ううんどういうことだ
しゃあけど嬉しいっスよねコレは、忌憚のない意見ってやつっス。
一話
ヒヤリと背中を伝う硬い感触に、深く溺れ微睡んでいた意識が浮上する。
気だるさをどうにか跳ね除け閉ざされた瞼を開き、少しづつぼやけた景色が鮮明になってゆく。
そこで見えたものは、先程まで自身が戦っていたどこか高級感のある蜘蛛の巣の一室ではなく薄暗い日陰が覆う路地裏を彷彿とさせる小路だ。
(......確か、僕...は)
そう、僕は蜘蛛の巣へと攻め込んで来たリンバスカンパニーの面々をヴァレンチーナ様と迎え撃ちそうして
あのグレゴールとかいう虫の腕を持った男に胸を貫かれて.......
「_____ッ!!」
咄嗟に自分の胸に手を当て確認する。しかしそこには僅かに傷跡のようなものがあるだけだった。
まさかアレ夢だったのか?一瞬勘違いしそうになったが、そう思うには身体の芯にまで残る痛みとちょうど貫かれた位置にできた衣服の穴、そこから広がり染み付いた血が確かに脳裏に映ったあの光景が現実である事を物語る。
(ここは一体...それに、あの戦いはどうなった?)
あの酒浸りが囚人とかいう奴らには負けるとは到底思えないが、彼処には赤の特色もいた筈だ。仮にまだ戦いが続いていたとしてもそう長くは持つまい。
(行かなく、ては)
壁にもたれて座り込んでいた身体をどうにか起こし、地面に散らばった2振りの様式が異なる剣___
【パレルモ式レイピア】と【切斬刀】を拾い上げ、痛みに軋む身体を引きずりながら歩き出す。
そうだ、戻らなくては.......
リンバスカンパニーを倒し、特色を殺し、勝利に酔い油断したあの女を殺すのは.........!
そうして路地裏から表へと足を踏み出した先には
「.................は?」
眩しい...蜘蛛の巣へと堕ちてから何十年と見ることの無かった青空と、
「あっちに行ったぞーー!!」
「逃がすか!!」「金置いてきやがれーー!!」
『貴様ら!何をやっている!!』
「くそっマーケットガードだ!逃げろっ!!」
「なんでこんな所に!?」
けたたましく鳴り響く銃声、そして所属不明の制服らしき者に身を包み...
頭上に光の環が浮いているものたち。
訳が、分からない。 あまりに混沌とした光景に脳が理解を拒み、然して理解しようとして逆に混乱が広がる。
...いや、まさか。宗教上の世迷言を信じてなどいないし、天国と呼ばれる場所にいる天使には頭上に光輪があると聞く。少なくとも、僕の知識では蜘蛛の巣の周辺にこのような場所は存在しないし、それに...
もしオレの貫かれた胸が
----万に一つもありえないと思うが----蜘蛛の巣の誰かが特異点や生命保険で治した訳では無いのなら、ここは_______
「くっハハ、ハ...!」
思わず顔に手を当てる。なんてザマだ。もはや怒りや呆れを通り越して、いっそう笑いが込み上げてくる。
あの女を殺すことも出来なければ、存在価値を示す事も出来ず......あまつさえ..........!!
「巫山戯るな......」
ドンッと、背後から誰かの肩とぶつかる音がする。
「あー、痛ってぇ〜!こりゃ完全に肩の骨折れたワーって事でお兄さん...男?男でいいんだよな?...ちょ〜っと慰謝料置いていこうか」
「いや服ボロッボロじゃんw銃すら持って無さそうだし、どっからどう見ても金持ってそうには見えねぇだろコイツ」
「あっでもこいつが握ってる刀、刃が金色だよ!背中のも含めて、そう言うののコレクターに売っぱらったらそこそこになるんじゃない?」
何やら聞く価値も無さそうな雑音が聞こえる。ああ、もうこの際どうでもいい。もし此処が蜘蛛の巣でないなら、あの忌々しい顔ぶれが此処には居ないのなら。
今の僕は、自由の身なのだ。何をしようと何があろうと、礼儀を欠こうとも、あの耳を劈く罵声も、いつ飛んでくるかも分からない理不尽な暴力も今はありもしない。
頭の中がスっと冷えていく感覚に身を委る。
「おい、無視はひでぇなぁ〜兄ちゃ」
「五月蝿いな...」
目の前のクズが言い終える前に切斬刀を振り抜き、自身に向けられた銃を逆袈裟に両断する。
「はっ?私の銃が...!ほ、ホンモノなのかよソ」
「シッ...!」
再び言い終えるまえに鳩尾へと蹴りを叩き込み後方へと吹き飛ばす。
遅れて事態に気づいたのであろう他の奴らも、怒りのままに銃を構えようとするが......遅い。如何に複数人とはいえ、この距離ならパレルモを収めた僕の方がずっと疾い。
背に納めていた剣も左手で抜き放ち、引金が引かれる前に切り裂き破壊する。
「あっ、わ、私のオキニが」
「くそっ!何なンなんだよコイツ!!」
「な、なあコレってヤバいんじゃ...」
、逃げようとする者から順に二刀を振るい切り伏せていく。
...やけに硬い。振るわれた斬撃は目の前の敵を捉えるが、服を裂き僅かな太刀傷を残すのみで致命の一撃たり得ない。
だが充分な速度を持って数度振り抜かれたソレは、対象を沈黙しえるダメージにはなり得たようで、幾度も地面へと強かに身体を打ち付け転がりながら、やがて動かなくなった。
「ヒッ...!」
「悪いが、今の僕はあまり機嫌が宜しくない。...手加減は、期待なさらぬ様」
倒れ伏した者に興味を失って振り返り、未だ抜けきらない上辺だけの敬語で敵意を示す。
相手からしたらさぞ恐ろしい事だろう。
所々破けた服で、血の跡がそこら中に染み付いていて、幽鬼の如くフラフラな足取りの男が、そのまま射殺さんとする程に鋭い目を向けながら、一瞬の踏み込みと共に目にも止まらぬ速さで飛んでくるのだから。
この日からこの地、学園都市キヴォトスにて。
至る所に突如として血濡れた姿で現れ、銃を使わず2振りの黄金の剣を振るい弾丸じみた速度で不良を制圧する謎の賞金稼ぎが出没するという、真偽不明の都市伝説めいた噂がまことしやかに囁かれること事となった。
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「わ、わぁ〜...で、出来心でブラックマーケットまで来ちゃったけど、多勢に無勢の状況です...あんなにあっさり。
す、凄いの見ちゃった......な、なんてカッコイイの!?」
「....ん〜?ほぉ.......へぇ?なんだか、特ダネの匂いがするな〜♪」
運命のとの邂逅まで、あと_______________。
パレルモ式レイピア: ルチオが背中に背負ってる剣。レイピアとあるが、ヴァレ公の物に比べて幅が広くどちらかと言うと細身の大剣といった外見で、リブは掘られているが弾丸の射出機構や蛇腹状に刃が分断する機構はオミットされている。
切斬刀:ルチオが左腰に刺している刀。こちらはヴァレ公の刀とそこまで大差はないがやや反りは浅い。