1994年9月18日
09:54
路地の先へ出ようとすると、耳元でルイが呼び止めた。
『はじめ、追う前に着替えよう。その服で表へ戻ったら、さっきの続きになる』
「服、そんなに覚えられてる?」
『商会の入口に、中の廊下。見られる機会は十分あった。顔はもう割れてると思うけどとりあえず服だけでも、三人とも』
はじめは自分の袖を見た。
頬を拭ったところに、薄く血がついている。
あの応接室で座っていた時と同じ服。背中には同じリュック。
おまけに、向こうが名前まで知っている二人と一緒だ。
「じゃ、着替えながら、そのあやめって人を探せる?」
『うん、こっちで探し中。商会の裏から出た車は、まだ追えてるから行き先まで確認するね。はじめはクロヱのところへ寄ろう。着替えは手配したから、ココにもらった番号へかけて、店の入口を聞いて』
携帯と一緒にしまった紙片を取り出す。
沙花叉クロヱ。
今朝、二人から続けて、喧嘩をするなと言われた相手だ。
「かなたはその店、よく行くの?」
「必要な時はねー。僕らは初めてじゃないから、大丈夫だよ」
「初めてなの、はじめだけかあ」
「ちょっとお買物して帰るだけだよ」
わためが紙片の下からのぞき込んだ。
「お菓子も売ってるかな?」
「そこまでは知らないなあ」
「急に普通の店として期待しないでよね!とりあえずまずは電話すっかぁ」
かなたに促され、はじめは紙の番号を打ち込んだ。
二度鳴ったところで、電話の向こうから、はいはーい、と声がした。
「轟はじめです。ルイ姉の手配で、着替えを受け取りに行くんだけど」
『あ、聞いてますよ。三人ね。今どこ?』
薬局から曲がったところだと伝えると、相手は建物の角を二つと、古い煉瓦造りの建物を目印にした。
『正面から入って、受付の奥へ。洗濯機が並んでる区画の右を通ると、配送口って書いてある扉があるから。押して駄目なら引いて』
「引く扉?」
『引く扉。みんな最初押すんだよね』
「じゃ、引くって書いといてよ」
『書いてあるんだけどなあ』
電話が切れた。
思っていたより、話しやすい声だった。
◇ ◇ ◇
10:05
三人は大通りを避けて歩いた。
途中で一度、ルイに止められ、酒屋の荷台の陰で車をやり過ごす。
辿り着いたのは、古い煉瓦造りの建物だった。
通りに面した窓は高く、玄関の上には、塗装の剥げた庇が張り出している。
店の名前を大きく出した看板はなかった。
両開きの扉から、男が一人、長いケースを抱えて出てくる。
かなたに続いて中へ入った。
石張りの床に靴音が響く。
正面には小さな受付台。
その奥に幅の広い廊下があり、両側の扉に、受取、処置、修理と短い札が掛かっていた。
台車に載った衣類と、金具のついた運搬箱が、別々の部屋へ運ばれていく。
受付の脇では、腕に包帯を巻いた男が順番を待っていた。
その隣で、上着の裾から銃の握りがのぞいた。
持ち主が布を被せ直し、何事もなかったように腰を下ろす。
向かいの男はそちらを一度見たが、手元の受取票へ目を戻した。
「……ここ、何屋さん?」
「着替えとか、手当てとか。荷物を預けたりもできるよ」
わためが、通りかけた台車へ道を譲った。
「この街、こういう場所が何ヶ所かあるんだよ。どこの組でも、用事があれば使えるの」
「商会の人も?」
「来るよ。ここに入ったら、抗争は持ち込まない。それが取り決め」
かなたは受付の男へ軽く手を上げ、奥へ進んだ。
わためも、さっきまで気にしていた背後から目を離す。
はじめは二人に続きながら、待っている男たちをもう一度見た。
誰も、こちらを追うために立ち上がらなかった。
廊下の先には洗濯機が並んでいた。
丸い窓の向こうで布が回り、乾燥機の熱と洗剤の匂いが流れてくる。
その区画の右を抜けると、壁に小さな鈴のついた扉があった。
配送口。ここがクロヱの部屋らしい。
さっきの車と、待合の男たち。
そちらへ気を取られて、電話での忠告を半分忘れていた。
取っ手を押す。動かない。
「引くんだってば」
「いま思い出した」
かなたに見られながら引くと、扉は軽く開いた。
取っ手の上に、大きく『引く』と書いてあった。
「ほらね。沙花叉、ちゃんと書いてるじゃん」
奥のカウンターから、黒い袖がひらひら振られた。
白い髪に黒い髪が混じった女の人が、片手で布を畳んでいる。
薄い手袋をつけていたが、口元を隠していたマスクは顎まで下がっていた。
「はじめちゃん? 沙花叉クロヱです。よろしくね。後ろの二人は、朝から元気そうで」
「元気じゃないと、ここまで来られないからね」
「かなたん、それはそうだけど」
わためが内扉を閉めると、廊下の洗濯機の音が小さくなった。
壁際には受取票をつけた衣類が掛かり、その下に持ち手のついたケースが並んでいた。
洗剤の匂いの奥に、消毒液の匂いがする。
カウンターの端だけが空いていて、椅子と、小さな処置台が置いてあった。
「ルイさんの分、こっち。服と、顔の傷ね」
「顔、分かるんだ」
「いや見れば分かるでしょ。それ以外に傷ある?」
「ない。壁がちょっと飛んできただけ」
「壁は普通、飛んでこないんだけど。はい、座って」
リュックを下ろすと、クロヱの手が顎の下へ来た。
顔を少し横へ向けられる。
水を含ませたガーゼが頬に触れ、こびりついていた粉を拭い取った。
「っ、しみる」
「粉ついたまま擦るから。さっき袖で拭いた?」
「拭いた」
「素直で助かる。そっちの袖も着替えようね」
すぐ脇で、かなたが用意された上着を持ち上げた。
薄茶色の、ポケットの多い作業着だった。
広げて、自分の肩へ当てる。
「これ、袖、長くない?」
「そこ折って。手が隠れる方がおしゃれ、みたいなのは今日やめとこ」
「最初からやってないっての!」
「わための、これ?」
深緑の短いコートを、わためが胸の前で揺らした。
クロヱは頬に当てるガーゼを替えながら、そちらを見た。
「そう。腰の紐はしまってね。引っ掛けたものまで持ってこられると困るから」
「そんなに持ってこないよ」
「少しは持ってくるんだ」
「かなたん、そこ拾わなくていいのに」
はじめが笑いかけると、頬を押さえられた。
「笑うと動くんだってば」
「そっちが笑わせてるじゃん」
「沙花叉のせいになったんだけど」
軽い声で返しながら、クロヱの指は迷わなかった。
傷の縁を確かめ、薄い保護材を切って貼る。
頬を引っ張られる感じは少なく、口を開けても邪魔にはならない。
「終わり。しばらく触らないこと。血が止まってても、治ったわけじゃないからね」
「ありがとう。……もっと、怖い人なのかと思ってた」
「本人の前で言う?」
「会う前に、みんなからすごく注意されたから」
「それで会いに来て、思ったより怖くないですねって? なかなかだね、はじめちゃん」
怒ってはいないらしい。
はじめが次に何を言おうか考えている間に、配送口の鈴が鳴った。
入ってきた男は、右の手首を左手で支えていた。
顔がこちらを向く。目が合った。
階段の踊り場。その下の段から、銃を向けてきた男だ。
手首を蹴り下ろした時の、腕の角度まで思い出せた。
「あ」
「……てめえ」
男の左手が、上着の前へ動いた。
はじめも椅子の下へ足を引く。立てば、一歩で届く。
「その手、しまっときなー」
クロヱは使ったガーゼを捨て、手袋の口を外した。
「ここでやったら二人とも出禁ね。沙花叉、床も壁も今きれいにしたんだから」
男の手が止まった。
はじめは膝へ掌を戻す。
横を見ると、かなたも上着を持ったまま、出しかけていた足を引いた。
わためはカウンターに置いた水を、端から少し内側へ寄せている。
「……先にこいつらが」
「先に来たのはこの三人。あなたはあっちで待ってて。手、動かさない方がいいでしょ」
男がしばらくこちらを見た。
それから、壁際の椅子へ歩いた。
腰の膨らみに手をやることもなく、右腕を腿へ載せる。
何かをされた感じはしなかった。
入ってきた扉も、鍵は掛かっていない。
ただ、あの男も、かなたたちも、ここでは手を出さなかった。
クロヱが、新しい手袋を引き出した。
「着替えるのはその奥。鏡もあるよ。脱いだ分は袋へ入れて置いといて。預かっておくから」
「……あの人も、治すんだよね」
「もちろん。そのために来たお客さんだし」
男の方へ顎を向けず、クロヱはこちらを見た。
「はじめちゃんの傷も、今ちゃんと手当てしたでしょ」
「うん」
「はい。じゃあ、お互い続きを増やさずに帰ってください」
カウンターから灰色の薄いパーカと、紺の帽子が渡された。
はじめは両手で受け取った。
自分だけを助けてくれる店ではない。
それでも、今この椅子から普通に立って着替えに行けるのは、ありがたかった。
奥の小部屋で上着とパンツを替え、携帯と紙片を新しい内ポケットへ移した。
委任状も蝉の写真も、携帯の中にある。
耳掛けの通信機はそのままに、帽子の縁が当たらないところへずらす。
鏡に映る顔から、さっきの服の印象が消えた。
髪を帽子の中へ収めると、遠目なら違って見える。
よく見れば、はじめだった。
「ルイ姉。着替えた。灰色のパーカに、紺の帽子」
『了解。外へ出たところで確かめる。傷は?』
「貼ってもらった。喋っても平気」
『なら、もう大丈夫そうだね。喋れる方は』
「元から喋れたよ」
着替えを袋にまとめて戻ると、わためは髪を一つにまとめ、コートの襟を直していた。
かなたも作業着に替わり、折った袖口を指で押さえている。
はじめのリュックには、目立たない布のカバーが掛けられていた。
「それも手配のうち。元の色のまま背負ったら、惜しい感じになるから」
「ありがと。服の方ばっかり考えてた」
「靴は?」
「これがいい。足に合ってるから」
つま先を床へ置き、踵を上げる。
パーカの裾も、膝も、動きを止めない。
クロヱは一度だけ足元を見た。
「じゃ、それで。履き慣れない靴で転ばれても困るし」
壁際の男は、手首を台へ載せていた。
クロヱが軽く指に触れると、顔をしかめる。
その左手は、もう上着へ動かなかった。
はじめは視線を外し、リュックを背負った。
「お代は、ルイ姉の手配分でいいんだよね」
「うん。追加の買物がなければ、それで終わり。ほかに要る物ある?」
「お菓子は?」
かなたがこちらを見た。
「そこ、本当に聞くんだ」
「売ってるなら聞いとこうと思って」
「売物はないねえ」
クロヱがカウンターの下から、小袋を三つ出した。
「沙花叉のおやつならあるけど。ビスケットでいい?」
「いいの?」
「さっきから三人で、お腹すいたみたいな話するから」
「はじめだけじゃなかった?」
「かなたん、お昼まだだもんねえ」
「まだ十時なんだけど!」
わためと顔を見合わせて笑ってしまった。
クロヱは男の手首へ巻く布を取りながら、空いた方の手で追い払うように振る。
「はいはい、元気な方は出発。包み紙は外へ捨てないでね」
「それは捨てない。ありがとう、クロヱ」
「どういたしまして。次はもうちょっと静かに受け取りに来てね」
「今日も、そういう予定だったんだけどなあ」
取っ手へ手を掛け、今度は書かれた文字を確かめてから開けた。
廊下には、洗濯物を抱えた女の人がいて、はじめたちが出るのを普通に待っていた。
受付を通って玄関へ戻る。
外の風が頬に当たって、乾燥機の熱から離れたと分かった。
◇ ◇ ◇
10:22
清掃所を出て通りを一本離れたところで、かなたの携帯が鳴った。
画面を見るなり、かなたが二人を手招きする。
店の荷物の邪魔にならない壁際へ寄ってから、音を外へ出した。
『行き先、つかめたよ』
ルイの声だった。
はじめは、しまいかけたビスケットの袋をそのまま握った。
「見つかった?」
『商会の裏から出た車を追ってた。十時十分過ぎ、東の保管地区。赤煉瓦の保管棟で降りて、小さいケースを持って裏口へ入った。引継ぎの「あやめ」は、あの人だと思う』
「蝉のケース?」
『大きさは合う。中までは見えないから、そこは行って確かめて』
金庫から出たのは九時四十分。
そのあと、ケースを持って保管棟へ入った。
つながりそうではある。
まだ、中身を見た人はいない。
『それと、相手は
「金庫より安全って、そういうこと?」
『うん。商会の組員じゃなくて、腕を買われて呼ばれた人。注意してね』
はじめはビスケットの袋を畳んで、ポケットへしまった。
蝉だけ見て飛び込むのはなし。
まず、持ってる人の動きを見よう。
「その人、今もいるの?」
『入るところまでは見た。出てきた姿はまだ見てない。裏口は押さえてるから、ほかの出口も順に確かめるね』
「うん。その場所、教えて」
『地図と、手元の建物資料を送る。外階段の横に、灰色の扉がある建物。ココにも知らせておくね』
通話が切れ、少ししてかなたの携帯に地図と写真が届いた。
赤煉瓦の壁に、錆の浮いた外階段。
灰色の扉には荷受け用の小さな庇が出ている。
人は写っていなかった。
「はじめちゃんにも送った」
「ありがと。じゃ、ここへ行けば、受け取れるかもしれないんだ」
「気持ちはもう受付だね」
「今度こそ受付で終わってほしいもん」
かなたが、自分のビスケットを作業着のポケットへ入れた。
わためも水の蓋を締める。
『三人とも、道は見た。高架沿いから東へ行こう。保管棟の中までは見えないけど、入口へ近づくところは見ておける』
「じゃ、そこまでお願い。中は自分たちで見る」
はじめは地図の印を確かめ、携帯をしまった。
蝉の写真と、受け取りに行く場所の写真。
ようやく、二つを近づけられそうだった。
◇ ◇ ◇
10:31
高架へ戻るまでに、閉まりかけのシャッターを三つ見た。
店の中に客を入れてから下ろす店と、外の荷箱を急いで運び込む店がある。
遠くで鳴った銃声に、台車を押す男の足が速くなった。
「さっきの商会から、けっこう離れたよね」
「向こうも人を呼んでる。商会の建物の前だけで終わるとは思ってないけど」
かなたが通りの先へ顔を向けた。
角に停まった車の横で、二人の男が話している。
こちらを見た一人に、はじめは帽子のつばを少し下げた。
三人とも足を止めず、荷物を運ぶ人の後ろを通る。
呼び止められなかった。
「着替えてよかった」
「まだ、よかったまま行こうね」
わためが、はじめの肩を軽くつついた。
その先で道が開けた。
円い交差点だった。
中央の交通島に太い高架柱が立ち、その足元を低い植込みが囲んでいる。
車道は島の周りに二列。三人が来た通りのほかにも、左右から車が入り、行きたい道へ出るためにぐるりと回っていた。
柱の右脇、向こう側の歩道に、細い側道の入口が見える。
『保管地区へ行くのは、向こうの側道。右の歩道を回って、間の道路を渡ろう』
「柱の横に見えてる、細いやつ?」
『そう。抜けた先でまた案内する』
はじめが右へ足を向けた時、前から歩いてきた男が、携帯から顔を上げた。
こちらではなく、かなたを見る。
携帯。かなた。今度はわため。
男の口が開くより先に、かなたが小さく舌打ちした。
「商会の集金のヤツ」
「……天音! そいつらだ! 服は違うけど、三人!」
男が車道へ手を振った。
後ろで、エンジンの音が急に近づく。
『後ろから来てる!黒い車!』
はじめは車道から身体を引いた。
来た道から曲がってきた乗用車が、三人の脇へ鼻先を入れる。
縁石へタイヤが擦れ、後ろの扉が開いた。
降りるより先に、男の腕と銃が出てくる。
はじめは扉の外側を押した。
車内へ戻された腕が、扉との間に挟まる。
銃口が足元へ下がったところへ踏み込み、手首を押さえたまま男の肩を座席へ突き返した。
銃声が一つ。路面から欠片が散る。
「近い近い!」
銃をもぎ取り、足元へ落として車体の下へ蹴り込む。
はじめは身を低くした。前の扉が頭の上を開き、運転席から男が降りてくる。
立ち上がりかけた膝の裏へ、自分の膝を入れた。
男が座席の縁へ尻を戻す。
襟首を引き下げ、ハンドルへ押しつけたところで、クラクションが長く鳴った。
反対側から回ってきた男は、かなたの前で腕をつかまれた。
上着を取るつもりだった手を、そのまま車の屋根へ押さえつけられる。
腰を折った背中が、わためへの道を塞いだ。
「はじめちゃん、前!」
声を掛けたわための向こうで、集金の男が懐へ手を入れた。
はじめは開いた前扉を足で押し、その縁を男へ向けた。
ぶつかる寸前、男が肩を引く。
銃を抜く方の肘が上がった。
空いた腹へ、短く拳を入れた。
息を詰まらせた男の横を抜ける。
これで、前へ行ける。
そう思った先を、別の車が横切った。
右の道路から入ってきたワゴンだった。
窓が下がり、助手席の男が身を乗り出す。
その手の中に、また銃があった。
『どんどん増援が来てる! 中央の島へ移動して! 歩道の先は塞がる!』
はじめは右へ出かけた足を引き戻した。
ワゴンは外側の車線を回りながら、こちらへ寄せてくる。
背後の乗用車と挟むつもりだ。
はじめは中央へ向きを変え、車道に一歩だけ出た。
助手席の腕が追ってくる。
それを見て、すぐに止まった配送車の陰へ入る。
「そっちへ逃がすな!」
後ろで怒鳴ったのは、さっき腹を打った男だった。
はじめを追い、乗用車の鼻先から車道へ出てくる。
ワゴンの運転手が、遅れてそちらを向いた。
ブレーキの音が響いた。
鈍い音に、男の身体がボンネットへ跳ね上がる。
ワゴンが横を向き、その肩から路面へ落ちた。
はじめは配送車の角へ手をつき、反対側へ回った。
白い車体の向こうで、ワゴンが最初の乗用車へぶつかった。
開いたままの扉が潰れ、助手席から銃を出していた男が窓の内側へ消える。
「どこみてんだ!味方だろうが!」
「飛び出してくんじゃねえ!」
怒鳴り合いは聞こえたが、戻って確かめる気にはならなかった。
今、巻き込まれるところだったのは、こちらも同じだ。
「わためちゃん、かなたちゃん!」
「いる! 島まで渡れる!」
配送車の前で、かなたが手を上げた。
急停車した運転手が、ドアを開けたまま固まっている。
わためが車道とは反対側を指し、歩道の奥へ下がるように促した。
「車から離れてね。走らなくていいから、あっちへ!」
男が降りたところで、かなたとわためが先に車道を渡った。
中央の島までは、配送車の鼻先から数歩。
はじめも続こうとしたが、後ろのワゴンから男が降り、その腕が角の向こうへ出てきた。
かなたたちを狙う高さだった。
はじめは引き返す代わりに、配送車の足掛けへ乗った。
窓枠に手をつき、屋根の縁へ片足を掛ける。
下から上へ狙いを変えるより先に、男の肩の上へ落ちた。
銃を持つ手首へ踵を当て、体重を載せ切る前に反対の脚を伸ばす。
男の胸を蹴った反動で、はじめの身体が車道の方へ離れた。
足元へ、白い帯が伸びてきた。
「左、おいで!」
わためが島の縁で腰を落としていた。
片手は低い石囲いへつき、もう片方から編んだオーラを斜めに広げている。
手元まではほんの数歩。帯の中央が、はじめの腰の後ろへ回った。
沈む。車道へ落ちかけた重みが、長い面に分けて受けられた。
はじめは背中を固めず、沈んだ方へ身体を預けた。
わための肘が曲がり、張った帯が島の内側へ寄る。
踵が石の縁に触れたところで、膝をゆるめて立ち上がった。
「ありがとうわため! 助かった! 今の、すぐ次いける」
「うん。地面に降ろすより近かったから」
わための手から、白い編みがほどけて戻った。
かなたはその向こうで、追ってきた男を島の外へ押し返している。
倒れたところへもう一人がぶつかり、縁石の手前で足が詰まった。
「こっち来るなら、順番にして!」
「順番だったらいいの?」
「来なくていい!」
かなたが顔を上げる。
はじめも笑いかけたが、島の反対側でタイヤが鳴った。
左の道路から、箱型の車が入ってきた。
事故で詰まった右の車線は使わず、中央の島へ近い方を回ってくる。
運転席の横から腕が出て、こちらを指した。
「桐生んとこの二人も一緒だ! 気をつけろ!」
はじめは二人と柱の裏へ入った。
直後に、柱の角が弾けた。
コンクリートの粉が頬のすぐ脇を落ちていく。
さっき貼ってもらったところへ、手をやりたくなる。
やめた。触っている場合ではない。
商会から遠く離れても、終わっていなかった。
車の窓を閉めて逃げていく人と、窓から銃を出して近づいてくる人が、同じ交差点にいる。
歩道では店主が客を建物へ押し込み、車の流れはもう途切れていた。
動いているのは、商会の車ばかりになっていく。
「蝉一匹で、何台来るの」
「”抗争”だからね。商会はうちに殴り込まれたと思ってる」
「実際、入ったしねえ」
箱型の車の扉が開く音がした。
柱の左からのぞくと、男が二人、車道を渡ってくる。
その後ろでも誰かが降りかけていた。
『はじめ、側道の入口が見える方へ回って。向こうの歩道に一人、車の前に隠れてる。そっちを見ておくから、柱の近くは自分たちで』
「分かった。二人とも、右から向こうへ抜けよう。入口に一人いるって」
「じゃ、僕は後ろ。先、見てきて」
かなたは、いま渡ってきた二人へ身体を向けた。
先頭の男が棒を振りかぶる。
かなたは振り下ろされる前に一歩詰め、棒を握る腕を下から持ち上げた。
大きく開いた脇へ肩が入り、男が後ろへよろめく。
そこまでは見た。
はじめはわためと柱の右へ回り、側道までの間を確かめた。
こちらの縁石。二列の車道。向こう側の歩道。
その奥に、保管地区へ抜ける入口。
止まった小型の配送車が、入口の左半分を隠している。
車の前輪の近くから、一瞬だけ男の靴が見えた。
「いるね」
「はじめちゃん、左の石の上なら、こっちから支えられるよ」
わためが柱の角へ立ち、手を広げた。
はじめは低い植込みの石囲いへ乗った。
枝のない縁を選んで二歩。そこから配送車の横へ渡れれば、隠れている男の腕が上がる前に入れる。
背中側で、かなたの靴が大きく鳴った。
振り向くと、棒を持っていた男の襟首を、かなたが左手で押さえていた。
もう一人が横から抱きつき、二人分の重さを一度に預けている。
かなたは倒れていない。
ただ、押し返すために置き直した踵が、石囲いの端を外れた。
「かなたん、後ろないよ!」
わための手がそちらへ変わった。
右手から編んだ幅広の帯が、かなたの背中の下へ入る。
わためは石囲いに踵を当て、身体を前へ倒した。
張った帯に支えられて、かなたが片足を島へ戻す。
その時、柱の左から、三人目が出てきた。
かなたの背中へ向いた銃が、白い帯に気づいて少し横へ振れる。
わための両足は、踏ん張る位置にあった。
動けば、かなたの支えも動く。
はじめは石から降りるのをやめた。
縁を蹴り、植込みを斜めに越える。
「そっち、そのまま!」
わためがこちらを見た。
帯は離さなかった。
銃口より外側へ足をつき、伸びた腕を肘の下から跳ね上げる。
弾は頭の上を抜けた。音が耳の奥で潰れ、はじめは男の懐へ肩から入った。
拳へ寄せたオーラが、腹の奥へ届く。
男の息が止まり、柱へ背中が当たった。
落ちた銃を踵で遠ざけると、手から別の黒い物もこぼれた。
無線機だった。
「はじめちゃん、後ろ!」
わための声で膝を折る。
さっきまでいた高さを、男の腕が通った。
かなたがその腕をつかんだ。
身体ごと引き戻された男が、もう一人の胸へ横向きにぶつかる。
二人が石囲いの外へ転がったところで、わための帯がゆるんだ。
「こっち、戻れた。ありがとう!」
「かなたも! いま横、全然見てなかった」
「こっち向かせたの僕らだからね。フォローは任せときなー!」
かなたの作業着の襟が、片側だけめくれていた。
本人は気にせず、次の足音へ顔を向けている。
はじめも立ち上がった。
空いた右側から、今度こそ向こう岸へ――。
『……聞こえてる? はじめちゃんは生きて連れてきてね』
足元で、明るい声がした。
落ちた無線機からだった。
『あの子、顔いいし、可愛いし、よく動くんだよね。デスゲームの目玉にできると思うんだ。顔はなるべくそのままでお願い』
はじめは、思わず無線機を見下ろした。
莉々華。
お茶を勧めたのと、同じ調子だった。
かがんで拾い、横の送信ボタンを押す。
「出ないけど」
指を離した。
一拍の雑音のあと、向こうの声が高くなる。
『はじめちゃん!? あんたなんでそれ持ってんの!』
「持ってたヤツ、もう喋れないから」
『ほんっと、余計なことしかしないなー、あはは……』
かなたが柱の左をのぞき、すぐに頭を戻した。
その足元を弾が叩く。
はじめも無線を持ったまま、柱の右へ移った。
わためは二人の間で、白い編みを手へ戻している。
「受け取りに来ただけだったのに、そっちが渡さないからでしょ」
『だからって、事務所めちゃくちゃにしていいとは言ってないよねえ。今さら謝っても、もう許さないから』
「謝りにかけたんじゃないよ。早くあやめって人に頼んで蝉を返して」
ボタンを離し、はじめは石囲いから側道の方を見た。
配送車の前にいた男が、車体に沿って後ろへ移っている。
入口を通ろうとするこちらを、横から狙うつもりらしい。
『そういう反応もいいんだよなあ。絶対お客さん喜ぶもん。これが泣き叫んで命乞いするような舞台でもっと――』
無線機を足元へ落とした。
踵を叩きつけた。
黒いケースが割れ、莉々華の声が雑音ごと潰れた。
かなたの肩が一度だけ揺れた。
わためが、側道へ向けて指を二度振った。
先へ行こう。はじめも頷いた。
割れた無線機を置いたまま、石囲いの右へ身体を向ける。
「ルイ姉、次は?」
『捕まらずに終わらせよう。側道の左、車の後ろへ回った男がいる』
「見えてる。そいつ、はじめが止める」
かなたが左から近づく足音を確かめ、わためが右の車道へ目を向けた。
はじめは石囲いの上へ足を戻した。
配送車まで飛んでしまえば、次に踏める場所がある。
そこから入口へ。
右の車線から、エンジンが吠えた。
「オラァ、車ぶつけるぞ! 三人とも轢いちまえ!」
詰まったワゴンの内側を、新しい乗用車が抜けてきた。
曲がり切るつもりがない。
前輪が島へ向き、低い縁石を踏み越える。
その先にいたのは、柱と石囲いの間のわためだった。
はじめは石から降り、わための上腕をつかんだ。
柱の後ろへ引けば、二人とも外せる。
「わためちゃん、こっち!」
わための足が動く。
同時に、薄茶の背中が前へ出た。
「二人とも、そこ下がって!」
かなたが車へ向き直った。
前の足を低く置き、後ろの足を石囲いの根元へ踏む。
膝が沈んだのに、上半身は逃げなかった。
肩を包んでいたオーラが腕へ厚く回り、その下で腰も脚も一緒に固まる。
はじめは、わためを引いた手を離さなかった。
車がぶつかった。
先に潰れたのは、車の方だった。
かなたの両掌が当たった正面で、グリルが折れた。
ボンネットの中央が盛り上がり、前の車輪が車体へ押し込まれる。
甲高い音に混じって、足元から別の音がした。
かなたの後ろの靴が、路面を削っている。
石囲いの根元に亀裂が走り、踵の下から砕けた舗装が噴き出した。
止まった、と思った。
違った。
かなたが吹っ飛ばしていた。
深く曲がった膝が伸びる。腰が上がり、肩が前へ出た。
肘だけで車を返すのではなく、踏んだ地面から上へ、身体が一つの形のまま動いた。
車の鼻先が浮いた。
後輪が地面を擦り、続いて離れる。
はじめの目の前を、車の底が斜めに向いた。
かなたが肩を横へ送った。
車体が右の車線へ弾かれ、側面から路面へ落ちる。
割れた硝子が広がり、その向こうで、後続の車が急停止した。
前へ出ようとしていた商会のワゴンまで、横になった車に塞がれた。
さっきまで動いていた道が、止まっていた。
柱の右から向こうの歩道まで、車の通らない隙間が開いている。
はじめは、車と、かなたを順に見た。
「……すっご、流石握力五十キロ?」
「今それ聞く?」
「五十キロどころじゃない!」
「いや今そもそも車握ってないし!」
いつもの声で返ってきた。
かなたは砕けた舗装から後ろの足を抜き、二人へ手を振った。
「はい、開いた! さっさと行きなー!」
『入口の男、出る!』
ルイの声が重なった。
はじめは、もう車を見なかった。
向こう岸の配送車。
その後ろへ回っていた男が、車体の端から銃を出す。
ここから走って近づけば、かなたたちにも銃口が向く。
だから、狙っている高さへは行かない。
石囲いの縁を踏み、車道へ飛び出した。
低い配送車のボンネットへ片足をつく。
薄い板がへこんだところを踏み続けず、すぐに窓枠の角へ足を移す。
男の腕が上を向いた。
その頃には、はじめは屋根の反対側から降りていた。
肩へ手を掛け、伸びた腕の外へ身体を入れる。
銃を持つ手を車体へ押しつけながら、膝の外側を払った。
男が崩れたところで、オーラを寄せた掌を胸へ当てる。
背中が配送車の側面へぶつかり、息を吐いたまま、ずるりと座り込んだ。
開いた指から、銃が落ちる。
「こっち、通れる!」
振り向くと、わためが車道を渡ってきた。
かなたはまだ島の縁にいる。
柱の陰から出てきた男の腕を押し退け、追ってくる二人を正面にまとめていた。
こちらへ走るには、一度背中を向けなければならない。
「かなたん、こっちまで飛んで!」
わためが、向こう岸の縁石へ足を掛けた。
はじめはその背中へ回り、コートの上から肩を支える。
自分の踵は、側道の入口に立つ車止めへ当てた。
「こっち持ってる。受けていいよ」
「うん!」
わためが手を差し出す。
右手から続く白い編みが、道路の上へ短く広がった。
かなたは近い男を、もう一人の方へ押した。
その一歩分だけ背を向け、縁石を蹴る。
島と歩道の間へ身体が浮いた。
銃声がしたが、かなたは車道の同じ場所にいなかった。
伸びてきた帯へ腰から入り、わための腕が重みを受けて沈む。
はじめの掌にも、その重さが届いた。
足を固めて待つのではなく、わためと一緒に膝を曲げた。
帯の沈む分だけ、かなたがこちらへ近づく。
靴が歩道を擦った。
わためが編みを開く。
かなたは着いた足で、そのまま前へ走った。
「ありがと、二人とも!」
「今度はこっちが受け取り!」
はじめもわための肩を離した。
配送車の陰から側道へ入る。
すぐの角を曲がると、背後で銃声が壁に跳ね返った。
『そのまま進んで。次、左。表へは戻らないで』
かなたが先に角を確かめ、わためが続く。
はじめは最後に曲がった。
高架柱の足元も、ひっくり返った車も、壁の向こうへ消える。
まだ敵はいる。車から降りて追ってくる足音も聞こえる。
それでも、三人分の道は開いた。
◇ ◇ ◇
10:41
二つの路地と、荷運び用の細い通路を抜けた。
ルイに止まれると言われたのは、閉まった荷捌き場の壁際だった。
交差点はもう見えず、聞こえてくる怒鳴り声も、どちらからかすぐには分からない。
『今見える範囲では、後ろについてきてない。少し息を整えて。次の曲がり角はこちらで見る』
「うん。……ありがとう、ルイ姉」
壁へ背中をつけ、水を取り出した。
一口飲むと、喉の奥に残っていた粉っぽさが流れた。
足はまだ走るつもりでいて、止まった地面が少し変な感じだった。
わためも隣で息を吐いている。
かなたは靴底を縁石に擦りつけ、挟まった小石を落としていた。
「かなたさぁ」
「はいはい。どしたー?」
「かなた轢こうとした車、飛んでったよ」
「まぁね。つか見てたでしょ」
「見たから言ってるんだよ。あんなにぶっ飛ぶと思わないじゃん」
「僕って頑丈だからね。それに二人が避けると、あそこ塞がるし」
かなたが、水のボトルへ手を伸ばした。
普通に蓋を開ける。
はじめはその手を見かけて、やめた。
握ってはいない、という返事まで、もう聞いている。
「おかげで先、行けた。ありがと」
「僕も入口のヤツ、止めてくれて助かったよー。あそこで正面から撃たれてたら、二人を出す方まで手が回らなかった」
「そっち向いてたからね」
「うん。だから、任せた」
かなたがボトルを持つ方の手で、こちらを少し示した。
はじめは水を飲みかけたまま、笑った。
わためが、コートのポケットからビスケットを出した。
袋の中で、丸いのが二つに割れている。
「食べやすくなったねえ」
「よかったことにするの、早い」
「お腹に入ったら一緒だよ。はじめちゃんのは?」
内ポケットを探る。携帯の脇に、ちゃんと袋があった。
こちらも、一枚だけ割れていた。
「一緒」
「じゃあ勝ち負けなしだね」
「いつ勝負してたの」
かなたが笑いながら、自分の袋も開けた。
甘いものを噛むと、さっきまでとは違うところに力が戻る感じがした。
「わためも、車のとこありがと。道路に落ちると思ったら、下に来てた」
「はじめちゃんも、柱のとこ。あの時、手を離さなくて済んだよ」
「うん。かなたにもお願いしたかったから」
「それ、僕もお礼言うとこだったんだけど」
はじめが顔を上げると、かなたは袋の底に残った欠片を口へ入れていた。
「後ろ向かないで、前の二人をどかせた。あれ、かなり助かった」
「じゃ、両方もらっとく」
「お礼、二人分?」
「うん。働いたから」
「それなら、わためも二人受け取った分で」
「じゃあ僕は道を開けた分。……もう、全員でいいじゃん」
たしかに。
はじめは笑いながら、空いた包みをポケットへ戻した。
わためもそれを見て自分の包みをしまい、かなたが水を飲み終わるのを待った。
携帯を開く。
保管棟の写真は、ちゃんと残っていた。
外階段の横の灰色の扉。あそこまでの道も、見失っていない。
「ルイ姉。ここから、あとどっち?」
『次の角を右。保管棟へは、そこから近づける。ただ、中の人が動いてないか、ココ側の連絡も確認してからね』
「うん。今度こそ、持ってる人に会おう」
わためへ水のボトルを渡し、はじめはリュックの肩紐を直した。
その途中で、かなたの携帯が鳴った。
十時四十四分。
かなたは画面を見て、さっきと同じように音を外へ出した。
「ココ? 抜けたよ。いま三人一緒。保管棟の手前まで来た」
『そうか。三人とも、よく抜けたね』
「すごかったよ。車がどんどんきてさぁ――」
『ごめん、それは戻ってから聞かせて。はじめも、そこにいるんだね』
はじめは携帯の方へ顔を寄せた。
「いる。蝉はまだだけど、ここから取りに行く」
『悪い、一度事務所に戻って。確認したいことがある』
わためが水のボトルをリュックの脇へ戻してくれた。
隣で、かなたが携帯を持ち直す。
「今朝の事務所でいいの?」
『そう。かなた、わためも一緒に。あやめのところは、こっちで見張らせておく』
はじめは、自分の携帯に映る灰色の扉を見た。
次の角を曲がれば、保管棟の方へ行ける。
はじめはそちらへ出しかけた足を、いったん戻した。
鷹嶺ルイ(放出系能力者)
遠隔地から状況を見極め、現場で動く者へ必要な情報を渡すオペレーター。
得られた景色から誰を追い、どの道を選ぶかを判断するのは、ルイ自身の観察力と経験である。
《
【基本性能】
瞳状のオーラによる観測点を、最大三つまで屋外へ送る。
主視界は切り替えられるが、三つの景色を同時に細かく読み取れるわけではない。
観測点は屋外の経路を移動し、壁や屋根を透過しない。
建物の奥、遮蔽物の向こう、暗さや煙に隠れたものは見えない。
天音かなた(強化系能力者)
桐生組の戦闘員。保持、支持、重量物の扱いに秀でる。
その怪力は腕だけのものではなく、身体全体を一つの支えとして使う技量によって発揮される。
《
【基本性能】
身体強化を徹底して伸ばしたことによる念。
高水準の《堅》で全身を守り、《流》で力を受ける部位へ体幹を中心にオーラを配分する。
指、腕、肩、背中、腰、脚、足裏を連動させ力へつなげる。
構えと支持点が整うほど、大きな荷重へ効率よく力を伝えられる。
かなたが重さや衝撃に耐えても、足場や掴んだ物まで耐えるとは限らない。