『原作知識チート』と『異能力チート』で意図せず原作主人公の相棒になってしまう話 作:楓舞星
「あれだけ英才教育したのに……レベルが一つも上がらないとは……貴様は救いようのないゴミ共だ。セン、ムラハネ」
「し、死ぬ……父さん……死ぬ……」
「死ぬ......ちょ……ほん……と……や……めて!」
「死ね。貴様らなどいらん」
実の父に、首を絞められながら、そう言い捨てられた3歳児の少年センエース・カルマとムラハネ・カルマ。
「で、でも……父さん……俺達……いままで、ずっと、頑張ってーーー」
「頑張ったからなんだという。結果が出なければ意味がない。貴様らは、たとえ、100年頑張っても、私の足元にも及ばないゴミカス共」
エリート暗殺一家・カルマ家の歴史の中でも『最も優秀』と言われているセンの父『バースディ・カルマ』。
その存在値は驚異の300。
「死ぬ、死ぬ……ほんとに、死ぬ……」
父の握力はどんどん強くなる。
「か、母さん……父さんを……止めて、せ、せめてムラハネをーーー」
「あなたのようなカスを産んでしまったせいで、これまで、私がどれだけ恥ずかしい目にあってきたか分かる? ほんとみっともない。このレベル1の無能なクズが……」
「私たち夫婦の『完璧だった人生』をけがしたゴミ……顔を見ているだけで腹立たしい――『姫殿下』の目があったから、これまでは殺せなかったけど、あのバカ姫は、皇帝陛下から嫌われて、権力を失い、幽閉されている。もはや、あんたを殺すことを躊躇する理由はない。御父様の手の中で死になさい。それが、あんたに出来る唯一の親孝行よ」
「……う……ぐ……」
(や、やばい...このままだと、ムラハネが……ムラハネが先に死ぬぅ………っ!!!)
(……まだ……死ぬわけには……いかない……まだ……)
(……それに、『姫がヒドい目にあっている』というのが本当なら……こんなところで尚更死んでいるわけにもいかないんだ……生き残る方法を……考えろ……あるはずだ……なにか……なにかぁ……っ!)
頭蓋に響く声がした。
『――私はナイトメアソウルゲート。選べ、センエース、ムラハネ。悪夢の中で生きるか、それともここで死ぬか』
(お……俺は、まだ……死ねない……)
生き残れる可能性があるのなら、かじりつくしかない。
(やるべきことが……助けたいものがあるんだ……っ)
そうして、センはナイトメアソウルゲートへと入っていく...
「ぷはぁ!な、なんとか助かった...む、ムラハネ!?」
センが辺りを見回すと、ムラハネがいた。どうやら、ムラハネもこの部屋に入ってしまったようだ。
「だ、大丈夫か?」
「え?まって、ここ、どこ?」
「まさか、ムラハネまで巻き込まれたのか!?」
センは真っ白な空間でそう叫んだ。
__________
わたし、ムラハネ。せいご6かげつ。
悲報、カルマ一族に転生したっぽい。
センエースと言われた赤ん坊が近くで眠っているのがいい証拠である。私たちは双子で、センが兄である。
意味がわからないが、ここはセンエース神話の世界で、転生した経緯としては、過去の私がヌルにやられた...と言うことだろう。なんで一緒に転生してるのか、これがわからない。
まあとにかく、センエース神話の世界に来たのだ。思う存分に楽しむぞ!
と、言うのが出来ないのがいまなんだよねぇ。
私はこれから虐待を受ける。えぐいぐらい虐待を受ける。本当、嫌になる。
想像してみる。食べ物がない地獄、水がない地獄、放置される地獄、それを全部想像した上で、
ーーーそれでも、叫び続ける勇気をーーー
__________
そうして、私はいま、実の父親に首を絞められている。死にかけである。ここにくるまでに、私は散々なことをされてきた。
どうやら、私は魂魄処理機構が破損しているのか、レベルが上がらない体質らしい。
首をぐりぐりと締め付けられながらも、センが覚醒するのを待つ。原作シーンである。私は、『このままだとセンが覚醒する前に死んじゃうぅ!!』と思いながらも、あと少し、あと少しだろう。そう、心の中でカウントしていた。センが母親に助けを求めた。いまだろう。
そう思った瞬間だった。
突然視界が真っ白になる。
「ぷはぁ!な、なんとか助かった...む、ムラハネ!」
声が聞こえる。セン?
「だ、大丈夫か?」
「え?まって、ここ、どこ?」
私は動揺を隠せない。ま、まさか......
「まさか、ムラハネまで巻き込まれたのか!?」
センは続けた。
「この、ナイトメア・ソウルゲートに」
私は絶望した。
__________
『初日』
「ここはナイトメア・ソウルゲートっていうんだ...」
「も、もしかしたら俺がお前を悪夢に招待しちまったかも知れねえ...」
「……え、いや、そういうのは大丈夫だから。自分のことを考えよう?」
「ああ、そうだな……」
『二日目』
「一億年?一億年もここに閉じ込められたまま?し、死のうとしたら完全に灰になる?ま、マジか……」
「…………ヤバいね」
「…………ムラハネ、すまん……俺が安易にこんなことをしちまったから……」
「ん、いーや。大丈夫。セン兄と一緒なら、私も頑張れるから」
「…………そうか」
『10日後』
「ムラハネ大丈夫か?」
「大丈夫。全然余裕!」
『100日後』
「ヤバい……ムラハネは?」
「大丈夫だから!」
『200日後』
「………………ムラハネ?」
「…………あ、大丈夫だから。セン兄は?」
「俺はまだまだ全然余裕だ。だから、心配するな」
「…………そっか、流石だね(原作だと、ここで弱音を吐いてたはず……)」
『1年後』
「修行に集中して、どうにかやり過ごそう?」
「…………ああ、そうだな」
『5年後』
「あああああああああっっっ!!!!!!」
「ムラハネ?」
「だ、大丈夫、安心して……?」
「………………そうか」
『10年後』
「………………」
「………………」
『100年後』
「大丈夫だか、ら大丈夫だか、ら。でも、もうーーー」
「んなこと言うんじゃねえ!!!お前はまだいける!!死にはしねえ!!!」
『1000年後』
「セン兄も、そろそろヤバいんじゃない?」
「なんだ?今日はやけに静かだな」
「一周まわったの」
『10000年後』
「ぎゃああああああ!!!!!そ、それでも、叫び続ける勇気をーーーーーぎゃあああああ!!!!!!!!」
『100000年後』
「セン兄、ここが私の、限界みたい......ごめ、ん、ごめん……」
「諦めるんじゃ、ねえ。ここには俺がいる……お前は死なせねえ」
『1000000年後』
「あと少し?ああ、今は100万年か...100分の1、こんなに辛かったんだね……」
「ムラハネ?」
「『センエース』、本当にスゴイや……」
「おい、ムラハネ?」
「私も大丈夫ーーーだかーーーらーーー」
「お前の前には俺がいるっ!!!前を向け!!ムラハネ!!」
『10000000年後』
「…………」
「………………」
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『77777665年後』
私達は、黙々と鍛錬をしていた。この無限に等しい時間の中、やることといったらそのくらいしかなかった。
レベルは上げることは出来なかったが、幸い、戦闘力を上げることは可能だった。だから、それを通して私たちは時間を忘れた様に、否、忘れるように戦闘に没頭した。
ある日だった。ただ、暇だったから、ふと隠密していただけだった。
いつもは私を励まして、強気な、慰めてくれるセンが部屋の陰で泣いていたのだ。今の今まで、センが泣いている所は見たことがなかった。
私は隠密を解いた。
「セン兄……なにやってるの?」
私が話しかけると、センはびくりと肩を振るわせた。
「っ!ムラハネか……これは、その……欠伸した時にでるアレってやつだ。心配するな」
「もしかして、辛いの?苦しいの?」
聞いてから、我ながら当然の事を聞いたと思った。そうじゃないか。今までセンが涙を見せなかった理由、強がっていた理由は、私に心配させない様にする為だと悟った。
私は、今の今まで、センが強いから、こんな状況でもメソメソせずにいたのだと思っていた。だけど、違った。センも、私と同様の弱い人間だった。
それに、気づいてしまった。だったら、私がすべきことは一つだ。
「セン兄……ごめん」
「あ?なんだ急に……」
「これまで沢山、頼ってきて……」
「んなことどうでもいいんだよ。兄なんだから当然の事だとも言える」
そう言うセンの背中は小さいはずなのに、大きく、そして主人公の貫禄を見せていた。だけど、もしも兄としての責任があるとするならばーーー
「私、決めたよ。私がセン兄を支えられる人になる」
「はぁ?なに勝手に覚悟決めてんの?いらんいらん。お前はただ、生きてこの空間から脱出できればーーー」
私は、センに抱きついた。兄としての責任を、役割をカタルなら、センを救う、妹の役割もあるはずだ。
「今は胸を貸してあげる。全力で泣いて、泣いて、泣き止んだ後に、私たちは再び、時の牢獄の中に縛られよう?」
「…………本当にすまん、ムラハネ……」
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『99999999年後』
「私達、たくさん強くなったね」
「……ああ、強くなったな…………」
「ありがとうセン兄」
「…………お前をこんな地獄に取り入れて悪かった」
「…………またそれ?大丈夫だよ…………それでも、諦めない勇気を、叫び続けさせてくれたのはセン兄なんだから」
「俺がこんなことをしなかったら、お前がそうする必要もなかった」
「そうじゃなかったら、私はきっと殺されていた。ありがとうセン兄」
「………………………………」
『100000000年後』
ーーー現世に還るーーー