はじめの一歩RTA ブライアンホーク撃破チャート 作:ヨンドゥ
さーて、年も明け、いよいよプロテスト申し込みの日が近づいてきましたね。
会長の評価も十分なので、プロテストを受けさせてもらえない、なんてことはまずないでしょう。
そして、試験に落ちる可能性もまずありません。なんでかって?
ホラ、見ろよ見ろよ、この能力を!えー……完全に上振れております。
なんならこのまま日本チャンピオンに挑戦しても、原作キャラの強豪や、ゲーム側がランダム生成した上振れオリジナル選手でも出てこない限り、勝てるレベルです。
まだプロにすらなってないんですけどね。こんな奴をプロテストに送り込んでいいんですかね……。
対戦相手が可哀想……。まあ、相手は運が悪かったということで。
おっ。会長から呼び出されましたね。
ゲーム内ではお決まりの、「プロテストに申し込んでおいたから、頑張るんやで~」というお知らせイベントです。
ちなみに会長の好感度が足りない場合、ここで「お前はプロには向いておらん」と宣告されます。
そして悲しい音楽が流れて、そのままGAME OVER。一年間の育成、お疲れさまでした。
無慈悲。
まあ、ホモ君は会長の評価も十分なので、無事にプロテストを受けさせてもらえるようです。
会長室に一緒にいた八木さんや宮田パパも祝福してくれていますね。ありがとナス!
これで一年間の育成期間も、いよいよ大詰め。さーて、プロテストを受けることも決まりましたし、ここから何をするのか。ここまで見てくれている視聴者兄貴姉貴なら、もう分かりますよね?
そうです。練習です。
ホモ君の目標は世界チャンピオンなんだよなぁ!?
プロテストが決まったくらいで、祝ってもらえると思うなよ。
プロテストなんて、世界チャンピオンになるまでのただの通過点です。というわけで、今日もいつも通り鷹村さんにボコボコにしてもらいに行きましょう。
―――――――― 練習中 ――――――――
……ん?なんか心なしか、いつもより練習効率がいいような……。
ホモ君、君ってやつは!ワイと考えてることは一緒なんだね?プロテストなんて所詮は通過点。世界チャンピオンを目指す男が、こんなところで浮かれていられるかって気合いが入ってるんだね?
ワイ、うれしいよ。
…………。
いや。なんか本当に経験値多くない?なんでだ?
…………あ。そっかぁ。
ホモ君、天才に覚醒したんだった。これ、『センス〇』の経験値補正ですね。
というか、鷹村スパーを天才で踏んだの、自分も初めてなんですが……。こんな経験値貰えるんですか?
もちろん、時間をかけて選手たちとの好感度を上げて、複数人で友情タッグ練習なんかを発生させれば、これ以上の経験値を叩き出すこともできます。
でも、それって育成環境が整ってからの話なんですよね。少なくとも一年目、それもプロテスト前の段階で出せる経験値効率じゃありません。
いやー、すさまじい。ホモ君がどこまで強くなってしまうのか、ちょっと楽しみになってきましたね。
さて、それではプロテストまで、この旨味練習を擦れるだけ擦っていきましょう。
―――――――― 練習中 ――――――――
お、イベントが入りましたね。今回は宮田くんと宮田パパか。
なになに……。「最近、お前の動きが良くなっているようだが、何か変えたのか?」ですって。
さすが宮田パパ、見る目ありますねぇ。
息子のためになりそうなことは、しっかり聞き出そうとする理想のパパンでもあります。かつてアル中になって息子を殴ったことからは目を背けるものとする。
さーて、選択肢は……。
「天才ですから」
「えっ? そんなの関係ないでしょ?」
「私にもわからん(メタルマン)」
…………。ろくな選択肢がねぇな?まあ、ここは「天才ですから」を選んでおきましょう。
宮田パパが笑ってますね。「お前もそんなことを言うんだな」だそうです。
普段のホモ君からすると、冗談を言ったように聞こえたんでしょうか。まあ実際、天才になったんですけどね。
宮田パパもかつて天才と呼ばれた男ですし、「天才」という言葉には何か思うところがあるのかもしれません。
宮田くんは……。めちゃくちゃ呆れた顔してますね。なんだその目は。事実だぞ。
その後、宮田親子とみっちり練習しました。おっ、『見切り』を取得!宮田パパがスキルをくれましたね。
『見切り』は、一度見た相手のパンチや技に対して、二度目以降の回避率がやや上昇するスキルです。
聖闘士に同じ技は二度も通じぬ!
……まあ、微上昇なんで普通に当たります。でも、これはかなりの良スキルですね。
基本的にどんなボクサーでも持っていて腐ることがありません。
例外として、相手の攻撃をわざと受けながら戦う『逆境』や『背水』なんかを軸にした、肉を切らせて骨を断つタイプのビルドだと邪魔になることもありますが……。
そんな育成するのは超レアケースです。普通にプレイする分には、まず当たりスキルと思ってもらって大丈夫でしょう。
◇ ◇ ◇
さあ、いよいよプロテスト前日です。あの後も鷹村さんとのスパーを擦れるだけ擦りまして、ホモ君の仕上がりは上々。
ここまで来れば、まず問題ないでしょう。そしてプロテスト前日には、好感度が一定以上のキャラから激励を受けることができます。
ちょっとした経験値も貰えるので、好感度を上げてきた恩恵がこんなところにも出てきますね。
まずは会長。
「いつも通りやればよい。この一年、おぬしがどれだけやってきたかはワシが一番よく知っておる。今さらプロテスト程度で心配はしとらん」
「……じゃが、油断だけはするな。それで足元をすくわれるようでは、この先、世界など到底狙えんぞ」
会長はめちゃくちゃ評価してくれてますね。
まあ、ホモ君も入門した時から世界チャンピオンになるって宣言してますからね。
プロテストくらい余裕で突破してもらいましょう。これからもご指導オナシャス!
続いて八木ちゃん。
「本郷君、頑張って! そしてプロになって鴨川ジムの財政を救ってくれ!」
金金っていうんじゃねぇよ八木のくせによオォン!?目的が違うんだよなぁ。
続いて宮田パパ。
「お前がプロテストか……少し相手が可哀想だな」
おっ、かなり評価してくれてますね。
まあ確かに、鷹村さんとのスパーを一年近く続けた奴がプロテストに出てくるんだから、相手からしたらたまったもんじゃないでしょう。
そして宮田くん。
「本郷さんが落ちることはまずないと思うけどね。俺もすぐプロになるから、待っててよ」
かわいい。待ってるよ♡
お次は栗田。
「お前は落ちることないだろうけどな! 俺も受けるからよ、頑張ろうぜ! あー、今から緊張してきた……」
お前も受けるんかい!来年にはジムからいなくなってると思うけど、栗田君も頑張ってください。
そして最後は――。鷹村さん。
「お前、分かってるよな? 落ちたら破門だよーん」
…………。激励?これ激励で合ってます?
まあ、鷹村さんなりの「お前が落ちるわけねえだろ」という信頼の裏返しでしょう。たぶん。
というわけで、皆さんからたっぷり激励をいただきました。経験値もうまい。
それでは一年間の育成の成果を見せに行きましょう。次はいよいよ――プロテストです。
◇ ◇ ◇
さあ、プロテスト本番当日です。ここは原作でもあったように、プロテストを受ける者同士で実戦形式のスパーリングを行います。
その内容を見て、合否が決定される感じですね。まあ正直、ここは一年間普通に練習してきたなら、まず受かる程度の難易度です。
今のホモ君なら心配する要素はありません。大船に乗ったつもりで、オートで試合を眺めていきましょうか。
なんたってホモ君は世界チャンピオンになる男だからな。プロテスト程度、サクッと突破してもらいましょう。
あ、一応対戦相手のステータスも確認できるので、見ておきましょうか。
ホモ君は『センス〇』をゲットしましたし、あわよくば何か技でも覚えられると美味しいんですが。
どれどれ……。
…………。ふ、普通……。特にこれといって特筆するところがないですね。
よく言えば弱点のないバランス型。はっきり言えば、これといった強みもないモブです。
まあ、プロテストで出てくる相手なんてだいたいこんなもんです。残念ながら得られるものもなさそうですね。
可哀想ですが――。ひと思いにホモ君にやってもらいましょう。
南無三!
さあ、試験開始です。おっと、まずは相手が仕掛けてきましたね。
それをホモ君、簡単にかわして――カウンター気味に左ジャブ!
あーっと、顔面にクリーンヒット!相手はそのままダウン!
……とはさせずに、ショットガンの追撃だあああああああ!!
鬼畜かこのホモ君!相手が崩れ落ちるより先にパンチの連打が襲いかかる!ダウンすらさせてもらえません!
おい止めろ!もう勝ってる勝ってる!あっ、審判が止めました。
…………。もうこれ事故映像だろ。対戦相手のご冥福をお祈りしましょう。
ち~ん。
プロテストを受けに来ただけなのに、こんなのと当たってしまった対戦相手には、ご愁傷様としか言いようがありません。
とりあえず、これなら間違いなく合格でしょう。……むしろこれで落とされたら、危険人物判定されたとしか思えません。あとは結果を待つだけです。
◇ ◇ ◇
無事、合格です!いやー、よかったよかった。これでホモ君も、晴れてプロボクサーになりました。
思い返せば、キャラクリから始まり、鴨川ジムへ入門。
鷹村さんをストーカーしてボコボコにされ。
宮田くんとイチャイチャし。
夏合宿でもボコボコにされ。
なんか天才に覚醒し。
最後はプロテストの対戦相手をご臨終させて――。
ようやくスタートラインです。長かったですねぇ。
というわけで、次回からはいよいよプロボクサーホモ編に入っていきます。
ここから本格的に試合やイベントも増えてきますので、RTAもようやく本番といったところでしょうか。
まだホークのホの字も出てきてませんからね。視聴者兄貴姉貴たち、今後ともよろしくオナシャス!それでは今回はこの辺で。
Side:鴨川会長
プロテストを間近に控えた、ある日のこと。練習を終えた鴨川会長は、八木と宮田を会長室へ呼んでいた。
話題は当然、今年プロテストを受けるジム生についてだった。何人かの名前を確認したところで、八木が待ってましたとばかりに身を乗り出す。
「それで会長。本郷君はもちろん、今年のプロテストを受けさせますよね?」
「無論じゃ」
鴨川は即答した。迷う理由などない。この一年、本郷猛火がどれほど練習してきたのか。誰より近くで見てきたのは、自分たちなのだから。
「まあ、当然でしょうな」
宮田も腕を組んだまま頷く。
「本郷なら、今すぐ日本ランカーと戦わせても十分に試合になるでしょう」
「ふん」
鴨川は鼻を鳴らした。
「買いかぶりすぎじゃ。まだまだ青いわい」
技術は荒い。経験も足りない。防御にも改善すべきところはいくらでもある。挙げればキリがない。
「課題なぞ、ごまんとある」
「相変わらず厳しいですねぇ」
八木が苦笑する。
「当然じゃ。あやつが目指しとるのは、プロになることではないからの」
その言葉に、二人が鴨川を見る。鴨川は腕を組んだ。
「……世界だとぬかしおった」
入門初日。あやつが自分に言った言葉を、今でも覚えている。
――世界チャンピオンにならなきゃいけないんです。
あの時は、随分と大きなことを言う小僧だと思ったものだ。
だが一年。たった一年ではあるが、本郷はその言葉に恥じぬだけの練習を続けてきた。
「じゃが――」
鴨川の口元が、わずかに緩む。
「あやつに才能があることは、認めてやらんでもない」
「おおっ、会長がそこまで言いますか!」
「うるさいわい!」
八木を一喝してから、鴨川は続ける。
「鷹村の奴にも、これで少しは尻に火がつくじゃろ」
「ああ、それなんですよ!」
八木が再び身を乗り出した。
「鷹村君と本郷君。この二人を鴨川ジムの二枚看板として売り出していけば、うちだってもっと――」
「本郷はともかく、鷹村なんぞ恥ずかしくて人前に出せるか!」
「ボクサーとしての話ですよ!」
「ボクサーである前に人間じゃ!」
「そんなぁ……」
八木が肩を落とす。その横で、宮田が小さく笑った。
だが――二枚看板。悪くない。
鷹村がこのまま勝ち進めば、いずれ日本タイトルが見えてくる。そして本郷もプロになれば、その後を追ってくるだろう。
日本王者。東洋太平洋。そして、その先――。世界。
(…………)
鷹村と本郷。二人が腰に世界のベルトを巻き、鴨川ジムへ帰ってくる。そんな光景が、頭に浮かんだ。
(……いや)
(一つとは限らんか)
世界には、いくつもの階級がある。鷹村ならば。そして、本郷ならば――。
「…………」
「会長」
八木の声で、鴨川は我に返った。
「なんじゃ」
「顔」
「なんじゃ、顔とは!」
「ものすごくニヤニヤしてましたよ」
「しとらんわ!」
「してましたね」
宮田まで笑っている。
「うるさいわい!」
鴨川は誤魔化すように机を叩いた。八木と宮田が顔を見合わせ、苦笑する。やがて八木が、嬉しそうに言った。
「でも、本当に楽しみですよね」
「彼らなら日本チャンピオンはもちろん……それこそ世界だって夢じゃありませんよ」
その言葉に、宮田も静かに頷いた。
「そうだな」
少しだけ、遠くを見るような目になる。
「私が挑戦することができなかった世界チャンピオンベルトを……あいつらなら、このジムに持って帰ってくれるかもしれない」
「それに、一郎君だっているじゃないですか」
八木が笑う。
「一郎君も、もう何年かすればプロでしょう?」
「いやいや」
宮田は苦笑して首を振った。
「あいつはまだまだですよ」
だが、その表情はどこか嬉しそうだった。
「ただ――本郷が来てから、明らかに変わりました」
「ほう?」
「以前より練習に熱が入っている。それに最近は、本郷の動きをよく研究しているようです」
負けず嫌いなのは昔からだ。だが、自分より年上で、明確に強い目標となる相手がすぐ近くにいる。それは一郎にとって、得難い環境だった。
「本郷には感謝しないといけませんな」
「ふん」
鴨川は鼻を鳴らす。
「礼なぞいらんじゃろ」
互いに競い。互いに学び。強くなっていけばいい。
鴨川は椅子に深く腰掛けた。
鷹村守。本郷猛火。そして、いずれは宮田一郎も。
(まったく……)
また、自然と口元が緩みそうになる。
(楽しみな奴らばかり増えおって)
今度こそ八木に見つからぬよう、鴨川はそっと口元を手で隠した。
Side:プロテスト対戦相手
緊張している。自分でも、それがはっきりと分かった。グローブをはめた拳を握っては開く。何度繰り返しても、掌にじっとりと汗が滲んでいるような気がした。
(落ち着け……)
大きく息を吸う。今日まで何度も練習してきた。走った。ミットを打った。サンドバッグを叩いた。スパーリングだって、何度もやった。今日になって何か特別なことをする必要なんてない。
(俺はやれる)
(今まで練習してきたことを、そのまま出せばいいんだ)
そう自分に言い聞かせる。プロテスト。今日ここで認められれば、念願だったプロボクサーになれる。
ここまで来たんだ。絶対に合格してやる。
「次、3番と4番――」
番号を呼ばれ、対戦相手へ視線を向ける。
(あいつか)
自分と同じく、今日プロテストを受ける選手。どんな奴なのかと観察して――少し驚いた。
(若いな……)
まだ少年と言っていい顔立ちだ。
(高校生か……?)
自分より明らかに若い。身体はしっかり出来上がっているが、顔だけを見れば、このプロテスト会場にいることに違和感すら覚える。
だが――。
(悪いけど、相手が誰だろうと手加減するつもりはない)
これは試験だ。相手が年下だろうが、高校生だろうが関係ない。こっちだって人生を懸けて、ここまで来ている。
(向こうだって緊張してるはずだ)
自分ですら、これだけ緊張している。あれだけ若いのなら、なおさらだろう。なら――。
(先手だ)
最初からこちらが仕掛ける。ジャブを出して、相手が下がればさらに前へ。考える時間を与えない。
自分のペースに巻き込む。プロテストで、いきなり攻め込まれる。それだけでも相手は焦るはずだ。
一度パニックになれば、練習通りの動きなんてできなくなる。そこを狙う。作戦は決まった。
(よし)
もう一度、リングの向こう側にいる少年を見る。相手は静かにグローブを合わせ、リングへ上がっていく。その表情に、緊張している様子は――。
(…………いや)
分からないだけだ。平静を装っているのかもしれない。
(俺だってそうだ)
怖くないわけじゃない。緊張していないわけでもない。それでも、リングに上がる。それがボクサーだ。
(やってやる)
拳を握る。
(先に仕掛けて、俺のペースに引きずり込む)
それが、この男がプロボクサーになるために考えた作戦だった。
「始め!」
合図が聞こえた瞬間、前へ出た。
(先手を取るんだ!)
決めていた通りだった。相手が試験の空気に慣れる前に仕掛ける。
左を伸ばす。まずはジャブ。当たらなくてもいい。これで相手を下がらせて、こちらのペースに――。
「――っ!?」
いない。ほんの一瞬前まで正面にいた相手の顔が、拳の先から消えていた。わずかに首を動かしただけ。たったそれだけで、ジャブが空を切った。
(なにっ!?)
そう思った時には、もう遅かった。相手の左拳が伸びていた。こちらが打った直後。完全に無防備になった瞬間へ差し込まれる、カウンター気味のジャブ。
見えた。見えたはずだった。なのに、身体が反応しない。次の瞬間――。
バンッ!
顔面を打ち抜かれた。
「――――」
視界が真っ白になった。音が消える。足から力が抜けた。
(え?)
何をされた?ジャブ。ただのジャブだった。それは分かっている。分かっているのに――。
(なんだ、これ……)
身体が言うことを聞かない。膝が落ちていく。立っていられない。
(ジャブ、一発だぞ……?)
意識が遠のく。このまま倒れる。そう思った。だが――。
身体がリングへ沈むより、相手の方が速かった。目の前で拳が動く。
一発。二発。いや。違う。
「――っ!?」
もっと多い。右。左。右。左。上下。左右。
拳が――。
(なんだこれは!?)
ガード。そう思って腕を上げたはずだった。その隙間を抜けて、拳が飛んでくる。
顔を打たれる。腹を打たれる。腕で受ける。また顔を打たれる。止まらない。
(待て)
拳が迫る。
(待ってくれ)
また来る。
(もう無理だ)
また。また。また。
(助けてくれ!)
声に出したかった。だが、口を開く暇すらない。
(殺される!!)
その瞬間。世界が、ゆっくりになった。一発一発の拳が、やけにはっきりと見える。
相手の肩が動く。拳が伸びてくる。グローブが視界を覆う。衝撃。
顔が弾かれる。次の拳が、もうそこにある。避けられない。防げない。
反撃なんて考える余裕すらない。ただ、殴られる。なのに――。倒れられない。
身体が崩れようとするたび、次の拳が身体を打ち抜き、無理やり立たされる。
(なんなんだよ……)
時間にすれば、ほんの数秒だったのだろう。だが、それが何十秒にも、何分にも感じられた。
(プロって……)
また拳が迫る。
(プロボクサーって……)
今日まで頑張ってきた。練習してきた。自分ならプロになれると思っていた。そのために今日、この場所へ来た。
なのに。同じプロテストを受けに来た少年を相手に――何一つできない。
(こんなバケモノがなるものなのか……?)
なら。自分なんか――。
(無理だ……)
(俺じゃ、プロなんて――)
「そこまで!!」
突然、誰かの身体が割って入った。拳が止まる。ようやく。ようやく、終わった。
そう理解した瞬間、全身から力が抜けた。身体がリングへ崩れ落ちる。もう、立とうとは思えなかった。
ただ、霞んでいく視界の中で相手の姿を見上げる。まだ未成年だろう、この男。自分と同じ、今日プロテストを受けに来た少年。なのに。
(……世界が違う)
それを最後に。意識は暗闇へ落ちていった。
読んでくれてる方ありがとナス!
とりあえずこの次までできてるんでそこまでは修正してあげますんでよろしくおなしゃす!