!」
セルフィが声を上げる。
扉の向こうには、暗い通路が続いていた。
冷たい空気が流れ込んでくる。
その奥から、何か巨大な存在の気配が伝わってきた。
「……いるな」
サイファーが呟く。
「ああ」
スコールが答える。
「アルテマウェポンだ」
六人が武器を構え直す。
スコールは一歩踏み出した。
未来へ繋がる手掛かり。
エデン。
それが本当にここにいるのか。
もうすぐ分かる。
「行くぞ」
六人は最下層へ足を踏み入れた。
大海のよどみ。
その奥深くで、巨大な影が静かに待ち受けていた。