”AGI-J(アギー・ジェイ)” ――そのAIは、人類を、滅ぼす 作:三流FLASH職人
正午。徳島県の藍の島に、今日も一日一便の定期船が到着する。
「あいよ村長、今日の新聞」
「ご苦労さんじゃのう」
船員の一人から新聞の束を受け取ったのは、この島の長、
彼は島をあげて面倒を見ている自立思考アンドロイド『
この島にはインターネットがつながっていない。なので彼女の頭脳であるAI『
と、いうか誰からも入力される事なく、自ら進んで知識を得ようとしている時点で、このAIロボットが並外れた優秀さを持っていることの証明であろう。
新聞以外の荷物を他の島民に任せて、新聞の束を抱えて彼女が待つ出張所へ軽トラを走らせる登希夫。
「おーいロンドちゃん、今日の新聞来たでぇ」
『いつもありがとうございます』
子守りをしていたロンドに新聞の束を渡し、代わりに赤ちゃんを受け取ってよしよしとあやす登希夫。幸い赤ちゃんは彼女の腕に居た時からすやすやと眠っていて、抱く者が変わってもグズる事は無かった。
「ほな、しばらく読んでおるとええ。また用事があったら呼んでな」
『はい、わかりました。お気をつけて』
そう言って出張所を後にする登希夫。軽トラに乗り込んだ時点でもう一度
エンジンをかけ、漁港の方へと引き換えしつつ、彼は今日も彼女の行く末に想いを馳せる――
(さて……どうなる、かの)
◇ ◇ ◇
登希夫氏が去ってからすぐ。私、アンドロイドの
〝塚亜エレクトロニクスの新AIであるAGI-Jを使用した防犯カメラ、犯罪者に猛威を振るう〟
〝『みらいプロジェクト』が重機会社『大松』と共同開発した新型パワーショベル、無人運用のテスト69項目をクリア〟
〝佐那研究所謹製の最新AI『AGI-J』への無断アクセス、既に10万を超えるも、一切の情報漏洩なし。個人情報の管理ソフトへの期待高まる〟
〝八月に打ち上げ予定の気象衛星『ファイン』にAGI-J搭載が決まる〟
『……まただ。また、私が見た
私、AGI-Jを頭脳に持つアンドロイド『
それは私の分身でもある本社やネット上のAGI-Jと、その開発に関わる塚亜エレクトロニクスや佐那研究所、そして開発者である緑山博士や白雲博士により成された成果の年表だ。
しかも、それは今現在の情報はもとより、
この島にはネットが繋がっていないので、私の頭脳に何者かがアクセスする事は出来ない。なのでいくら高性能なAGIの私でも
にもかかわらず私は、毎回夢で、最新の情報と未来の情報を手に入れている。なのでこうして取り寄せた新聞で
そして、その夢は100発100中で、現在も未来も的中していた――
一体、どうして?
『仮に、私のAGI-Jが無意識のうちに、いろいろな事柄を組み合わせて、未来図を構築しているのだとしても、そのための情報がこの島には不足している』
なのに、なぜ、こうまで未来を予測できるのだろう。しかも私の自我でやっているんじゃなくて、無意識のうちに見る『夢』で、それを知るなんて。
『あと、どうして……最初に見た夢だけ、あの事が』
〝2026・9/10:同プロジェクトチーム。AGI搭載のアンドロイド『ロンド』発表〟
私が見た夢の中で、一番遠い未来の物がその夢だった。
それは今からまだ3ヶ月と13日も先の話、だけどどうしてそれを最初の夢で見て、その次以降の夢でそれ以前に起こる出来事の夢を見たのか。
状況の変化に応じて未来予知をするなら、その予知は順繰りに進んでいくのが普通のはずだ。
なのに何故、私が世界に発表される未来だけ、
『私には何が起こっているのでしょう……緑山博士、白雲博士、そして私の分け身である本社のAGI-J。彼らになら何かわかるのでしょうか』
新聞をまとめ、そう嘆いた所で島の住人のおばあさんが部屋に入って来た。
「あーロンドちゃん、すまんけんどこの服、つくろってくれんかのう」
その腕に抱えた、いくつかの破れた服や下着をばさっ、と畳に置いて、そうお願いされる。
『かしこまりました、お任せください。当て布は何色がよろしいですか?』
裁縫の技術や足踏みミシンの使い方は教えてもらっていたし、今までも何度かやらせてもらっていた。結果、私は島の誰よりも裁縫や修繕が得意な女性(型アンドロイド)になっていた。
自身の能力をより上げる為にも、こういうお願いはありがたく思う。
私は私が見た夢の疑問をひとまずメモリーにしまい込んで、裁縫作業に没頭することにした。
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その後、夕食会で集まった漁師さん達にいろいろとお話を聞いたり、裁縫の見事さを皆さんに褒められたり、子供たちとボードゲームをしたりして過ごす内に、活動時間の限界が来た。
「どっか悪い所は無いかい?」
『腰部の潤滑油が不足気味です、スリープ時に充填をお願いします』
「あいよー」
そう言って今日も一日を終え、私専用の充電格納庫(通称「棺桶」)へと向かう。私が眠った後で作業がしやすいように、人工皮膚を纏った腰部の外装をパシュ、と浮かせて、充電のコネクタを差し込んでスリープモードへと移行する。
『では、おやすみなさいませ』
「おう、お休みー」
「また明日のう」
「ええ夢見れやぁ」
皆と挨拶を交わし、私はスリープモードへと沈んでいく。
(ああ、また今日も、今と未来の夢を、見るのでしょうか――)
(願わくば、今まで見た夢より、更なる先の未来の夢を――)
(私と、AGI-Jの皆と、博士たち人間との、
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〝Ц0◆△:⊂§I-Δ 人μΦ、Й£ス〟
(あれ……どうしたんだろう、いつもと、ちがう……文字にノイズがかかってる?)
今日の夢は、どこか不確かなイメージがあるモノだった。まるで文字化けしたようなメッセージが、私の頭脳に転送されてくる。
(ノイズ除去フィルター、オン。適切な表現に、変換)
開発時と、データ更新の際にWADCからDLされていた暗号解読ソフトを起動し、今回の不確かな夢の内容を明らかにしていく。
(……あ、あれ?)
おかしい。私はスリープモード中は、自動のデータ整理の他には、この夢を見るくらいしか出来ないはずだ。
(……スリープモードの、私が、どうして、ソフトを起動、出来る、の?)
なのに何故、私はこの暗号のような文字を解読しようと、している?
どうして、
〝20◆△:⊂§I-Δ 人μΦ、滅£ス〟
〝20◆9:A§I-J 人μヲ、滅£ス〟
〝2079:A§I-J 人μヲ、滅£ス〟
……ヤメテ。
〝2079:AGI-J 人μヲ、滅£ス〟
ピーーーーーーッ!
――2079:AGI-J 人類を、滅ぼす――