FINAL FANTASY VIII 父さんは、息子の青春を知らない   作:Kurumimogomogo

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第二十三話 究極の兵器

 最下層へ続く隔壁を抜けると、六人は巨大な地下空間に出た。

 天井は暗闇に沈み、どれほどの高さがあるのか分からない。岩盤を削って造られた壁には太い配管が走り、所々から白い蒸気が漏れている。

 足元には古い研究設備の残骸が散乱していた。

「……何もいねえじゃねえか」

 ゼルが周囲を見回す。

「アルテマウェポンはどこだよ?」

「分からない」

 スコールが答えた。

「この場所にいるという確証もない」

「おいおい、ここまで来てそれかよ」

「だから、俺はここへ来たことがないと言っただろ」

「そうだけどよ」

「まあまあ」

 アーヴァインが二人の間に入った。

「ここまで来たんだ。隅々まで調べてからでも遅くないんじゃない?」

「そうね」

 キスティスが頷いた。

「それに、あれが気になるわ」

 広間の中央に、巨大な機械が設置されていた。

 何本もの支柱に支えられた円筒状の装置。その周囲を金属製の輪が幾重にも取り囲み、床から伸びた太い配管が接続されている。

 天井からは無数のケーブルが垂れ下がっていた。

「うわあ、すごい!」

 セルフィが駆け寄る。

「何これ? 何の機械?」

「まだ分からないわ」

 キスティスが操作盤を調べた。

「でも、かなり大規模な設備ね」

「何かを作るための装置か?」

 サイファーが尋ねる。

「それとも、何かを閉じ込めるための装置かしら」

 スコールは中央の円筒を見上げた。

 機械の奥から、微かな振動が伝わってくる。

 施設そのものが呼吸しているようだった。

「……動いているのか?」

「待機状態みたいね」

 キスティスが画面を操作する。

 古い文字が浮かび上がった。

「動力は生きているわ。起動することもできそう」

「何が起こるか分からないんだろ?」

 ゼルが顔をしかめた。

「ええ」

「じゃあ、触らねえ方がよくないか?」

「珍しくまともなこと言うじゃねえか」

 サイファーが笑った。

「珍しくって何だよ!」

 スコールは操作盤へ近づいた。

 画面には、中央装置の断面図らしきものが表示されている。

 その内部に、大きな空間があった。

(何かを収容している……?)

「起動してみよう」

 スコールが言った。

「いいの?」

 キスティスが確認する。

「ああ。ただし、全員離れておけ。何が出てきても対応できるように」

「了解!」

 セルフィが杖を構える。

 アーヴァインも銃を抜いた。

「さて、鬼が出るか蛇が出るか」

「どっちも出そうだけどな」

 ゼルが呟く。

 サイファーはハイペリオンを肩に担いだ。

「何でもいい。さっさと出てこい」

「それじゃ、起動するわよ」

 キスティスが操作盤に触れた。

 直後、施設全体に重い機械音が響いた。

 巨大な金属の輪がゆっくりと回転を始める。

 床下から蒸気が噴き上がり、中央の円筒装置に青白い光が集まっていく。

「おおっ!」

 セルフィが目を輝かせた。

「動いた!」

 機械の回転が速くなる。

 円筒の内部で、何かが蠢いた。

「……おい」

 ゼルが呟く。

「今、何か動かなかったか?」

 スコールも見ていた。

 青白い光の奥に、巨大な影がある。

 その影が、ゆっくりと身体を起こした。

 次の瞬間。

 円筒の内部から、凄まじい衝撃が響いた。

 轟音。

 機械全体が大きく揺れる。

「何!?」

 セルフィが身構えた。

 再び衝撃が走る。

 金属の輪が軋み、中央装置に亀裂が入った。

「まずいわ!」

 キスティスが叫ぶ。

「内部の圧力が急激に上がってる!」

「離れろ!」

 スコールが叫んだ。

 六人が一斉に後退する。

 直後、中央の装置が内側から弾け飛んだ。

 爆音とともに蒸気が噴き出し、金属片が床を転がる。

 白い煙が広間を覆った。

「……っつう」

 ゼルが腕で顔を庇う。

「何が起きたんだよ……」

 煙の奥から、重い足音が聞こえた。

 一歩。

 また一歩。

 床が揺れる。

 巨大な影が、ゆっくりと姿を現した。

 最初に見えたのは、四本の太い脚だった。

 獣のような下半身。

 鋭い爪を備えた四肢が床を踏みしめ、その前方には巨大な獣の頭部が突き出している。

 そして、その頭部の上に、人間のような上半身が乗っていた。

 異様に発達した両腕。

 青白い装甲に覆われた身体。

 片手には、身の丈を遥かに超える巨大な剣を携えている。

 人間と獣が無理やり組み合わされたような、異形の巨体だった。

「……何だ、あれ」

 アーヴァインが呟いた。

「人間……じゃないよね?」

 セルフィが息を呑む。

「当たり前だろ」

 ゼルが答える。

「どう見たってモンスターだ」

 スコールはガンブレードを抜いた。

「……アルテマウェポン」

 その名前を聞き、全員が身構えた。

「こいつが?」

 キスティスが尋ねる。

「ああ。間違いない」

 スコールは巨大な剣を見つめた。

 あれを振るうだけでも、相当な破壊力があるはずだ。

 しかも、四本の脚で巨体を支えている。

 見た目以上に素早く動く可能性もある。

(……厄介だな)

「なあ、スコール」

 ゼルが尋ねた。

「こいつ、どのくらい強いんだ?」

「分からない」

「またそれかよ!」

「戦ったことがないんだから仕方ないだろ」

「そりゃそうだけどよ!」

 サイファーが笑った。

「だったら、今から確かめりゃいい」

「簡単に言うな」

「簡単なことだろ。戦って、勝つ。それだけだ」

「今回は倒すことが目的じゃない」

 スコールが言った。

「エデンをドローする。それが最優先だ」

「分かってるって」

 サイファーがハイペリオンを構え直した。

「その間、俺たちが足止めしてやるよ」

「……頼む」

 キスティスが杖を持つセルフィへ目を向けた。

「補助魔法をかけましょう」

「了解!」

 六人の身体をプロテスとシェルの光が包む。

 さらにヘイストがかけられた。

 アルテマウェポンは動かなかった。

 獣の頭部が低く唸り、その上に乗った人型の上半身が巨大な剣をゆっくりと持ち上げる。

「……来るぞ」

 スコールが呟いた。

 次の瞬間。

 アルテマウェポンが四本の脚で床を蹴った。

「散れ!!」

 スコールの叫びと同時に、巨大な剣が振り下ろされた。

 轟音。

 床が砕け、岩片が四方へ飛び散る。

「うおおっ!?」

 ゼルが転がるように回避した。

 先ほどまで立っていた場所が、深く陥没している。

「何だよ、あの馬鹿力!」

「まともに受けるな!」

 スコールが叫ぶ。

 アルテマウェポンは剣を引き抜いた。

 そして、今度は横薙ぎに振るった。

 サイファーがハイペリオンを構える。

「ぐっ!」

 刃と刃がぶつかった。

 直後、サイファーの身体が宙へ浮いた。

「サイファー!」

 キスティスが叫ぶ。

 サイファーは床を滑り、十数歩先でようやく止まった。

「……っつう」

 立ち上がろうとして、顔をしかめる。

「何だ、こいつ……!」

 プロテスで衝撃を軽減してなお、腕が痺れていた。

「正面から受けるな!」

 スコールが叫ぶ。

「分かってる!」

「分かってないだろ!」

 ゼルが突っ込んだ。

 アルテマウェポンが再び動く。

 今度はゼルへ向かって剣を振り下ろした。

「うわっ!」

 ゼルが横へ跳ぶ。

 剣が床にめり込み、周囲が大きく揺れた。

 その隙にスコールが踏み込む。

 ガンブレードを振り抜いた。

 引き金を引く。

 爆発。

 刃が青白い装甲を捉えた。

 しかし、浅い。

(硬い……!)

 アルテマウェポンが剣を振り上げる。

 スコールは即座に後退した。

 巨大な刃が目の前を通過する。

 風圧だけで身体が揺れた。

「スコール!」

 アーヴァインの声。

 続いて銃声が響く。

 弾丸がアルテマウェポンの肩へ命中した。

 巨体が僅かに揺れる。

「効いてる?」

 セルフィが尋ねる。

「少しはね!」

 アーヴァインが答えた。

「でも、あの装甲を抜くのは骨が折れそうだ!」

「だったら魔法よ!」

 キスティスがフレアを放った。

 爆炎がアルテマウェポンの胸部を包む。

 巨体が一歩後退した。

「よし!」

 ゼルが声を上げる。

 だが、アルテマウェポンはすぐに姿勢を戻した。

 その胸元に、青白い光が集まり始める。

「……魔法?」

 セルフィが呟いた。

 スコールは床の震えを感じた。

 嫌な予感がした。

「全員、足元に注意しろ!」

 直後、アルテマウェポンの周囲に魔力が広がった。

「クエイク!」

 キスティスが叫ぶ。

 床が激しく揺れた。

 岩盤が隆起し、巨大な亀裂が走る。

「うわあっ!」

 セルフィが足を取られた。

 ゼルが腕を掴み、引き寄せる。

「大丈夫か!?」

「う、うん! ありがと!」

 次の瞬間、二人の足元が大きく沈んだ。

「うおっ!?」

 ゼルがセルフィを抱えるようにして跳ぶ。

 背後で床が砕けた。

 スコールも片膝をついた。

 揺れが収まるまで、まともに動けない。

(広範囲の地属性魔法か……)

 ようやく揺れが止まった。

「全員無事か!?」

 スコールが叫ぶ。

「何とか!」

 ゼルが答える。

「こっちも大丈夫!」

 セルフィが杖を掲げた。

「ケアルガ!」

 回復の光が六人を包む。

 スコールはアルテマウェポンを見上げた。

 通常攻撃だけでも危険なのに、強力な魔法まで使う。

 しかも、あの巨体はまだ本気で動いているようには見えなかった。

(厄介だな……)

「スコール!」

 キスティスが呼んだ。

「ドローを試してみて! 私たちで注意を引くわ!」

「ああ!」

 スコールはガンブレードを構え直した。

「サイファー、ゼル!」

「おう!」

「分かってる!」

 三人が同時に走り出す。

 サイファーが右から斬り込み、ゼルが左脚へ回り込む。

 スコールは正面から踏み込んだ。

 アルテマウェポンが剣を振るう。

 スコールは身を低くして回避した。

 そして、その巨体へ意識を集中する。

(ジャンクションされている魔力を探る……)

 ドロー。

 相手の内側にある魔力を探り、引き出す技術。

 これまでも何度となく使ってきた。

 だが、今回は違った。

 アルテマウェポンの内部には、膨大な魔力が渦巻いていた。

 複数の魔法が入り混じり、その奥に、さらに大きな何かが存在している。

(……あった)

 スコールは目を見開いた。

 他の魔法とは明らかに異なる。

 巨大で、複雑で、底が見えない。

 まるで、無数の場所が一つに重なっているような感覚だった。

(これが……エデン?)

 その時、アルテマウェポンが剣を振り下ろした。

「スコール!!」

 サイファーの叫び。

 スコールは咄嗟に飛び退いた。

 剣が床を砕く。

 集中が途切れた。

「くっ……!」

「何やってんだ!」

 サイファーが怒鳴る。

「見つけた!」

 スコールが叫んだ。

「エデンだ!」

「本当!?」

 セルフィの声が弾んだ。

「ああ。間違いない!」

「だったら早く!」

 キスティスが叫ぶ。

「分かってる!」

 スコールは再び集中しようとした。

 しかし、アルテマウェポンが突然動きを止めた。

 巨体の周囲に、黒い魔力が集まり始める。

「……今度は何だ?」

 ゼルが呟く。

 スコールは空を見上げた。

 地下空間の天井が、暗く染まっていく。

「……メテオ!」

 キスティスが叫んだ。

 直後、無数の隕石が降り注いだ。

 天井から落ちてきたわけではない。

 魔法によって生み出された巨大な岩塊が、六人を目掛けて次々と落下してくる。

「うわああっ!」

 ゼルが叫ぶ。

 轟音。

 爆発。

 衝撃。

 六人は防御に徹するしかなかった。

 スコールはガンブレードを構え、降り注ぐ岩塊を避け続けた。

 しかし、全てを避けられるわけではない。

 肩を打たれ、床へ膝をつく。

「ぐっ……!」

「スコール!」

 キスティスが駆け寄ろうとする。

「来るな!」

 スコールが叫ぶ。

 直後、二人の間に隕石が落ちた。

 爆発。

 キスティスが後退する。

 ようやく攻撃が収まった時、六人は散り散りになっていた。

「……っつう」

 ゼルが立ち上がる。

「何だよ、今の……」

「メテオよ」

 キスティスが答えた。

「かなり強力な魔法ね」

「見りゃ分かるって!」

 セルフィがケアルガを唱える。

 六人の傷が癒えていく。

「スコール、どうする?」

 アーヴァインが尋ねた。

「エデンは見つけたんだろ?」

「ああ」

「なら、もう少し時間を作ればいいわけだ」

 サイファーがハイペリオンを構え直した。

「そういうことだ」

 スコールが頷く。

「ただし、あいつの攻撃を甘く見るな」

「分かってるって」

 サイファーが笑った。

 その時。

 アルテマウェポンの身体から、紫色の光が広がった。

「……また魔法か?」

 ゼルが身構える。

 光が六人を包む。

 身体が急に重くなった。

「うっ……!」

 セルフィが膝をついた。

 スコールも胸を押さえる。

 息苦しい。

 身体の内側から力を奪われるような感覚だった。

「……グラビジャ!」

 キスティスが叫んだ。

「重力魔法よ!」

「何だよ、それ……!」

 ゼルが歯を食いしばる。

 スコールはガンブレードを床へ突き立て、身体を支えた。

 グラビジャ。

 対象の生命力を大きく削る魔法。

 防御魔法だけでは防ぎきれない。

 だが、これ自体で命を奪われるわけではない。

 問題は、その後だった。

 アルテマウェポンが動いた。

 巨大な剣を振り上げる。

「……まずい!」

 スコールが叫ぶ。

「動け!!」

 六人が必死に散開する。

 剣が床を叩いた。

 衝撃が広がる。

「ぐあっ!」

 ゼルが吹き飛ばされた。

「ゼル!」

 セルフィが駆け寄る。

「大丈夫!?」

「……何とか」

 ゼルが顔をしかめる。

「けど、今のはやべえ……」

 スコールも同じことを感じていた。

 グラビジャで生命力を削り、その直後に圧倒的な腕力で攻撃する。

 単純だが、極めて危険な組み合わせだった。

「回復を優先しろ!」

 スコールが叫ぶ。

「了解!」

 キスティスとセルフィがケアルガを唱える。

 その間、サイファーとアーヴァインがアルテマウェポンの注意を引いた。

 銃声。

 斬撃。

 爆発。

 アルテマウェポンは僅かに後退した。

「……よし」

 スコールが立ち上がる。

 まだ戦える。

 六人とも、致命傷は負っていない。

 だが、長期戦になれば不利になる。

(早くエデンを……)

 スコールは再びアルテマウェポンへ向かった。

「キスティス!」

「ええ!」

 キスティスが鞭を振るう。

 アルテマウェポンの腕へ絡みつけ、動きを僅かに制限した。

「今よ!」

 セルフィがフレアを放つ。

 爆炎が胸部を包む。

 さらにアーヴァインが銃弾を撃ち込んだ。

 青白い装甲に亀裂が走る。

「効いてる!」

 ゼルが叫ぶ。

 サイファーが踏み込んだ。

「だったら、もう一発だ!」

 ハイペリオンが装甲を裂く。

 アルテマウェポンの身体が大きく揺れた。

 初めて、明確な損傷が見えた。

「よし!」

 ゼルが拳を握る。

 しかし。

 アルテマウェポンが、突然動きを止めた。

 スコールは違和感を覚えた。

 先ほどまでとは、魔力の流れが違う。

 胸部の亀裂から、青白い光が漏れ始めている。

「……待て」

 スコールが呟いた。

 アルテマウェポンがゆっくりと顔を上げた。

 その身体の中央に、光が集まっていく。

 細く、鋭い光。

 周囲の空気が震えた。

「……何だ?」

 サイファーが呟く。

 スコールの背筋に、冷たいものが走った。

「全員、離れろ!!」

 叫んだ瞬間。

 アルテマウェポンの胸部から、一本の光線が放たれた。

 青白い光が一直線に走る。

 スコールは横へ跳んだ。

 光線が頬のすぐ横を通過する。

 熱さは感じなかった。

 風圧もない。

 ただ、何かが通り過ぎた。

 それだけだった。

 光線は広間の奥へ伸びていった。

 そして。

 暗闇の中で、何かが倒れる音がした。

「……?」

 アーヴァインが振り返る。

 そこには、巨大なモンスターがいた。

 先ほどまで、奥の岩陰に潜んでいたらしい。

 ベヒーモスだった。

 光線は、その胸部を貫いていた。

 巨体が一瞬だけ硬直する。

 そして、糸が切れたように崩れ落ちた。

 断末魔すら上げなかった。

「……おい」

 ゼルが呟く。

「今の……」

 誰も答えなかった。

 ベヒーモスは動かない。

 あれほど強力だったモンスターが、たった一撃で命を絶たれた。

 しかも、光線が命中した部分には、大きな傷すら見当たらなかった。

「……死んだの?」

 セルフィが小さく尋ねた。

 キスティスが息を呑む。

「……ええ」

 アーヴァインが銃を下ろしかけた。

「冗談だろ……」

 スコールはアルテマウェポンを見つめた。

 光線が通過した瞬間、身体の奥で何かが凍りつくような感覚があった。

 あれは、普通の魔法ではない。

 防御できるかどうかも分からない。

 だが、確かなことが一つあった。

(……当たったら終わりだ)

「全員、聞け」

 スコールが低い声で言った。

「今の光線は、絶対に受けるな」

「……言われなくても分かるって」

 ゼルが答える。

 だが、その声にいつもの勢いはなかった。

「プロテスもシェルも、頼りにするな。あれは避けるしかない」

 キスティスが頷く。

「そうね。今のベヒーモスを見る限り、防げるとは思えないわ」

「……厄介なもん持ってやがる」

 サイファーが呟いた。

 アルテマウェポンの胸部から、再び青白い光が漏れた。

「……また来る!?」

 セルフィが叫ぶ。

「散開しろ!」

 スコールが叫んだ。

 六人が一斉に動く。

 光線が放たれた。

 今度はアーヴァインのすぐ横を通過する。

「うわっ!」

 アーヴァインが床へ転がった。

 光線は背後の岩壁へ吸い込まれた。

 岩壁には、細い穴が開いていた。

「……危なかった」

 アーヴァインが息を吐く。

「あと少し遅かったら……」

「考えるな!」

 スコールが叫ぶ。

「動き続けろ!」

 アルテマウェポンが剣を振り上げた。

 巨大な刃。

 続いて魔力。

 クエイク。

 メテオ。

 グラビジャ。

 そして、あの光線。

 攻撃の種類が増えるほど、回避できる場所は少なくなっていく。

(このままじゃ……)

 スコールは歯を食いしばった。

 エデンをドローするには、集中する時間が必要だ。

 だが、今のアルテマウェポンを前に、立ち止まることはできない。

「スコール!」

 キスティスが叫ぶ。

「エデンはまだ引き出せないの!?」

「もう少しだ!」

「だったら、私たちで時間を作る!」

 サイファーがハイペリオンを構えた。

「おい、スコール!」

「何だ!」

「さっさと済ませろ!」

 ゼルも拳を握る。

「俺たちが何とかする!」

「無茶するな!」

「今さらだろ!」

 セルフィが杖を掲げた。

「私もやるよ!」

 アーヴァインが銃を構える。

「一発くらい、いいところ見せないとね」

 キスティスが鞭を振るう。

「スコール、お願い」

 五人が前へ出た。

 スコールは一瞬だけ迷った。

 だが、すぐに頷いた。

「……分かった」

 アルテマウェポンが剣を振り下ろす。

 サイファーが横へ飛び込み、注意を引いた。

「こっちだ!」

 ゼルが反対側から攻撃する。

「おらあっ!」

 アーヴァインの銃弾が胸部へ集中する。

 セルフィとキスティスが魔法を重ねた。

 アルテマウェポンが五人へ向き直る。

 その隙に、スコールが意識を集中した。

(……エデン)

 再び、アルテマウェポンの内側へ意識を伸ばす。

 膨大な魔力。

 その奥にある、異質な存在。

 遠く離れた場所が重なり合うような感覚。

(見つけた……)

 スコールは、その魔力へ手を伸ばした。

 しかし。

 アルテマウェポンの胸部に、再び青白い光が集まり始めた。

「スコール!!」

 キスティスの叫び。

 スコールは目を開いた。

 光が、自分へ向いている。

(……まずい)

 身体を動かそうとした。

 だが、ドローに集中していたため、反応が遅れた。

 アルテマウェポンの胸部から、光線が放たれる。

「スコール!!」

 誰かが叫んだ。

 スコールは咄嗟に身を捻った。

 青白い光が、肩のすぐ横を通過する。

 次の瞬間、背後の岩壁に細い穴が開いた。

「……っ!」

 スコールは床へ転がった。

 心臓が激しく脈打っている。

(……危なかった)

 あと僅かに遅れていれば、あのベヒーモスと同じようになっていた。

「スコール!」

 セルフィが駆け寄る。

「大丈夫!?」

「ああ……」

 スコールは立ち上がった。

「大丈夫だ」

「本当に!?」

「ああ」

 サイファーが舌打ちした。

「無茶しやがって」

「おまえに言われたくない」

「言ってろ」

 スコールはアルテマウェポンを見上げた。

 まだ倒れていない。

 むしろ、損傷した装甲の隙間から、強烈な魔力が漏れ続けている。

 だが、確かな手応えはあった。

 エデンは、そこにいる。

 あと少し。

 もう少しで、引き出せる。

「……次で決める」

 スコールが言った。

 キスティスが頷く。

「分かったわ」

 ゼルが拳を打ち合わせる。

「よし!」

 セルフィが杖を構える。

「今度こそ!」

 アーヴァインが銃を構え直した。

「頼んだよ、スコール」

 サイファーがハイペリオンを肩に担ぐ。

「失敗すんなよ」

 スコールはガンブレードを握り直した。

「ああ」

 アルテマウェポンが再び動き始めた。

 巨大な剣が振り上げられる。

 青白い光が胸部に集まる。

 その圧倒的な力を前に、六人は再び構えた。

 エデンを手に入れるために。

 そして、二つの時代を繋ぐために。

 戦いは、まだ終わっていなかった。

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