はじめの一歩RTA ブライアンホーク撃破チャート 作:ヨンドゥ
【オープニング映像】
はい、今日も世界チャンピオン目指してやっていきましょう。
え?何かいつもと違うって?
さすが慧眼な兄貴達よくお気付きで。そうなんです。なんと今回オープニングを作ってみました。
どうすか?なになに……。
『センスがいい』
『かっこいい』
『抱いて』
ですって?いやー照れますね。まあ、そんなエアコメを読んでも虚しいだけなんですけどね。しかし今はきっとそんなコメントが流れていることでしょう。知らんけど。
えーでは今度こそ。今日はついに新人王トーナメントへの出場が決定したので、それに向けて進めていきたいと思います。
え?『プロ二戦目の試合からじゃなかったか?』ですって?
…………。え、もう見せましたよ?気付きませんでした?オープニングのバックに流れてた試合映像あるでしょ?あれです。
……ゆるして。
なんの見所もありませんでした!
いや、だってしょうがないじゃないですか!普通のモブ相手に普通に勝っただけなんですもん!試合内容?一ラウンドKOです。
以上!というわけでプロ二戦目、完!新人王トーナメント編はーじまーるよー!
◇ ◇ ◇
といってもやることはいつも通り練習していくだけなんですけどね。
お、その前に八木さんに声をかけられました。新人王トーナメントに出場するということでその辺の説明をしてくれるみたいですね。このゲーム初見の兄貴達もちゃんと聞いていってくれよな~頼むよ~。
えー、今回の新人王トーナメントは三回勝てば東日本新人王になり優勝できるみたいですね。そして東日本新人王になると今度は西日本新人王との対抗戦。そこで勝てば全日本新人王となり日本ランキング十位にランクインします。
日本ランキング十位。ここまで来ればもう日本チャンピオンも手が届くところまで来ますね。ようやく最初の目標が見えてきました。
……と、八木さんの説明が終わりました。八木さんありがとう!フラーッシュ!!
初見兄貴達も分かったかな?分かんなかった兄貴達に簡単に説明すると――。四回勝てば新人王になる。そう思ってくれればOKです!では説明も終わったのでいつも通り練習していきましょう。
―――――――― 練習中 ――――――――
またイベントですね……誰かジムにやって来ました。
現れたこの人は藤井さんですね。原作未読兄貴に説明するとボクシング雑誌の記者です。
原作でもちょいちょい良い役どころで出てきて選手や対戦相手の情報を持ってきてくれたり、一人のボクシング好きとして熱く語ったりとわりかし良いキャラです。
個人的には一歩のマッマが倒れたことで引退を考えてる時に、対戦相手の冴木のビデオを持ってきて奮起を促すシーンが結構熱くてすきです。
さて、ゲーム的な説明をするとこの藤井さん。記者という立場を活かして対戦相手の情報を教えてくれたり、インタビュー記事を書いて世間からの評価、知名度、人気なんかを上げてくれたりします。
そういう意味では、情報収集と人気関係を担当するサポートキャラですね。
……なんですが。正直、ゲーム的にはそこまで重要じゃないです。
対戦相手が原作キャラや固有キャラならぶっちゃけ調べれば情報は出てきます。ランダム生成キャラの時に多少役立つかなくらいですね。……しかも、完璧な情報を教えてくれるわけではないという。
そして世間からの評価や知名度、人気なんかも普通にプレイしていれば試合をしていくうちに自然と上がっていきます。
なので藤井さん。原作では結構好きなキャラなんですがゲーム的には悲しいことに影が薄いです。
ちなみに同じ記者系のキャラでも後に登場する藤井さんの後輩『飯村真理』がいます。こっちは彼女にできるうえにイベントで優良なスキルまでくれる有能キャラだったりします。
悲しいなぁ……。
さてゲームに戻りましょう。はい、どうやら若手のホープであるホモ君にインタビューしたいということですね。
いやー、照れるぜ。まずは簡単な個人情報からですね。
まず年齢を教えてくれるかな?
24歳です
24歳?もう働いてるの?
学生です
学生?あっ、ふーん え、身長体重はどれぐらいあるの?
身長が170cmで体重が~
っておい!なんだこのインタビュー!?
野獣先輩のインタビューじゃないか……たまげたなぁ
藤井さんがこんなインタビューするわけないだろ!いい加減にしろ!
というわけで今のは全部嘘です。実際は至って真面目なボクシング雑誌のインタビューなのでご安心ください。
ボクシングを始めたきっかけ、趣味、好きな食べ物、好きな動物などなど色々と聞かれていきます。
えー、これが最後の質問みたいですね。
「自分の一番の武器は何だと思う?」
あー、これは確か選んだ選択肢によって成長スタイルを若干修正できるイベントでしたね。選択肢はっと。
『パンチ力』
『スタミナ』
『スピード』
『打たれ強さ』
『顔』
……顔ってなんだ顔って。
これ、確か魅力が一定以上高い時か魅力アップ系のスキルを持ってる時しか出てくるの見たことないんですけど。
ホモ君、もしかして魅力値も結構上がってるのか……?
まあここは『パンチ力』でいいでしょう。力こそパワー。パワーで敵をぶっ倒していく方針は最初から変わってません。
というわけで『パンチ力』を選択。これでさらにパワーの成長率が上がったはずです。さらに脳筋になりました。そして最後に次の対戦相手の情報をくれるみたいですね。
なになに……。どうやら次の相手は、耐久力に自信ニキみたいですね。……ほう。
その耐久、信じていいんだな!
ここまでホモ君の試合見所なしでしたからね……プロテストもデビュー戦も二戦目も、相手がまともに何かする前に終わってます。
しかし今回の相手は耐久型、ここらで少し視聴者兄貴達にもホモ君の試合をまともにお見せできるかもしれません。
果たしてホモ君のパワーを相手がどこまで耐えられるのか。新人王一回戦、ようやく試合らしい試合になるかもしれません!
さて、対戦相手の情報も手に入ったところで。試合までどうするかですが――まあやることは変わりません。
練習です。相手が耐久型だからって今さら小細工する必要もないでしょう。固いならその耐久ごとぶち抜けるくらい強くなればいいんだよ!というわけで試合当日までいつも通り鍛えていきましょう。力こそパワー!
―――――――― 練習中 ――――――――
―――――――― 練習中 ――――――――
◇ ◇ ◇
さあ、試合当日までやってきました。え?早くないって?
練習練習&練習してたらあっという間でしたね。さてさて、それでは本日の対戦相手を見てみましょう。
おー……。藤井さんが教えてくれた通り耐久型ですね。スタミナと打たれ強さが突出してます。スキルもわりと防御・耐久系で噛み合ってますね。
ランダム生成にしてはやるじゃない(ニコッ
タフという言葉は対戦相手君のためにある。
藤井さんが言ってた通り殴られて耐えることに関してはかなり強そうです。いやーいいですね。
まあ――。どこまでいっても新人王トーナメント一回戦レベルです、負けることはないでしょう(慢心)
それじゃあ、新人王トーナメント一回戦、やっていきましょう!試合スタートです。
……相手、全く仕掛けてきませんね。あっこれは『亀作戦』を使ってきてますね。
説明しよう!亀作戦とは原作でも何度か登場したガードをガッチリ固めてひたすら守り、相手にパンチを打たせ続けることでスタミナを奪う作戦のことである。
本ゲームでは技の一つに分類されてまして使用中はパンチを打てなくなる代わりにガード性能が大幅にアップ。さらに相手にはパンチを打った際のスタミナ消費量が増えるデバフがかかります。
つまり――殴れば殴るほどこっちが先に疲れるわけですね。耐久特化のキャラとは非常に相性がいい技です。
硬いガードでパンチを受け続けてこっちが疲れたところを狙う。
なるほど。いいでしょう。そっちがそうくるなら!殴ってやろうじゃねえかよ(脳筋)
まあオートなんでどうするかはホモ君次第なんですけどね。
さあ!ホモ君の攻撃が始まりましたよ。ジャブ、ストレートと打っていきますが――。
お相手耐えてますね。ガードもしっかり固い。これホモ君の公式戦でパンチをまともに耐えられたの初めてじゃないですか?
いやー、やっとですよ。やっとまともに視聴者兄貴達に試合を見せられそうでワイは嬉しいよ。今まで試合始まったと思ったら終わってましたからね。
さあ、ここからどうなるか――。おっホモ君の回転が上がってきました。
ストレート。ジャブ。ストレート。ジャブ。
連打が止まりません。相手が反撃してこないんで、どんどん回転が速くなってますね。
…………。あっ、そっか……。
ホモ君『連打〇』持ってるんですよね。これ、止められないと連打すればするほど威力とスピードが上がっていくんですけど……。
…………。大丈夫そう?
あっ。相手のガードが崩されていきます。
ちょ、待っ――。あー、ショットガンまで打ち始めた(遠い目)
…………。はい。相手がボコボコです。しかも倒れさせてもくれません。
前にもこんなの見たなぁ……。いや、あの時よりひどいかも……あっ、審判が入った!
止めました!試合終了です!そして対戦相手が――。そのまま倒れ込みました……。
…………。
ホモ君、勝ちました。勝ったんですけど……。会場がシーンとしてますね……。普通試合が終わったら歓声で盛り上がるもんなんですけどね……。
どうしてこうなった。
えー、まあ無事新人王トーナメント一回戦も勝利です!しかもホモ君、今回の試合で『亀作戦』を覚えたようです……。亀作戦かぁ……使うことあるかな……?
まあ、貰えるものは貰っといて損はないんでいいんですけど。まだまだ先は長そうですが、引き続きお付き合いお願いします!
それでは今回はここまで!ご視聴ありがとうございました!
side 藤井
藤井が鴨川ジムを訪れると真っ先に声をかけてきたのは鷹村だった。
「おっ、藤井ちゃん!」
藤井の姿を見つけるなり鷹村がニヤリと笑う。
「なんだ、俺様への取材か?いいぜ特集組むなら独占インタビューでもなんでも――」
「いや、今日は本郷君に話を聞きたくてね」
「なにぃ!?」
鷹村の顔が露骨に歪んだ。
「猛火に取材だぁ?百年早えぞ、百年!あんなヒヨッコより俺様を取材しろ!」
「そう言わないでよ。プロになってから二戦連続で一ラウンドKO勝ち、しかも相手のパンチをいまだに一発も受けてない。当然新人王トーナメントにも出るそうじゃないか、そろそろ話くらい聞いておこうと思ってね」
「ケッ!あいつなら今さっき俺様がボコってきたところだよ」
「君が?」
藤井の目が僅かに細くなった。よく見れば鷹村の顔に僅かに打たれた跡が残っている。
(……まさか、本郷君が?)
鷹村ほどのボクサーを相手にパンチを当てているということか。
本郷猛火。プロデビューから二戦二勝、二KO。数字だけ見れば文句のつけようがない。
特に二試合とも相手にほとんど何もさせず早々に試合を終わらせている。
もっとも――。
(今までの二人は、前評判の高い選手ではなかった)
決して弱い選手というわけではない。だが、将来を嘱望されていた新人でもなければ藤井が以前から注目していた選手でもない。
だからこそ二戦を見ただけではまだ判断しかねていた。強いのは間違いない。だが――どれほど強いのか。新人王トーナメントを追っていけばそれも見えてくるだろう。
「鷹村君、本郷君とはよくスパーをするのかい?」
「あ?まあな」
鷹村は大したことでもないように答えた。
「……へえ」
藤井はもう一度、鷹村の顔に残った跡へ目を向ける。
(なるほど……)
(これは来た甲斐がありそうだな)
◇ ◇ ◇
「本郷君だね。記者の藤井です、よろしく」
簡単に挨拶を済ませ藤井はさっそくインタビューを始めた。ボクシングを始めたきっかけから、趣味、好きな食べ物、好きな動物。いくつか簡単な質問を重ねていく。そして最後に藤井は尋ねた。
「本郷君。自分の一番の武器はなんだと思う?」
「一番の武器ですか?」
猛火は少し考える。
「……パンチ力、ですかね」
「パンチ力?」
「はい」
猛火はそう答えたあと、少しだけ考え込んだ。
「必要なんです」
「必要?」
「相手を倒せる力が。もっと強くならないと……もっと、鍛えないといけないんです」
「…………」
藤井のペンが止まった。ここまで二戦。どちらも一ラウンドで相手を倒している。
「君は、自分のパンチ力が足りないと思っているのかい?」
「はい。まだ足りません」
猛火は迷うことなく答えた。
「もっと必要なんです」
「……そうか」
藤井は手元のメモへ視線を落とした。自分が聞いたのは一番の武器だったはずなのだが。
返ってきたのは、まるでこれから一番伸ばさなければならないものについての答えだった。
(……不思議な子だな)
藤井は僅かに首を傾げながら、再びペンを走らせた。そしてふと思い出す。
(だけど……ちょうどいいかもしれないな)
先日取材した猛火の次の対戦相手のことを。
『確かに、凄い破壊力を持ってるみたいですね』
猛火について尋ねた時彼はそう答えていた。
『でも、耐えきりますよ。俺、耐えるのは得意なんです』
そして最後には、自信ありげに笑っていた。
『まあ、見ててください』
「本郷君」
「はい?」
「一つ、次の対戦相手について教えておこう」
藤井は手帳を閉じた。
「今度の相手は、君のパンチを耐えきるつもりらしいよ」
「僕のパンチを?」
「ああ。打たれ強さには相当な自信があるみたいだ」
「…………」
猛火は自分の拳へ視線を落とした。そして――ほんの少しだけ口元を緩めた。
「それは……ちょっと楽しみです」
「楽しみ?」
「はい。僕のパンチがどこまで通じるのか」
これまで淡々と質問に答えていた時とは僅かに声の調子が違っていた。藤井はそんな猛火を見て少しだけ笑った。
「そうか。なら、試合を楽しみにさせてもらうよ」
◇ ◇ ◇
数日後。猛火への取材を終えた藤井は編集部で記事を書き上げていた。プロデビューから二戦連続一ラウンドKO。未だ公式戦では一発のパンチも受けていない期待の新人。そして目前に迫った新人王トーナメント。
「……こんなもんか」
原稿を確認し、藤井が一息ついた――その時だった。
「藤井さん!」
後輩が慌てた様子で駆け込んできた。
「藤井さん!なにしたんすか!」
「なにがだ?」
「なんかウチに、あの本郷ホールディングスから連絡来たみたいですよ!」
「…………は?」
思わず聞き返した。
「本郷ホールディングスって……あの?」
「その本郷ホールディングスですよ!本郷猛火の記事を書くなら掲載前に内容を確認させてほしいって!」
「なんでボクシング雑誌の記事に大企業から検閲が入るんだよ……」
藤井は頭を抱え――ふと、動きを止めた。
「……待てよ」
本郷ホールディングス。本郷猛火。
「もしかして本郷君って……本郷ホールディングスの関係者なのか?」
「もしかしてって……藤井さん、知らずに取材したんすか?」
「知らねーよ!ボクシングの取材で実家まで調べるか普通!」
「いや、でも本郷ですよ?」
「本郷なんて名字、日本中に何人いると思ってるんだ!」
「御曹司みたいですよ」
「本当かよ……?」
藤井は先日の猛火を思い出す。そんな素振りは欠片もなかった。
「……全然そんな風には見えなかったぞ」
◇ ◇ ◇
結局、記事は本郷ホールディングスへ送られることになった。変なことを書いたつもりはない。それでも相手が相手だけに編集部には妙な緊張が走った。
そして数日後。
「藤井さん!返事来ました!」
「なんだっていうんだよ……」
「えーっと……『大変素晴らしい記事でした』」
「……はあ」
「あと、『今後とも本郷猛火をよろしくお願いいたします』だそうです」
「…………」
藤井はしばらく黙った。記事を書いただけなのになぜか大企業から息子を託された。しかも、話はそれだけでは終わらなかった。
「藤井!」
今度は編集長に呼び止められる。
「よくやった!本郷ホールディングスから直々に好意的な返事が来たそうじゃないか!」
「いや、俺は普通に取材して記事を書いただけなんですが……」
「謙遜するな!これを機にいい関係を作っておけよ!」
「はあ……」
「本郷君の記事も、今後はお前に任せる!」
「…………」
どうやら知らないうちに仕事まで増えたらしい。
「……ただ取材しただけなんだけどな」
藤井の呟きは誰にも聞かれなかった。
side 鴨川ジムメンバー
「なんか今日、客多くねえか?」
木村が周囲を見回しながら言った。まだメインイベントには程遠い。新人王トーナメントの一回戦、それも試合が始まる前だというのに客席は普段より明らかに埋まっていた。
「ほら、本郷がこの前取材受けてただろ?」
栗田が答える。
「あの記事が結構話題になったらしいぞ。二戦連続一ラウンドKOで、おまけにまだ一発もパンチもらってないとかで」
「あー、あれか」
「それに、本郷ホールディングスの御曹司だってのもなんかバレて話題になってたぜ」
「強くて金持ちで、顔も悪くねえ。そりゃ人気出るよな」
青木が客席の一角へ目を向ける。そこには明らかに猛火目当てらしい女性客の姿もあった。それを見た鷹村の眉間に皺が寄る。
「……許せん」
「何がだよ」
「猛火の野郎、またキャーキャー言われやがって……!」
鷹村はリングへ向かって拳を握った。
「まあ、人気が出ると――」
「逆にこうやって嫉妬する奴も出てくるけどな」
青木と木村が揃って鷹村を見る。
「馬鹿な話してないで」
宮田がリングへ視線を向ける。
「試合、始まるよ」
猛火と対戦相手がそれぞれリング中央へ進んでいく。鷹村も腕を組みリングへ目を向けた。ゴングが鳴る。だが対戦相手は前へ出ようとはしなかった。両腕で顔と身体を固めひたすらガードに徹している。
「おいおい、相手の奴やる気あんのか?」
青木が呆れたように言う。
それを見た鷹村が僅かに口元を上げた。
「ほう……亀作戦か」
「亀作戦?」
木村が鷹村を見る。
「知ってんのか?」
「今、俺様が名付けた」
「今かよ!」
「見ての通りだ。パンチを打たず、亀みてえに引っ込まって守り続ける作戦だ」
「……それでどうやって勝つんだよ」
「さあな」
「わからねえのかよ!」
「いや、見てみろ。案外効果はあるかもだぜ」
栗田がリングを指さした。猛火のジャブがガードを叩く。続けてストレート、それでも相手は崩れない。
これまで猛火の拳をまともに受けた相手はほとんどそのまま倒されていた。だが、今回は違った。
「おお、耐えた」
「ああやって守り続けて、猛火を疲れさせるんだよ」
栗田は青木と木村を見る。
「お前らも、ずっと攻撃し続けたら疲れるってのはよく知ってるだろ?」
「…………」
「…………」
二人の脳裏に以前の鷹村とのスパーが蘇った。当たるまで殴ればいい。猛火の助言を信じひたすら拳を出し続け――。結局、一発も当てられないまま力尽きた。
「……なるほど!」
青木が声を上げた。
「木村!これ、俺たちも使えるんじゃねえか!?」
「何が?」
「鷹村とのスパーだよ!俺たちも亀になりゃいいんだ!」
「……!」
木村の目が見開かれる。
「そうか!こっちから攻撃するから疲れるんだ!最初から攻撃を捨てて防御に徹すればいい!」
「そういうことだ!」
「……やめた方がいいと思うよ」
宮田が呆れたように口を挟んだ。
「あ?」
「ああなるのがオチだよ」
宮田がリングを指さす。
「「ああ?」」
二人がリングへ視線を戻す。猛火の連打が止まらない。ジャブ、ストレート、またジャブ。
相手が反撃してこないのをいいことに拳の回転はむしろどんどん速くなっていく。
「おい……」
「なんか、どんどん速くなってねえか?」
やがて、相手のガードが崩れ始めた。そこへ――猛火の拳がさらに加速する。
「げっ、ショットガン……!」
無数の拳が崩れかけたガードへ叩き込まれた。相手は倒れない。いや――倒れる暇すら与えてもらえない。
「…………」
「…………」
先ほどまで盛り上がっていた青木と木村が無言になる。
「……俺たちが鷹村相手にやったら」
「ああなるな……」
「……やめとくか」
「……そうだな」
「だから言ったでしょ」
宮田が小さく息を吐いた。
「別に、守りから入ること自体は悪くないと思うけどね」
宮田はリングへ視線を戻す。
「パンチを避けて、最低限のブロックで済ませられるなら、あの作戦も有効だったかもしれない。でも――」
再び猛火の拳がガードを叩く。
「本郷さんのパンチを全部ガードで受けて『さあ好きなだけ打ってください』じゃ……ああなって当然だよ」
その間にも猛火の拳は止まらない。ついにレフェリーが二人の間へ飛び込み、猛火を押し退ける。試合終了。
猛火の勝利が告げられ、その直後――。対戦相手が力なくリングへ崩れ落ちた。
「…………」
会場が静まり返る。試合前まで聞こえていた黄色い声援も今はない。誰もがリングの上の光景を呆然と見つめていた。
「いやー……なんかお通夜みたいになってんな」
栗田が周囲を見回す。
「そりゃそうだろ……」
木村が引きつった顔で答えた。
「ケッ」
鷹村は鼻を鳴らす。
「ボクシングを見に来て、実際に殴られた奴見て引いてんじゃねえよ」
「いや、限度ってもんがあるだろ……」
「あんなもんまだ可愛い方だ。俺様の試合なんかもっと――」
「張り合うなよ!」
栗田のツッコミが飛んだ。
いつも読んでくださってありがとうございます!
序盤に入れたいネタが大体使い終わってきました!
終盤に入れたいネタとか展開の考えはまだまだ大量にあるんですけど…そこまでにいく中盤は入れたい考えスカスカなんですよね
早く一歩が出てくるところまではいきたいです