ハンターにはなりません。理由は怖いから 作:ゴミミゴミ
なんだかAIに並々ならぬ思いを持った感想が増えているなと思ったら、ランキングに載ってたのですね。ご不快な思いをさせてしまったのなら申し訳ありません。
一人ひとりに感想を返していると手間なので、この場を借りて軽く説明をしますが、当方悪意を持ってこの作品を作成しているつもりも、他の作者様の作品を学習もさせておりません。使用しているAIはチャットGPTになります。
他のAI作品を作成している方と似ているとのご意見もありますが、私自身はこの作品を生成するために他の何かを参考にしたという事は、一切ありません。
私自身には、他の作者様のような文才は無く、それでもこういう話が見たい、という思いで作品をAIに書かせているだけであり、出来れば同じような人と共有できれば良いなという軽い気持ちで投稿をしております。
ランキングにAI作品が載ること自体が不快であるのならば、こちらに言われても仕方が無いと思いますので(他のAI作品もランキング入りしている様子ですので)、運営に対して要望をお伝え下さい。この作品自体が不快であるのならば、除外ボタンを押すなどしていただけますと、助かります。
また、匿名設定の活用については、自衛のためである事をご理解ください。
それでもこの作品を読んでいただけるという方は、今後ともお付き合い下さい。
作品冒頭に長文失礼いたしました。何卒よろしくお願い致します。
また、文章内にAIらしい不可解な表現や矛盾などを発見した場合は、気兼ねなくご指摘ください。可能な限り修正いたします。
(この前置きに関しましては本編と関係がないため、2日後に削除いたします。小説概要に載せた同様文章は残しておきます。)
海竜の骨を見た翌日から、僕は本部の中で、たいへん安全かつ充実した日々を過ごした。
もっとも、条件つきなら残ってもいいと言ったのは、父が店へ戻るまでの数日間についてである。本部へ住み込むとも、帰る日を本部の人たちに決めてもらうとも言っていない。
厚い石壁と屋根は頼もしかった。窓の外を翼のある何かが横切ったとしても、心臓が一度跳ねるくらいで済む。草原の真ん中なら、跳ねた心臓を置き去りにして僕自身が逃げ出していたと思う。
一日目は、標本室で別の海竜種を描いた。頭の形も胸郭の幅もラギアクルスとは違い、案内役の人によれば、沿岸で見つかった未分類の若い個体らしい。記憶のどこかに引っかかったものの、口を開けばまた名前が落ちそうだったので、歯を食いしばって帳面へ線を引いた。
骨は潮に洗われたせいか白く滑らかで、組み上げるための細い金具が肋骨の陰へ巧みに隠されていた。生きている姿を考え始めると答えまで出てきそうになるため、この日は骨の傷と金具ばかりを描いた。標本を作った人には申し訳ないが、金具には名前がないので安心できる。
歯を食いしばりながら描くと顔まで怖くなるらしく、隣にいた父から、骨と睨み合うのはやめなさいと言われた。
二日目は、一般書庫の図鑑を借りた。丁寧な標本画の隣に、遠目の目撃談だけで描かれた怪物が平然と載っており、中には脚の数から怪しいものもある。違います、それはそこから生えません、と言いかけるたびに茶で口を塞いだ結果、昼までに三度も湯を足してもらった。
三日目は、指に絵具のついた女の人から標本画を教わった。題材は乾燥させた薬草と、小さな甲虫の抜け殻である。火も吐かなければ城も滅ぼさず、古い記録と一致して騒ぎになる心配も薄い。葉脈や脚の節を描き込むうちに久しぶりに肩の力が抜けたが、褒められた瞬間、念のため扉の位置を確かめた。
女の人は、上手に見せるより、次に同じものを探す人が迷わない絵を描きなさいと言った。前世の僕は見本へ似せることばかり考えていたので、その言葉は新鮮だった。葉の裏にだけ生える短い毛まで拾うと、絵が急に記録らしく見えてくる。
四日目、書庫へ向かう途中で階段を一つ余計に下り、鉄の帯を巻いた扉の前まで迷い込んだ。取っ手へ触れてもいないのに、探しに来た父からひどく叱られた。本部が増築続きで迷いやすいことは案内役の人も認めたが、その日の午後から、一人で廊下を歩くこと自体を禁じられた。
僕には不満もあった。十一歳にもなって迷子扱いは心外である。
戻る道を尋ねる相手もおらず、扉の向こうでは紙を擦るような音がしていた。この件は黙っておいたが、紙でなかった場合を考えれば、確かめなかった判断は大いに褒められてよい。
昼は標本と本を眺め、夜は翌日に見たいものを帳面へ書いた。病室で設定資料集をめくっていた頃なら、一日だけでも代わってほしいと願っただろう。画面越しでさえ見られなかった骨や鱗を前に、その成り立ちを真面目に考える人たちと話せるうえ、生きた大型種を見に行こうと誘われることもない。
本部の人たちは、思ったより話が分かる。
問題があるとすれば、父の予定した日数がとっくに過ぎていることだった。
五日目の朝、宿舎の卓で帳面を広げていると、父が母からの手紙を畳み、明日には発つと言った。店は姉と二人で回せているから心配はいらない、と書かれていたらしい。父はその言葉を額面どおりには受け取らなかった。
「仕入れの判断まで、いつまでも任せてはおけない。元から数日のつもりだったし、先方にもそう伝えてある」
「分かってる。帰る支度をするよ」
素直に答えると、父は少し目を見開いた。
まだ見ていない棚は多い。標本室の奥には覆いを掛けられた大きな骨があり、書庫には貸し出してもらえなかった航海記録もあった。指に絵具のついた女の人からは、次には羽毛の描き分けを教えると言われている。名残惜しいものを数えれば、両手の指では足りなかった。
それでも、僕の家はここではない。母の作る温かい食事を食べたいし、姉が店番をしながら、僕が隠したはずの菓子をつまんだかも気になる。何より、本部へ来るまでは知らなかったが、僕の生まれた町へ帰れば、この世界がモンスターハンターであることをしばらく忘れていられる。
帳面と炭筆を鞄へしまい、借りた本を返し、描きかけの薬草は綴じ本へ挟んだ。増えた荷物のほとんどは、書士隊からもらった紙と標本画の板である。黒い龍の絵は返されていない。あれについては、今後も本部の頑丈な奥へしまっておいてほしかった。
昼前には支度が終わり、残る問題は帰り道だけになった。
「来たときと同じ宿に泊まるの?」
「その予定だ。天候が崩れなければな」
「暗くなる前には、毎日ちゃんと壁の中へ入れる?」
「御者も道を知っている。無理な行程にはしない」
「護衛の人は増える?」
父は荷紐を締めていた手を止め、僕を見た。
「来るときも二人いた。街道を行く商隊なら、珍しくない人数だ」
来るときは二人で十分だと思っていた。今では、街道脇の林は小型鳥竜種の群れが潜む場所に見え、川辺の岩は水中から何かが飛び出すための足場に見える。遠い山へ雲がかかっていれば、その中で龍が眠っている可能性まで浮かんだ。
ゲームなら、危険な場所へ入る前に画面が切り替わる。現実の街道には、ここから狩猟区域です、と教えてくれる表示など立っていない。
「荷車の屋根って、飛竜に掴まれても平気?」
「平気なわけがないだろう」
父は正直だった。
聞かなければよかった。
「飛竜が出ると決まったわけではない。往来の多い街道だし、出発前には周辺の情報も確かめる。それでも怖いなら、護衛をもう一人頼めるか聞いてみよう」
「うん。できれば、とても強い人をお願いします」
「護衛にも都合がある。お前が帳面へ描いた者を連れてこいとは言うなよ」
そこまでは言わないが、出発の日まで標本室で暮らし、帰り道だけ一瞬で家へ移動できないものかとは考えた。
旅用の薬包を鞄へ移したついでに、宿舎の食堂からハチミツも小瓶へ分けてもらった。父に用途を聞かれ、薬草の隣にないと落ち着かないと答えたところ、それ以上は何も聞かれなかった。怪我を治す予定はないが、持っていれば少し安心できる。
夕方、旅に同行した書士隊の人が部屋へ来たので、僕は道中で最近目撃された大型種がいないか尋ねた。あの人は最初こそ普通に答えてくれたものの、森、川、夜営地、上空と質問を重ねるうち、父へ助けを求めるような目を向けた。
「本部へ来るまでは、ここまで怖がっていなかったはずですが」
「息子なりに、何かを知ったのでしょう」
「標本室で勇気まで抜かれたのですか」
「最初から入っていなかったんです」
僕が答えると、あの人は妙に納得した顔をした。
翌朝、まだ日が昇りきらないうちに服を着替え、寝具を整え、二つの鞄を扉の脇へ運んだ。帰路に怖くない部分などほとんどないが、本部まで無事に来られたのだから、同じ道を戻れば家へ着くはずだった。
中庭では荷車が待っている。昨日、父からそう聞いていた。
ところが、迎えに来たのは御者ではなく、旅に同行した書士隊の人だった。いつもなら廊下の角を曲がる前から足音が聞こえるのに、その朝は扉の前で何度か行き来したらしく、靴底の音が止まったり離れたりしている。
父が扉を開けると、あの人の後ろに、長耳の竜人族の書士官が立っていた。
「朝早くから済まぬ。出発について、話がある」
よくない話である。
出発を祝う人は、あんなに深刻な顔で扉の前へ並ばない。
「中で伺いましょう」
父は二人を部屋へ入れたが、椅子を勧める前に用件を求めた。長耳の書士官は細く巻かれた紙を取り出し、封へ触れないよう両手で卓へ置いた。印章は見覚えのないものだったものの、父は一目で分かったらしく、眉間へ深い皺を刻んだ。
「王都から、正式な照会が届いた。おぬしらの滞在を、しばし延ばしてほしいとの要請も添えられておる」
「拒むことはできますか」
「一応、要請という形になっている」
一応、と付ける必要がある時点で、答えはだいたい分かった。
父の横から紙をのぞいた。字は読めても、遠回しな言葉ばかりで、いつ帰ってよいのか分からない。王立古生物書士隊が保護する少年の由来と知識を確認したい。移動に伴う危険を避けるため、王都から人が着くまで現状を保ってほしい。父の商いへ不利益が出ないよう配慮する。おおよそ、その三つが書かれていた。
最後の一つが書かれている時点で、すでに不利益が出そうな気がした。
「何が外へ伝わったのです」
父が尋ねると、長耳の書士官は一度目を伏せた。
「少年の名も、家の場所も、ワシらは出しておらぬ。だが、古い記録にある黒い龍を描いた子供が本部へ来たこと、海竜種の骨を見て名を口にしたことは、別々の経路から広まったらしい。古龍を調べる者、王都の役人、組合の者から、それぞれ使いが向かっておる」
「別々に来るんですか」
「今のところは」
今後は増えるような言い方だった。
「門の外には、昨夜から人が集まり始めています」
旅に同行した書士隊の人が続けた。
「何者か分からない者もいます。見物に来た者、話を聞きたい者、手紙を渡したい者が大半でしょうが、用意した荷車の周りにも人がいたため、出発は止めました」
窓は中庭に面しており、門までは見えない。それでも、石壁一枚の向こうで大勢が待っていると知った途端、帰り道が急に近く、狭く感じられた。
耳を澄ますと、普段は聞こえない荷車の軋みや、守衛に押し戻された誰かの声が風に混じっていた。言葉までは分からない。分からないからこそ、自分のことを呼んでいるように聞こえた。
「護衛は、二人ですよね」
「その予定でした」
「外には何人いるんですか」
「正確には分かりません」
「その人たちも、一緒についてくるんですか」
誰もすぐには答えなかった。
扉の脇の鞄が、さっきより重そうに見えた。あれを抱えて知らない大人たちの間を抜け、飛竜に掴まれれば壊れる屋根の荷車へ乗る。尾行されたら、今度は家の店先に人が集まり、母と姉まで見られる。怪物が出るより前に、別の危険が門前で待っていた。
「今日は外へ出ないほうが安全ですよね」
「そう考えている」
長耳の書士官が答えたので、僕は鞄を持ち上げ、さっきまで置いてあった寝台の横へ戻した。
「では、今日は帰りません」
「もう少し迷いなさい」
父から注意された。
「だって、人がたくさんいるんでしょう。飛竜より話が通じるかもしれないけど、飛竜より少ないとは限らないし」
「比べるところが違う」
旅に同行した書士隊の人は、僕が騒がず引き下がったことに胸を撫で下ろしたらしい。長耳の書士官の強張った顔も、わずかに緩んだ。
話の分かる子供として我慢したのではない。門の外が怖くなり、石壁の内側へ逃げ直したのである。
「明日なら帰れますか」
「王都から来る者との話が済むまでは、難しい」
「何日くらいですか」
「道の具合にもよる。先方が何を確かめたいかによっても変わる」
「終わったら、今度こそ帰れますか」
長耳の書士官は僕ではなく、父を見た。
その視線で、話が一度では終わらないと分かった。一つだけ出していた服を棚へ戻そうとして、やめる。今日着る分だけあればよい。全部を取り出したら、ここへ住むと認めるようで嫌だった。
「僕、いつ帰れるの?」
今度は父へ尋ねたが、父もすぐには答えなかった。
* * *
息子が荷を解こうとしないのを見て、私は王都からの書状をもう一度読んだ。
文面は丁寧だった。王立古生物書士隊の判断を尊重し、少年と家族の自由を損なわぬよう努め、旅費や滞在費についても相談に応じるとある。商いの書状では、丁寧な言葉ほど注意を要する。書かれていない要求が軽いとは限らない。
息子を王都へ差し出せとは書かれていない。だが、来訪者が話を聞くまで動かさず、誰にも先を越させず、王立の組織が責任を持って囲っておけという意味には読めた。
息子が骨や本に夢中だった五日の間に、その存在は本人の手が届かない場所まで運ばれていた。
卓の端には、今朝までに届いた照会の控えが積まれている。王都の役所、古龍の記録を扱う部署、各地の依頼を束ねる組合。封の形も紙の質も違うが、尋ねていることは似通っていた。少年は何を知っているのか。次に何を描くのか。誰が先に話を聞けるのか。息子の身を案じた文は、その中に一通もなかった。
最初に動いたのは、古龍に関する報告を扱う部署だった。黒い龍の絵について、古記録との照合結果だけが慎重な経路で送られ、そこへ海竜種の一件が加わった。二つの偶然と見る者がいる一方、二度も知識を証明したと受け取った者が、王都へ走鳥便を出したらしい。
書士隊の内部で囁かれた呼び名は、別の道から漏れた。
龍の御子。
古い龍の姿を知る子供が来た、という話は、門を出る頃には、滅びた王国の災いを予見した子供が保護された、へ変わった。近隣の宿では、王立書士隊が迎えの使節を送ったことになっている。実際は、仕入れに来た書士が店先の絵を見つけ、半ば勢いのまま話を運んだにすぎない。
「門前の者たちを、追い払うことはできないのですか」
私が尋ねると、書士官は首を横へ振った。
「道を塞ぐ者は退かせられる。だが、街道を行く者まで捕らえる理由はない。今日ここを出れば、何台かは距離を置いて追うであろう。少年の故郷を知りたい者にとって、これ以上よい案内はない」
「つまり、息子を帰せば家が知られる」
「その恐れがある。済まぬ」
書士官は長い耳を伏せた。絵を調べた部屋での厳しい顔とは違い、今は自分たちの失策を認めている。
噂を漏らした者、それを確かめず面白がった者、子供の暮らしより自分の関心を優先して向かってくる者。どれも腹立たしかった。息子にも、もう少し目立たないものを描けなかったのかと言いたくはなるが、描けと頼んだのは大人たちである。
怒りに任せて荷車を出せば、困るのは本部ではない。追われる道中で怯える息子と、何も知らないまま店先を囲まれる妻と娘だった。
「今日は発ちません」
私が告げると、旅に同行した書士は息を吐いた。息子と同じく、私まで素直に従ったと思ったのかもしれない。
「王都の要請を受けたからではありません。家へ余計な者を連れて帰らないためです」
「承知しておる」
「今後について、条件があります」
卓に新しい紙を置いた。昨夜まで息子が、見たい標本を書き連ねていたものと同じ紙である。今度は希望ではなく、守られなければ別の帰り方を探すための条件を書く。
「息子を研究の対象として扱わないこと。聞き取りは協力の依頼とし、本人が嫌がる絵を描かせないこと。王都、組合、ほかの部署から誰が来ようと、息子一人で会わせないこと。居場所と日々の予定は、必要な者以外へ知らせないこと」
書士官は私が書くそばから読み、一つずつ頷いた。
「いずれも受けよう。面会には父親であるおぬし、または本部が定めた責任者を同席させる」
「私は、いつまでもここにいられません」
妻と娘なら日々の売買も、決まった相手との受け渡しも任せられる。だが、季節が変われば仕入れ先を選び、信用を預ける相手と値を決めねばならない。商家の主が帰る日も定めず店を空ければ、息子とは別の噂まで立つ。
「王都の者との話が一度済めば帰れる、とは約束できぬのでしょう」
「できぬ。ワシが約束しても、次の書状が来れば同じことになる」
不都合な答えを誤魔化さない点では、この書士官は信用できた。
「ならば、私が家へ戻った後、息子の側に立つ護衛を置いてください。本部から任務を与えられた見張りではなく、私たちと契約し、こちらの判断を優先できる者です。王都の役人であろうと、あなた方であろうと、息子へ無理を通そうとした者を止められる者を求めます」
旅に同行した書士が顔を上げた。
「その役目を、書士隊の護衛に求めるのは難しいかもしれません。彼らは命令系統の中にいます」
「ですから、命令の外にいる者を探していただきたい」
「腕が立ち、本部内へ入る身元があり、少年の護衛を引き受け、しかも我々へ遠慮しない者か」
長耳の書士官は低く唸り、机を指で叩いた。無理な注文だとは分かっている。息子が帰路について口にした、とても強い護衛という言葉が、私の頭に残っていたことも否定できない。
やがて書士官は指を止め、旅に同行した書士へ目を向けた。
「組合へ照会を出せ。ハンターだけでなく、単独で依頼を受ける者を含めて探すのだ。護衛歴と規律違反の記録も寄越すよう伝えよ」
「規律違反も、ですか」
「命令へ従わぬ者を探せと言われたのであろう。従わなかった理由まで見ねば選べぬ」
私は紙の最後へ、護衛の選定には父親の同意を要する、と加えた。
その日のうちに家へ手紙を書いた。帰宅が延び、私も当面は本部に残ること。店の帳面を誰へ任せるか。妙な噂を聞いても、息子のことを客へ話さないこと。妻なら娘の前で取り乱しはしないだろうが、返事には私を叱る文が何行か並ぶはずだ。
宿舎へ戻ると、息子の鞄は寝台の脇に置かれたままだった。着替えが一組と帳面だけ出され、ほかは紐さえ解かれていない。
「いつまでいるか分からないなら、服を棚へ入れなさい」
「明日帰れるかもしれない」
「明日は難しいと聞いただろう」
「明後日は分からない」
家を恋しがりながら、本部の書庫と標本室も気に入っている。帰路の危険を数え上げ、外へ出ずに済むと分かった途端、顔から力を抜いた。帰りたいのか残りたいのか、十一歳の胸にあるものを一つの理由へまとめる必要はないのだろう。
「荷物は好きにしなさい。今日は部屋にいるか」
「標本室へ行ってもいい?」
息子はすぐに答えた。
「帰れなくなった日に、まだ骨を見るのか」
「帰れないなら、見ないともったいないから」
叱る言葉は見つからなかった。門へ近づかず、案内役から離れず、夕食までに戻るよう言い渡すと、息子は帳面を抱えて出ていった。廊下の角では旅に同行した書士が待っている。今日は地下の扉まで迷うこともないだろう。
あの子にとっては、帰宅が延び、見物できる骨が一つ増えた日なのかもしれない。その軽さに救われる反面、本人の知らないところで話が膨らみ続けることが恐ろしかった。
夕刻、門前の噂を確かめた書士が戻ってきた。
王都の呼び出しを受けた龍の御子が、本部へ留まることを自ら選んだ。
朝にはなかった筋書きである。人混みを恐れて荷を戻した子供が、人々の口を渡るうちに、王都の呼び出しを退けて本部へ残った賢い子供へ変わっていた。
訂正しようとすれば、息子が何者で、なぜ門を出なかったかまで明かさねばならない。黙れば、空いたところへ他人が立派な理由を足していく。
私は窓の外を見た。石壁の向こうに集まった者たちの姿は、宿舎からは見えない。その代わり、門の方角へ向かう守衛の数は昨日より明らかに増えており、二人一組で何度も中庭を横切っていた。
息子が標本室から戻るまでに、護衛の候補を探す書状は本部を出た。
家へ帰るための支度をした朝、私たちは、帰れなくなった後の支度を始めていた。