このエライン、マイアミリアの策略に立ち向かわなければならない、そしてセルヴァンとエミリアをゴールへと導く為にも、俺は自分の魔法を使う。
俺の魔法はあくまでも変身だけだ、立ち振る舞いや精神構造が女性になることはない、だから、非常に腹立たしいが、しばらく女性として過ごして慣らしていかなければならない。
そんな手間をかける理由なんて男のエラインと女のユーライカを同一人物として見られない為だよ、変身魔法は数こそ少ないが使い手はいるし、正体を見抜く方法もある。
魔法的アプローチからの正体見破りに対して一応ガンメタ張っているけど、普通に動きから見破られるのもあるからね。
今日の今日で悪いが実家へ移動系魔法の使い手を雇ってとんぼ返りして、マイアミリア周辺の事情をぼかして伝えつつ、理由があって人前で魔法を使ったことを伝え、お父様と対策を考えた結果。
「じゃあユーライカとして過ごせ、学校に席を作る、エラインとユーライカの両立は辛いだろうが、単位さえ落とさなければいい、半分ずつ出ればギリギリ足りるだろう」
とのことで。
ユーライカとエラインの2足のわらじ生活、開始と相成った。
ただありのままのユーライカだと生徒の精神が危ないので、対策もしていく。
◆
恐らくセルヴァンの価値観がぶっ壊れた次の日。
俺は私として一年A組の教室にいた。
ただし対策済みだ、目元以外を覆ってしまうという物理的な対策だ、怪しい占い師がつけている鼻から口元を覆う布……名前フェイスベールって言うらしいね……それを付ける。
黒い布をあてがい目しか出さない、これならマトモに顔が認識し出来なくなるから多少マシだろう、完全にマスクすることも考えたがマイアミリアに剥がされるのが目に見えていたので、妥協案としてこれだ、病弱設定で肌が露出できないと言えば通った。
…………余計ミステリアスな感じが際立って余計に目を引きそうだが、直視するよりマシ!
「皆様、おはようございます、ユーライカ・ハルス・ジュターゼン、エラインの双子の姉です、遅れての入学でしたがどうぞよろしくお願いします」
私の名前はユーライカ、エラインの双子の姉であり、入学式から遅れてストルフォア魔法学校へと入学しました。
私は病弱のため欠席が多くエラインから授業内容を聞き、エラインは家の都合により学校を離れているが出席できる時はする。
という設定で自己紹介。
お父様も口裏を合わせてくれるので、人様を欺く事に罪悪感と少しの背徳感を感じる所ではありますが、これで行くしかない。
エミリアさんとセルヴァン王子の成就が為に。
「……?」
あの、さっきから誰も喋らないんですけど?
エミリアを見る、完全にトリップしてた。
セルヴァンを見る、完全に目をやっていた。
アルルリスを見る、表情筋が死んだ男は流石に変化が分からなかった。
アジェンテを見る、気弱な彼は口をパクパクさせて酸欠ギリギリだった。
担任の先生、自分で目を潰してた、すごいプロ根性。
流石にこのまま時を止めておく訳には行かないから、俺からアクションを起こす。
「皆様」
ふっ……と、教室の空気が張り詰めるような緊張感に包まれる、一字一句聞き逃さまいと、互いに無意識の協力をしたいるようでもある。
「どうぞ、今後とも宜しく……」
死ぬほど静かな自己紹介となった。
マイアミリアがこの教室に居なかったとこだけが救いだ、あの狂信者何するか予想不能だからな。
挨拶も終えて、じゃあ自分の席へと言うことした時、セルヴァンが音もなく立ち上がり、こちらへと手を差し出す。
「さぁ、お手を、座席までご案内します、ユーライカ」
普通なら黄色い悲鳴が聞こえてきそうな仕草だが、残念、今は皆声を無くしている。
そして、セルヴァン、お前……一撃で手遅れになるタイプか……いや、考えろ俺、この3年で耐性を付けてもらうんだ、いくら俺が人外美人だとしてもあくまで容姿が飛び抜けているだけだ、見慣れれば飽きる、飽きれば無関心になる。
その第一歩がエスコートなら、まぁ、いいだろう、王族にエスコートさせるとか何処のどいつだって話だが。
「お願いしますね」
手を取り、引かれるがまま、エラインの席へと導かれる、どうせ入れ替わるなら席は共通でいいよねって話だ。
セルヴァンが椅子を引き、見事な礼を見せて、俺が座るのを見届けてから自らの席へと座った。
俺が座ると隣にいるエミリアさんが話しかけてくれる、その目は完全に焼かれている者の目だった、まだ大丈夫、こうなったから異性と付き合わないって話でもないからな。
「ユーライカ様、私は、え、エミリアと言います、あの……エラインさんとは仲良くさせてもらってます! ……あの、お姉様と呼んだほうがいいですか!?」
勢いのまま言い切ったその言葉に教室中の耳が向けられている、と気がついてからは、段々萎んでいくエミリアにこやかに返す。
「ええ、もちろん……それくらいならまぁいいか」
──教室が爆ぜた。
一瞬で人の壁が出来上がり俺の席に人間たちが集まる。
「俺とも友達に!」
「わたくしとも!」
「ぜひ!」
「僕ともお願いします!」
「お姉様と呼ばせてください!」
わいわいきーきーがやがや、分かっていたさ、分かっていたけど、対策してるのにこのボティはどうしょうもなく人を惹きつけるらしい。
先生が静かにするように指示を飛ばすがたった一人の言葉なんて騒音によって掻き消されていく、下手なことを言えば更にうるさくなるのが目に見えているので、しばし無言を貫いた。
「……」
セルヴァン! 何俺の事をじっとり見てるんだ! 見るのはエミリアの方だぞ! 早く付き合え!
と感情を視線に乗せてセルヴァンを見返すと、彼は頬を染めて目を逸らす。
俺に惚れるなよ、俺から友人以上に踏み込むつもりも踏み込ませるつもりもないからな。
フラグになんないよな?
俺が無視を続けた事により騒ぎは沈静化していき、先生の声がマトモに通る頃には授業一つ分の時間が消し飛んでいた。
午前の授業は酷いものだった、誰一人として先生ではなく俺へと意識を向けていた。
女性は見られているところがわかるって話あるだろ、あれ男でもわかる、意識的に視線を認知するか否かだし。
この黒髪異国姫風人外美人の姿で肌の露出は避けているが、胸とか尻とか太ももは膨らみが分かるから、そこへと目線が行ってるのは分かるが、一番は顔だった、最悪胸ばっか見られてる方がいいな、素顔見るとお前ら一生童貞ぞ。
くぅ〜なんで俺はもっとむちむちないすばでーに変身できないのか、恐らく変身した姿は俺の潜在意識を汲み取った理想像なのだろう。
潜在意識がむちむちないすばでーよりお貧相強強高身長黒髪姫カットお姉さんを望んでいる? まさか……ははっ!
確かにな! 一生姿が戻らないなら後者を選ぶね!
そもそも一生戻らないとか悪夢だけどな!
「はぁ」
憂いがため息として出る、今は昼休みだから遠慮なくつける。
「ああっお姉様、ユーライカお姉様……」
「ホントに14か……?」
「なんて色気……してるんだ……!」
「戻ってこい! 戻れなくなるぞ!」
「良いんだ、俺はもう一生をあの人の妄想と過ごすんだ……」
「戻ってこーーーい!!! 置いていくな! 俺を置いていくなぁぁぁっ!」
カオスだなぁ、全くモブ共め、お前らは俺がどんな気持ちでいるか知りもしないんだから……貴様らの性癖なんざ金輪際興味ないわ! ぶっ壊れていいぞ!
「やはり……至高か」
「ですよね、究極ですよね……ユーライカお姉様ぁ……」
セルヴァン、テメーは戻ってこい、エミリア、その道は険しいぞ、ゴールは俺にぶつかるぞ、てか何で二人は後方理解者面なのよ、仲いいな君ら。
さて、元々予定に変更が必要になったが、まだ修正できる、いよいよ無理になったら……マイアミリアと心中して学園から去るか、エミリアに残弾全部ぶつける様にするかって手段になる。
セルエミガチ勢になった俺は純愛のまま終えてほしいんだ、誰にも邪魔されず、穏やかに……『リブラ』さえ使わなかったらそれでいい。
まずは、2人が友人同士になった、次は両思いにして絆を深めようか、愛には試練が付き物だ、それが原作におけるセルヴァンルートのマイアミリアだったんだが、俺にすげ変わった今同じようにやると試練と言うより天罰だからな……。
転生者無双より原作主人公無双のほうが都合がいいし、サポのつもりでメインになるのは一番避けたい、マイアミリアの妨害もあるしな……。
そう言えばセルヴァンとエミリア、まだお出かけしてないよな? やっぱりお出かけかな、いきなりデートってどうなんだろ、でも早いうちに確定してもらわないといけないしな、前倒しで行くか。
都合よく原作に頼るなら、二人はデート三回する、三回目でエミリアの『リブラ』をセルヴァンが知り、彼女の抱える秘密の共有者になる、セルヴァンも彼女に秘密を伝えることで互いに強い意識が芽生える、むほほぐっと距離が近づくよこれ。
問題はタイミングが今じゃねぇんだよな、『リブラ』の使い手が現れましたよって世間が全員知ってるタイミングでその話を切り出すから、秘密に危機感や切迫感があっていいんだよ。
代わりになるものといえば俺、パッと思いついた作戦もある。
このプランだとユーライカはバイになるけど、まぁ卒業したら用済みだし。
よし! そうと決まれば三人でお出かけだ!
「セルヴァン王子、エミリアさん」
「「はいっ!」」
やっぱ仲いいな君ら、俺が余計なことしなくていいかも……いやいや、マイアミリアがいるから変なこじれ方する前にやっとかなきゃか。
「今度の休日、商店街へお出かけしませんか?」
2人が固まった、教室の空気も固まった、先生が窓から外を見て、「あぁ、あそこも沈むのか」とつぶやいた、歴戦の面持ちである。
返事は無論OKである。
市街地蹂躙型デートの開始と行こうか。