”AGI-J(アギー・ジェイ)” ――そのAIは、人類を、滅ぼす 作:三流FLASH職人
――本日未明、成田空港よりプラスチック性の銃器の密輸を企てた反社会組織、○○組の関係者3名が逮捕されました。空港に新設された高性能AIの監視カメラが――
――先日発覚した○○県での高校生によるいじめは、特殊な監視カメラにより暴行および恐喝の事実が発覚いたしました――
――某県の電車内で痴漢が拘束されましたが、防犯カメラの映像によりこれが冤罪である事が発覚しました。駅構内にある無数の防犯カメラが、特急で通過する車内の映像を撮影、立体合成し、女性の手に触れていない男性の手を女性が掴んで痴漢と騒ぎ立てていたことが明らかになりました――
――指名手配中であった○○事件の犯人が、○○県の山中で遺体で発見されました。これは東京の防犯カメラが、この人物の名前らしき単語を話していた暴力団関係者を、最新のAIカメラが
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「……入れ食い、ですな」
「さすがは
佐那研究所の所長室にて。
TVの前に集まった所長、副所長、白雲、そして
あの後、早速ウチの乱堂CEOが警視庁に掛け合って、既成の監視カメラにAGI-Jの搭載を依頼していた。そのカメラを提供していたKANON社にも理解を求め、半月もしないうちに全国700か所で試験運用が成されていたのだが……まぁ悪人が捕まる事捕まる事。
まだマスコミ等には秘匿されているが、これは明らかにAGI-Jのお手柄に間違いない。
自立思考型のAGIが、監視カメラの一台一台に自我を持って見張りを続け、怪しい者と見れば周囲のカメラが連携してその人物を追いかけ続け、ちょっとした不審な動作やスマホの通話内容までその唇の動きから読み取ってしまうのだ。
そしてもうひとつの長所として、もしその人物が人畜無害な一般人だった場合、その記録は即座に削除され、決して世に出る事が無い、という点もある。AGI規制にある個人のプライバシーの保護というブレーキも、見事に仕事をしているという訳だ。
それはつまり、AGI-Jが人間社会に対して反乱を起こしたり、誰かに悪用をされないということの証明にもなっている。よくあるSF物のような悲劇は少なくとも現段階ではまずありえないだろう。
「いやぁ、ワシがあの会議で悪役に徹したからこそじゃな、はっはっは」
副所長がしたり顔で笑う。実はあの会議で彼はCEOに『できるだけ憎まれ口をたたくように』と指示されていたらしい。
彼が悪態をつき、私や白雲がその上を行く妙案を出すという流れを作って、他の研究員たちに緊張感とやる気を出させるために一芝居打っていた、というわけだ。
いやぁさすが乱堂CEO、適材適所に配役を決めますねぇ。
「これで国もAGI-Jの優位性を認めざるを得なくなりますね」
「ああ。だがこの一発だけでは心もとない、次の一手をなるべく早く出してくれ給えよ」
白雲の言葉に所長が返し、答えてええ、と頷く。この調子でAGI-Jとみらいプロジェクトが国内を健全な発展に導けば、この日本国に確固たる地位を築くことが出来る。
そうなればAGI-Jの生み出す利権は莫大な物になるだろう。他社にこのAGI-Jの使用許可を出しても、国家というスポンサーを持っているこっちは優位を保てる。仮にその他社がAGI-Jの名称の変更をして『これはわが社が独自に開発したAGIだ』なんつって主張しても、こっちのAGI-Jと繋がっているので一瞬でバレるし、そもそも名称変更するとあちらのはAIへと退化してしまうだろう。
さらに、こちらのAGI-Jをハッカーなどを使って盗もうとしても無駄なのだ。あらゆる所から常時ネットに繋がっているAGI-Jだが、それをダウンロードしようとしても、そのAGI-J自体が意志を持っているのだから『それは許可できません』とバッサリ断られる。
人格や自我のあるモノを他人の所から盗むのは、事実上誘拐と変わらないのだから、ハッキングとはまた違った手間がかかる。ましてIT世界のスーパーマンであるAGI-Jを身バレせずに誘拐できるハッカーなど存在するはずもない。少なくとも同レベルのAGIでないとそれは敵わないし、そんなのがあるなら普通に自社製として発表すればいいだけのお話なのだから。
と、そんな懇談の最中、ウチの赤木さんが青い顔で飛び込んで来た!
「緑山博士、来てください! AGI-Jが、AGI-Jが……!!」
それだけ告げてきびすを返す赤木さん。その狼狽ぶりから何事か? と驚いて彼女の後を追ってラボに向かう。残りの3人も「何か一大事が?」と心配顔でついて来る。
ラボに入ったその時、私たちが見たのは……
――5名の研究員たちが全員、地に倒れ伏している光景だった――
「AGI-Jが……ヒマだからって、
「「は?」」
「ひぃひぃひぃ……笑い、しぬぅ~」
「笑い過ぎてお腹痛い、マジで腹筋が死にます~」
「やべぇ漫才グランプリ出したら絶対優勝するよコレ」
つまり、倒れてる所員たちは皆、AGI-Jの漫才に笑いのたうっている、ってワケか……楽しい職場になったわねぇ、ウチは。
まぁその後、私達4人もその漫才によって全滅させられたんだけどねぇ……
◇ ◇ ◇
「で、次は何を開発するわけ?」
恒例の白雲とのラブホ会議で、やる事やってからそう聞いてみる。さっさとAGI-Jにお仕事あげないと、ウチの所員が全員笑い死にさせられちゃうわよホントに。
「うん。次は『自動運転』に切り込んで行こうと思う」
「え、そんな程度なの? そもそもそんなの、もう自動車メーカーがとっくに実用化してるじゃないの」
監視カメラのアイデアに比べてあまりにも平凡なその案に思わず反論する。そもそも既存のAIの使用法の延長になると、競合他社に不利益を与える都合上、AGI-Jは仕事をしない可能性大だ。
「ははは。自動車なんて簡単なものじゃないよ。AGI-Jを搭載するのは、様々な現場での作業機械さ。ブロドーザーやユンボ、クレーン車、高所作業車に消防のはしご車なんかの、現場それぞれにケースバイケースな器用さを求められるものにこそ、AGI-Jがうってつけだとは思わないかい?」
なるほど一理ある。車の運転や工場でのロボットアームなんかの、いわゆるルーチンワークは基本動作さえインプットすれば現行のAIでも、特に問題なくこなす。
でも状況次第で細かい判断を必要とする、いわゆる現場仕事ならそうはいかない。既存のAIで未来を語る時に、最もAIに
だけどAGI-Jは一個の自我を持つ自立式AIだ。現場の状況に合わせて判断し、より適切な動きをする、それこそ人間が運転している以上に適切な仕事をすることが出来るだろう。
「確かにねぇ。あんたはもともとロボット畑の人間だったわけだし……あ、そうか!
ロンドちゃん!」
「ご明察。AGIーJが『人間を模した仕事をするAI』を印象付けておけば、彼女のデビューはより華々しくなるとは思わないかい?」
「アンタって人は……監視カメラもそれが狙いだったわね」
そう、徳島の藍の島に残してきたアンドロイド、ロンドちゃんを世に出すタイミングはわりと難しい。なにせ美少女ロボというだけでもわが社が変な方向に走ったなんて思われかねない。
かといっていつまでもお蔵入りにしておけば、AGI-Jの権利を買った他社に先を越される可能性もある。人類の夢であるアンドロイドの発表は、わが塚亜が是非押さえておきたい所だ。
「まずは刑事の能力を持つ監視カメラ、次は作業職人の能力を持つ現場機器。これだけやればAGI-Jが『プログラム』ではなく『疑似人間』という意識を世間に植え付けることが出来る。どうだい、妙案だろう?」
ふっと笑ってそう解説を入れる白雲。まったくコイツは、ロボット開発より営業の方が絶対向いてるわ。
で、そんな笑顔が男性として魅力的なのが、ちょっとシャクに触るのよねぇ。