ククク...
ちなみに現在は本編よりざっくり1、2年くらい前の話らしいよ。
◆この猿展開は...?
リンバス10章が事前の期待を軽々と超えてきて面白いことに驚いてるのは俺なんだよね。
「おい尾刃、こっちだ!」
「今向かいます!」
先輩の威勢のいい声で呼びかけられ、現場へと向かう。
声の聞こえた方向へと駆け足で向かった先には、気を失って倒れ伏すヘルメットを被った少女が私たちヴァルキューレの生徒に囲まれていた。
「一足遅かったようですね......」
「あぁ。だが『血濡れの殺人鬼』がこの付近に出没している事はわかった。被害者の状態を見るに未だそう遠くへ行ってはいまい」
私の独白に先輩が答える。
血濡れの殺人鬼。最近になってまことしやかに囁かれるようになった噂であり連続通り魔事件だ。
神出鬼没で、不良や悪人を手当り次第に斬殺し、その身体は相手の返り血で染まっているのだという。
ある者はソレを新進気鋭の賞金稼ぎだと言い、またある者は怨霊の類、またある者は悪党を懲らしめる義賊なのだと主張する者もいる。
当然、噂は噂でしかない。
実際に襲われたものは気を失ってこそいるものの殺されてはいないのだから。
だが噂の要因にもなったであろう共通点として、被害者は皆一様に襲われた後金品だけを持ち去られてその場に放置されている。
また、被害者の体には刃物で付けたとおもしき切創が至る所に見られるのもまた不気味だ。
キヴォトスの生徒は基本頑丈だ。それこそ対物ライフルやミサイルやC4等爆発物などでも無い通常弾では当たった所で痛いことには痛いが跡が残らない程度でしかなく、ましてやそこらの刃物で傷つけられる事等まずありえない。
「一先ずは、彼女を連行しましょう。」
「ああ。コイツからバサバサヘルメット団の情報を聞き出してやつの動向を探るとしよう」
.......今の所被害は、近頃私たちも手を焼いていたヘルメット団関係者や、黒い噂のある人物ばかりで善良な民間人には手を出していないようだが、これからも襲われないという保証も無い。...少なくとも、実際に会い捕まえるまでは。
「『血濡れの殺人鬼』お前は一体、何なんだ」
ここ数週間、向かってきた塵を斬り伏せて金目のものを巻き上げ食いつなぎ、どうにか生き残っている。
こんな生きてるのか死んでるのかも分からない生活を続けている中で、3つ程分かったことがある。
1つは、此処が"都市"の外にある世界だということ。
つい1週間前に斬ったバサバサヘルメット団とかいう奴らから聞き出した情報によれば此処はキヴォトスなる学園都市、そのブラックマーケットに位置する区域である事。
僕自身、人生の大半を裏路地と蜘蛛の巣で生きていたが故に都市の事を理解している訳では無いがどこか腑に落ちた所がある。
僕の生きた都市とはそもそもの"空気感"がまるで違うのだ。
"都市"やあの掃き溜めが、常日頃感じていた喉の奥にへばりつく様な重苦しい澱みのある空気だとするならば。此処は冷たい天然水でも飲んでいるかのように澄んだ空気をしている。
それだけでも、此処が外郭とも違う
なぜ僕がここに居るのか、何をすればいいのか、それは未だ解らない。
だが皮肉にもそれを探す時間はいくらでもある。
2つ、この世界が極端な銃社会であること。
僕の知る都市では"頭"が規定した禁忌により、非設置型の爆発物や壁を貫通するほどの威力を持った銃の製造、所持を禁じられており、さらに規定に沿って開発された銃や弾丸にも法外な重税が科されている為に、一部の組織を除き銃を使う者はほとんど存在しなかった。
だがこの世界では、都市の基準なら確実にアウトであろう銃や爆発物が広く普及しているうえ、弾丸は二束三文の安価で至る所に投げ売られている始末だ。
此処に来てから一番のカルチャーショックが何かと問われれば間違いなくコレだろう。
3つ、この身体の使い方。
此処に来てからというもの、特に戦闘時において形容しがたい強烈な違和感があった。
まるでサイズの合っていない服をずっと着続けているかのような。
大きな器に対して中身が伴っていないかのような、そんな違和感が。
理由は最近になって解った。
弱くなった訳ではない。寧ろ特別な強化施術はしていないにもかかわらず身体能力は以前と比べてかなり向上している事がわかった。ただ、向上した身体能力に僕自身の感覚が追いついていなかったのだ。
幸いというべきか皮肉と言うべきか、僕の噂を聞きつけた賞金稼ぎやゴロツキがわんさか襲撃に来るので慣らし運転の相手には事欠か無かった。
そしてその感覚を、最近になってようやく掴めて来た。
........そこに至るまでの授業料は高くついたが、まあいい。
退屈とは程遠い日々の中でようやく落ち着ける時間が出来たので、とりあえず現状の整理は出来た。
足を休め終え、いつも換金に使っている質屋へと向かうため立ち上がり歩みを進進めようとして____________。
「動くな」
背後から、もはや日常となった銃を向けられる気配が1つ現れた。
振り返れば、短く切りそろえられた桃色の髪、黄色と青のオッドアイの非常に小柄な少女がショットガンを構えていた。
何時もならさして取るに足らない状況。
だが、ひとつ決定的な違いがあるとすれば、
(この女____何者だ?)
ゾクリと、背筋を伝う圧倒的な存在感。そこから無意識に放たれる圧。
オレは、この感覚を知っている。
「後ろに束ねた銀髪に二本の剣、血で汚れたボロボロの服をした"男".......オマエが賞金首の『血濡れの殺人鬼』だな?」
「...知りませんよ、そんな趣味の悪い名前は」
「一応警告しておく。抵抗せず大人しく投降するのであれば、何もしません。尤も、少しでも怪しい動きをすれば撃ちます」
かつての我が師やLC本社で始めて対面した『赤い視線』と同じ、
絶対的な強者のオーラ。
それを、あんな小さな子供が纏っている。その事実がオレの頬に冷や汗となって伝う。
「まあどの道そんな死に体の状態では勝負にすらならないだろうから、此方としては投降をオススメしますが」
小動物的な容姿に反して猛獣のような目つきでコチラを睨みつける少女。
大人しく従うか...?いや、仮に投降したとして無事に済む保証は無い。
落ち着け、相手はあの女では無い。僅かに震える手を力づくで抑え込むと同時に、ひとつの小さな火が点った。
そう思った瞬間には、僕の身体は既にあの桃髪の少女へと肉薄していた。
「...ふッ!!」
「......っ!!」
狙うは首。抜刀と共に横薙ぎに振るわれた刀の一撃は、しかし後方に引き、身体を反らせることによってすんでのところ躱された。
...いや、あれは咄嗟にでは無い。
明らかに
相手は一瞬の動揺を見せつつもすぐに戦士の顔へと切り替わり、コチラに向けて発砲してきた。
いくら身体能力が上がったとは言え、コチラは銃弾に耐えうる程の頑丈さは持ち合わせていない。目線と銃口から発射方向を見抜き即座に回避する。
「其方がそのつもりなら、容赦はしない...!」
少女がショットガンを連射しながらこっちに突撃してくる。
それを僕は躱し、避けきれない物は切り払い、間合いに入った瞬間斬撃を浴びせる。その度彼女もまた躱し、振るわれる斬撃をたたき落とし、合間の隙を縫って銃床による打撃を繰り出す。
数合の競り合いの末、少女の鋭い蹴りを交差させた剣で防ぎ、しかし衝撃は逃がし切れず弾き飛ばされる。
「...!お前、その血」
そう言われてようやく熱を帯びた痛みが僅かに走っていることに気づいた。先程の戦闘でどうやらいくつか避けきれなかったものが身体を掠めていた様だ。
血を手で拭いながら考える。
今の一瞬でも解る。"格"は明らかにあちらの方が上。だが、1体1というこの状況は悪くない。身体も大分温まった。
パレルモは剣を振るえば振るうほど、獲物を追い立てれば追い立てるほど、狩り殺すその時まで斬撃は加速していく。
「仕切り直しです」
「.......ふぅ、来るなら来い!」
刀と大剣を仕舞い直し、独特な構えをとる。
数瞬タイミングを見計らい見つめあった後、2人はほぼ同時に駆け出した。
少女は射撃を織り交ぜながら、緩急をつけた不規則かつ俊敏な動きで此方の間合いを狂わせるように迫ってくる。
だが生憎、先程の攻防で剣先は既に測り終えた。
猛攻を防ぎながらも攻めのタイミングを見計らう。そして
「コレで...!」
「そう来ると」
向けられたショットガンを居合で弾く。
「思っていた...!」
目を見開き蹴りの体勢をとった少女に刀と、遅れて抜刀した大剣をクロスに振り下ろし体勢を強引に崩す。
パレルモ式剣術『カチャトーレ』。
二刀を交差に構え直し振り抜かんとした直後、不意に少女とルチオ。その双方向から銃弾が飛んでくる。
少女はルチオの背後から来た弾丸を腕で軽々と防ぎ、ルチオもまた少女の背後から飛んできた銃弾を剣で切り払う。
「見つけたぜぇ『血濡れの殺人鬼』ぃ!!てめぇの
「邪魔っ!!」
哀れ、隙に乗じてルチオを獲りにきたきたであろう不良は突っ込んできた少女の銃床打撃を顔面に叩き込まれ会えなく撃沈した。
「「「あ、アネキ〜〜〜!!!」」」
「そっちは大丈.........夫?」
少女が先程まで戦っていたルチオへと気にかけようと振り変えると、男の姿は既にそこには無かった。
「...うへ〜、逃げられちゃったか」
はぁ、とため息を付き帰ろうとする少女の背後に怒声が放たれる。
「待てコラァ!アネキに手ェ出しといて無事で済むと思うなよチビ助が!!」
気づけば『血濡れの殺人鬼』に向いていた筈の銃口が全て此方に向けられた。
少女は再び大きなため息を着く。
「はぁ〜...まぁ、骨折り損になる位ならこの際お前らでもいいか」
先程までのやや抜けた雰囲気が一瞬にして殺伐としたものへと変わる。
「特に恨みはないけど、お前らにはアビドス復興の為の資金になってもらう」
その日、夕暮れの空に不良たちの悲鳴が鳴り響いた。
アビドス1年小鳥遊ホシノ。まだ垢抜けてないお転婆な頃の一幕である。
【パレルモ・スパーダ】ルチオが『教本』となるため師であるヴァレンチーナから教わった剣術。
一対一の決闘に特化しており、派手で華麗な立ち回りと、打ち合うほどに加速していく流れるような超高速の斬撃によってただ一つの獲物を執拗に追い立て狩り殺す剣。
尚ルチオには使い手自身の高い技量を要するパレルモのへの適正が無く、本当に教科書通りのキビキビとした、どこかぎこちない動きになっている。