はじめの一歩RTA ブライアンホーク撃破チャート 作:ヨンドゥ
視聴者兄貴達オッスオッス!今日も元気にやっていくんでお付き合いください。
さて、新人王トーナメント一回戦も無事突破、次の試合に向けていつも通り練習からスタートしていきましょうかね。
お、その前にイベントですね。八木さんがホモ君を呼んでいます。なになに……八木さんからホモ君に手紙が渡されます、差出人は……知らない名前ですね。
なんでしょうか……手紙を開いて――。あっ、ファンレターだこれ!あー、なるほど。
これ世間での知名度と人気が一定以上になったことを知らせるイベントですね。
ちょうどいいのでこのゲームの『人気ランク』について説明しておきましょう。
このゲームでは試合に勝ったり、この前のように取材を受けたり、人気や知名度の上がるイベントをこなしたりすることで主人公の知名度と人気が少しずつ上昇していきます。
で、それが一定値を超えるごとに『人気ランク』が上がっていくわけですね。
最初は、誰にも知られていない『無名』、そこから――。
『期待のルーキー』
『街の人気者』
『全国区』
『スター選手』
『国民的英雄』
そして最上位の『世界的スーパースター』
『世界的スーパースター』なんかはよっぽどやり込むか、人気が大きく上昇するイベントを大量に踏まないと到達できないようなランクですしね。しかも、苦労して到達したところで一敗しただけですぐにランクが下がったりもするという鬼畜仕様。
スターの世界は厳しいですねぇ……。
まあ、ブライアン・ホーク打倒が今回の目標ですから、さすがに『世界的スーパースター』まで上がることはないと思いますが。
で、人気ランクが上がると何か意味があるのかというと――もちろんただ肩書きが変わるだけじゃありません。ランクが上がることでそれまで発生しなかったイベントが色々と解禁されます。
そしてランクアップした際には今みたいにそれを知らせる専用イベントが発生するわけですね。
つまり現在のホモ君は――。
『期待のルーキー』
ここまで人気ランクが上がったということです。そりゃまあぼちぼち名前も売れてくる頃でしょう。プロで三連勝してますし勝ち方も圧倒的ですからね。
それにこの前の藤井さんのインタビュー記事、あれも世間での知名度や人気を上げるイベントでしたしね。
いやー、ホモ君もついにファンレターを貰える男になったかぁ。ちなみにこのファンレター貰うと次の練習の効率がアップするので育成的にもかなり強いイベントなんですよね。
今後は定期的にファンレターが届くようになるので、その分ホモ君の成長効率もまたグンと上がっていきます。
こんな感じで人気ランクが上がるごとに解放される定期イベントは育成において強いものが多いです。なので人気や知名度もできる範囲で上げていきたいところですね。
特に次の『街の人気者』ここまで上がると、練習中やロードワークの最中に街の人から差し入れを貰って、体力を回復できるイベントが発生するようになります。
ロッキーかな?
これがかなりデカいです。体力が回復するってことはその分休養を減らして練習できるってことですからね。『鉄人』と合わせればさらに練習回数を増やせるようになります。
というわけで次は『街の人気者』を目指しつつ――。引き続きホモ君をしばき……鍛えていきましょう。
―――――――― 練習中 ――――――――
はい練習終わりにイベントですね。どうやら青木と木村のプロテストの日程が決まったようです。ついにこの二人もプロ入りですか。
まあ原作通りですね、頑張ってもらいましょう。
……ん?栗田さんも?…………。あれ?栗田さんってホモ君と一緒にプロテスト受けてませんでしたっけ?
…………。あっ(察し)
そういやあの時ホモ君の試験が終わったところでイベントも終わってましたね。栗田さん……。落ちてたんすね……。
青木と木村それに栗田さんからプロテストについてのアドバイスを求められます。栗田さん……あんたは経験者やろがい!
なになに、選択肢は……
『とにかく攻め続ける』
『落ち着いて自分のボクシングをする』
『相手を倒せば受かる』
『気合い』
はい。いや、『相手を倒せば受かる』も間違ってはいないんですけどね、それはプロテストのアドバイスとして正しいんですかね……?
普段ならここは『落ち着いて自分のボクシングをする』を選ぶんですが、今回は『気合い』を選んでいきましょう。
『落ち着いて自分のボクシングをする』を選ぶと確率で【冷静】のスキルを覚えられるんですよね。普通にプレイするならかなり強いスキルなので基本はこっちを選んでいいと思います。
ただ、今回のホモ君はすでに【鈍感】を持っていますんでね【冷静】とは効果がちょっと被ってるんですよね。
まあ【冷静】の方が強いんですけど……。【鈍感】持ってるなら別にいらないでしょ(適当)
というわけで今回はスルーします。で、『気合い』を選ぶとこっちは確率で【根性】を覚えられます。【根性】も結構強いスキルなんですよね。せっかくならこっちを狙っていきましょう。
というわけで――。『気合い』を選択!
ぽちっとな!がんばれがんばれできるできる絶対できるがんばれもっとやれるって!!
はい、イベントが進んでいきます。
要約すると技術だの作戦だの色々あるけど最後は気持ちで負けるな!気合いで乗り切れ!……みたいな感じですね。
うーん、実に鴨川ジムらしいアドバイスだぁ。まあ鴨川ジムの場合、超濃密な練習をこなして、徹底的に基本を叩き込んで、その上で最後は気合い!ですからね。
別に気合いだけで全部なんとかしてるわけじゃないですけど。むしろ、やること全部やった上で最後にものを言うのが気合いって感じですかね。
青木と木村もなんかやる気になってますしまあいいでしょう。そして栗田さん、どうやら前回のプロテストでは緊張しすぎて試合中ずっと上の空だったみたいですね。
あー……。それで落ちたのか。今回は「絶対に受かる!」と気合いを入れ直してます。
うん、前回よりは大丈夫そうですね。さて、イベントも終わりまして――。
肝心の【根性】は……。取れませんでした!はい残念!まあ確率なんでしょうがないですね。
青木、木村、栗田さんプロテスト頑張ってください。ホモ君は何も得られませんでした(無慈悲)
では、練習に戻りましょう。
―――――――― 練習中 ――――――――
お、またイベントですね。……というか前回のプロテストイベントの続きですね。これ連続イベントになってまして確かまだ何回か続くはずです。
どうやら青木、木村、栗田さん。無事に三人ともプロテストに合格したようです。
おめでとナス!いやー、よかったよかった。というわけで、もう三人ともプロデビュー戦が決まったみたいです。
ファッ!?
展開が早い。それでデビュー戦までの間ホモ君にも練習に付き合ってほしいとのことです、なるほど……ここで選択肢ですね。
『あ、いいっすよ』
『嫌です……(小声)』
選択肢の内容は意訳ですがまあ要するに練習に付き合うか断るかの二択です。うーん……。
純粋な練習効率だけ考えるなら鷹村さんとスパーしてた方がいいんですよね。あっちの方が貰える経験値も多いですし何よりホモ君の成長に直結します。
ただ、こっちはこっちでイベント練習。こういうイベントはスキルを覚えたり特定の能力に経験値が入ったりすることがあります。一回くらいなら寄り道してもいいでしょう。何か貰えるかもしれませんし……というわけで。
『あ、いいっすよ』
こっちを選択します。
はい。新人ボクサー専属調教師ホモ君の誕生だ!
というわけで、これから一か月の間練習する際は青木・木村・栗田さんの誰かがいる練習しか選べなくなります。まあ、三人ともいない時は普通に好きな練習を選べるんですけどね。
一か月も練習を制限されるのはちょっと痛いですがイベントを受けた以上は仕方ない。なるべく効率を落とさないようにやっていきましょう。
―――――――― 練習中 ――――――――
―――――――― 練習中 ――――――――
はい。今のところ三人の誰かがいる、かつ鷹村さんか宮田きゅんもいる練習を踏めているので経験値的には結構美味しいですね。さすがに鷹村さんとのスパーほどじゃありませんがこれなら十分でしょう。
―――――――― 練習中 ――――――――
―――――――― 練習中 ――――――――
そんなこんなで一か月。青木、木村、栗田さんのデビュー戦に向けた練習もこれで終了です。いやー、一か月も新人三人の練習に付き合いましたよ。もう半分トレーナーだろこれ。
おっ。なんかスキル覚えましたね。
【面倒見〇】
本当に面倒見が良くなってて草ァ!まあ、一か月も三人の面倒見てたんだからそりゃそうか。
【面倒見〇】は、他の選手との合同練習時に相手の好感度が上がりやすくなり自分にも少し経験値ボーナスが入るスキルです。
あと確か練習終わりに相手へアドバイスするイベントが発生するようになったりもしましたかね。
直接試合に影響するスキルでもないですし、好感度アップも【人たらし】と結構被ってるんで必要ないっちゃ必要ないんですが……。
まあ、あって困るようなものでもないのでいいでしょう。
これから一歩も入ってくるでしょうし一緒に練習する相手が増えてくればこの微々たる経験値ボーナスも馬鹿になりません。
それにアドバイスイベントも相手の好感度を上げたり、たまにこっちが何かスキルを覚えたりすることがありますからね。
そして連続イベントはまだ続きます。これがこの連続イベントの最後になるでしょう。
青木、木村、栗田さん。三人のプロデビュー戦を観戦しに行くイベントですね。今回は鷹村さんと宮田くんも一緒です。
ちなみに宮田くん。自分より弱い三人が先にプロデビューすることになったのがどうにも納得いかないご様子。俺の方が強いのに……みたいな感じでちょっといじけてます。
クソガキ感ある宮田きゅんかわいい(小並感)
まあ君は中学生だから仕方ないね。さあそんな宮田くんは置いといて試合です。まずは木村から。
……なんですが。ガッチガチですね。初めてのプロのリングということで緊張しまくってます。動きも硬いし明らかにいつもの力を出せてません。
そんな木村を見て鷹村さんから一喝。
「昔の情けない自分に戻りてえのか!」
……みたいな感じで発破をかけます。まあ実際は「チンポいじってたあの頃に戻りてーのか」とか言ってるんですが。
しかもそれ青木です。人違いです……。鷹村さんさぁ……。
そしてここで――。ホモ君にも選択肢が出ましたね。どうやらリングの木村に何か叫べるようです。なになに……。
『スパーを思い出して』
『気合いだ』
『さっさと倒せ!』
『さっさと倒せ!』なんて言ってたら、それはもうホモ君は鷹村Ⅱなんよ……勘弁してください。
ここは真剣に考えて『スパーを思い出して』にしておきましょう。この一か月、ホモ君も木村の練習に付き合ってましたからね。
緊張して普段の動きができてないならジムでやってきたことを思い出させるのが一番でしょう。
というわけでぽちっとな。ホモ君の声を聞いて木村が少し落ち着きを取り戻したようです。動きが良くなってきましたね。
いけーっ、花屋の息子!
よーーーーーし!逆転KO勝利です!
やったぜ。
そして続く青木戦、栗田戦も――。二人ともKO勝利!三人揃ってプロデビュー戦を白星で飾りました!
まあ鴨川ジムであんだけ練習してるんだから当たり前だよなぁ?
さて、試合後は勝利した三人との会話イベントですね。鷹村さんがいつものように嫌味を言ってます。
「あの程度の相手にあんな試合じゃ客に金を返せ」だの「一緒に練習に付き合った俺らの時間を返せ」だのまあ散々な言われようです。
勝ったんだから、もうちょっと褒めてあげて……。当然、青木と木村もブチギレ。いつか必ず鷹村さんに一発入れてやると宣戦布告してますね。
そして、今まで青木と木村は『鷹村』って呼び捨てにしてたんですが――。ここから『鷹村さん』に変わります。
こ↓こ↑名シーン。
…………。あれ?そういえば栗田さん?…………なんか勝ったこと忘れられてない?
青木と木村しかいないみたいなイベントみたいになってる……。強く生きて……。
ワイは覚えてるからな……。というわけで、これにて三人の連続イベントも終了です!結構な経験値をいただけました!うん、おいしい。
…………。なんか今日、ホモ君より青木と木村の方がメインになってなかった?まあ、たまにはこんな回もいいでしょう!それではまた。
次回!ホモ君新人王になる!ぜってぇ見てくれよな!
side 青木・木村
「お前たちも、そろそろプロテストを受けてみんか?」
練習後、会長室へ呼ばれた青木と木村は会長からそう告げられた。
「プロテスト……俺たちが?」
「そうじゃ、基礎も身についてきたしお前たちにやる気があるなら頃合いじゃろう」
青木と木村が顔を見合わせる。プロボクサーになる、このジムに入った時はそんなこと考えてもいなかった。
ただ鷹村を一発ぶん殴りたい。始まりはそれだけだった。だが、毎日のように練習を重ねプロの試合を間近で見るようになって。いつしか自分たちもあのリングに立ってみたい。そう思うようになっていたのも確かだった。
「……やるか?」
「ああ」
二人の答えは決まった。
「受けるぜ!」
「俺も!」
「うむ」
会長が頷く。
「それと栗田」
「はい!」
二人の隣に立っていた栗田が背筋を伸ばした。
「おぬしもじゃ。今度こそ受かってこい」
「……はい」
「そもそも前回落ちたのも、おぬしが試験だからと余計なことを考えすぎてじゃな――」
そこから栗田への長い説教が始まった。練習ではできていたことがなぜ本番になった途端できなくなるのか。普段通りやればよかったものをなぜ余計なことを考えて自分から崩れるのか。前回の反省点を一つ一つ掘り返されるたびに、栗田の身体が少しずつ小さくなっていく。
「……栗田さん、前に受けて落ちてたのか」
青木が小声で呟く。
「てっきりプロなのかと思ってたぜ……」
「聞こえとるぞ!」
「「すんません!」」
なぜか青木と木村まで怒られた。
◇ ◇ ◇
会長の長い説教も終わりようやく三人は解放された。会長室を出た途端さっきまで小さくなっていた栗田が勢いよく振り返る。
「おーし!お前ら、気合い入れていこうぜ!」
「お、おう」
「分からないことがあったら俺に聞いてもいいぞ!なにせ俺は経験者だからな!」
「経験者って……」
青木と木村が顔を見合わせる。
「落ちた奴に聞いてもなぁ……」
「自分で言ってて悲しくならねーか?」
「…………」
栗田の目にうっすら涙が浮かんだ。
「う、うるせえ!受けたことには変わりねえだろ!」
「まあ、確かにこういうのは経験者に聞くのが一番だろうけどよ」
「だったら本郷に聞いてみるか」
「あいつなら一発で受かってるしな」
「なんか俺ら、いっつもあいつに頼ってんな」
「ははっ、違いねえ」
三人は猛火のもとへ向かった。プロテストを受けることになったことを伝え何かアドバイスはないかと尋ねる。
「少し待ってください」
そう言って猛火は考え込んだ。
「…………」
思ったより長い。しばらくしてようやく猛火が口を開いた。
「気合い、ですかね」
「……気合い?」
「気合いって……」
青木と木村が揃って困惑する。あれだけ考えて、それ?もっとこう試験で気をつけることとか、戦い方とか。そういうものを期待していたのだが。
「なるほど!」
そんな中一人だけ栗田が声を上げた。
「俺たちはもうプロテストに合格するだけの実力はある!だから余計なこと考えず、あとは気合い入れて普段通りやればいいってことだな!」
「え、そういう意味なのか?」
「そうに決まってるだろ!俺、前回は緊張して普段できてたことが全然できなかったんだ……だから今度は気持ちで負けなきゃいいんだよ!」
「お、おお……」
「なんかそんな気がしてきたな……」
「よーし!絶対三人とも受かるぞ!」
「おう!」
「やってやるぜ!」
いつの間にか三人ともすっかりやる気になっていた。
「…………」
猛火は何も言わなかった。
◇ ◇ ◇
それから三人はそれぞれ練習を重ね――。
プロテスト当日、三人はリングに上がった。不思議と緊張はない。いつもジムでやっている通りに動けばいい。
青木は前へ出て手数を重ね、木村は足を使って相手を翻弄する。栗田も今度は余計なことを考えず、普段通りの動きを心がけた。
結果――。三人とも大きなミスもなく無事に試験を終えた。
「いやー、結構いけたんじゃねえか?」
「ああ、思ったより普通にやれたな」
二人とも手応えは十分。そして栗田も自分の出来を振り返って満足そうに頷いていた。
「…………」
だが、そこで何かに気づいたように顔を曇らせる。
「前回落ちた俺はなんだったんだ……」
「自分で言うなよ……」
「今回は受かってるといいな、栗田さん……」
「やめろ!急に不安になってきただろ!」
◇ ◇ ◇
数日後、三人は鴨川に呼び出されていた。
「栗田、青木、木村」
「「「はい!」」」
「三人とも――合格じゃ」
一瞬、静寂が流れた。
「……っしゃあああああああ!!」
「やったあああああああ!!」
青木と木村が飛び上がる。
「受かった……」
栗田は呆然と呟き――。
「俺も受かったぁぁぁぁぁ……!」
そのまま男泣きを始めた。
「栗田さん泣きすぎだろ!」
「だってよぉ!前は落ちたんだぞ俺ぇ!」
「よかったな栗田さん!」
三人で肩を組み、大騒ぎする。
「やったぞ!これで俺たちもプロだ!」
「あ、それと」
その横から八木がさらりと口を挟んだ。
「三人とも、デビュー戦一か月後に決まったから」
「「「…………え?」」」
三人の動きが止まる。
「一か月後」
八木がもう一度繰り返した。
「「「ええええええええええええええええ!?」」」
◇ ◇ ◇
「一か月後って……」
「どうすんだよ!?」
「プロテスト受かったばっかりだぞ!?」
さっきまでの喜びはどこへやら、三人は一転して慌て始めた。
「一か月でデビュー戦の準備って何すりゃいいんだよ!」
「俺に聞くなよ!」
「栗田さん経験者だろ!」
「プロテストまでだよ!デビュー戦は俺も初めてだ!」
「じゃあどうすんだよ!」
「どうするって……」
三人が顔を見合わせる。そして――。
「「「ほんえもーーーん!!」」」
結局、三人はいつものように猛火へ泣きついた。
◇ ◇ ◇
三人から事情を聞いた猛火は少し考え込んで頷いた。
「分かりました。じゃあ、試合まで一緒に練習しましょう」
「ほんえもーん!」
「助かるぜ!」
「恩に着るぜ猛火!」
こうして、三人のデビュー戦へ向けた一か月が始まった。猛火は青木の練習に付き合い、次の日は木村、その次は栗田と、時間が合えば誰かの練習に顔を出した。
さらに猛火が一緒に練習していると鷹村や宮田もなんだかんだで加わってくる。
「なんで俺様まで付き合わなきゃならねえんだ」
などと言いながらも鷹村はしっかり相手をしてくれた。宮田も頼めば練習に付き合ってくれる。
そうして一か月。三人は猛火たちに揉まれながらそれぞれデビュー戦に向けて仕上がっていった。そして、三人のデビュー戦も間近に迫ったある日。練習を終えた三人は並んで休憩していた。
「……こんだけやってもらって、負けられねえよな」
青木がぽつりと呟く。
「本郷だって新人王トーナメントの真っ最中なのにな」
「それだけじゃねえよ。会長も鷹村も宮田もみんな俺たちに付き合ってくれてるしな」
この一か月。三人だけでは、ここまでの練習はできなかっただろう。
「まあ、お前らは大丈夫だろ」
栗田が言う。
「鷹村とのスパーでパンチかすらせたんだろ?あいつ相手にそんだけできりゃ、少なくとも自信持っていいだろ 」
「かすったって言っても、ほんと薄皮一枚だぞ」
「ああ、まともに当たったわけじゃねえし」
そこで木村がふと気づく。
「そういや栗田さん、鷹村とスパーしてんの見たことねえな」
「俺はトラウマなんだよ!」
栗田が即答した。
「あいつと同じリングに上がると動けなくなるんだ!」
「なんだよそれ!」
「よくそれで俺らに偉そうなこと言えたな!」
青木と木村が笑う。
「うるせえ! 俺は猛火に相手してもらってるからいいんだよ!」
栗田もつられて笑った。ひとしきり笑ったあと青木が拳を握る。
「……負けられねえな」
「ああ」
木村も頷く。
「勝とうぜ」
「おう!」
三人は拳を合わせた。
side 鷹村・宮田・木村
デビュー戦当日、鷹村と宮田は猛火と一緒に青木たち三人の試合を見に来ていた。
「いいよなー、三人ともプロデビューなんてさ」
宮田が不満そうに呟く。
「俺の方が強いのにさ」
「お子様にはまだ早えんだよ」
「うるさいな」
とはいえ年齢制限なのだから仕方がない。
「まあ、デビュー戦で負けるようなヤワな練習は三人ともしてないし普通にやれば負けないでしょ」
「まあな、青木と木村は喧嘩慣れもしてるしなんとかなるだろ」
やがて最初の試合が始まる、先陣を切るのは木村。名前を呼ばれリングへ上がってきた木村を見て――。
「…………」
鷹村の額に冷や汗が浮かんだ。
「こりゃダメかもしれんな」
「え?」
宮田がリングへ視線を戻す。木村の顔は見るからにガチガチに強張っていて明らかに緊張している。
ゴングが鳴る。相手が踏み込みパンチを放つ。木村は反応が遅れ――まともに顔面へもらった。
「うわっ……」
宮田が顔をしかめる。
「あー、普段なら避けられるよ、そんなパンチ」
明らかに身体が動いていない。相手の攻撃に押されそのまま防戦一方になりかける。
「木村ァ!!」
たまらず鷹村が立ち上がった。
「チンポいじってたあの頃に戻りてーのか!!!」
「それは俺じゃねえ!!」
思わず木村がリングの外へツッコむその瞬間。
「木村さん!前!」
猛火の声が飛んだ。
「っ!」
振り向けば相手の拳が目の前まで迫っている。木村は咄嗟に身体をひねった、拳が鼻先をかすめていく。
「スパーを思い出して!!!」
猛火の声がもう一度飛ぶ。
「……!」
スパー……この一か月何度も繰り返してきた――そうだよな。
木村は改めて目の前の相手を見る。今度はしっかりとその動きを見た。
(……なんだ)
さっきまであれほど怖く見えていた拳が――。
(よく見りゃ全然パンチがおせえじゃねえか)
見える、どこから打ってくるのかも分かる。それどころか――。
(打ち込む隙だって、いくらでもある)
鷹村、本郷、この一か月自分が相手をしてきた二人を思い出す。
(あんなバケモノどもに比べたら――)
相手の拳が飛んでくる、今度ははっきりと見えた。
(全然怖くねえ!)
一歩、身体をずらす。拳が空を切る。
(当たる気がしねえ!)
そして――。
「シッ!」
すれ違いざま、相手の顔面へ木村のカウンターが突き刺さった。相手の身体が崩れ落ちそのまま立ち上がることはなかった。
木村達也、プロデビュー戦――KO勝利。
客席から拍手が送られる。リングの上で木村は大きく息を吐くと観客へ向かって頭を下げた。
「ったく、しょーもねえ試合しやがって」
鷹村が悪態をつく。
「とか言って、鷹村さんも必死に叫んでたじゃん」
宮田がニヤニヤと笑う。
「必死だぁ?俺様はな、俺様のジムにヘッポコボクサーがいると思われるのが我慢できなかっただけだ!」
「はいはい」
「なんだその言い方は!」
宮田は笑いながらリングの上の木村へ拍手を送った。そして続く青木、栗田の試合も――二人揃ってKO勝利を納め三人全員がプロデビュー戦を白星で飾った。
◇ ◇ ◇
「ったく、情けねえ試合しやがって」
試合を終えた三人を待っていたのは鷹村からの祝福――ではなかった。
「特に木村!あの程度の相手にビビってまともに動けねえとはどういうことだ!」
「うっ……」
「青木も青木だ!あんな相手に何発ももらいやがって!」
「勝ったんだからいいだろ!」
「よくねえ!」
鷹村が一喝する。
「あの程度の相手にあんな試合してたんじゃ、金払って見に来た客に失礼だろうが!」
「ぐっ……」
「俺様たちが一か月も練習に付き合ってやったんだぞ!あんな試合しかできねえならその時間返しやがれ!」
「言わせておけば……!」
青木のこめかみに青筋が浮かぶ、木村もムッとした顔で鷹村を睨む。
だが――。腹は立つが二人にも分かっていた。そもそも鷹村に喧嘩でボコボコにされていなければ今こうしてプロのリングに立つこともなかった。
それに、この一か月で猛火や宮田だけでなく鷹村もなんだかんだ言いながら練習に付き合ってくれた。
あの練習がなければ、今日の試合だって勝てていたか分からない。
認めたくはない。認めたくはないが――。
自分たちがここまで来られたのは間違いなく鷹村のおかげでもあった。
「……相変わらずムカツクぜ!」
「あ?」
青木が鷹村を指差した。
「いつか絶対、あんたに一発ぶち込んでやるからな!」
木村もその隣に並ぶ。
「俺もだ。絶対まともに当ててやる」
「ハッ!」
鷹村が鼻で笑った。
「一生かかっても無理だよ」
「言ったな!」
青木が食ってかかる。
「絶対だからな、鷹村さん!」
「俺もだからな、鷹村さん!」
「…………」
鷹村が一瞬黙った。宮田はその変化に気づいてわずかに笑う。今まで二人が呼んでいたのは『鷹村』だった。
それが今、初めて――『鷹村さん』に変わった。
「……ケッ」
鷹村は二人から顔を逸らした。
「お前らじゃ無理だと思うが精々頑張れヘッポコども」
「上等だ!」
「見てろよ!」
今日三人のプロボクサー人生が始まった。そして青木と木村にはいつか必ずぶん殴りたい先輩ができた。
「…………」
その少し離れたところで栗田がぽつりと呟く。
「俺も勝ったんだけどよ……なんか皆、忘れてない……?」
「おめでとうございます栗田さん」
猛火だけが声をかけた。
「猛火ぁ……!」
栗田は泣いた。
というわけで完全に青木木村回となってしまいました。
なんでかというとさっさと二人には鷹村さん呼びになってほしかったんですよね
毎回鷹村さんと書いてしまって直すのがめんどうなんじゃ!
そしてプロデビュー戦まで作ったら1話分になってしまったと
RTAとは?