リッポーは口角をにやりと嫌らしくさせて言った。
「わたしは君が言うところの、“今回のような死体及び現場を作成できる特殊能力” なんか持っていないからねぇ」
「それは証明可能か?」
「ハンター協会最高幹部、十二支んにミザイストム・ナナという男がいる。彼なら証言してくれるだろうね」
「オカルトを否定したいらしきハンター協会の者の証言では証明力に欠ける」
「あ、そ。なら、そこのヒソカの証言を援用しよう。反駁権はないが、ほかの人物が証明のために利用するのは法源が別だ。レギュレーション違反はない」
他人の反駁権に基づいている。ゆえに、可能──たしかに道理だ。そして、想定内でもある。
「いいだろう」わたしは言う。「ヒソカの証言を聞こう」
ヒソカに注目が集まる。彼は組んだ脚に頬杖を突いたまま答えた。あるいは揶揄するように、
「リッポーにそんな発──特殊能力はないね♧」
その注目がわたしに移り、リッポーが挑発するように言った。
「──だそうだよ?」
「そうか。ならば仕方ないな」
わたしが言うと、プレイヤーたちの間に、期待外れだ、というような空気が滲んだ。
「何だよ、偉そうに講釈垂れといて外してんじゃねェか」
マジタニの半畳に同調が連鎖し、
「それでは真犯人を指摘しよう」
一撃で断ち切られた。
一拍遅れて、困惑が広がる。
「どういうこと? わかっていたならどうして初めから指摘しなかったのよ?」
レルートが問いかけてくるが、もはや彼女は傍聴席の名無しにすぎない。
わたしは裁判官だけを見据え、
「安心しろ、攻撃意思はない」
「──なっ、まさかっ!」リッポーが
「お手並み拝見♡」ヒソカは双眸を細める。
わたしはそれを念じた。
── “
【
〈効果〉
・設定したモデルに合わせた、肉体及びオーラの自動精密操作
〈制約と誓約〉
・三大欲求の完全喪失
その瞬間、“非念能力者” に設定し、偽装していた垂れ流しのオーラが操作可能になった。
リッポーは苦々しげに唇を引き結んでおり、一方のヒソカは対照的だ。「ほう」などと愉快げに言って顎をさすっている。
「これでわかっただろう?」わたしは言う。「犯人はわたしだ」
もっとも、犯行に使用したのは、
【
〈効果〉
・幽体離脱して他人に憑依し、操る
〈制約と誓約〉
・術者及び対象者が密室(施錠された部屋。以下同じ)にいなければならない
・術者又は対象者以外の人物が密室内に存在してはならない
・密室が解かれ、又は対象者が死亡すると強制的に解除される
・発動中、術者は完全な無防備状態になる
こちらのほうだが、丁寧に説明してやる必要はない。
「え?」レルートがきょときょととわたしとリッポー、ヒソカを見比べる。「何がどうなってるのよ……」
ほかのプレイヤーたちの反応も大同小異、大差ない。
「──なるほど、だからわざわざ部屋を荒らして自殺説を潰したのか」
リッポーが喘ぐように口を開いた。
「わたしに推理ゲームを開催させ、減刑を勝ち取ることが狙いだった。そこで他人を犯人に仕立て上げられたら最上、それが失敗しても自分を犯人と指摘すればゲームには勝利できる。ギョーセ殺しの懲役が加算されようと刑期が484年の君にとっては大幅減刑なのは変わらない。切り札を露呈させる損失を加味しても期待値はなお高いと言える──これがこの事件の真相か」
リッポーは嘆息まじりに、まったく、と零した。
「とんでもないな、君は」
それからヒソカに目を向けた。
「気づいていたんだろう? だったら教えてくれよ」
「どうして? そんな条項、契約にないじゃないか♢」
非念能力者の中から犯人を捜してくれ、という趣旨の契約だったのだろう。
リッポーは再び、今度は先ほどより大きく息を吐いた。
「──それで、判決は?」わたしは促した。
「……ジョン・E・クリスティーの勝利条件達成を認める。お前の勝ちだよ、“殺人作家” 」
明日のエピローグで完結です。