『原作知識チート』と『異能力チート』で意図せず原作主人公の相棒になってしまう話 作:楓舞星
「そう言えば、これから『誰も入れない遺跡』に行くんだがお前もくるか?」
『クトゥルフの遺跡』か。砦とは会ってなかったし、会おうかな。それがたとえ、形骸化した状態だとしても。
「お供させてもらうよ」
そうして、『クトゥルフの遺跡』に私も行くことになった。
「天下の情報班に、この遺跡に関する記録を入念に調べさせましたが、中に入る手段は一切見つかりませんでした。扉の部分に、触れる、なでる、軽く攻撃をしかけてみる……と、一通り、可能性を試してみましたが、何をしようと、うんともすんとも言わず……」
「ふーん……じゃあ、中身とかないんじゃない? 『こういうオブジェ』っていうだけなんじゃね?」
「もしかしたら、この遺跡は、ただのハリボテで、中身がないタイプであるという可能性もありますが、しかし……この遺跡からは……何かを感じるのです」
「何かねぇ……ちなみに、その何かって? 俺、何も感じんのだけど?」
「……はい。なにか……奇妙な感覚を覚えております……胸の奥が……少しだけ熱くなるような……」
「んー、この感覚は、なんとも言えない感じでちゅねぇ」
「え、シューリ、お前も何か感じてんの?」
「むしろ、逆に聞きたいんでちゅけど、お兄は、本当に何も感じないんでちゅか?ムーちゃんは?」
「私も特に感じてないですね」
「...ふーん、そうでちゅか」
「俺とムラハネがおかしいのか?それともアダム、ミシャ、シューリがおかしいのかとうとうわかんねえなこれ」
そう、センが言った時、扉が開いた。
「……空気が変わった……」
一瞬にして場の空気が変化した。私も、急襲に備えて準備をする。
そうして、中に入って行くと現れたのは四つの巨大な腕が襲いかかってくる。どうやら、私も標的に入っているようだ。
「みんな逃げて!」
私がそう言うものの、シューリがギリギリ回避できないレベルだったので、普通にヒロインズは絡め取られた。
「っ……!! えっ、ちょ……マジかよっ……っっ?!!」
センはこの事態に慌てているようだった。当然だろう。私以外全員謎の空間に押し込められたのだから。
そうして私たちが駆け出すと、扉が前に現れた。そこの扉から、一人の十代中盤あたりのお兄さんが出てくる。クトゥルフ・オメガバスティオンだ。
「よう」
クトゥルフ・オメガバスティオン、オメガは呑気に挨拶をかます。
「あの三人に指一本でも触れたら、問答無用で殺す」
センもガチである。この状況は正しくヤバいのである。
オメガはそれに対して、またもやなんともなさそうに、
「あの三人を奪い取った『腕』は、俺の魔法だ。感覚も普通に共有していた。つまり、俺は『すでに、あの三人に触れてしまった』ということになるが?」
「今の俺に、くだらないおしゃべりをする余裕があるように見えるか?」
そうセンを挑発するような発言をしたのだった。
「ねえ、お兄さん。私のこと、知ってる?」
一応聞いてみる。
「ああ、お前がイレギュラーな存在とは聞いている。だが、心配はいらない」
オメガは一つ息を置いて言う。
「……まあ、そう焦るなよ。二人とも。心配しなくとも、お前らが間違えない限り、あの三人は傷つかない」
「……その言い方だと、俺らが間違えた場合、あいつらが傷つく可能性があるって聞こえるが?」
「そう言ったんだ」
「じゃあ、焦るし、心配するに決まってんだろ。バカか、てめぇ」
「おやおや……お前ともあろう男が、自分の力を信じられないと?」
「お前ともあろう男って、俺の何を知ってんだよ。と言うか、俺が心配なのはムラハネの方だ。だれがコイツの背中にモノ預けれるんだよ。コイツ、エグいぐらいビビりだぞ」
そう前を置いてから、
「……つぅか、俺も、俺なんかを信じられるわけねぇだろ。俺は、シューリやトウシと違って、『ガチで優秀な天才』ってワケじゃねぇ。それどころか、今までずっと『頭の悪い根性と気合だけ』で、どうにか、騙し騙し、その場をしのいできただけの無能。話にならねぇ」
詰まる所...
「無能二人でこの状況を乗り越えようってことだぜブラザー!」
ってこと。
私もそんなことを言っておきながら、普通に体の中で見えないようにオーラを練っている。多分、いや確実にセンもしているだろう。
私たちのそんな姿を見て、オメガは、
「くく......」
そう、薄く笑った。
それに対して、センも、
「大事な女を三人も奪われていて、ノンキを通せるほど、俺は男をやめてねぇ。今の俺は、マジでブチ切れている……それを踏まえて返答しろ」
「ーーー俺の女を、とっとと返せ。殺すぞ」
きゃあー主人公カッケェっす!多分オメガ兄貴も同じこと思ってんじゃないっすかね?
「取り返してみろよ。この上なく尊き神の王センエースならば、俺からあいつらを奪い返すくらい楽勝だろ?」
その行き過ぎた挑発の言葉を聞いたセンは逆に冷静となり、
「……テメェ、誰だ?」
「ああ、自己紹介がまだだったな。俺はクトゥルフ・オメガバスティオンという」
「……クトゥルフって名前は、聞いたことがあるが、後半は『初めまして』だな。お前はアレか? クトゥルフの亜種的なやつか? それとも、クトゥルフの本名が、そのオメガなんとかなのか?」
「オメガバスティオンという概念が、クトゥルフという観念を借りている――というのが、俺の状態だ」
「一ミリも意味がわからねぇ。結局、お前は誰だ?」
「俺は、運命を殺す狂気の具現。永き時空を旅した敗北者。月光の龍神クトゥルフ・オメガバスティオン」
「……どこかで聞いたことがあるキャッチフレーズだな。というか、ぶっちゃけ、そいつは、俺が最近、パチモンセンキー戦から使い始めたニューキャッチコピーだ。……これは、偶然か? それとも、何かしらの運命か?」
「くく……偶然だったら、面白いよな。あまりにもかぶりすぎていて、さすがに、笑えるぜ」
「……」
「けど、まあ、……結局のところは偶然だよ。そんなもんだ、運命なんて」
そう言って、オメガは口にする。
「これで、すべての条件が整った」
そうつぶやいて、
オメガのオーラが、淡く瞬く。
「強者は華。堅陣な魂魄は土」
「ーーー最後のアリア・ギアス発動ーーー」
同時に、空間の質が大きく変化した。
『隔離された』と一瞬で理解できる変化。
それを受け、センは、
「……審判じゃなく最後……か。色々と意味不明だな。つぅか、『最後のアリア・ギアス』って……だいぶ、ヤバそうだな。まさか、『もう、今後、誰もアリア・ギアスを使えません』とか、そういう感じじゃないだろうな」
「心配するな。ここでいう『最後』は、あくまでも記号、表題……あるいは命題。――つまるところ『ファイナルファンタジー』くらいの意味でしかない」
「……そうなると、逆に『永遠に終わらなそうな豪胆さ』を感じるな……」
そう言って、センは場を濁してゆく。
「セン、気づいてる?」
私は『原作知識』から知っている。最後のアリア・ギアスの効果を。
「あ?なにがだ?」
「優しい俺が、重要情報をくれてやろう。――最後のアリア・ギアスが発動している間、虚空のアリア・ギアスは鳴りを潜める。完全に効果が消失するワケじゃないが、拘束力は大幅に薄くなる」
そう言いながら、オメガは手を胸の前で合わせ。
「神化」
あっという間に超えていくのは存在値1000の壁。
「今、この時だけ……俺たちは、本来の翼で飛べる」
そうして、
「本気でいくから、本気でこい。センエース。イレギュラー」
「「神化」」
私とセンは共に神化を果たし、そして、
【ああっ!!あーー!!!ビンッビン!ビンッビンだよぉ!!『運命』って奴を感じちゃってる感じだぁ!】
さあ、ここの危機、どう乗り越えようか。
私のスペシャル達がオメガに睨みをきかせる。
オメガは深く息づいてから、
「ふーっ、お前らの相手をするのは...骨が折れそうだが...俺なら出来る...出来る...」
気合いを込めてそう言う。
「最初から、本気を出したほうがいい。言っておくが、俺は、お前らの1000倍強い」
「ほう。そいつはすげぇ。ぶっちゃけ、ドン引きだぜ……まあ、仮に、それが事実だったとしても、俺は、『今の俺』の1001倍強くなって、お前を殺すだけだがな」
「それは凄いねぇ。私もおしっこ漏らしちゃうかも...でも、たかが1000倍で調子に乗るなよ?私は知識上なら1万倍だろうが1億倍だろうが勝ってやる自信があるんだから」
「実に、センエース...お前らしい発言だな。イレギュラーの方は知らんが、お前の『最もイカれている点』は、『その手の発言』が『ただのハッタリ』ではなく、『ガチンコの本音』だという点にある」
ーーー『それでいい』
その心意気に免じて、本当のことを教えてやろう。俺がお前らの1000倍強いというのはウソだ」
「ずいぶんと、お早いネタバレだな。この速度でバラすなら、最初から言わなくてよかったと思うのは俺だけか?」
センの皮肉に対し、オメガは実に真っ直ぐに返した。
「俺は、決して、お前の1000倍強いわけではない……が、しかし、俺はお前と同じくらい強い」
「自慢にならないな」
「自慢じゃない。自虐だ」
「ケンカ売ってんのか?」
「ああ。最初からずっとな」
「……」
「……」
さあ、始めようか。
「そのケンカ、大人買いしてやるよ。かかってこい」
やっぱセンさんカッコいいっす!!!
「だいぶギアが上がってきたな。しかし、まだ最高潮とは言えないな。というワケで、前提を付け加えよう。俺に勝てなければ、あの三人は殺す。凄惨に殺す。徹底的に凌辱して殺す。すべての尊厳を奪い、『命という概念すべて』に『極限の怨嗟』を抱かせてから殺す」
「……」
「冗談で済むとは決して思うな。手間ヒマをかけて殺すのは、普通にめんどくせぇから、正直、やりたくないが……お前が俺に負けたら、俺は、確実に殺戮を執行する。絶対に、だ。この宣言だけは絶対に果たす。俺の名にかけて誓う。命と魂にも誓う。言っておくが、俺の誓いは重いぜ、センエース」
「オメガさんさぁ...いや、そんな誓いなんてしなくてもいいじゃないっすか。ほんと、やめましょうよ。あーたもやでしょ?人殺すの」
私がそう言うものの、オメガはそれを無視し、
「……」
「イヤなら勝てよ。お前に遺された道は、それしかない」
「なんだろうな、お前の、その『妙な口ぶり』……なんつぅか、ずっと、『俺に勝ってほしい』と言っているように聞こえるんだが」
言葉を繋げながら、センは、数万手先を読んでいく。
「勝ってほしいさ。『俺にすら勝てないようなカス』に用はないからな」
「その言い方だと、『お前に勝てる程度の実力者』に対して、何か用件があるように聞こえるな」
「そう言っている」
「で?その要件とは?」
センは、読んでいく。そうして、会話のラリーが終わり、いよいよ決戦をしようとセンは携帯ドラゴンを取り出そうとするが...
「ところで、現状、神化は解放されているようだが、携帯ドラゴンの方は使えねぇ……これは仕様か? それともバグか?」
「いや、バグじゃねぇよ。そして、仕様でもない」
「?じゃあ、どういうーーー」
「単純な話さ。『現状、ルナの使用権は俺にある』というそれだけの話さ。淡い輝きの結晶。いと美しき、月光の携帯ドラゴン、起動。……おいで……ルナ」
その宣言に呼応するように、銀色の粒子が結集して、
「きゅいっ」
かわいらしい、手乗りサイズで二頭身のドラゴンが現れた。
パタパタと小さな翼をはためかせ、ゆっくりと飛び上がり、オメガの頭の上にポスンと着地すると、子猫のように、クルンと小さく丸くなって、スースーと寝息をたてはじめた。
「おいおい……ウチの携帯ドラゴン、なんで、そんなナチュラルかつ完璧に俺を裏切ってんだ?」
「ちな、ウチの方のウェスタは使えるからガチっぽいよ。怖いね。あはは」
センエースの疑問に答えるのは私だと言わんばかりに、オメガは、
「お前よりも、俺の方がいい男だからだろう」
「モブ感が強いお前よりも、俺の方が、キャラ力は上だと思うがねぇ」
「センエース。お前はアレだな。『キャラが立っていればいいってわけじゃない』っていう『いい見本』だな」
「……」
「……」
「「「さあ、始めようか!」」」
【うっひょう!!高まってキタァ!!!】