ボク、がんばって、生きた……。
ここで、生きたよ……。
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ふと、白い空間で目を覚ます。ボクは…………ああ、そうだ。ボクは、アスナに抱かれて……みんなに見守られて、
あれ?けど、じゃあ、ここはどこ?まさか、エラー?けど、ボクは死んだはず。なら、エラーなんてどうやって……?
その瞬間、白い空間から色とりどりの柱が飛び出て、次の瞬間、ボクの視界はまた白で埋め尽くされた。そして、白色が抜けた先にあったのは……
突然、ブワッと体が押され、目を思わず閉じる。けど、これくらいの風なら受けたことがあったはず。ボクは一回落ち着いてから、ゆっくりと目を開ける。……ん?けど、じゃあここって……。
「待って待って待って!?何で空!?」
ボクは、雲海のさらに上から落ち続けていた。
「あ!?え!?ちょっ!?これどうすれば!?……あ」
ボクはふと、自分がさっきまで自由に動ける世界にいたことを思い出す。なら……。
ボクは、背中のさらに後ろに力を入れ、慣れ親しんだその羽を動かす。……飛べた!
けど、姿勢を整え、ようやく周りの景色を見れるようになったボクが目にしたのは、雲から島のように突き出る山々と、雲の間からところどころ見える樹海が織りなす雄大な自然。そして、それに向かって落ち続ける、無数の人影。……!?
「えーと、あれ、NPC……かなぁ!?」
もう何が何だか分からないけど、まあプレイヤーだろうがNPCだろうが助けた方が良いだろうから、ボクは取り敢えず一番近くっぽい人影に向かって飛ぶ。……間に合うかな?
「ふんっ!」
あまりの負荷に、一瞬助けた人を落としかけたけど、まあ何とか持ち直して、その人のことをよく見てみる。
意識はないみたいだ。軽く呼びかけたけど起きない。それで、装備は全体的に茶色っぽい服の上に灰色のプレートが付いたやつ。羽はなくて、耳も人間と変わらない。顔は……ボクが言うのもなんだけど、少し子供っぽい。
「おーい、大丈夫ですかー?」
今度はもっと強く呼びかけてみたけど、その人はぴくりともしない。どうしたものかと考えていると、突然、大きな、それでいて耳にツンツンと響くような音がいくつも聞こえ始めた。
「なんか、聞いたことがあるような……?」
思い出した。あれは、パトカーが鳴らす音だ。けど、何かちょっと違うような……?というか、何で警察!?
「連合捜査局です。注意してください」
「はい!?」
急に、サイレンの中から爆音の声が聞こえる。驚いて声のしたほうに慌てて振り向くと、遠くの空から、ドローンみたいなものが、とんでもないスピードでいくつも飛んできていた。
ドローンは、落ちていく人たちに近づくと、変なビームみたいなものをその人たちに当てた。すると、ビームが当たった人たちは、急にブレーキが掛かったように落下速度が緩まり、その下で滞空していた別のドローンが、バルーンみたいなものを広げて抱き込んだ。
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「応援は!?」
「無理です!間に合いません!」
飛行巡視船“ドードー”では、切迫した報告が続いていた。
「D2、D3帰還!再度出撃します!」
2機のドローンは、救出した者をドードーに収容すると、再び救助のため発艦した。
「収容者の容態検査急げ!」
そして、予め格納庫で待機していた医務科長の号令で、医務科員たちは収容者を医務室に運び込んでいく。だが……
「心肺機能確認も、意識ありません!」
「脳への大規模な損害ありません!なれども回復法不明!」
「おい、データベースには……」
「該当ありません!」
「クソッ、どうなってやがる?」
医務科長を含め、誰も状況が分からなかったが、取り敢えず生きているのだから、何かしらの対応はしなければならない。しかも、その間にも次々と要救助者が運ばれてくるのだ。迷っている時間はなく、やれる限りのことをしなければならなかった。
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「ん?おい、このあたりをもっと拡大しろ」
「了解」
カメラ経由で現場の様子を見ていた副船長が、担当の捜査員に指し示した場所を拡大するよう求めた。
「このくらいで……へ?」
「おい、人が飛んでるぞ。野次馬でもなさそうだ」
「どうやら、誰かを抱えているようです」
「こっちの画面に映せ」
副船長たちからの報告を聞いた船長は、落ち着いた様子でそう命じた。すると、捜査員の操作によって、船長席の目の前に設置されたディスプレイに、映像が映る。
「確かに、これは人だな。吸血鬼か?いや、竜種……でもないな。妖精っぽいが、こんなにデカい妖精は珍しいぞ」
「……ん?なんかこいつ、見たことがあるような……」
ふと、副船長が呟く。
「ん?少佐、もしかして、知り合いか?」
「いえ、見たことがあるような気がしただけです」
「……そうか」
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えーと、これどうしよう。
ボクは、ドローンたちの動きをぼんやりと眺めながら考えてみる。……まあ、もうそろそろ残りの人たちも落ちそうだし、一回地上に降りてみようかな。けど、大丈夫だよね?あれ実はマップ外だったりしないよね?
……ま、だったらリスポーンするだろうし別にいいか。ここがリスポーン地点だったら困るけど。……ふと、そういえば羽以外はどうなっているんだろうと考える。腰の方を見てみると、助けた人で見にくいけど、多分鞘があって、剣も入っているみたい。柄頭の色も、いつも使っていたやつと一緒だった。メニューは……できるかもしれないけど、流石に止めておこう。で、魔法も普通に詠唱したらできた。
……ん。どうやら、落ちている人はもういないみたいだ。じゃあ多分イベントとかもないだろうし、一回地上に降りよ。
ボクが羽を動かし、地上に向かって飛ぼうとしたその瞬間。突然、さっきの声がまた聞こえた。それも、もっと近くから。
「こちら、連合捜査局です。当空域を飛行中の方にご連絡いたします。当空域では現在、未知の脅威による損害が発生している可能性があります。そのため、当空域を飛行中の方は、最寄りの連合捜査局またはシェレリア王国航空警察所属の飛行船にて、医療上の検査を行っていただくようお願いいたします」
シェレリア王国?そんな国、ALOにあったっけ?というか、飛行船なんてのもなかったはず。まあ、多分ここはALOじゃないんだけど。……まあ、多分イベントの類だし、素直に従おうか。……で、その捜査局だか王国だかの飛行船とやらはどこに?
そう思って、取り敢えず飛びながら探そうとしていたボクの視界に、何か妙なものが映り込んだ。
なに、あれ?あれが飛行船?
ボクのさらに上に広がる雲の合間から、本当に飛行船としか言えないようなものが飛び出してきた。その飛行船は全体的に白色で、ところどころ青色の線が刻まれていた。
「改めてご連絡いたします。現在、当空域には、連合捜査局所属の飛行巡視船、“ドードー”が展開しております。また、ドードーは受け入れ体制も整っておりますので、付近を飛行中の皆様は、どうぞお気軽に着船ください。なお、着船場所として、後部格納庫を解放しております」
また、あの声。だけど、今度は多分あの飛行船からのもの。……にしても、随分凝ったイベントを作ったものだね。……いや、AIが作ったやつかもか。
ボクはいつも通り羽を羽ばたかせ、その飛行船に向かって飛ぶ。
そうして、ボクと飛行船の距離が、最初に飛行船が見えたときの大体半分くらいになった時、突然の衝撃波によってボクは空中で吹き飛ばされた。
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「緊急!緊急!衝撃を検知、衝撃を検知!」
「何があった!」
「分かりません!」
「姿勢制御、問題ないか!」
「姿勢制御、問題ありません!」
衝撃波はドードーにも届いたが、幸いなことに姿勢を崩して墜落するようなことにはならなかった。
「ふう、何とかなったか……」
「整備科!損傷がないか至急調査せよ!」
「了解!」
整備科長が、早足で船橋から退室する。
「……は?」
「少佐、どうした?……は?」
「あ、あれは……」
「……そうか、そういうことか。あれなら、私も観たことがあるぞ」
「あれは、あれは……」
「あれは…………浮遊城、アインクラッド」