FINAL FANTASY VIII 父さんは、息子の青春を知らない 作:Kurumimogomogo
大地が砕けた。
オメガウェポンの拳が地面へ叩き込まれ、衝撃が周囲へ広がる。
スコールは横へ跳び、飛び散る岩片をガンブレードで弾いた。
その背後を、ゼルが駆け抜ける。
「おらあっ!」
渾身の拳がオメガウェポンの前脚を捉えた。
鈍い音が響く。
だが、巨大な身体はほとんど動かなかった。
「……硬え!」
「ゼル、離れろ!」
スコールが叫ぶ。
オメガウェポンの腕が横薙ぎに振るわれた。
ゼルは咄嗟に身を伏せる。
頭上を巨大な拳が通り過ぎ、その風圧だけで身体が浮き上がった。
「うおっ!?」
地面を転がりながら距離を取る。
その直後、銃声が響いた。
アーヴァインだった。
「こっちも忘れないでよ!」
長銃の銃口が火を噴く。
連射弾。
間断なく放たれる銃弾が、オメガウェポンの上半身へ集中した。
火花が散る。
装甲の表面に小さな傷が刻まれていく。
「……なるほどねえ」
アーヴァインは引き金を引き続けながら、目を細めた。
「まったく効かないわけじゃない」
弾倉を交換する。
「だったら、これはどうかな!」
徹甲弾。
通常の銃弾よりも重く、装甲を貫くことに特化した弾丸が放たれた。
轟音。
弾丸がオメガウェポンの胸部へ命中する。
先ほどまでとは異なる衝撃が伝わり、巨大な身体が僅かに揺れた。
「よし!」
アーヴァインが笑う。
だが、次の瞬間。
オメガウェポンが顔を上げた。
その周囲に、幾つもの魔法陣が浮かび上がる。
「……まずい!」
キスティスが叫んだ。
「全員、防御!」
魔法陣から無数の光が放たれる。
メテオ。
空間を歪ませながら現れた巨大な岩塊が、次々と地上へ降り注いだ。
スコールは岩陰へ飛び込む。
ゼルも後退した。
だが、隕石の数が多すぎる。
「セルフィ!」
キスティスが叫ぶ。
「分かってる!」
セルフィは両手を広げた。
彼女の周囲で魔力が渦を巻く。
幾つもの魔法の気配が現れ、目まぐるしく入れ替わっていった。
(……お願い!)
セルフィはその流れを追った。
今必要なのは、攻撃ではない。
仲間を守る力。
「……これ!」
セルフィが叫んだ。
「ウォール!」
六人の身体を、淡い光が包み込んだ。
プロテスとシェル。
物理攻撃と魔法の両方を軽減する障壁が、全員に展開される。
直後、隕石が着弾した。
大地が爆発する。
衝撃が六人を襲った。
「ぐっ……!」
スコールはガンブレードを地面へ突き立て、身体を支えた。
障壁が激しく揺れる。
それでも、破られることはなかった。
最後の隕石が落ちる。
土煙が晴れた時、六人はまだ立っていた。
「……助かった」
スコールが呟いた。
「セルフィ、いい判断よ!」
キスティスが声をかける。
「えへへ!」
セルフィが笑った。
「まだまだ頑張るよ!」
スコールはオメガウェポンを見上げた。
巨体の周囲に漂う魔力。
それは、かつて戦ったアルテマウェポンとは明らかに異なっていた。
あの時のアルテマウェポンは、巨大な剣と圧倒的な魔力を持つ存在だった。
だが、目の前の敵には剣がない。
その代わりに、異様なほど発達した腕と、複数の魔女から奪った魔力がある。
剣を振るう必要すらない。
拳一つで大地を砕き、魔法一つで周囲の地形を変える。
(……ただ強くなっただけじゃない)
スコールはガンブレードを握り直した。
(戦い方そのものが変わっている)
オメガウェポンが腕を持ち上げる。
スコールは地面を蹴った。
「俺が引きつける!」
巨大な拳が振り下ろされる。
スコールはその軌道を見切り、横へ滑り込んだ。
ガンブレードが閃く。
一撃。
銃撃の衝撃を刃に乗せ、装甲を斬り裂く。
二撃。
三撃。
オメガウェポンが腕を振り回す。
スコールはその下を潜り抜け、さらに斬撃を重ねた。
四撃。
五撃。
六撃。
身体の奥で、戦闘の感覚が研ぎ澄まされていく。
相手の動き。
足場の状態。
剣を振るう角度。
すべてが、一つの流れとして繋がっていた。
(……いける)
スコールはさらに踏み込んだ。
七撃。
八撃。
九撃。
連続する斬撃が、オメガウェポンの装甲を削り取っていく。
巨大な身体が、僅かに後退した。
「……スコール!」
リノアが声を上げた。
スコールは答えなかった。
ただ、ガンブレードを握り直す。
ここからが本命だった。
オメガウェポンの腕が持ち上がる。
スコールは跳躍した。
十撃。
十一撃。
十二撃。
空中で身体を捻り、刃を振り抜く。
十三撃。
十四撃。
十五撃。
最後の一撃を叩き込んだ瞬間、スコールの身体がさらに高く舞い上がった。
ガンブレードを構える。
その視線の先には、オメガウェポンの胸部。
幾度もの斬撃によって、装甲に深い傷が刻まれている。
(……終わらせる!)
スコールは急降下した。
ガンブレードが光を帯びる。
最後の一閃。
凄まじい斬撃が、オメガウェポンの胸部を貫いた。
巨大な衝撃。
オメガウェポンの身体が大きく仰け反る。
地面が震えた。
「……やったか!?」
ゼルが叫ぶ。
スコールは着地し、荒い息を整えた。
オメガウェポンの胸部には、深い傷が刻まれていた。
そこから黒い魔力が漏れ出している。
だが傷口の周囲に、幾つもの光が集まり始めた。
「……何?」
キスティスが呟いた。
漏れ出した魔力が、再び身体へ吸い込まれていく。
傷口が塞がる。
完全ではない。
だが、明らかに修復されていた。
「……再生してる?」
リノアが呟いた。
オメガウェポンが、ゆっくりと顔を上げる。
その視線が、スコールを捉えた。
次の瞬間、巨大な腕が振るわれた。
「スコール!」
リノアが叫ぶ。
スコールは咄嗟にガンブレードを構えた。
だが、避けきれない。
拳が身体を捉えた。
「ぐあっ!」
凄まじい衝撃。
スコールは地面を跳ねるように吹き飛ばされた。
「スコール!」
ゼルが駆け出す。
だが、その前にオメガウェポンが立ちはだかった。
巨大な腕が持ち上がる。
「……邪魔すんじゃねえ!」
ゼルが叫んだ。
拳を構える。
そして、地面を蹴った。
オメガウェポンの前脚へ飛び込む。
鋭い蹴りが装甲を打った。
続けて反対側から回し蹴り。
さらに踏み込み、連続して蹴りを叩き込む。
ゼルの身体が、目まぐるしく動いた。
右から。
左から。
下から。
幾度もの蹴りが、同じ箇所へ集中する。
「おらおらおらあっ!」
オメガウェポンの脚が僅かに揺れた。
ゼルはさらに踏み込む。
最後の蹴りで巨体を蹴り上げるようにして、自分の身体を高く跳ね上げた。
空中で一回転。
そのまま、真下へ向けて急降下する。
「これでどうだああっ!」
両足を揃え、全体重を乗せて踏みつけた。
轟音。
オメガウェポンの肩口へ、凄まじい衝撃が叩き込まれる。
巨大な身体が沈んだ。
足元の地面が砕ける。
「……っしゃあ!」
ゼルは反動を利用して後方へ跳んだ。
だが、着地した瞬間。
オメガウェポンの身体から、黒い魔力が広がった。
「……何だ?」
ゼルが顔を上げる。
周囲の空間が、急激に歪み始めた。
身体が重くなる。
地面へ引きずり込まれるような感覚。
「……ぐっ!」
ゼルが膝をついた。
スコールも、立ち上がろうとして動きを止める。
グラビジャ。
強大な重力魔法が、六人の身体を押し潰そうとしていた。
「……重い!」
セルフィが叫んだ。
キスティスは歯を食いしばった。
「全員、姿勢を低くして!」
重力の圧力が増す。
身体の奥から力が奪われていく。
リノアは片膝をつきながら、スコールへ目を向けた。
「……スコール!」
「……大丈夫だ」
スコールは答えた。
だが、声には余裕がなかった。
グラビジャの圧力が弱まる。
六人は荒い息を吐いた。
「……くそっ」
ゼルが拳を握る。
「せっかく決めたってのに……!」
「攻撃は効いてる」
スコールが言った。
ゼルが振り返る。
「……ああ?」
「傷を修復するために、魔力を使っている」
スコールはオメガウェポンを見た。
「無傷じゃない」
キスティスが頷いた。
「そうね。ただし、こちらの消耗も大きいわ」
その言葉に、誰も反論しなかった。
スコールの連続剣。
ゼルの連続攻撃。
どちらも、並の魔物なら一撃で戦闘を終わらせられるほどの威力だった。
だが、オメガウェポンは倒れない。
それどころか、傷を修復しながら反撃してくる。
「……だったら」
アーヴァインが銃を構えた。
「今度は僕の番かな」
スコールが振り返る。
「アーヴァイン?」
「近づくのが危険なら、遠くから削るしかないでしょ」
アーヴァインは弾倉を交換した。
「まずは、あの傷を狙う」
銃口を構える。
深呼吸。
そして、引き金を引いた。
連射弾。
銃声が連続する。
弾丸が、スコールの刻んだ傷口へ集中した。
装甲が弾ける。
黒い魔力が漏れ出す。
「……よし」
アーヴァインは素早く弾倉を交換した。
徹甲弾。
重い銃声。
弾丸が傷口の奥へ食い込む。
オメガウェポンの身体が僅かに揺れた。
「まだまだ!」
さらに弾倉を交換する。
波動弾。
銃身へ魔力が集中した。
アーヴァインは片目を閉じる。
狙いは、先ほどの傷口。
「……そこだ!」
引き金を引いた。
巨大な魔力を帯びた弾丸が放たれる。
空気が震えた。
波動弾がオメガウェポンの胸部へ命中する。
凄まじい爆発。
黒い装甲が砕け散った。
オメガウェポンが大きく仰け反る。
「……どうだい!」
アーヴァインが叫んだ。
だが、オメガウェポンは倒れなかった。
胸部から漏れ出す魔力が、再び傷口へ集まり始める。
「……またかよ」
アーヴァインが顔をしかめた。
その時。
リノアが一歩前へ出た。
「……私がやる」
スコールが振り返る。
「リノア?」
「物理攻撃だけじゃ、追いつかない」
リノアはオメガウェポンを見つめた。
「だったら、魔法で押し切る」
その身体から、淡い光が広がった。
魔女の力。
だが、アルティミシアとは違う。
リノア自身の意志によって制御された力だった。
彼女は目を閉じる。
呼吸を整える。
魔力が一気に膨れ上がった。
リノアの周囲に、幾つもの魔法陣が浮かび上がる。
スコールは息を呑んだ。
(……すごい魔力だ)
リノアが目を開いた。
その瞳には、普段とは異なる鋭さが宿っていた。
片手を持ち上げる。
巨大な魔法陣が、オメガウェポンの頭上に現れた。
アルテマ。
凄まじい魔力が、巨体を包み込む。
爆発。
大地が震えた。
オメガウェポンの身体が大きく揺れる。
だが、リノアは止まらなかった。
再び魔法陣が現れる。
二度目のアルテマ。
さらに三度目。
四度目。
強大な魔法が、間断なく叩き込まれる。
「……すげえ!」
ゼルが目を見開いた。
「何だよ、あの威力!」
キスティスも驚いたようにリノアを見た。
「……魔女の力ね」
攻撃魔法へ集中させる。
その代わり、周囲への注意や細かな判断は難しくなる。
だが、今のリノアは、ただ一つの目的へ向けて魔力を解き放っていた。
オメガウェポンを倒す。
そのためだけに五度目のアルテマ。
六度目。
魔法陣が幾重にも重なり、空間そのものが震え始める。
オメガウェポンの装甲が砕ける。
黒い魔力が、身体から噴き出した。
「……いける!」
セルフィが叫んだ。
だが、次の瞬間。
オメガウェポンが、ゆっくりと両腕を広げた。
その身体から、凄まじい魔力が溢れ出す。
「……まずい!」
キスティスが叫んだ。
「リノア、下がって!」
だが、ヴァリー状態のリノアには届かない。
彼女はさらにアルテマを放とうとしていた。
オメガウェポンの身体が、淡く光った。
次の瞬間。
巨大な光の柱が、リノアへ向けて放たれた。
魔力を極限まで収束させた、致死の光。
「リノア!」
スコールが叫んだ。
身体が勝手に動いた。
リノアへ向かって駆け出す。
間に合わない。
光が迫る。
その瞬間、キスティスが魔法を放った。
防御障壁。
光の柱が障壁へ激突する。
凄まじい衝撃。
障壁が砕け散った。
「……くっ!」
キスティスが膝をつく。
だが、その僅かな時間があった。
スコールはリノアへ飛びついた。
二人の身体が地面を転がる。
直後、光の柱が背後を貫いた。
地面が消し飛ぶ。
巨大な穴が穿たれた。
「……っ!」
スコールはリノアを抱えたまま、荒い息を吐いた。
あと少し遅れていれば。
そう考えるだけで、背筋が冷たくなった。
「……リノア」
スコールが呼びかける。
リノアは目を開いた。
「……スコール?」
ヴァリーが解けていた。
「……大丈夫か?」
「うん……」
リノアは頷いた。
「ごめん」
「……謝るな」
スコールは彼女を支えて立ち上がった。
「攻撃は効いていた」
リノアはオメガウェポンを見た。
巨体の装甲は、幾つもの箇所で砕けている。
だが、その傷口から漏れ出した魔力が、再び身体へ戻っていく。
「……でも、倒せなかった」
「まだ終わってない」
スコールは答えた。
その時、オメガウェポンが再び動いた。
巨大な両腕を、ゆっくりと左右へ広げる。
その掌に、眩い光が集まり始めた。
「……何だ?」
ゼルが顔を上げる。
オメガウェポンの周囲に、十六の光点が浮かび上がった。
光点は細長く伸び、鋭い矢の形を取っていく。
スコールは目を細めた。
「……全員、警戒しろ!」
次の瞬間。
第一の光の矢が放たれた。
凄まじい速度。
「ぐあっ!」
ゼルの身体が弾き飛ばされた。
第二の矢。
アーヴァインが咄嗟に身を伏せたが、肩を貫かれて倒れ込む。
第三の矢。
スコールはガンブレードで受け止めた。
だが、衝撃を殺しきれず、後方へ押し戻される。
「……くそっ!」
第四の矢。
第五の矢。
第六の矢。
光の矢は、間髪を入れずに放たれた。
一射ごとに狙いが変わる。
逃げた先へ、次の矢が飛んでくる。
「……速すぎる!」
キスティスが叫んだ。
第七の矢。
第八の矢。
セルフィのウォールが激しく揺れた。
第九の矢。
第十の矢。
障壁に亀裂が走る。
「……まずい!」
セルフィが両手を突き出した。
だが、次の矢が放たれる。
第十一の矢。
障壁が砕け散った。
「きゃあっ!」
セルフィが吹き飛ばされる。
「セルフィ!」
キスティスが駆け寄ろうとする。
第十二の矢。
光がキスティスを捉えた。
彼女は地面へ倒れ込む。
第十三の矢。
スコールはリノアの前へ飛び出した。
ガンブレードを構える。
刃に光が激突した。
「ぐっ……!」
腕が痺れる。
第十四の矢。
今度は避けきれなかった。
スコールの身体が宙へ浮く。
「スコール!」
リノアが叫ぶ。
第十五の矢。
リノアが展開した防御魔法を貫き、彼女を地面へ叩きつけた。
そして最後の光点が、ひときわ強く輝いた。
第十六の矢。
それまでの十五射よりも太く、膨大な魔力を帯びた光が放たれる。
スコールは顔を上げた。
(……避けられない!)
光が六人のいる大地へ突き刺さった。
轟音。
巨大な爆発が起こる。
地面が砕け、砂煙が空高く舞い上がった。
十六の光の矢を絶え間なく撃ち込む、オメガウェポンの猛攻。
最後の一射が消えた後も、大地には赤熱した亀裂が幾筋も残っていた。
しばらく、誰も動かなかった。
やがて、土煙が晴れる。
六人は地面へ倒れていた。
「……ぐっ」
スコールは辛うじて顔を上げた。
身体が動かない。
腕も、脚も、感覚が鈍い。
ガンブレードは少し離れた場所へ転がっていた。
「……みんな」
声を出す。
返事はなかった。
ゼルが倒れている。
アーヴァインも動かない。
キスティスは片膝をついたまま、立ち上がれずにいた。
リノアは意識を失っている。
セルフィも地面へ倒れていた。
(……まずい)
スコールは歯を食いしばった。
オメガウェポンが、ゆっくりとこちらへ向かってくる。
巨大な足音が、大地を震わせる。
その両腕には、まだ魔力の残光が漂っていた。
スコールはガンブレードへ手を伸ばした。
だが、指先が届かない。
(……くそっ)
その時。
「……まだ……」
小さな声が聞こえた。
セルフィだった。
彼女は震える腕を持ち上げていた。
「……まだ、終わってないよ……」
その周囲に、淡い魔力が集まり始める。
スロット。
幾つもの魔法の気配が、目まぐるしく入れ替わる。
セルフィは必死に意識を集中させた。
(……お願い)
視界が霞む。
身体が重い。
それでも、魔力の流れを追い続ける。
(……みんなを、助けたい)
魔法の気配が、一つに定まった。
「……フルケア!」
光が広がった。
六人の身体を、温かな魔力が包み込む。
傷が塞がる。
失われた体力が戻る。
倒れていた仲間たちが、次々と目を開いた。
「……っ!」
ゼルが跳ね起きた。
「何だ!?」
アーヴァインも顔を上げる。
「……助かった?」
キスティスがセルフィを見た。
「……セルフィ!」
セルフィは、少しだけ笑った。
「……えへへ」
そして、力が抜けたように座り込んだ。
スコールは立ち上がった。
ガンブレードを拾う。
「……ありがとう」
セルフィが顔を上げた。
「うん!」
スコールはオメガウェポンを見た。
巨体は、なおもこちらへ向かってくる。
だが、その身体には幾つもの傷が残っていた。
修復は続いている。
それでも、完全には戻っていない。
(……効いている)
スコールは確信した。
だが、問題は別にあった。
こちらがどれだけ攻撃しても、相手は傷を修復する。
一方、こちらはセルフィの回復魔法に頼り続けることになる。
魔力には限界がある。
体力にも限界がある。
このまま消耗戦を続ければ、先に倒れるのは自分たちだ。
「……キスティス」
スコールが声をかけた。
「何?」
「あいつの再生、どう思う?」
キスティスはオメガウェポンを見た。
「……魔女の力を利用しているんでしょうね」
「……ああ」
「でも、何かおかしいわ」
キスティスは目を細めた。
「傷を修復するたびに、魔力の流れが乱れている」
スコールが振り返る。
「……乱れている?」
「ええ」
キスティスは頷いた。
「複数の魔女の力を取り込んでいるから、魔力の性質が統一されていないのかもしれない」
スコールはオメガウェポンを見つめた。
確かに。
傷口へ集まる魔力は、一定ではない。
赤い光。
青い光。
黒い光。
幾つもの異なる魔力が、互いに干渉しながら身体を修復している。
「……なるほど」
スコールが呟いた。
その時、オメガウェポンが再び両腕を広げた。
巨大な魔法陣が、頭上に現れる。
先ほどまでとは比べものにならない魔力。
「……まずい!」
キスティスが叫んだ。
「アルテマよ!」
空間が震える。
大地が歪む。
オメガウェポンの周囲に、巨大な魔力の渦が生まれた。
スコールはガンブレードを構えた。
「全員、防御!」
六人が身構える。
次の瞬間。
アルテマが解き放たれた。
巨大な光が、大地を飲み込んだ。
衝撃。
轟音。
空間そのものが、砕け散るように震えた。
セルフィのウォールが、再び六人を守る。
だが、障壁は激しく揺れた。
亀裂が走る。
そして、砕け散った。
「……ぐあっ!」
六人が吹き飛ばされる。
地面を転がりながら、スコールは辛うじて意識を保った。
身体中が痛む。
息が苦しい。
それでも、立ち上がった。
目の前には、オメガウェポンがいる。
巨体は、まだ倒れない。
その身体から、幾つもの魔力が溢れ続けていた。
(……どうすればいい)
スコールは歯を食いしばった。
これまで幾度も窮地を乗り越えてきた力を、すべて使っている。
それでも、届かない。
オメガウェポンが、ゆっくりと顔を上げた。
その身体から、さらに強い魔力が溢れ出す。
スコールは仲間たちを見た。
ゼルは拳を握っている。
アーヴァインは銃を構え直している。
キスティスは魔力の流れを観察している。
セルフィは必死に呼吸を整えている。
リノアはスコールの隣へ立った。
「……スコール」
「……ああ」
「どうする?」
スコールは答えなかった。
オメガウェポンを見つめる。
強大な腕力。
複数の魔女の力。
そして、異なる魔力が互いに干渉しながら続く再生。
(……あいつは、強い)
だが。
(……完全じゃない)
スコールはガンブレードを握り直した。
「……まだ方法はある」
キスティスが振り返る。
「スコール?」
「力で押し切るだけじゃ駄目だ」
スコールはオメガウェポンを見た。
「……あいつの力そのものを、崩す必要がある」
オメガウェポンが咆哮した。
大地が震える。
空間が歪む。
六人は、再び武器を構えた。
戦いは、まだ終わらない。
むしろ、ここからが最も厳しい戦いになる。
スコールは静かに息を吸った。
(……必ず倒す)
その視線の先で、オメガウェポンが巨大な腕を持ち上げた。
そして、再び戦いが始まった。